製造業の資金繰りはなぜ難しい?改善方法や管理のコツを解説

製造業の資金繰りはなぜ難しい?改善方法や管理のコツを解説

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

資金繰りとは、企業の血液ともいえる「資金」の収支を管理し、流れをコントールすることを指します。どんなに大きい利益を出していても、この資金繰りのコントロールができていないと、企業が倒産してしまうことすらあるのです。だからこそ、経営者や経理担当者は月次の損益だけではなく、自社の資金繰りに注視していく必要があります。

どの企業にとっても重要な意味を持つ資金繰りですが、製造業は業種の特性上、その重みがさらに増すのをご存じでしょうか。

今回は、製造業の経理における資金繰りとは何か、その重要性を解説します。

製造業の資金繰りはなぜ難しい?

どの企業にとっても重要な意味をもつ資金繰りですが、なぜ製造業にとってことさら資金繰りはより重要性を増すのでしょうか。

それは、製造業の業種の特性上、他業種よりも資金繰りのコントロールを難しくさせる要因が多いからです。

資金の収支をコントロールするのが難しいからこそ、しっかり把握し管理していかないとすぐに予測不能になり、黒字倒産してしまう可能性さえ高まります。

それでは、いったいなにが製造業の資金繰りコントロールを難しくさせているのか、その要因を詳しくみていきましょう。

売掛金の回収サイトが長い

現金商売であれば、ものと引き換えに現金、すなわち資金が入ってきます。当日販売した分が当日資金化されるため、資金の収支が一目瞭然です。

しかし多くの製造業では、企業間で取引条件の契約を結び、掛け取引をするのが一般的です。

例えば、「月末締め翌月末払い」の場合、12月1日~31日までに売上げた製品代金は1月31日に支払われることになります。

12月1日に売上げた製品代金は、その約2カ月後である1月31日にならないと現金化されないのです。

また、製品代金の支払いが現金振込ではなく手形や電子債権などの場合は、資金化されるまでにさらに期間がかかります。(割引する場合を除く)

こういった回収サイトが長い取引が主体であることから、細かく管理して入金予定を把握していないと、資金がいつどれだけ入ってくるかがわからくなってしまうのです。

資金繰りをしっかりコントロールしていないと、「支払期限が今日の仕入れ代金1千万円が払えない、明日には1億円の売上入金があるのに・・・」ということにもなりかねません。

損益上は黒字なのに、手元に資金が不足し買掛金や給与、銀行への弁済金が支払えない状況、資金繰りが把握できていないとこうしたことは実際に起きてしまうのです。

原価管理が難しい

資金繰りのポイントは製造業の大きな特徴である「原価管理」をすることにあります。しかし、この原価管理の難しさから適正な原価計算ができていないことで、資金繰りを圧迫しているケースが往々にあります。

製品ごとの原価管理ができていないことで、適正な仕入れができずに過剰発注をしてしまっている、原価と販売管理費の区分が違っていて原価率が正しく計算できずに、適正なコスト削減ができていないなどの要因が生まれてしまいます。

結果、資金繰りを圧迫する原因になるのです。

先行費用が高い

製造業の資金繰りを難しくさせるひとつの要因として、「先行費用が高い」ことが挙げられます。先行費用には、設備投資も含まれます。

製品を受注するためには、製造するための設備、人件費で体制を整える必要があります。

この設備、人件費は他の業種に比べて大きくなる傾向にあります。

また、受注が増えれば増えるほど、材料などの仕入れや外注費も大きくなり、多額の先行費用が必要となります。

受注量が多く製造納期のかかるものほど、さらに資金化までの先行費用は大きく膨らんでいきます。売上入金よりも先に支払いが発生するのは、他の業種でも基本の流れですが、製造業は売上代金の回収までの期間が長いこと、先行費用がより大きくなりがちであることが特徴です。

大口の受注をするなど、企業としてチャンスの局面なのに、製造業には資金繰り悪化で倒産する危険性も含んでしまうのです。これが製造業の資金繰りを難しくさせています。

このような事態を避けるには、事前に資金繰りをしっかり把握し、必要な局面で資金が足りなくなることのないように、事前に銀行から借入するか、仕入先の買掛金の調整、取引先への売掛金の調整などの対策が必要になります。

海外からも影響を受けやすい

多くの製造業の競争相手は国内にとどまらず、海外企業もライバルです。日本の「ものづくり」が絶大な信頼と人気を誇っていた時代は勢いを失い、いまや海外企業も高い技術力と安いコストで対抗してくるようになりました。

また、競争相手だけではなく、製品を買ってくれる取引先も国内だけにとどまりません。そのため、国内の景気だけではなく国際的な景気の波に大きく影響されるのが製造業なのです。

仕事そのものを海外企業に奪われやすい過酷な状況、海外の景気の波もダイレクトに受けやすい状況、この海外からの両面の影響が製造業の資金繰りをさらに難しくさせているのです。

製造業の資金繰りを改善するには?

それでは、製造業の資金繰りを改善するには具体的に何をしていけばよいのでしょうか。ひとつずつみていきましょう。

固定費を見直す

資金繰りを改善するには、まず支出の見直しをすることです。支出には売上原価の一部や販売管理費などの固定費と、製造量や売上に比例して発生する、材料仕入や外注費などの変動費があります。

変動費は外的要因で増減するので、簡単に削減しにくいものがほとんどです。しかし、固定費は自社内の需要と供給のバランスを常に見直し、適正な水準にすることですぐにその効果を得ることができます。

人件費など、過剰に人員配置をしていないかバランスを確認してみましょう。

また、使わなくなった機械がそのまま現場の片隅に放置されていることも少なくありません。管理側はその機械の需要がなくなったことを知らず、毎月リース料を支払っている、かたや現場では、その機械に毎月のリース料がかかっていることは露知らず、ただ邪魔にならないところによけておいてある…多くの製造業で実際にある光景です。

賃借料や販管費などの固定費用、及び固定資産を一度見直すだけでも大きな効果を実感できるでしょう。

原価計算を見直す

原価計算とは「製品ひとつを製造するためにいくらかかったのか」を計算することです。

しかし、材料費や労務費、経費を適正にある一つの製品に割り振る集計をしていくことは難しく、ざっくりとした原価管理をしてしまっている企業も目立ちます。

自社で製造している製品がたくさんあるのにも関わらず、原価計算を製品ごとではなくただの差引で一括りにしてしまうと、製品ごとの原価率もわからない上に、過剰在庫の問題を引き起こしてしまいます。

原価計算の内訳を見直し、より適正な計算に修正できる点はないか点検してみましょう。

適正な原価計算は、適正な在庫管理や、製造工程の効率化につながり、ひいては資金繰りの改善につながります。

設備投資は慎重に行う

ものづくりには、製造設備への投資が欠かせません。新製品の製造や、生産効率を上げるためにも設備への投資は必要です。また、保守費用や設備の買換え費用も発生します。

設備投資の多額の費用を回収できるだけの売上計画を見越し、先行費用として銀行からの借入をすることもあるでしょう。

これには、上述したすべての要素を織り込んだ資金繰り計画が必要になります。

実際にはこのような計画性を持っておらず、当初の契約を惰性で繰り返した不要なリース料の発生や、修繕費の負担によって資金繰りを悪化させているケースも見受けられます。

「まだ使えるから」と古い機械を直しながら使うことで、生産効率を低下させ、コストを垂れ流しにしていることもあるのです。

設備の投資は慎重に、導入後も常に見直しをして軌道修正をかけていくことで、資金繰りの改善につながっていくのです。

在庫管理の徹底

「必要なときに必要なだけ購入する」物品や原材料を購入する場合、大量に買えば単価が下がるからといって、安易に必要以上のものを買うべきではありません。
~中略~
大量に買って在庫が発生するとなれば、そのための倉庫が要りますし、在庫金利もかかってきます。その上、決算ごとに棚卸をしなければならず、使う見込みのなくなったものについては廃棄処分も行わなければなりません。結果として、最初は安く買ったように思うけれども、後々目に見えないロスが出てくるのです。

稲盛和夫氏「京セラフィロソフィ」より

これは経営の神様とも呼ばれる京セラの創始者、稲森和夫氏の言葉です。

在庫管理の徹底とは、倉庫の在庫を徹底的に管理することはもちろんこと、材料を仕入れるときから始まっているのです。

100個の製品の受注を請けたら、その都度100個分だけの材料を購入する意識がとても大切です。

そうはいっても、「この製品はこのあとにまだ受注がくる可能性が高い」「100個分より150個分の材料を購入した方が単価あたり安く仕入れることができる」「製造の過程で不良を出す恐れもある」などといった理由で、必要量より多く仕入れるケースがほとんどです。

受注が来なかったらその在庫はただの不用品、しかも在庫にしておくためのコストを生み出し続けて結果的に資金繰りを圧迫してしまうのです。

多めに投入することで、現場にも「多少は失敗しても大丈夫」という意識が生まれてしまい、製造ロスを発生しやすくさせてしまうデメリットもあります。

まずは材料仕入の時点から、「必要な分だけを購入する」ことを徹底することで、その後の製造量をコントロールすることにもつながります。

原材料や製品の在庫を過剰に持つことがなければ、在庫コストを最小限に保ち、資金繰りの改善につながるのです。

製造業の資金繰り管理のコツは?

自社の資金状況をしっかり把握する

製造業は、先行投資が多く、受注してから納品、納品してから売上入金にいたるまでの期間が非常に長いことが特徴です。

製品の製造納期や、取引先との取引条件にもよりますが、一般的には手元資金として3ヶ月分程度の運転資金が最低でも必要になるでしょう。

まずは自社の1ヶ月の運転資金を知り、自社の資金がどう動いているかをしっかりと把握しましょう。おすすめは、日繰り表を作ってみることです。

現金・普通預金で実際に払った金額を1ヶ月間記録してみましょう。給与や外注費、仕入れの買掛金支払、光熱費や月末の社会保険料などを細かく日ごとに支出を記録していきます。そうすることで、給与支払前や月末の時点でどれだけの残高があれば資金ショートしないかを確認することができます。半年くらい続けて作成し、予定納税や固定資産税の支払なども入れていくと、より資金のコントールをしやすい材料になります。

口座ごとにつけることで、口座ごとの最低残高を把握することもできます。どこかで資金ショートしそうになっている局面はないでしょうか。企業全体の残高はあったのに、弁済用の口座に入金し忘れていたなどのリスクも減らすことができます。

月次・年次・中長期の3つの視点をもつ

3つの視点で資金繰りを管理する

製造業の資金繰りの管理には、月次・年次・中長期の3つの視点がとても重要です。

上述したように、1ヶ月の資金の流れには特に支出において一定の流れが繰り返されます。家賃・人件費・買掛金・光熱費など、1ヶ月ごとに1度の決まった支払いがあるからです。この月の流れの中で、資金ショートが起きないように日々管理していくことが重要です。

そして、1年分の資金繰りを常に予測管理していくこともとても大切です。特に、実際の資金管理をしている現場の経理責任者の重要な任務といえます。

過去の実績などをもとに支払いの予定を入れ込み、今後の予算表や売上予測などをもとに月々の売上入金予測を入れていきます。売掛の入金サイトは取引先によっても違うため、この売上入金予測は年次の資金繰り作成の難しいところかもしれません。

エクセルで作成する場合は、便宜的に「4月の売上の入金は6月」などと決めて年間予測をたててみましょう。過去の売上と実際の売上入金からだいたいの予測をたててみてもいいでしょう。

中長期的な視点の資金繰り表も、企業の経営にとっては非常に重要です。今後の経営方針や経営計画などをできる限り経営陣からヒアリングし、3年もしくは5年の資金繰り表に落とし込んでいきます。

企業規模、売上目標、設備投資計画を実際の数字にしていくことで、3年後の自社の1か月の必要資金はいくらなのか、どのタイミングで借入が必要になってくるのかを確認することができます。

予実管理を行う

製造業においては予算作成が必要不可欠です。そしてさらに重要なのが、予算表と実績表との比較(予実管理)です。

たてた予算表に対し、実際はどう動いていったのかを比較検討し、その差異の原因を追究することは、製品製造の作業効率の改善にもつながるのです。

差異の理由には様々な要因が複雑に絡まり合っていることもあり、追及は手間のかかる作業ですが、結果的に生産性や品質の向上、コスト削減につながって資金繰りも改善されていきます。

まとめ

  • 資金繰りはどの企業にとっても重要だが、製造業はその特性上、他業種よりも資金繰りに注視する必要がある
  • 製造業は売上回収サイトが長い、先行費用が大きくなりがちであるため、資金繰りがひっ迫する状況に陥りやすい特徴がある
  • 製造業の資金繰りには原価管理がポイントになるが、その難しさから適正な原価化管理ができずに資金繰りを圧迫しているケースもある
  • 製造業の資金繰りを改善するには「固定費」「原価計算」「設備投資」「在庫管理」を見直すのが重要である
  • 製造業の資金繰り管理には、まず自社の資金状況を把握し自社の1か月分の運転資金を知ることが大切である
  • 資金繰り管理には、月・年・中長期の予測管理、その後の実績表との比較と原因追及が重要である

原価計算・在庫管理・設備投資に工程や費用の見直しにやることが多すぎる!と感じた方は、まずは今までの資金繰りの実績表を作ってみましょう。

資金の流れの特徴や、自社にとっての改善の足掛かりがきっとみえてくるはずですよ。

注目が集まりがちなのが損益、資金繰りには経営者ですら「儲かっているから大丈夫」と見向きもしない傾向があります。

資金繰りを改善することは企業の存続だけではなく、企業の拡大にも大きな力となります。ぜひ、自社の資金繰りをいまいちど見直してみてくださいね。

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