こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
企業が事業拡大を進めるにつれて、「経理のリソース不足」という課題に直面することがあります。大きな原因のひとつは、多くの業務が手作業となり、スムーズな処理が困難になっていることです。そのため、事業規模に見合った経理業務を実現するためには、「手作業の削減」が必要不可欠となります。
本記事では、リソース不足を引き起こす経理業務や、事業拡大に備える方法をご紹介します。
目次
事業拡大が引き起こす経理のリソース不足
企業が事業拡大を進めるにあたり、営業部門の強化は積極的に進めていきますが、バックオフィスである経理部門の強化は後回しにされがちです。ここでは、経理のリソースが不足する理由と、リソース不足がもたらす影響について解説します。
経理がリソース不足になる理由
企業の事業拡大が進むことは、株主や経営者、従業員にとって大事なことです。しかし、営業部門の強化など事業拡大に向けた努力は企業の成長につながりますが、事業拡大により経理部門の事務負担は増加し、リソースが不足します。
上場準備企業などの経営者・人事担当者に対して実施された経理に関する調査によると、83%の企業で経理の事務負担が増えていると回答されています。
参考:【上場前後に必要性高まる経理人材活用の実態とは】経理人材の採用、半数以上が「育成時間」に課題あり
これは、事業拡大にあわせた業務効率化が追い付いていないことや、経理部門のリソース強化が後回しにされ、事業規模に見合った環境が構築されていないことが原因です。
以下では、リソース不足によって発生するリスクについて解説します。
リソース不足で発生するリスク
経理部門のリソースが不足すると、以下のような3つのリスクが発生します。
①経営判断が困難になる
経理部門は、企業の財務状況を把握し、経営判断を支援する重要な役割を担っています。しかし、リソース不足で決算業務が遅れると、経営陣は経営判断に必要な財務情報をタイムリーに得られず、誤った判断や業績悪化を招く可能性があります。
特に、サブスクリプションビジネスのようにスピードが求められる場合は、経理部門がタイムリーな情報提供を行わなければなりません。さらに、年次決算が遅れると、税務申告の期限に遅れが生じる可能性もあります。場合によっては、延滞税の支払や青色申告の取消しにつながる可能性もあり、重大なリスクを招く可能性があります。
②ミスや不正のリスクが高くなる
経理部門のリソースが不足すると、スタッフは最低限の業務に注力せざるを得なくなり、業務上のミスや不正行為を防ぐためのチェックが疎かになります。
不正行為は、企業にとって致命的なリスクです。粉飾や横領などの不正が発覚すると、企業のイメージは大きく損なわれ、株価の下落や顧客離れ、法的問題など、企業にとって深刻な問題となります。
③経理部門の労働環境悪化
経理部門のリソース不足は、従業員に深刻な影響を与えます。月末や年度末は残業時間が増え、労働環境が悪化します。さらに、経理は専門性の高い職種であるため、経験豊富なスタッフが退職するとすぐに補充ができないことにも注意が必要です。
次の項目では、リソース不足になりがちな経理業務について解説します。
リソース不足になりがちな経理業務
リソース不足になりがちな経理業務には、どのような業務があるでしょうか。サブスクリプションビジネスも例に出しながら解説します。
請求書に関する業務
売上を計上するためには、請求書を発行する必要があります。しかし、事業規模が拡大すると請求書の数も増加し、手作業での対応ができなくなることがあります。また、請求書の印刷や封入、発送なども時間がかかるため、スムーズな業務遂行が困難になりがちです。
サブスクリプションビジネスにおいては、継続的な契約によって収益を得ているため、一般的な業種と比較して請求書の数が多くなります。また、顧客によって契約期間や請求金額が異なるため、請求書作成の際には最新の契約書と請求内容を見比べる必要があり、作業が煩雑になります。
仕訳業務
仕訳業務は会社によって手順が異なりますが、一般的には伝票の内容や精算書を参照しながら、会計ソフトに仕訳を入力することが主な業務です。しかし、事業規模が拡大すると仕訳の数が増え、経理スタッフのリソース不足が発生し、仕訳の入力遅れや仕訳ミスが発生し、業務に支障が出る可能性があります。
前受金の管理業務
商品やサービスの提供前に顧客から代金の一部または全部を受け取る場合、その金額は前受金として負債科目に計上します。サブスクリプションビジネスでは、顧客から一定期間の料金を前もって受け取ることが一般的で、前受金の計上が増える傾向にあります。
ただし、前受金の管理には注意が必要です。課金形態やプランが多岐にわたると、前受金の管理が複雑になり、前受金が多くなるほど、経理スタッフの負担が増加します。
前受金は、商品やサービスの提供前に受け取った手付金として扱われ、売上は商品やサービスを実際に提供した時点で計上されます。具体的には、以下のような仕訳で前受金を計上します。
仕訳例1
来月からA社に月額5,000円のサブスクリプションサービスを6ヶ月間提供。代金は契約時点で全額受け取り。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 備考 |
現金預金 | 30,000 | 前受金 | 10,000 | 5,000円×6ヶ月 |
仕訳例1は、これからサブスクリプションサービスが開始されるにあたり前もって代金を受け取った状況のため、まだ売上を計上することはできません。売上は次の仕訳例2のとおり、サービスの提供が完了した時点で計上します。
仕訳例2
A社と6ヶ月契約しているサブスクリプションサービスのうち、1ヶ月分の提供が完了。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 備考 |
前受金 | 5,000 | 売上 | 5,000 | 5,000円×1ヶ月 |
仕訳例2では、1ヶ月分のサービス提供が完了したため、1ヶ月分5,000円の売上を計上します。このように、前受金は月数が経過するごとに取り崩し、月次で売上を計上します。
この項目の最初に説明したとおり、サブスクリプションビジネスでは顧客ごとにプランや課金の状況が異なるため、契約を個別確認の上、前受金の取崩しを行います。さらに次の項目で解説する入金消込業務についても注意が必要です。サブスクリプションビジネスの事業拡大に伴い、これらの作業は複雑化してきます。
経理部門では、業務の効率化と自動化を進めることで、経理部門のリソース不足を解消し、事業の成長をサポートすることが求められます。
入金消込業務
入金消込業務とは、顧客からの支払いと請求書情報を照らし合わせて、前受金の残高を取り崩す作業です。
一般的には、入金記録と請求情報を確認し、内容が一致していれば前受金から売上に振り替える仕訳を行います。しかし、サブスクリプションビジネスでは1つの入金記録が1つの請求書に紐づいているわけではなく、複数契約の代金がまとめて振り込まれることがあります。入金額と請求額が一致しない場合は、契約内容を確認し、原因究明が必要です。
この入金消込業務はシンプルな作業に見えますが、手作業で行わなければならないため、事業規模が拡大するにつれて費やす時間も増加しています。そのため、効率的に処理するためには、経理スタッフの増加や、自動化するためのシステム導入が必要です。
また、入金消込業務が完了しなければ、月末の残高確定ができないため月次決算に遅れが生じます。入金消込業務の適切な管理は、企業の財務管理にとって重要な要素であることを忘れてはいけません。
月次決算業務
経理部門のリソース不足による月次決算の遅れは、業務が滞るだけでなく、経営判断の遅れに直結します。具体的には、集計に時間がかかること、消込・請求業務の遅れやミス、営業部門からの業績報告遅れなどによるものです。これらが経理業務の遅れにつながり、迅速な経営判断を妨げています。経理部門には十分なリソースが必要で、増員や外部委託などの対策により、スピード感のある経営判断を進めることが重要です。
「手作業の削減」で事業拡大に備えよう
前項で紹介した経理業務には手作業が多く含まれており、リソース不足になりやすいという共通点があります。事業拡大に備えるためには、手作業の削減や自動化が必要不可欠です。
手作業の削減は、エクセル関数やマクロによる自動化で対応しているケースが多いかもしれません。しかし、扱うデータ量が増えるとファイルが重くなり操作性が悪くなることや、意図せずデータが消失するなどのリスクが発生します。さらに、作業ファイルに担当者にしかわからない関数やマクロを実装することで、他の担当者が理解できなくなる属人化が発生するリスクもあります。
そこで、自動化システムの導入をオススメします。自動化システムを導入し自動化することで、業務の効率化が実現できます。
次は、システムを利用することで得られるメリットについて紹介します。
システム導入で効率アップ
システムを導入することで、これまで手作業で行っていた多くの経理業務を自動化し、業務効率化が実現できます。システムによって実現できる機能は異なりますが、ここではサブスクリプションビジネスにおいて実現できる機能について解説します。
請求書作成機能
1つめは請求書作成機能です。定期的に請求書を発行する機能がある場合、事前にシステムにデータを登録しておくことで、自動的に請求書が発行できます。
サブスクリプションビジネスの場合は、顧客は好きなタイミングでプランの変更や解約を自由に行えるため、顧客により請求する金額や期間が異なります。手作業の場合、請求書を発行するたびに最新の契約内容確認が必要です。
しかしながら、システムを使用することで顧客ごとの請求スケジュールが自動的に作成され、手作業で契約内容を確認する手間が省けます。さらに、契約内容が変更された場合もアラート機能で自動的に通知され、請求額との差分を表示する便利な機能が実装されているものもあり、契約書の確認や手動で請求額の差分を補正する必要もありません。
売上計上・前受金管理機能
サブスクリプションビジネスの場合、前受金を取り崩して売上を計上することが多いため、手作業で管理すると時間がかかります。しかし、請求書作成から前受金管理までを一元化できるシステムを使用することで、品目ごとに売上の計上月や期間を設定できるため、前受金の残高集計を自動化できます。
これにより、前受金残高をエクセルで別途管理する必要がなくなります。
入金消込機能
サブスクリプションビジネスにおいて入金消込作業を手作業で行うと、多くの時間と手間がかかる大変な作業になります。しかし、顧客情報の管理と、銀行の入金データのインポートが可能なシステムを使用すると、これまで目視で行っていた入金消込を自動化できます。
定期的に同額の請求を行う契約の場合、過去の振込名義と金額を突合して消し込みできるため、件数が多くなっても簡単に対応できます。また、複数の請求書を合計して入金された場合も、顧客ごとの請求合計額を計算し、自動で消し込みできるため、悩む時間の削減が可能です。
このシステムを導入すると手間と時間の削減だけでなく、入金ミスも防げます。消し込みの誤りにより顧客に迷惑をかけないことで、企業の信頼性向上にもつながります。
月次決算
システムの活用は、月次決算の早期化にも大きく貢献します。サブスクリプションビジネスのKPI(重要業績評価指標)として重要なMRR(月次経常収益)は、事業の成長率をはかる指標です。
しかし、手作業での集計には時間がかかり、月次決算が遅れることがあります。こうした問題の解決には、システムの利用がおすすめです。システムを使えば、MRRをリアルタイムに把握でき迅速な対応が可能になり、今後の見通しや対策をより早く立てることができます。
まとめ
本記事では、事業拡大に伴う経理部門のリソース不足の課題について解説しました。経理業務には多くの手作業が含まれるため、自動化が進めば業務負担の大幅な軽減につながるでしょう。
しかし、エクセルによる自動化では膨大なデータ量を扱うリスクや担当者しか理解できない業務のブラックボックス化などの課題があります。こうした点において、経理に特化したシステムの利用は有効な解決策の1つです。請求書発行や入金消込の大幅な自動化や、月次決算の早期化など、経理業務の効率化を実現する大きなメリットになります。
経理部門はバックオフィスという位置づけであり、実際に収益を生み出す営業部門と比較して、リソースの強化が後回しになりがちです。しかし、正確な財務諸表の作成は企業の信頼性に直結し、迅速で正しい数値の集計は、意思決定の早期化につながります。事業拡大に伴い経理部門のリソース不足に悩む企業にとって、システム導入は有効な手段となるでしょう。
請求管理のことなら、私たちにご相談ください。
私たちは、請求書の郵送やメール送信ができる請求管理クラウド「クロジカ請求管理」を提供しています。 豊富な知見を活かし、お客様の業務フローに合ったシステムの連携方法をご提案します。 請求業務でお悩みの企業の方は、気軽にご相談ください。
請求書発行業務を80%削減する方法とは?
無料ではじめる請求管理
クロジカガイドブック
- 請求業務の課題と解決方法
- 理想的な請求業務フロー
- クロジカ請求管理の主な機能
- 請求業務を80%削減した導入事例
- 導入までの流れ