こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
経常利益は、会社が本来持っている稼ぐ力を分かりやすく教えてくれます。損益計算書をのぞいてみると営業利益や経常利益、純利益など様々な利益が登場します。
この記事では経常利益を中心に、経常利益の内容や他の利益との違い、経常利益の計算方法についてみていきましょう。
目次
経常利益とは?
経常利益とは、会社が通常行っている業務の中で得た利益のことです。
会社は商品やサービスを生産、提供し、売上を立てていきます。しかし、売上がすべて会社の儲けとなるわけではありません。売上から、その売上を生むために必要になった仕入れ(売上原価)や従業員の給料(人件費)、水道光熱費、通信費、地代家賃、広告宣伝費などの諸経費(販管費)を差し引いたものが会社の儲けとなる…と思うかもしれませんが、会社の儲けはそれだけでは計算できません。
金融機関からの借入があれば支払利息も発生しますし、為替が変動すると為替差損益も発生します。自然災害に見舞われた場合には大きな損失がでるかもしれませんし、会社が所有している工場などの土地を売却すれば利益もでるでしょう。
このような「本業以外」から発生する損益も含めて、会社の儲けは計算されます。そして、その計算過程で、イレギュラーな損益を含まずに計算されるのが経常利益です。
経常利益の「経常(常に変わらず一定の状態)」という言葉の示す通り、本業以外からの利益や損失でも、経常的に発生するものは経常利益に含まれます。小売業をしている会社が、本業以外で家賃収入を得ている場合はその利益も経常利益に含まれます。
一方で、経常利益は会社が毎年どのくらい稼げるかを示す指標なので、普段は発生しないような利益や損失は含まれません。例えば自然災害による損失は含まれませんし、工場を売却して得た利益も含まれません。それらは普段は発生しない損益だからです。
このように、経常利益は本業から得た利益に毎年のように発生する本業以外の損益を加味した利益であり、「会社本来の稼ぐ力」をあらわす利益といえるのです。
損益計算書に登場する5つの利益
ここで、経常利益をより理解するために損益計算書に出てくる5つの利益について整理しましょう。
会社の1年間の利益を計算する計算書類を損益計算書といいます。利益は売上(収益)から様々な費用(損失)を差し引いて計算されます。損益計算書では5段階にわけて利益を計算しています。
① 売上総利益(売上高から売上原価を差し引いたもの。粗利益ともいう)
② 営業利益(売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いたもの)
③ 経常利益(営業利益に営業外の収益を加え、営業外の費用を差し引いたもの)
④ 税引前当期純利益(経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いたもの)
⑤ 当期純利益(税引前当期純利益から法人税等を差し引いたもの)
売上高 |
↓ - 売上原価
売上総利益(粗利益) |
↓ - 販売費及び一般管理費(販管費)
営業利益 |
↓ + 営業外収益 - 営業外費用
経常利益 |
↓ + 特別利益 - 特別損失
税引前当期純利益 |
↓ - 法人税等
当期純利益 |
それぞれの利益は名称も似ているため、特に経理事務を始めたばかりの方には複雑に感じられるかもしれません。しかし一度理解すればそれほど難しいものではありません。
今回はこれらの計算過程の中から、経常利益に注目して、その性質や他の利益との違いについてみていきましょう。
経常利益と営業利益、何が違う?
営業利益 → 本業から得た利益 経常利益 → 本業から得た利益 ± 毎年のように発生する本業以外の損益 |
営業利益とは?
営業利益とは、本業の商品やサービスから得た利益のことをいいます。営業利益は、売上高から売上原価を差し引いた「売上総利益(粗利益)」から、さらに「販売費および一般管理費(販管費)」を差し引いて計算します。
損益計算書に記載されている利益の1つ目の利益は「売上総利益(粗利益)」です。売上総利益(粗利益)は「売上高」から「売上原価」を差し引いて計算されます。80円で仕入れた商品を100円で販売した時の売上総利益(粗利益)は20円となる、という大変イメージしやすい儲けになります。
ただ、商品を販売するためにかかる費用は売上原価だけではありません。商品を売るための人件費、広告宣伝費、家賃光熱費なども必要となります。これらの費用を「販売費及び一般管理費(販管費)」といいます。
そこで、売上総利益(粗利益)から販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いて本業での稼ぎ(=売上利益)を計算するのです。
経常利益と営業利益の違いは?
本業の稼ぎを表す営業利益に対し、経常利益は本業だけにとどまらず、毎年のように経常的に発生する利益や損失も含んで計算されます。そのため、経常利益は本業の儲けである営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いて計算します。
会社は本業以外でも収益や損失を得ることがあります。例えば金融機関への預金から発生する受取利息や有価証券の売買で生じた利益、為替レートの変動による為替差益は本業以外から得た利益(営業外収益)ですし、借入による利息の支払いや為替レートの変動による損失などは本業以外での損失(営業外費用)となります。これらをすべて計算して弾きだされるのが経常利益なのです。
このように、本業以外の経常的な損益を含んでいるかどうかが経常利益と営業利益の違いとなり、本業の稼ぎを表す指標が営業利益、本業の稼ぎに毎年のように発生する本業以外の損益を合算したものが経常利益となります。
経常利益と純利益との違いはなに?
経常利益 → 企業が通常行っている業務の中で得た利益 純利益 → 企業が通常行っている業務の中で得た利益 ± 普段は発生しないような特別損益 |
純利益には2種類あり、法人税等(法人税、法人住民税、法人事業税)を差し引く前の「税引前当期純利益」と、法人税等を差し引いた後の「当期純利益」に分けられます。
税引前当期純利益と当期純利益を区別するのは法人税の計算の際に必要になるからですが、今回は経常利益の性質を理解するのが目的であるため、主に税引前当期純利益と経常利益の違いについてみていきましょう。
税引前当期純利益とは?
税引前当期純利益とは、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いた金額のことです。
経常利益は経常的(常に変わらず一定の状態)な利益や損失をすべて計算していましたが、税引前当期純利益はさらに臨時的に発生した損益も含んで利益を計算することになります。例えば、工場や店舗などの固定資産を売却することは滅多にありません。このような固定資産売却益は特別利益となります。また、地震などの自然災害で受けた損失なども滅多に発生するものではないため特別損失となります。
そのため、税引前純利益は普段は発生しない利益や損失までも含んだ、その会社の1会計期間における利益をあらわしています。
経常利益と税引前当期純利益の違いは?
上で見たように、企業が通常行っている業務の中で得た利益が経常利益であるのに対し、税引前純利益は経常利益にさらに特別利益を加え、特別損失を引いた金額となります。そのため、本業が順調で営業利益、経常利益が黒字であったとしても、自然災害によって税引前当期純利益が赤字になることもあります。逆に営業利益、経常利益が赤字であっても本社社屋を売却して特別利益が大きくなれば税引前純利益が黒字になることもあります。
そのため、会社に現にのこっている儲けをみるには税引前当期純利益が妥当ですが、会社本来の稼ぐ力をみるには経常利益が妥当ということになります。
経常利益の計算方法は?
経常利益の計算方法はこのようになります。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 |
営業外収益は、企業が本業以外の活動で経常的に得ている利益のことで、不動産賃料(不動産賃貸業を除く)、金融機関への預金から発生する受取利息、受取配当金、為替差益などがこれに該当します。
営業外費用は、企業の本業以外の活動で経常的に発生する費用のことで、借入金に対する支払利息、割引料、社債利息、為替差損などが該当します。
経常利益からわかること、それは会社本来の稼ぐ力!
損益計算書を見るとき、最終の利益である当期純利益に目がいくことが多いでしょう。しかし、前述のように税引前当期純利益、当期純利益にはイレギュラーな損益が含まれています。会社にとってどうしようもない自然災害などの影響が含まれる純利益では、会社本来の稼ぐ力を見極めることはできません。また前年比較などを行う場合にも特別損益は除外した方が会社の状況を正確に比較することができます。
そのため、その会社本来の稼ぐ力をみる際には経常利益が適しているのです。
経常利益が黒字の場合
一般的に経営が順調な時には経常利益は黒字となります。しかし本業からの稼ぎである営業利益が赤字である場合は、本業の不調を本業以外の資産運用などで補っていると考えられます。会社の儲けの基本はやはり本業の稼ぐ力です。経常利益が黒字でも、営業利益が赤字の場合は原価率の見直しや諸経費の使い方等を見直し、本業の稼ぐ力を高める必要があるでしょう。
経常利益が赤字の場合
経常利益が赤字の場合、営業利益も赤字ならば本業での原価率や販管費について見直す必要があります。会社の利益を増やそうとするとつい売上目標を上げることに目が行きがちですが、利益を伸ばすためには売上高と売上原価、販管費とのバランスが大切になってきます。売上目標を達成するために売値を下げて利益率が下がったり、ノルマ達成のために残業を強いて人件費が上がったりしてしまっては会社に利益は残りません。売上総利益(粗利益)が赤字になることはあまりありませんが、営業利益が赤字で経常利益も赤字の場合は本業が危険信号、それをカバーするだけの資産運用もできていないという状況になっています。売れば売るだけ赤字になるという恐ろしい状況にならないよう、適正な売値を再検討していきましょう。
一方、営業利益が黒字であるにも関わらず経常利益が赤字という場合もあります。これは本業の事業は順調であるにも関わらず、借入利息や資産運用が本業の足を引っ張っているといえるでしょう。
経常利益を伸ばす方法
会社は儲けを出すために日々活動しています。
利益を出すには2つの方法しかない、というのは会計の世界ではよく聞く言葉です。「売上を増やす」か「費用を減らす」か。
どんな事業でも、利益の計算方法は「収益-費用」です。一般的に収益はそのほとんどを売上高が占めているため、わかりやすく表現すると売上高と費用の差額が利益ということになります。そのため、利益を大きくするには「売上を増やす」か「費用を減らす」かということになります。
この考え方は売上総利益(粗利益)や営業利益を伸ばす際にとても有効な考え方です。経常利益を伸ばす際にもこの2つは大前提となりますが、それに加えて経常利益の計算では本業以外の資産運用の結果からも大きな影響を受けることになります。特に営業利益が黒字であるにも関わらず、経常利益が赤字となっている場合、本業の業績に問題はなくても資産運用など他の事業がうまくいっていない可能性が高いため、運用の見直しを早急に行う必要があります。
まとめ
損益計算書に5つも登場する利益、その中でもその会社本来の稼ぐ力を表すのが経常利益です。特に営業利益とは名称も似ているため混同してしまいそうになりますが、本業で稼いだ営業利益と経常的に稼ぐ力をあらわす経常利益、その違いをしっかり理解して損益計算書を味方につけることが大切です。
事業をしていると売上と仕入原価、人件費や水道光熱費、消耗品などの販管費については日々気に掛けることが多いでしょう。しかし、会社にはそれ以外にも借入利息や為替差益など、本業以外からの利益や損失もあります。そして営業外損益にこそ、この会社の特徴があらわれることもあります。借入や為替変動に対してどう備えるか、有価証券をどのような目的で保有しているのか。そういった、日々の取引とは離れた、しかし会社にとって大切なお金の流れを今一度見直すひとつの指標として、経常利益を活用できるといいですね。
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