ARRとは?計算方法と活用方法を解説!成長が事業拡大に繋がる理由

ARRとは?計算方法と活用方法を解説!成長が事業拡大に繋がる理由

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

ARRとは、Annual Recurring Revenueの略で、毎年決まって得られる収益のことです。日本語では「年間経常収益」や「年間定期収益」とも呼ばれます。

ARRはSaaS/サブスクリプションビジネスにおいて、最重要な指標のひとつです。この記事ではARRを理解し、活用してビジネスの現状を分析し、有効活用するための方法を解説します。

ARRとは

ARRとは、Annual Recurring Revenueの略で、毎年決まって得られる収益のことです。「年間経常収益」や「年間定期収益」とも呼ばれます。

「毎年決まって得られる収益」のため、初期費用や追加購入費用などは含まれません。そのため、月額費用が一定で、年単位の契約が多いビジネスに適した指標といえます。

事業状態を評価する際には「成長性」や「効率性」、「顧客満足度」などの尺度が用いられます。ARRは成長性を測るのに有効な指標です。また、将来の収益を予測できるため、サブスクリプションビジネスの経営戦略や事業計画には欠かせない指標となっています。

計算方法

ARRはMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍することで算出できるため、まずはMRRを計算します。

MRRは、毎月決まって得られる1ヶ月分の収益です。月間経常収益と言い換えることもできます。MRRを12倍すればARRを算出することができます。

MRRをさらにブレイクダウンしてMRRを算出することも可能です。一般的にMRRは以下の4つの要素に分解できます。

MRRの4つの要素

(A)New MRR:当月の新規顧客からの月間収益

(B)Expansion MRR:前月の顧客がプランをアップグレードまたは、追加プランを申し込むことによって得られた月間収益

(C)Downgrade MRR:顧客が安いプランに変更またはオプションを解約したことによって減少した月間収益

(D)Churn MRR:当月に顧客が解約したことによって失われた月間収益

これら4種類を把握し、以下の計算式でMRRを算出すると、より精度の高い指標を算出することができます。

当月MRR = 前月のMRR+{(A)+(B)-(C)-(D)}

ARRの定義

ARRとは「毎年決まって得ることができる売上」です。具体的にはどのような収益を含めるのでしょうか。

まず、サブスクリプションビジネスの収益とは、顧客との継続的な関係性があることから得られる収益であり、「将来にわたって繰り返し継続的に収益を得ることが約束された状態」となります。

収益はさらに「定期収益」と「非定期収益」に大別することができます。毎月発生する月額利用料などは、定期収益となります。

サブスクの中には繰り返し継続的に発生しない収益もあります。例えば、初期費用は利用開始時のみの収益です。従量課金による収益は利用料に応じた収益なので、金額が月によって大きく異なり、継続的に同じ金額が繰り返し発生するとは限りません。

さらには、明らかに定期収益と思える月額定額プランからの収益であっても、加入と解約がいつでもできる契約形態であれば、「繰り返し継続的に発生する」とは言えない、という見方も出てきます。

そのため、何を「定期収益」とみなしてARRを算出するかという点が重要です。

まず自社における「定期収益」の定義を明確にしておきましょう。従量課金による収益でも、毎月ほぼ同じ額が発生するのであれば定期収益とみなす、などビジネスの実態に応じた分類が必要です。

指標は前年度との業績比較や、今後の見通しのために予算・実績比較するなどして用いられます。一貫した基準がないと数値がぶれてしまうことになり、正しく比較し戦略に役立てることが難しくなります。正しい情報を提供し活用するために、この「何を定期収益とみなすか」の基準を明確にしておきましょう。

また、どの月を基準とするのかでARRの数値が大きく変わってしまうため、定期的な見直しが必要です。季節や繁忙期など、月によって売上に変動がある場合は、半期や四半期ごとのMRRからARRを算出するという方法を用いることができます。

ARRの活用方法

ARRを実際に活用する方法を解説します。

1. KPIの設定に用いる

KPI(Key Performance Indicator)は、言い換えるならば「重要業績評価指標」となります。ビジネスの目標設定や、達成度を測るために設定されます。また社内の部門や個人のパフォーマンスを定量分析するためにも用いられます。

定額制のSaaSビジネスでは、安定的な収益がどのくらい見込めるのかを予測しておくことが重要なため、KPIとしてARRを設定している企業が数多くあります。

例えば、来年度の業績目標にARRを使うことができます。

「2022年度上期 ARR目標○○万円」などと定め、定期的に達成率を測定します。

これによって組織を鼓舞することができるだけではなく、具体的な数値を共有することで、社内の足並みをそろえることができます。

2. 投資家など利害関係者に有効な情報を提供する

ARRは、投資家にとっても貴重な判断材料のひとつです。

投資家は、事業の成長性や継続性を総合的に判断し投資を決定します。そのため、成長率や、将来の収益予測を数値化できるARRは、企業価値の算定によく利用されています。

特に、資金調達が必要なSaaSビジネスでは、投資家へのアピールにARRを有効活用することができます。また非上場企業や上場企業の子会社である場合でも、自社の業績をアピールする際に役立つ指標であることを覚えておきましょう。

ARRを伸ばすには?

ここからはARRを向上させる方法をご紹介します。

1. 新規顧客獲得

ARRの向上させるために最も重要なのが、新規顧客の獲得です。

顧客の増加は収益に直結するため、ニーズに合わせた機能の搭載や、販促キャンペーンの実施が重要です。また広くサービスを周知するための広告宣伝や、マーケティング策が必要です。

ただ、新規顧客獲得には広告費やキャンペーン費用などのコストがかかるため、顧客獲得後に得られる収益とのバランスに留意しましょう。

2. 既存顧客のアップグレード

既存の顧客からの収益アップも、ARR成長要因のひとつです。

既存顧客のアップグレードやオプションの追加購入は、新規顧客獲得よりもコストがかからず、効率的なARR増加に繋がる場合が多くなります。複数の料金プランを提示したり、有料の追加オプションを販売することでこの可能性を拡げることができます。

また、アップグレードや追加購入のメリットを十分に伝え、既存顧客の購入意欲を高める施策も必要です。

アップグレードした顧客の体験談や、導入事例を具体的に紹介するなどして既存顧客にアピールしましょう。生産性向上や業務効率の改善につながる具体的なケースをホームページなどで紹介するなどの方法があります。

3. 顧客の継続力を高める・解約率を下げる

顧客数を維持することができ、新規顧客の獲得を継続することができれば、毎月顧客数が積み上げられていくため、ARRは自然と増加していきます。

サービスを継続的に利用してもらうためには、ユーザーの満足度を向上させることが大切です。利用することでメリットを感じた、快適であったなどの良いユーザーエクスペリエンスを提供できると継続率は高まります。ユーザーレビューや使用状況の分析などを行い、快適な使用感を維持できるようにしましょう。

利用することで顧客にストレスを与えるうる要素をできるだけ少なくすることで、解約率の低下を目指しましょう。

似ている重要指標

ARRのほかにも、SaaS/サブスクリプションビジネスにおいて重要視される指標がいくつかあります。ARRと併せて活用することでより強力な目標設定や戦略策定に役立てることができます。

解約率

解約率はチャーンレート(Churn Rate)とも呼ばれ、CRと略されるケースもあります。サブスクリプションビジネスならではの重要な指標となります。解約された数を測る指標で、基本的には月ごとに比較され、解約率が少ないほど事業の成長率が高い、顧客満足度が高いと評価されます。

一般的な目安として、解約率は10%以下が望ましいとされています。同業種や類似サービスの解約率が分かれば、それと比較し、自社の状況に適した解約率の目標を定めましょう。

解約率が高いようであれば、解約理由を分析し、解約を防止する施策が必要になります。

ユーザー平均単価(ARPU−Average Revenue Per User)

ユーザー平均単価(ARPU)とは「Average Revenue Per User」です。顧客一人あたりの平均収益を示し、各顧客から平均してどのくらいの収益を得られたかを表します。総収益をユーザー数で割ることで算出されます。

この指標は、将来的な顧客からの収益を予測する際に役立ちます。上記の解約率と併せて用いることで、具体的な収益への影響を試算することができます。例えば、現在のユーザー数が500人で解約率が10%、ユーザー平均単価が10,000円の場合、50人のユーザーが解約すると考えられ、収益は500,000円低下します。

ここで解約率を5%に下げることができれば、収益の低下を250,000円に抑えることができ、新規顧客の獲得でこの低下をカバーすることがより容易になるでしょう。

また、顧客平均単価(ARPC–Average Revenue Per Customer)と呼ばれることもあります。

LTV(顧客生涯価値)

LTVは「Life Time Value」の略で「顧客生涯価値」と訳されます。ここでいう「生涯」とは、取引期間(最初の購入から最後の購入までの期間)を指します。「価値」は総収益を意味します。つまりLTVとは、1人の顧客から取引期間を通じて得られる総収益ということです。

LTVの計算方法にはいくつかの種類がありますが、平均顧客単価に平均継続回数を掛ける計算式を用いると、予算策定や見込み値の設定にも役立てることができます。また単価アップや継続を促す施策により、LTVの向上をめざすことは収益アップに直結します。

顧客獲得費用(CAC)

顧客獲得費用(CACは広告費や販売経費など、顧客獲得コストを表します。一人(1社)の顧客を獲得するのにかかった費用を算出し、収益性を維持するために重要な指標です。

CACを分析することで、マーケティング戦略の有効性や販売経費の見直しをおこなうことができます。これにより、将来的に安定したビジネスプランを設計することに役立ちます。また予算の策定時にも活用される指標です。

例えば、ある月に広告宣伝費として50万円かかったとしましょう。その月に新規ユーザーが100人増加した場合、顧客一人当たりに5,000円(=500,000円 ÷ 100ユーザー)のCACが発生したことになります。

また、ここで顧客の購入額平均が 7,500円と仮定すると、顧客一人当たりの利益は7,500円-5,000円=2,500円となり、33%の利益率が得られていると理解することができます。

CAC を分析し経費の削減に努めたり、単価上昇を図ったりすることで、ビジネスの収益性を高めることができます。

また、マーケティング、営業、財務それぞれの部署で適切な数値を用いることで、より効果的なアプローチへの企画を促すことができるでしょう。

顧客転換率(Conversion Rate / Trial Conversion Rate)

コンバージョン率とも呼ばれるこの指標では、一定の期間内で、どれくらいの顧客が収益に貢献する顧客に転換したかを算出します。

SaaS 型ビジネスでは、顧客を獲得するために、まずは実際に体験してもらうために無料トライアルを提供している場合が多くなります。

また、音楽配信サービスやスマホアプリでは、課金することで、より幅広く有効なサービスを受けることが可能になります。これらの無料ユーザーが有料ユーザーに転換する割合を顧客転換率として算出するのです。

また、サイトに訪れたうちのどのくらいの人が実際に商品購入に至ったかについて、割合を求めることも可能になります。この場合計算式は、「購入者数」と「合計サイト訪問者数」が用いられます。

これは、ビジネスの種類や販売形態、何を分析したいかによって柔軟にデータを選択することが可能です。

このように、コンバージョン率を分析することで、無料トライアル版の効果や、プロモーション・キャンペーンごとの顧客の反応を定量的に計測することが可能になります。そのため、今後の顧客へのアプローチ方法を検討する際に、重要な指標と言えるでしょう。

まとめ

SaaSビジネス・サブスクリプションビジネスにおいて、企業の成長率を測るARRは重要な指標です。ARRを多角的に分析・活用することができれば、企業戦略や施策の立案などに大きく貢献することができます。

ARRを必要なときに適切に算出できるように数値管理を行っておきましょう。契約毎の計上期間や売上計上額を自動で集計できるようなシステムを導入するという方法もあります。情報をリアルタイムに、効率よく一元管理できる仕組みづくりが欠かせません。

ARRを活用して実的かつ達成可能なKPI設定に役立てることで、効率的に組織を成長させることができます。またこれらの分析に応じて対策を講ずることが、企業の成長や業績向上に欠かせません。

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