サブスクリプション/SaaSビジネスの債権管理の課題とは?内部統制の面からも注意しよう

サブスクリプション/SaaSビジネスの債権管理の課題とは?内部統制の面からも注意しよう

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

債権管理の業務は、基本的にはいくつかのルーティン作業で構成されており、それぞれ構成部分をいかに正確に、スピーディに処理するかによって、債権管理に要する総業務量が変化します。

  1. 契約に基づいて債権の発生を請求システムで適切に認識(多くの企業では請求書発行システムを利用)
  2. 決められた期限内に得意先から入金があったことを確認(入金管理システムあるいは目視で入金を認識)
  3. その入金額が請求額通りであれば債権の消し込みを行う、を繰り返します。

上記それぞれの作業自体はそれほど難しいものではないものの、最も手間がかかりやすいのは債権の消し込み作業になるでしょう。

サブスクリプション/SaaSビジネスの債権管理の課題とは?

入金消し込み作業の主な課題

通常、取引先からの入金は請求書の請求記載日あるいは契約に基づいており、入金予定日が土日祝日の影響で、時々前後にずれることがある場合を除けば(通常はその前日までに入金を依頼しますが)、入金確認の作業において、複雑な手続きを要することはありません。 

ただしこの入金額に基づいて、入金消し込み作業を実施する際に、以下にある課題がよく見られています。

  • 請求額と入金額との付け合わせを人の手で確認しているため、請求件数が急増傾向にあると対応できる経理人員数が足りなくなる。
  • 複数の関連システム(EXCELの場合は、データの見方や消込履歴等)が担当者独自のやり方になっているため、業務ローテーションが困難になっている。
  • 担当者がEXCELで消込作業を行っているため、データの抜け漏れや処理間違いを防ぐことができない。
  • 請求書単位で消込みを行っているため、取引先がまとめて送金してきたときや、一部入金時には、どの請求分を消し込めばいいのかが分からなくなる。
  • 振込手数料が当社負担(受取人負担)になっている場合や、消費税差額が発生していたことで、請求額と入金額にズレが発生し、消し込みエラーになっている。

間違いのない情報管理が大切

債権管理には、取引先に対する与信の適切な管理と維持(取引量のコントロール)、入金遅延時の取り立て、取引先が倒産した場合には貸倒処理をする等があります。

入金が滞りがちな得意先に対しては、経理部門から営業部門へ次回以降の取引量の制限や、入金期間の短縮化を図る等の注意喚起を促すこともあります。

また、債権情報をEXCELで対応していると、不意の人為的ミス(誤ったデータの上書き、データの消失等)が発生する可能性が高く、その結果、適切に入金いただいている得意先に対して、入金がなかったものとして、未入金の催促をするような信用を失いかねない事態を招く恐れがあります。

このような誤りは、誤解、勘違い等の人為的ミスが起因していることもあり、これを組織的に、あるいはシステム的に予防する仕組みが大切です。

内部統制上の問題点もある

債権管理の内部統制上の問題点

債権管理業務はどうしても特定の担当者に依存しやすく、また、EXCELやセキュリティ面が脆弱なシステムを活用している状況では、意図的なデータの書き換えが可能な場合があります。

たとえば、架空売上の滞留売掛債権がシステムから消し込まれている、入金期限が変更させられている等で、未入金情報にさせないような不正行為につながる可能性がありえます。

統制上の観点から、属人化を避けるとともに、処理履歴(ログ管理)ができる仕組みの構築が必要とされています。

会計システムとの連携ができていないと業務の非効率化につながる

大企業であっても、債権管理システムを導入していない場合、EXCELを使って対応しているケースが多く見られています。

EXCELを使うメリットは、作業担当者のやりたいように様式を変更し、直感的に使いやすい仕組み(ピボットテーブル、VLOOKUP等の関数の利用やマクロの利用等)をEXCEL上で構築できることにあります。

ですが、債権データをEXCELで管理できていても、その結果を会計システムにもう一度入力する手間がどうしても発生します。

また、債権の詳細情報はEXCELで管理し、その結果だけを会計システムに入力するような場合、会計帳簿を見るだけでは、債権がどのような状況なのかを正確に把握することは困難になるでしょう。

会社法は、会計帳簿について「法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない(第432条第1項)」と規定しています。

会計帳簿は、主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)と補助簿(得意先元帳、仕入先元帳、預金出納帳等)に分類され、補助簿はその名のとおり、主要簿の補足情報を提供するものとして位置づけられていますので、債権情報(売掛金)がこの補助簿にて網羅され、検証可能であるように記録されていることが大切です。

また、会計帳簿の保存期間として「会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。(第432条第2項)」と定められていますので、過去の資料を見直す際に、当時の状況がわかるよう、正確で詳細な情報の記載が望まれます。

債権管理の業務効率化を目指そう

債権管理業務は定期的な作業で、大量の情報を処理するため、債権管理システムの導入による作業の自動化を目指しやすいといえます。

システムを利用した債権消し込みの自動照合および消込成功率は、中堅規模までの企業なら90%以上、大企業なら95%以上となった事例も多くなっています。

実際には、一部入金等のイレギュラー取引を除けば、ほぼすべての取引分が自動照合され、入金消込もほぼ自動化されています。

現況に見合った債権管理システムを導入しよう

債権管理・消込機能を有するシステムには、簡易機能で安価なソフトウェアから、高度な機能を持つクラウドサービス型、そしてERPシステムに直結したサブシステム等、様々な仕組みがあります。

ERPのような大規模システムが有する債権管理機能を用いて入金消込み作業をする場合、その導入コストやメンテナンスコストの高さから、大手企業に限られているのが実情です。

費用対効果の観点からは、様々な規模の企業が利用でき、必要な機能だけを選択できるクラウドサービス型の債権管理システムが便利です。

単純に債権情報と入金情報のマッチングを行う機能から、AIによる学習機能の積み上げにより自動消込の精度を高めた機能まで、その使い方や消込みボリュームに合わせて、サービスの利用プランを選択することが可能ですので、事業の発展や多角化にも柔軟に対応できます。

また、クラウドサービスの利点は、その債権管理機能の強さだけではなく、他のシステムとの連携機能にもあります。

連携方法は、処理データをCSVでダウンロードして会計システムにバッチ処理で入力するか、より理想的にはAPI(Application Programming Interface)によって、直接会計システムと接続させて、正確な情報連携とリアルタイム処理を実現させています。

得意先別の債権状況を見るための「残高年齢表」や「滞留状況一覧表」を自動で作成する機能を実装していれば、それらの情報を適宜、営業部門や与信管理部門に通知することが可能になりますし、メール等による情報の定期的な発信により、関係者の債権回収に向けた意識を促すことができるようになることも、メリットに挙げることができるでしょう。

まとめ

サブスクリプション/SaaSビジネスは、月額課金による定額入金のケースが多く、高い顧客継続率により取引件数を増やして、収益を拡大化させていく事業モデルですので、顧客数の増加により、債権管理の案件数、処理数も飛躍的に増大します。

このような事業では、入金消し込み業務と通常債権の管理をシステム化することで、徹底的に業務を効率化し、稀に発生するイレギュラー取引に対処するようにして、本来対応すべき債権管理に集中していくことが望まれます。

費用対効果の観点からも、膨大な入金消し込み件数に対して、経理人員を増やす・特定の時期に残業で乗り切るような人的コストを費やすより、作業量に見合った債権管理システムを導入することで、コスト抑制につながるとともに、税制改正等にも柔軟に対応できるようになるメリットも期待できるでしょう。

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