製造業の帳票管理が業務を圧迫!種類と流れをおさらいして効率的な管理を実現しよう

製造業の帳票管理が業務を圧迫!種類と流れをおさらいして効率的な管理を実現しよう

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。改正により電子取引は電子データ保存が義務化になり、対応に追われた担当者も多かったことでしょう。

しかし実際に対応できる企業が少なかったためか、この義務化は延長されました。2年間の猶予期間が認められることになったのです。

いずれにしても、猶予期間が終了する2024年1月からは、電子保存できる社内体制を整える必要があります。このことからも、今後ますます帳票書類の電子化は確実に進んでいくでしょう。

この流れの中でも現在多くの製造業においては、ハードウェア販売時に必要な納品書や注文請書などをエクセルで作成しており、手間になっているケースが見受けられます。エクセルでの作成は自由度も高く、導入コストの面でも非常に優秀です。しかし、共同編集や一元管理の面で課題を抱えているのが現状です。

この記事では、製造業における帳票のプロセス管理とその課題を解説します。自社の帳票管理を把握し、見直しをかけることで今後の電子化への対応にも役立つことでしょう。

帳票の種類とその意味や流れとは?

製品を受注・生産・販売する企業活動の中で、発行する帳票にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは帳票の種類やその意味を、発行する流れの順に解説していきます。

全ての帳票を必ず発行する義務があるわけではなく、また帳票の呼び方も企業によって様々です。自社の帳票と照らし合わせながら確認していきましょう。

帳票の種類と発行の流れ

見積書

製品購入の問い合わせをしてきた取引先に、提出する書類です。販売形態によっては発行しないケースもありますが、客先の注文に合わせて設計生産する製品や、販売量がまとまっている場合、材質などの理由でその都度の販売をしている場合などは見積書を発行します。

見積書は取引先にとって取引条件を検討し、発注するかどうかの判断をするための重要な書類です。

特に決まったフォーマットはありませんが、製品摘要・単価・数量・単位・小計などの最低項目に加え、見積書の有効期限などが記載されます。

請書(注文請書)

見積書を提出した後に取引先から注文書が来た時点で、請書(注文請書)を発行します。

請書(うけしょ)とも注文請書(ちゅうもんうけしょ)とも呼ばれますが、どちらも同じ意味です。また他にも発注請書・同意書・注文内容確認書などと表記されることもあります。

請書は取引先から発行された注文書(または発注書)の対にあたる書類で、「(取引先からの)発注内容の求める仕事に対し、確かに請け負います」という意味をもちます。

「取引先からの注文を確かに請け負います」という意味のこの書類を発行したタイミングが、法的に取引の契約が成立したと捉えられます。

請書には、発行日・発注者名・受注者名・注文内容・支払条件などが記載されます。

請書は印紙税の課税文書に該当しますので、紙面で発行する場合は受注金額に応じた印紙の貼付が必要になるので注意しましょう。

出荷指示書

受注してから納品するまでを円滑に行うため、自社内のワークフローに使用する書類です。

製品名・数量・納期・取引先名・納品先などの必要情報が記載されます。企業のワークフローによって使われ方は様々です。

例えば、受注後、受注内容に基づいて営業が出荷指示書を発行し、営業→購買→製造→検査→出荷という順番で、製品と一緒に回っていくなどといった具合です。

この書類には、受注内容を確実に各部署で情報共有することで、ミスが少なく効率的になるメリットがあります。

納品書・納品書控

取引先への製品の納品が完了した時点で、発行する書類です。「この納品をもって依頼された仕事が完了した」ことを意味します。

納品書控は、納品書の複写です。製品の納品時に、納品書と納品書控を一緒に取引先に渡します。取引先の受入担当者は、納品書と製品を突合せて確認をしたうえで、納品書控に受取りのサインをします。

納品書には、納品日・納品番号・注文番号・得意先名・製品摘要・数量・単位・単価・金額などが記載されます。

受領書

受領書は「納品した製品を取引先が受け取った」ことを示す書類です。

宅配便を受け取った際に、「ここにサインをお願いします。」と言われますが、この紙が受領書です。納品書控とほぼ同じ意味にあたりますが、発行元が違うことに注意しましょう。受領書は発注者が納品側に発行するのに対し、納品書控は納品側が自社の控えとして発行する書類です。

発行元は発注者ですが、納品書・納品書控・受領書の3枚を納品側が同時に発行するケースも一般的です。この場合は、納品書控は自社にとりおき、納品書・受領書・製品の3点を取引先に納品し、受領書にサインをもらって返送してもらいます。

また、取引先によっては注文書と一緒に受領書が発行されるケースもあります。この場合は、製品納品時に取引先発行の受領書を同梱することになります。

自社で使っている受領書が、納品書などと同時に発行するタイプの書式である場合、自社の受領書は使用しないか、取引先に自社の受領書にもサインをもらうなどの工夫が必要です。

検収書

納品された側、つまり取引先が製品受取り後に、製品の不具合や数量などのチェックをし「確かに注文した通りの内容に問題のない製品を受け入れました」という意味で発行する書類です。

納品書控や受領書は、注文した通りの数量・金額の製品を、取引先が受け取ったことを示す書類であるのに対し、検収書は「納品された製品の品質を点検・確認して問題がなかった」ことを示す書類です。そのため、検収書が発行された後での製品に対してのクレームは、原則として不可能になります。

検収書も決まったフォーマットはありませんが、検収日・発行元名・製品摘要・数量・単価・金額などの基本情報に加え、検収した担当者の氏名・押印欄があることが一般的です。

本来は取引先が発行するものですが、発行は義務ではありません。そのため、発行してもらえるかどうかは取引先の業務フローによります。

納品側で検収書が欲しい場合は、自社宛てに検収書を発行して製品に同梱し、取引先が製品を確認・受け入れた時点で押印・返送してもらうように依頼するとよいでしょう。

請求書

取引先に製品を納品し仕事が完了したのちに、支払いを請求するための書類です。

他の書式と同様に決められたフォーマットはありませんが、請求元と請求先の情報・発行日・取引内容・請求金額については必ず記載されています。これらの情報に加え、請求書番号・支払方法・支払期日などが併せて記載されていることが多いでしょう。

請求書を発行するタイミングは、先方との取引条件の取り決めがあればそれに従います。特に取引条件を結んでいなければ、事前に取引先に確認をとるとよいでしょう。取り決めのない場合、製品の納品時に請求書を同梱したり、別途メールや郵送などで送るのが一般的です。

“20日締め末日請求書発行”などといった取り決めのある場合は、20日を過ぎてから先月の21日から当月20日までに納品した分を集計し、当月末日に請求書を発行します。

帳票は省略可能なの?

見積書・請書・出荷指示書・納品書・検収書・受領書・請求書などの各帳票について、実はすべて法的な発行義務はありません。

省略可能か、という観点でいえば「全て省略しても法律上の問題はない」という結論になります。ただし、実務上には大きな問題があります。

出荷指示書や請書、検収書は省略しても、間違っても納品書や請求書は省略しないようにしましょう。

自社の業務フローにおいてはもちろんのこと、納品書は取引先の受け入れ担当者が製品の情報を知るのにとても重要な書類です。請求書がなければ、先方の経理担当者が何をもって支払いをすればいいのか困ってしまうでしょう。

発行義務はなくても、取引を安心して円滑に進めるために必要な帳票ばかりです。万が一トラブルが発生した際にも、取引内容の記録にもなりますのでしっかりと作成しておきたいものです。

製造業における帳票プロセスの課題とは?

見積から請求書までに必要な帳票を、エクセルで作成する企業が多い理由は明白です。

エクセルの入力作業には、高度なマクロ知識などは必要ありません。比較的に誰でも入力することができます。

また日本企業のパソコンには、一般的にエクセルを含むOfficeが標準搭載されているため、どの事業所のどのパソコンでも同じファイルを開くことができます。データを共有することに長けているわけです。導入に際し、新たなシステムや専門の人材を揃える必要がなく、いろいろな面で気軽に始めることができるからです。

また、パスワードや閲覧権限の設定をすることで安全性も担保できます。マクロ機能を使うことで単なる帳票としてだけでなく、よりシステマチックに運用することも可能になります。これらも帳票作成にエクセルが使われる理由のひとつです。

しかしこれらのメリットの反面で、共同作業の困難さやヒューマンエラーが起きやすいなどのデメリットが大きいことも目立ちます。

見積から請求書までのワークフローの中で、このデメリットが日々現場を立ち止まらせ、自社の成長の妨げになっているかもしれません。

帳票プロセスの課題を詳しく見ていきましょう。

エクセル帳票の精度には常に検証が必要

エクセルでの帳票作成は自由度が高い分、どんなフォーマットでも作ることができます。これはエクセルを使うメリットなのですが、不慣れな担当者や入力作業者が関わることで、大きなデメリットに変わってしまいます。

そもそも、作成した帳票のレイアウトは、必要な項目が設定されているでしょうか。金額欄や小計欄、消費税額のセルの計算式は合っているでしょうか。印字後に手書きでサインする枠がある場合、それを考慮した枠の大きさになっているでしょうか。

帳票を使っていくうちに、税率が改正されたりレイアウトの修正が必要になったりすることもあるでしょう。また、不慣れな入力作業者が誤って計算式を消してしまい、ところどころ手入力をしてしまうケースも多くあります。そのまま取引先に渡り、のちにクレームにつながるケースも実際にあるのです。

エクセルはとても便利ですが、帳票に問題がないかの検証作業が常に必要です。

導入コストのハードルの低さは大きなメリットです。しかし、実は相当のランニングコストがかかってはいないでしょうか。表面に見えにくい人件費まで考えると、そこまでコストパフォーマンスが高くないのが実情なのです。

エクセルは共同作業に弱い

エクセルは簡単にメールで送ることができ、どのパソコンでも同じように開き作業ができることから、情報の共有には非常に便利なツールです。そして社内の共有サーバーに置くことで、複数人で同じファイルを共有することができます。

しかし、複数人で同時に作業することはできません。誰かがファイルを編集している時に他の担当者が開こうとすると、編集はできずに閲覧することしかできません。

「今日出荷する納品書を訂正して出力したいのに、誰かが開いていて編集できない!もう出荷まで時間がない!」そんな場合は誰が開いているかを突き止めて、ファイルを閉じてもらう必要があります。

うっかり開きっぱなしで出かけてしまったら、他の担当者の緊急の作業ができずに大騒ぎになっていた、というケースは珍しくないのです。

共有には便利ですが、マスターファイルとして複数人で運用していくことにはあまり向いていないと言えます。

一元管理が難しい

見積から請求まで、ひとつひとつの取引には多くの情報が紐づいています。

  • 発注元は?相手先担当者は?
  • 納期は?数量や単価は?納品先は?
  • 今現在の仕掛状況は?(受注日・納品状況など)
  • 請求方法は?(請求先・請求方法など)
  • 支払方法は?(振込期日・手数料負担についてなど)

エクセルは複数人での同時運用に向かないため、見積から請求書発行まで、営業や製造、経理といった各部門でそれぞれのエクセルファイルで運用する方法が一般的です。

しかしこの方法は、各部門でそれぞれ独立して使用されるため、一元管理ができないのが大きなデメリットです。

納期・納品先・製品仕様・数量・単価など、受注後に様々な変更が発生した場合、部門間での情報共有がうまくいかなかったことで、取引先に迷惑をかける次のようなケースもあるでしょう。

例)途中で仕様変更があり単価が変更になる→営業部門では見積を再度発行、取引先からもOKがでる→営業部門のエクセルファイルは変更したが、他の部門には連絡がいかず→経理はそのまま請求書を発行→金額相違により取引先に迷惑をかけ信頼関係がゆらぐ、自社も調査の手間がかかる

マクロをしっかり組んでいくことで、これらの情報を全て盛り込みながら運用していくことは決して不可能ではありません。しかし、この方法は専門的な知識と、さらなるシステムの運用検証を日々繰り返していく必要があります。一般的な方法とはいえないでしょう。

まとめ

  • 見積書・請書・納品書・検収書・受領書・請求書など、製品の見積から請求までに発行する帳票は多い
  • 見積書などこれらの帳票は法的な発行義務はないが、安心で円滑な取引の為に発行が必要な書類ばかりである
  • 現在の製造業において帳票作成はエクセルが多く使われている
  • エクセルは導入ハードルが低いメリットはあるものの、運用コストは意外にかかっている
  • エクセルでの帳票運用は帳票の計算式が合っているかなどの検証が常に必要
  • エクセルは情報共有には長けているが、情報の一元管理には不向きである

今回は、製造業の帳票プロセスとその課題について解説しました。

普段身近にある便利なエクセルですが、その気安さから帳票システムに代用することには見えづらいリスクが潜んでいます。

せっかくのエクセルが、検証チェックやエラー修正に膨大な手間のかかる代物にならないよう、適材適所で使っていきたいですね。

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