令和5年度税制改正大綱を解説!インボイス制度と電子帳簿保存法の改正点は?

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

2022年1月に電子帳簿保存法が施行され、さらに2023年10月からはインボイス制度が開始されます。

そのような中、2022年12月16日に政府与党から令和5年度(2023年度)税制改正大綱が公表されました。

本記事では令和5年度税制改正大綱のうち、インボイス制度と電子帳簿保存法の改正点について詳しく解説していきます。

経理担当者が押さえておきたいポイントが分かるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。

税制改正大綱とは

税制改正大綱の概要

税制改正大綱とは、各省庁から提出された要望をまとめて翌年以降の税制の改正を決定したもので、毎年12月中旬に発表されます。

税制改正大綱の発表後は国会で審議され、法案として成立後に定められた日から施行されます。

令和5年度(2023年度)税制改正大綱

令和5年度(2023年度)税制改正大綱の基本的な考え方は、以下の通りです。

  • 成長と分配の好循環の実現
  • 経済のグローバル化・デジタル化・グリーン化への対応
  • 地域における活力と安全・安心な暮らしの創造
  • 経済社会の構造変化も踏まえた公平で中立的な税制の見直し
  • 円滑・適正な納税のための環境整備

以上の基本的な考え方を踏まえて、以下の税目が改正されました。

  • 個人所得課税(所得税)
  • 資産課税(相続税・贈与税)
  • 法人課税(法人税)
  • 消費課税(消費税)
  • 国際課税(大規模な法人の法人税など)
  • 納税環境整備(電子帳簿保存法関連)
  • 関税

参照:令和5年度税制改正大綱|自民党

以下から「消費課税(インボイス制度)」と「納税環境整備(電子帳簿保存法)」の改正内容について、それぞれ詳しく解説していきます。

インボイス制度に係る改正の4つのポイント

令和5年度税制改正大綱で発表されたインボイス制度に係る改正のポイントは、以下の4点です。

  • 「2割特例」の導入
  • 「小規模事業者特例」の導入
  • 「少額の適格返還請求書(返還インボイス)」の交付義務免除
  • 「インボイス発行事業者登録制度」の見直し

ひとつずつ、順番に解説していきます。

「2割特例」の導入

2割特例とは、一定の条件を満たした事業者の納税額が売上消費税の2割に軽減できる特例措置のことを指します。

2割特例の対象事業者

2割特例の対象事業者は「インボイス制度の開始によって免税事業者となった事業者」です。この2割特例の適用を受けるための事前申請は不要であり、申告書へ2割適用を受ける旨を記載するのみです。

ただし、以下の事業者は対象から外れます。

  1. 2023年9月30日以前に課税事業者選択届出書を提出していた
  2. 基準期間の課税売上高が1000万円を超えた

2割特例の対象期間

2割特例の対象期間は、「2023年10月1日から2026年9月30日まで」の課税期間です。なお、2割特例は経過措置のため、2026年9月30日までの課税期間が過ぎれば、本来の課税方式に戻ることに注意が必要です。

2割特例の具体例

2割特例を適用した場合に納税額はいくらになるか、具体例を用いて解説していきます。

上表のように、本則課税や簡易課税と比較すると2割特例を適用した場合、大幅な節税効果があります。

ただし、本則課税において仕入金額割合が大きい場合や簡易課税においてみなし仕入率が90%の場合は、2割特例の方が税負担は大きくなるので注意が必要です。

3つの課税制度の違い

3つの課税制度の違いをまとめると、下表のとおりとなります。


事業者の対象適格請求書の保存事前の届出還付の有無
本則課税 なし必要必要
簡易課税基準期間の課税売上高が5000万円以下不要必要
2割特例インボイス制度で免税事業者から課税事業者になった事業者不要不要 (申告書へ記載)

2割特例のメリット

2割特例のメリットは、税負担が軽減されることはもちろんですが、仕入金額を詳細に計算する手間を省くことができることが大きな点です。

仕入金額は、消費税率ごと(10%と8%)や相手先ごと(適格事業者、適格事業者以外)に分類しなければならなく大きな負担です。この点で2割特例は事業者にとって大きなメリットになります。

「小規模事業者特例」の導入

「小規模事業者特例」とは、税込金額が1万円未満の課税仕入れについて、インボイス(適格請求書)がなくても仕入税額控除ができる特例です。

「小規模事業者特例」の対象事業者

「小規模事業者特例」の対象事業者は、文字通り小規模事業者のみです。具体的には、以下の事業者となります。

  • 基準期間(原則2年前)における課税売上高が1億円以下である事業者
  • 特定期間(原則1年前の上半期)における課税売上高が5,000万円以下である事業者

「小規模事業者特例」の対象期間

「小規模事業者特例」の対象期間は、2023年10月1日から2029年9月30日までの6年間です。

「小規模事業者特例」のメリット

これまでは、仕入税額控除をするためには、金額にかかわらずインボイス(適格請求書)が必要でした。ところが、1万円未満の消耗品や飲食代についてインボイス(適格請求書)が不要になれば、事務負担は大きく軽減されます。

「少額の適格返還請求書(返還インボイス)」の交付義務免除

インボイス制度下では、取引の売り手側が買い手側に対して値引きや返品、割り戻しを行った場合も適格返還請求書(返還インボイス)の交付をする必要がありました。

改正後は、返還などに係る金額が税込1万円未満のものは、適格返還請求書(返還インボイス)の交付が免除となります。

商習慣では、売り手側が振込手数料を負担する場合がありますが、このようなケースにおいてインボイスを交付する必要はありません。

「少額の適格返還請求書(返還インボイス)」の交付義務免除は、上述の2つの改正と異なり、対象事業者の条件はなく恒久的措置となります。

「インボイス発行事業者登録制度」の緩和

「インボイス発行事業者登録制度」についても緩和されます。緩和の内容は下表のとおりです。


改正前改正後
登録申請書の提出期限     課税期間の初日の前日から起算して1ヶ月前課税期間の初日から起算して15日前
登録取消届出書の提出期限提出する課税期間の末日から起算して30日前の日の前日取り消したい課税期間の初日から起算して15日前
登録希望日の取り扱い規定なし2023年10月1日以降にインボイス登録を受けようとする免税事業者は、申請書の提出日から15日以後の日を登録希望日とできる
申請期限後に提出する困難の事情の記載必要不要

電子帳簿保存法に係る改正の3つのポイント

令和5年度税制改正大綱で発表された電子帳簿保存法に係る改正のポイントは、以下の3点です。

  • 優良な電子帳簿の範囲の限定
  • スキャナ保存要件の緩和
  • 電子取引保存要件の見直し

ひとつずつ、順番に解説していきます。

優良な電子帳簿の範囲の限定

令和3年税制改正により「優良な電子帳簿」を備え付けて保存している事業者は、過少申告加算税が5%軽減される優遇措置が認められました。

「優良な電子帳簿」に必要な要件は以下の5つです。

  • 訂正・削除履歴の確保
  • 相互関連性の確保
  • システム関係書類等の備付け
  • 見読可能性の確保
  • 検索機能の確保

つまり、これらの5つの要件を満たすことで「真実性」と「可視性」が担保された優良な電子帳簿を保存しているとみなされます。

令和5年度税制改正大綱では、優良な電子帳簿の対象が下表のとおり限定されました。

改正前改正後
・仕訳帳
・総勘定元帳
・その他必要な帳簿(全て)
・仕訳帳
・総勘定元帳
・その他必要な帳簿(以下の補助簿に限定)
 ・ 損益計算書に記載する科目は、補助簿の全て
  ・売上
  ・その他収入
  ・仕入
  ・その他経費
 ・貸借対照表に記載する科目は、必要性が高い科目に限定
  ・手形
  ・売上金等
  ・買掛金等
  ・有価証券
  ・減価償却資産
  ・繰延資産

従来は「全ての帳簿」が保存対象となっていましたが、改正後は保存対象が限定されました。

そのため、優良な電子帳簿を保存しなければいけないハードルが下げられたため、企業にとっては対応が立てやすくなります。

スキャナ保存要件の緩和

国税関係書類に係るスキャナ保存要件については、下表のとおり緩和されます。

要件改正前改正後
重要書類一般書類重要書類一般書類
解像度200dpi以上の読み取り○(※)○(※)
カラー256階調以上の読み取り
タイムスタンプの付与
解像度、階調情報の保存廃止廃止
大きさ情報の保存廃止
入力者等情報の確認廃止廃止
訂正又は削除の事実及び内容の確認
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持廃止
入力期間の制限
見読可能装置の備付け○(※)○(※)
検索機能の確保
システム開発関係書類等の備付け

※グレースケールでの保存可

スキャナ保存する場合の要件は、書類の性格により異なります。

  • 重要書類:請求書や納品書といった資金やモノの流れの証拠となる書類
  • 一般書類:主に見積書や注文書といったまだ取引が確定していない書類

上表の改正点は以下のとおりです。

  • 解像度、階調情報の保存が廃止
  • 大きさ情報の保存が廃止
  • 入力者等情報の確認が廃止
  • スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持が重要書類に限定

以上のように保存要件が緩和されたことによって、事務負担に懸念があった企業も取り組みやすくなります。

電子取引保存要件の見直し

電子取引保存要件については、以下の2点の見直しがされます。

  • 2024年1月から新たな猶予措置が実施
  • 検索機能の確保要件の緩和

2024年1月から新たな猶予措置が実施

2022年1月に改正電子帳簿保存法が施行されましたが、2023年12月までは書面保存が一定の要件下で認められる宥恕措置が実施されています。

この宥恕措置は2023年12月で廃止され、2024年1月からは以下の全ての要件を満たす場合に、書面保存を認める新たな猶予措置が実施されます。

  • 税務署長に「相当の理由」があると認められること
  • 税務調査時に要求されたデータのダウンロードが提示できること
  • 税務調査時に要求された書面の提示または提出ができること

なお「相当の理由」の内容については現時点で明らかにされていないため、引き続き情報を確認していく必要があります。

検索要件のすべてが不要となる対象者の拡大

電子帳簿保存法の検索要件については、以下の3点を確保しなければなりません。

  • 取引データの種類ごとに取引年月日、取引金額、取引先で検索できること
  • 日付または金額に係る記録項目については、範囲指定して条件を設定できること
  • 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること(and検索) 

この3つの検索要件を確保するために、企業にとってはシステムの導入など実務上の負担が懸念されていました。

改正後は、前提条件として税務調査時に必要な書類をダウンロードして提出できるような状態にある場合、以下の対象者は、検索要件のすべてが不要となります。

  • 売上高が5,000万円以下(現行では1,000万円以下)の事業者
  • 電子データの取引年月日、その他の日付および取引先ごとに整理された電磁的記録の出力書面の提出に応じられる事業者

なお、取引先企業が多い事業者の場合は「取引先ごと」に書面を用意するのが大変なこともあるでしょう。

そのようなときは、検索要件に対応したシステムを導入した方が効率的かもしれませんので、自社の業務体制によって判断することをおすすめします。

まとめ

令和5年度税制改正大綱のうち、インボイス制度と電子帳簿保存法の改正について解説しました。

インボイス制度と電子帳簿保存法の導入によって、企業の経理担当者の事務負担は煩雑化することが予想されます。

令和5年度税制改正大綱は大きな負担軽減となるので、今回ご紹介した内容をよく理解して、インボイスと電子帳簿保存法の対応準備を進めていきましょう。

さらに、経理業務の効率化を進めるためにも、請求管理システムの導入を検討してみてください。

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