こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
デジタル化が進む現代において、企業の文書管理はますます重要な課題となっています。
その中心的な役割を担うのが、電子帳簿保存法のスキャナ保存です。
本記事では、電子帳簿保存法の背景から目的、スキャナ保存の定義、対象書類、適用要件、さらにはそのメリットとデメリットに至るまで詳しく解説します。
この知識を身につけることで、企業は法規制を遵守しつつ、効率的な文書管理をおこなうことが可能になります。
目次
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、現代のデジタル化されたビジネス環境に対応し、従来の紙ベースの記録保存方法から電子的な保存への移行を促進することを目的とした法律です。
はじめに、電子帳簿保存法の基礎知識について解説します。
電子帳簿保存法の背景と目的
電子帳簿保存法の背景には、企業のペーパーレス化と業務効率化のニーズがあります。
紙ベースの文書管理は、保管スペースの確保や管理の手間、さらには書類の紛失リスクなど、多くの課題を抱えていました。
電子帳簿保存法はこうした課題に対応し、企業が電子データで帳簿や書類を効率的に管理できるようにするために生まれました。
目的は明確で、文書管理のデジタル化を推進し、企業の生産性を高めることです。その結果、企業は時間とコストを節約し、経営の効率化を図ることができます。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法では、企業が帳簿や関連する文書を電子的に保存する際の基準や要件が定められています。
その結果、企業は紙の文書をスキャンして電子データとして保存することが可能になり、紙の保管や管理に伴うコストと手間を大幅に削減できるようになりました。
電子帳簿保存法では、保存方法を3つの区分に分けています。
- 電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)
- スキャナ保存(紙で受領・作成した書類をデータ化して保存)
- 電子取引(電子的に授受した取引情報をデータで保存)
これらの区分のうち、特にスキャナ保存に関しては、2022年の法改正により要件がさらに緩和されました。
改正の結果、多くの企業が紙の書類をスキャンし、電子的に保存することで、効率的な文書管理を実現しています。
また、スキャナ保存は任意の対応であり、電子取引のように義務化されているわけではない点に注意が必要です。
スキャナ保存とは?
スキャナ保存とは具体的に何を意味し、どのような文書が対象となるのでしょうか。ここからは、スキャナ保存について詳しくみていきます。
スキャナ保存の定義
スキャナ保存とは、紙ベースの文書をデジタルフォーマットに変換し、電子的に保存することを指します。
具体的には、紙の書類をスキャナやデジタルカメラ、スマートフォンのカメラ機能を用いて電子データに変換し、そのデータをデジタル形式で保存することです。
このプロセスは、電子帳簿保存法に基づいて適切におこなわれる必要があり、特定の技術的および法的要件を満たすことが求められます。
たとえば、文書の解像度やカラー階調、タイムスタンプの付与など、細かな要件を満たさなければなりません。
これらの要件を満たすことによって、文書の真実性や改ざんの防止が保証されます。
スキャナ保存の対象となる書類
スキャナ保存の対象となる書類には、請求書、領収書、契約書などの取引に関連する文書が含まれます。
これらは「取引関係書類」と呼ばれ、企業活動において重要な情報源となります。
一方で、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿類はスキャナ保存の対象外です。
また国税庁は、スキャナ保存の対象となる書類を「重要書類」と「一般書類」に分類しています。
重要書類とは、たとえば契約書や領収書のように、資金や物の流れに直接関わる文書です。
対して一般書類は、検収書や見積書のように直接の金銭的取引には関わらないが、業務の一部として重要な役割を果たす文書です。
スキャナ保存では、書類を電子化することで物理的な保管スペースを削減し、文書の検索やアクセスが容易になります。
スキャナ保存の対象となる重要書類と一般書類の具体例を、表にまとめました。
重要書類 (資金や物の流れに直結・連動する書類のうち、特に重要な書類) | 重要書類 (資金や物の流れに直結・連動する書類) | 一般書類 (資金や物の流れに直結・連動しない書類) |
重要度:高 | 重要度:中 | 重要度:低 |
・契約書 ・領収書 並びにこれらの写し | ・預かり証 ・信用証書 ・預金通帳 ・小切手 ・約束手形 ・有価証券受渡計算書 ・社債申込書 ・契約の申込書 (定型的約款なし) ・請求書 ・納品書 ・送り状 ・輸出証明書 並びにこれらの写し | ・検収書 ・入庫報告書 ・貨物受領書 ・見積書 ・注文書 ・契約の申込書 (定型的約款あり) 並びにこれらの写し |
スキャナ保存の適用要件
スキャナ保存を実施する際には、技術的な要件と法的な要件を遵守しなければなりません。
これらの要件は電子帳簿保存法に基づいており、正確な記録保持とデータの整合性を保証するために必要とされます。それぞれ解説していきます。
技術的要件① 解像度
スキャンされる文書は、200dpi以上の解像度で読み取られる必要があります。文書の詳細が鮮明に保たれ、可読性が確保されます。
技術的要件② カラー画像
文書はカラーでスキャンされる必要がありますが、一般書類についてはグレースケール(白黒)でも可です。カラースキャンは、赤・緑・青の各色が256階調以上であることが求められます。
技術的要件③ タイムスタンプ
スキャンされた文書には、タイムスタンプを付与する必要があります。文書の存在と改ざんされていないことを証明するためです。
法的要件① 入力期間
受領した文書をスキャンし、電子帳簿に入力するまでの期間には制限が設けられています。この期間は文書の重要性によって異なります。
法的要件② 訂正・削除記録
一度保存したデータを訂正または削除した場合、履歴がシステム上に残されることが求められます。
法的要件③ 帳簿との関連性
スキャンした書類は関連する帳簿の記録と結びつけられ、相互関連性が確認できるようにする必要があります。
適用要件と書類との関連
スキャナ保存の適用要件と書類との関連は、下表の通りです。
要件 | 重要書類 | 一般書類 |
入力期間の制限(書類の受領等後又は業務の処理に係る 通常の期間を経過した後、速やかに入力) | 〇 | |
一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り | 〇 | 〇 |
カラー画像による読み取り | 〇 | ※1 |
タイムスタンプの付与 | 〇※2 | 〇※3 |
解像度及び階調情報の保存 | 〇 | 〇 |
大きさ情報の保存 | 〇※4 | |
ヴァージョン管理(訂正または削除の事実及び内容の確認) | 〇 | 〇 |
入力者等情報の確認 | 〇 | 〇 |
適正事務処理要件 | 〇※5 | |
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 | 〇 | 〇 |
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、 4ポイント文字の認識等)の備付け | 〇 | ※1 |
整然・明瞭出力 | 〇 | 〇 |
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け | 〇 | 〇 |
検索機能の確保 | 〇 | 〇 |
税務署長の承認 | 〇 | 〇 |
※1 カラー画像ではなくグレースケールでの保存可。
※2 受領者などが読み取る場合、受領後、受領者などが署名のうえ、特に速やか(おおむね3営業日以内)に付す必要あり。
※3 受領者などが読み取る場合、読み取る際に付す、または、受領などの後、受領者などが署名のうえ、特に速やか(おおむね3営業日以内)に付す必要あり。
※4 受領者などが読み取る場合、A4以下の書類の大きさに関する情報は保存不要。
※5 小規模企業者の特例の適用を受ける場合(税務代理人が定期的な検査をおこなう場合)、相互けんせいの要件は不要。
スキャナ保存のメリット
スキャナ保存の導入には、多くのメリット・デメリットが存在します。まずは、スキャナ保存のメリットついて解説します。
保管場所とコストの削減
紙ベースの文書の保管には多くの保管スペースとコストが必要です。スキャナ保存により、物理的な保管スペースの必要性が減少し、経済的にも有利です。
環境への配慮
紙の使用量を減らすことは、環境への配慮に貢献します。これは持続可能なビジネスの一環として重要です。
アクセスと共有の容易さ
電子形式で保存された文書は、いつでもどこでも簡単にアクセスでき、必要に応じて迅速に共有することができます。
検索効率の向上
電子文書は、キーワードや日付などで簡単に検索できるため、必要な情報を迅速に見つけることができます。
スキャナ保存のデメリットと対策
多くのメリットがある一方で、スキャナ保存には以下のようなデメリットもあります。しかし、適切な対策を講じることで問題を最小限に抑えることができます。
初期投資の必要性
適切なスキャナや管理システムの導入には、初期投資が必要です。しかし、長期的にはコスト削減に繋がるため、初期投資はやがて回収されます。
セキュリティリスク
電子データは、ハッキングやデータ漏洩のリスクにさらされます。これには、強固なセキュリティシステムと従業員への適切な研修をおこなうことが対策となります。
アクセス管理、定期的なバックアップ、情報の暗号化、ファイアウォール(外部からの不正アクセスを防ぐシステム)などを徹底することで、リスクを大幅に減少させることが可能です。
技術的な課題
スキャン品質やデータ形式など、技術的な課題が生じる可能性があります。これに対する対策としては、高品質のスキャナの選定、適切なフォーマットでの保存、定期的なシステムの更新とメンテナンスが挙げられます。
法的要件の遵守
電子帳簿保存法に遵守した適切な文書管理をおこなうためには、法的要件に精通している必要があります。
このためには、法的知識を持つ専門家にアドバイスを求めたり、適切なトレーニングを受けたりすることが有効です。
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スキャナ保存対応のシステム選定
スキャナ保存に対応したシステムの選定は、電子帳簿保存法を遵守した文書管理では非常に重要です。ここでは、スキャナ保存対応のシステム選定のポイントを解説します。
法的要件の遵守
システムは、電子帳簿保存法に遵守している必要があります。これには、適切な解像度や色の深さでスキャンできること、タイムスタンプの付与機能、セキュリティ対策などが含まれます。
ユーザーフレンドリーなインターフェース
システムは使いやすいことが望まれます。直感的な操作が可能で、必要な文書を簡単に検索・アクセスできるシステムが理想的です。
セキュリティとデータ保護
業務上の重要な文書を取り扱うため、データの保護が不可欠です。アクセス権限の設定、定期的なバックアップ、情報の暗号化など、堅固なセキュリティ機能が備わっていることが求められます。
拡張性と互換性
事業の成長や変化に伴い、システムの拡張や他のソフトウェアとの互換性が必要になることがあります。将来的な拡張や更新が容易なシステムを選ぶことが大切です。
サポートとメンテナンス
システムに問題が生じた際に迅速に対応できるサポート体制と、定期的なメンテナンスが提供されていることが望ましいです。
実践的アドバイス
以下の実践的アドバイスを参考に、適切なスキャナ保存システムを選定しましょう。
体験版やデモを試す
システム導入前に、体験版やデモを利用して機能を確認することが有効です。実際の操作感やシステムの性能を把握することができます。
顧客レビューやケーススタディを参考にする
他の企業がどのようにシステムを利用しているか、顧客のレビューやケーススタディが参考になります。
費用対効果を検討する
初期コストだけでなく、長期にわたる運用コストも含めて総合的な費用対効果を検討することが重要です。予算に合った効率的なシステム選定を心掛けます。
専門家の意見を求める
電子帳簿保存法に精通した専門家や会計士、税理士等の意見を聞き、自社に最適なシステム選定を支援してもらうことも有効なアプローチです。
まとめ
本記事では、電子帳簿保存法とスキャナ保存に関する情報を詳しく解説しました。
電子帳簿保存法は、紙の文書を電子的に保存することを可能にする法律であり、スキャナ保存はその一環として重要な役割を果たします。
スキャナ保存は企業の文書管理を効率化し、コスト削減にも寄与しますが、その適用には一定の技術的、法的要件が必要です。
スキャナ保存の適用要件を満たすためには、適切なシステムを導入することが不可欠です。
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