こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
2021年4月1日以降、事業者は、不特定多数の「消費者」との取引に際して、サービス・商品の価格を全て「消費税込み」の総額表示としなければなりません。
これは一般に「総額表示義務」と呼ばれ、消費税法に基づいて実施しなければならない制度です。
消費税の総額表示義務により、消費者向けの店頭値札、広告、POP、販促物、ホームページ、オンライン販売価格等において、その価格表示を全て税込み価格に変えなければなりません。
この総額表示義務は、令和5年9月30日までの間、事業者間取引(BtoB)には適用されていませんが、一般消費者とも取引が可能で、かつ、一般消費者に向けて広告宣伝をしている場合は、総額表示義務の対象になりますので留意が必要です。
目次
消費税の総額表示義務の背景は、特別措置法の期限切れ
なぜ、2021年4月から「総額表示」が義務化されたのでしょうか?
消費税法ではもともと、2004年4月から総額表示としていました。
ですが、2014年に税率が8%へ引き上げられること(2019年度に現在の10%)になり、実務面で様々な弊害・混乱の発生が予想されたため、2013年10月に「消費税転嫁対策特別措置法」の時限立法が施行されました。
この措置法により、2021年3月末までは、いわゆる「税抜価格+消費税」の表示で良い、となりました。今回はこの時限立法が期限を迎え、本来の総額表示に戻ることになったためです。
消費税の総額表示の目的は消費者のため
消費者が商品やサービスを選択する際、事業者によって、税抜き・税込みの表示が混在していたため、実際の支払い総額ベースで混乱が見られていました。
そのため、表示価格が税込み金額であれば、比較が容易になり、消費者が金額を誤認することを防げるようになります。
消費税の総額表示とは
課税事業者が「消費者」に対して、商品の販売やサービス提供を行う場合に、広告、チラシ、値札等には消費税額(地方消費税額を含む)を含めた「税込み価格」で表示することです。
広告やホームページ等で「参考価格」としていても、消費者(不特定かつ多数の者)に対して、あらかじめ価格を表示している場合は、総額表示義務の対象になりますので留意が必要です。
一般的なBtoB企業は、消費税の総額表示義務の影響がない
消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う事業者は、価格の総額表示が義務付けられますが、事業者間取引(BtoB)では、義務がありません。
具体的には、企業間の卸売業者、製造業者が、事業者に販売するために使用する業務用カタログ、見積書、契約書、あるいは請求書等は、総額表示義務の対象に該当しません。
消費者との取引があれば、総額表示義務の対象になる可能性がある
オンライン取引が一般化し、取引の相手方が最終消費者になるのか、あるいは事業者間取引に該当するのか、の明確な判断が難しい取引が多くなりました。
例えば、事業者向けにデータ提供サービスやオンライン販売を行っている場合、これらの取引が、一般の消費者も参加でき、かつ消費者に向けて広告・販促活動もしている場合は、総額表示義務の対象となりますので留意が必要です。
BtoBで小売業者との取引は、総額表示義務の対象になる場合がある
製造業者や卸売業者等が、小売店に向けて販売する商品について、「希望小売価格」を設定している場合は、消費者に対する価格の表示ではないため、総額表示義務の対象にはなりません。
ただし、小売店が「消費者」に向けて、商品カタログ等の「希望小売価格」を提示する場合は総額表示義務の対象になります。
消費税の総額表示の例示
例えば、消費税率10%が適用される場合の記載例は以下のようになります。
ポイントは、支払総額「11,000円」が表示されていることです。
- 11,000円(支払総額のみ)
- 11,000円(税込と記載)
- 11,000円(税抜価格 10,000円と併記)
- 11,000円(うち消費税額等 1,000円と併記)
- 11,000円(うち税抜価格 10,000円、消費税額等1,000円と併記)
まとめ
消費税の総額表示義務は、一般消費者との取引価格を税込で表示する制度です。
ですが、事業者間取引(BtoB)であっても、消費者が取引に参加できる場合(BtoCの要素がある)や、消費者に価格情報を提供することが予想される場合(「メーカー希望小売価格」等)は、消費者に対して、税込み価格で表示できるようにしなければなりません。
取引先ごとに価格を総額表示にする・しないを選択することは実務面・システム面で、大きな手間になる可能性があるため、一般消費者に関わる事業があるBtoB企業も、価格の総額表示を検討する必要があるでしょう。
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