こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
サブスクリプションと聞くと、音楽配信や動画配信などの一般消費者向けのBtoC(Business to Customer)サービスが注目されがちですが、近年は企業向けのBtoB(Business to Business)サービスもどんどん普及しています。
そこで今回は売り切り型のビジネスからBtoBサブスクビジネスへ転換する際の経理のポイントについて説明します。
目次
サブスクリプションビジネスとは?売り切り型ビジネスとの違い
サブスクリプションビジネスといえば、アマゾンプライムやネットフリックスといった音楽や動画配信サービスがイメージしやすいのではないでしょうか。サブスクリプションは製品やサービスの利用期間に応じて月額や年額で利用量を支払うことにより、継続的にサービスが利用できるビジネスモデルです。一方で売り切り型は、基本的には製品を販売したときに一度で売上が入金されるビジネスモデルになります。
以下の表で、サブスクリプションと売り切り型のビジネスモデルの違いを項目毎に説明します。
サブスクリプション型 | 売り切り型 | |
経営視点 | ・安定収入(継続型) ・定額支払いによる一時的な売上減少 | ・毎年ゼロからスタート |
顧客への対応 | ・売った後が勝負 ・顧客のニーズ把握、関係強化の継続 | ・売るまでが勝負 ・新規開拓の繰り返し |
顧客の意識 | ・満足しなければ解約(解約されたら気づく) | ・満足しなければ使わない(企業は次に買われないだけで気づけない) |
料金設定 | ・月額、年額支払い ・顧客のニーズに合わせた料金プラン(契約に繋げ、解約を防ぐため) | ・一括支払い ・原価に利益を加算して設定 ・一度決めると固定化し変更が難しい |
商品サービスの機能向上・改善サイクル | ・短いサイクル ・常に最新の機能をリリース ・クラウド提供ソフトウェアのため、膨大な開発費用やリリース費用が発生しない ・結果的に顧客の離反を防ぐことに繋がる | ・長いサイクル ・長い開発期間を経て、新製品をリリース ・開発費用と利益を回収し次の開発に繋げる ・良い機能ができても世の中に出るまで時間がかかる |
おもな指標 | ・LTV (Life Time Value):顧客生涯価値 ・MRR (Monthly Recurring Revenue): 月間の定額収益 ・Churn(解約):解約率 等 | ・売上 ・粗利 ・販売数 等 |
BtoBサブスクリプションの事例
先ほど事例紹介したアマゾンプライムやネットフリックスといった音楽や動画配信サービスは主に個人向けのBtoC(Business to Customer)サービスです。ここでは、企業向けのBtoB(Business to Business)サービスの事例を2つ紹介します。
Microsoft Office365 | ワード、エクセル、パワーポイントなど言うまでもない有名ツールですが、従来は売り切り型で高額な料金が課題となっていました。オフィス365ではサブスクリプションを導入し手軽なサービスとすることで、サポート期限による買い替えが不要になるなど利便性が高まるサービスを提供しています。 |
Adobe Creative Cloud | イラストレーターやフォトショップなど、クリエイター向けサービスを展開するのがアドビです。アドビのサービスも従来は売り切り型でしたが、サブスクリプションへ転換することで収益を伸ばしています。 |
サブスクリプションビジネスは失敗することも多い
ご存知のとおりサブスクリプションビジネスは急速に拡大しています。ですが、成功の影では失敗している事業者がたくさんあることも事実です。サブスクリプションビジネスを成功させるためには、過去の事例や経験をもとに改善し続ける必要があります。
サブスクリプションビジネスに失敗する理由の1つは、豊富な品ぞろえを求める顧客のニーズに応えられないというものです。また、ニーズに応えようとするあまり運用コストが増大し損益を圧迫する場合もあります。
サブスクリプションは、単純に売り切り型から定額サービスに変更して提供するだけではありません。顧客と継続的な関係を築き、価値の高いサービスを提供し続けることが重要です。顧客のニーズを把握しないまま、事業者目線のサービス提供を行っていると、解約リスクが高まり失敗に終わります。
また、サービスの内容だけでなく、価格設定にも注意が必要です。継続を前提とした安易な価格設定で単価を下げると、提供するサービスに対して収益が確保できず、事業継続が困難になります。顧客目線でのサービス提供と、事業を継続するための損益評価は、常に両面で把握する必要があります。
BtoBサブスクリプションを成功させるポイント
サブスクリプションビジネスは、一度の購入で売上に直結する売り切り型とは収益確保の仕組みが異なることを理解する必要があります。次はサブスクリプションビジネスを成功させるポイントを3つ説明します。
顧客満足度の高いサービスを提供する
サブスクリプションは月額課金で利用される場合が多いため、解約による顧客の減少を防きつつ、収益を上げる必要があります。そのための考え方が、「カスタマーサクセスの向上」と「アップセル」、「クロスセル」による販売戦略です。
カスタマーサクセスとは、直訳すると「顧客の成功」ですが、自社のサービスを継続して利用してもらうことで、顧客の目標達成をサポートし、顧客に成功体験を感じてもらうことをいいます。
そして、そのサービス提供により、顧客が自社のサービスに魅力を感じてもらえると、販売した商品を継続してもらいつつ単価を上げる「アップセル」、周辺サービスを提供し売上を増やす「クロスセル」といった販売戦略により売上及び収益拡大が期待できます。
KPIを設定する
サブスクリプションは月額課金である場合が多く、顧客の利用データを得ることができます。ですが、データを活用して改善を図るとしても、具体的な指標がなければ改善できません。企業の目的に合う適切なKPIを設定し定量的に評価を行いながら、改善を進めることが重要です。
また、市場動向や顧客のニーズは常に変化しています。改善プロセスもこれらの変化に対応しながら柔軟に検討し、適宜KPIの見直しも行いましょう。
補足:KPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれています。たくさんある業績評価の指標のうち、特に重要なものをKPIとして設定するものです。ここでは、LTV、MRR、Churn Rateについて説明します。
①LTV(顧客生涯価値)
サブスクリプションビジネスにおける顧客単価は、「LTV(Life Time Value)」で管理しています。LTVは顧客生涯価値という意味で、顧客から生涯を通じてもたらされる利益のことです。一般的には商品やサービスの満足度が高いほどLTVは高いとされています。
②MRR(月間経常収益)
MRR(Monthly Recurring Revenue)は、月間経常収益という意味です。MRRは、利用者が増えると増加し、利用者が減ると減少します。利益の増減分析は、商品やサービス戦略の適切な見直しにつながります。MRRの測定により、サブスクリプションビジネスでどのくらいの利益を獲得できているか、今後起こすべきアクションは何かを明確にすることが重要です。
③Churn Rate(解約率)
Churn Rate(チャーンレート)は解約率を示す指標です。月間の解約利用者数÷月初の利用者数で算出され、月初から月末までにどれくらい解約されたのかを示します。Churn Rateを毎月管理することで、顧客数の動向予測が可能となり、中長期的な計測により事業に大きなインパクトをもたらす重要な指標です。
(3)改善を継続する
サブスクリプションビジネスは継続的に安定した収益が得られる一方で、顧客が満足するサービスを常に提供し続けなければなりません。カスタマーサクセスを活用し顧客のニーズをつかみ、KPIに基づいた評価をしっかり行うことで、より良い改善を継続していきましょう。
BtoBサブスクリプションにおける経理処理のポイント
これまで見てきたとおり、サブスクリプションビジネスの特徴は、「顧客のニーズを満たす」ことと「顧客と継続的な関係を築く」ことの2つです。この2つの観点を、どのように財務会計と管理会計の両面に落とし込むかが重要です。最後に経理処理のポイントについて説明します。
財務会計への対応
財務会計への対応として重要な点は、2021年4月から適用が開始されている新収益認識基準への対応です。売り切り型のビジネスでは販売時に一括して収益を計上するが、サブスクリプションビジネスでは契約期間にわたり継続的に収益計上を行う必要があります。
例えば、商品(システム)とサービス(1年間のシステム保守)をセットで提供する場合、商品の販売・納入時に商品の売上は一括して収益を計上するが、サービスの売上については、契約期間にわたり継続的に収益計上を行います。
管理会計への対応
管理会計への対応として重要な点は、新規契約、アップ/ダウングレードの契約変更、月次での収益計上と請求及び売掛金回収業務など、個々の顧客ごとに正しく経理処理を行うことです。また、解約を防ぎつつ、新規顧客を増加させるためには、いち早く経理処理を完了し、事業の成長に役立つ管理指標(KPI)を提供することが求められます。
請求管理システムなどの統合パッケージの導入
財務会計、管理会計へ適切に対応するためには、新規契約、アップ/ダウングレードの契約変更、月次での収益計上と請求及び売掛金回収業務などを支援する請求管理システムなどの統合パッケージの導入が必須です。
その上で、各システムから提供されるデータを用いて経営管理に必要なKPIを作成し、サービス別・顧客別の利用状況分析や収益分析を行い、更なる売上及び収益向上につなげる必要があります。
各システムからのデータ提供に求められる要件としては、①システムのデータがリアルタイムもしくは高い頻度で集約され、必要なタイミングで分析できること、②顧客単位で集計され、データ容量や機能の拡張性があること、③集約したデータは、特定のID管理などにより複数システムで統合的に利用できることの3つが特に重要です。
まとめ
サブスクリプションビジネスは急速に拡大していますが、成功の影で失敗している事業者もたくさんいます。サブスクリプションビジネスを成功させるためには、過去の事例や経験を元に改善し続けることが重要です。顧客のニーズを把握しないまま、事業者目線のサービス提供を行っていると、解約リスクが高まり失敗に終わります。また、サービスの内容だけでなく、継続を前提とした安易な価格設定で単価を下げてしまうと、提供するサービスに対して収益が確保できず、事業継続が困難になります。顧客目線でのサービス提供と、事業を継続するための損益評価は、常に両面で把握することが重要です。
BtoBサブスクリプションを成功させるポイントは次の3つです。
1つめは「顧客満足度の高いサービスを提供する」ことです。サブスクリプションは月額課金で利用される場合が多いため、「カスタマーサクセスの向上」と「アップセル」、「クロスセル」による販売戦略をもとに、解約による顧客の減少を防きつつ、収益を上げる施策を考えることが重要です。
2つめは「KPIを設定する」ことです。企業の目的に合う適切なKPIを設定し定量的に評価を行い、改善を進めていくことが重要です。
最後3つめは、「改善を継続する」ことです。サブスクリプションビジネスは継続的に安定した収益が得られる一方で、顧客が満足するサービスを常に提供し続けなければなりません。カスタマーサクセスを活用し顧客のニーズをつかみ、KPIに基づいた評価をしっかり行うことで、より良い改善を継続する必要があります。
BtoBサブスクリプションにおける経理処理のポイントは次の3つです。
1つめは財務会計への対応で、重要な点は2021年4月から適用が開始されている新収益認識基準への対応です。売り切り型のビジネスでは販売時に一括して収益を計上するが、サブスクリプションビジネスでは契約期間にわたり継続的に収益計上を行う必要があります。
2つめは管理会計への対応で、重要な点は、新規契約、アップ/ダウングレードの契約変更、月次での収益計上と請求及び売掛金回収業務など、個々の顧客ごとに正しく経理処理を行う必要があることです。また、解約を防ぎつつ、新規顧客を増加させるためには、いち早く経理処理を完了し、事業の成長に役立つ管理指標(KPI)を提供することが求められます。
最後3つめは、請求管理システムなどの統合パッケージの導入です。財務会計、管理会計へ適切に対応するためには、新規契約、アップ/ダウングレードの契約変更、月次での収益計上と請求及び売掛金回収業務などを支援する請求管理システムなどの統合パッケージの導入が必須です。
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