こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
経営・経理に携わっていると、収益認識基準の改正に影響を受けている方も多いのではないでしょうか。2021年4月から収益認識基準が改正され、新しい収益認識基準により売上を計上する必要があります。
今回は新しい収益認識の5ステップからハードウェア販売と複数年の保守契約を一括契約した場合の売上管理について解説します。
目次
一括契約でも売上の計上時期は個々で判断する
新しい収益認識基準では、売上を認識するまでに5つのステップを踏むことになりました。ハードウェア販売と複数年の保守契約を一括契約した場合、同じ契約ではありますが「ハードウェア販売」と「複数年の保守契約」のそれぞれで売上の認識を検討することになります。
収益認識の5つのステップ
それでは、売上の認識はどのように検討するのでしょうか。新しい収益認識基準では以下5つのステップを踏んでから売上を認識します。(収益認識に関する会計基準17項)
- 顧客との契約を識別する
- 契約における履行義務を識別する
- 取引価格を算定する
- 契約における履行義務に取引価格を配分する
- 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
簡単にステップのみ記載しましたが、それぞれのステップについての詳細は収益認識に関する会計基準に記載されています。専門用語が多いので、今回は簡単な具体例を使って売上管理に必要な上記5つのステップを確認してみましょう。
一括契約の場合の売上管理のポイント
複数の商品・サービスを一括契約した場合、収益認識の5つのステップを検討します。今回は、ハードウェア販売と複数年の保守契約の一括契約で具体的に見ていきましょう。
取引内容
- X1年4月にシステム会社がクライアントと、ハードウェア販売と2年間の保守サービスを提供する一括契約を締結した。
- X1年4月にシステム会社はクライアントへハードウェアを引き渡した。
- 保守サービスは2年間(X1年4月~X3年3月)クライアントへ提供する。
- 契約書に記載された対価の額は12,000円。(通常ハードウェア販売10,000円、2年間の保守サービス2,000円、それぞれ単独で契約することもできる)
- システム会社の決算月は3月。
(1)顧客との契約を識別する
X1年4月、システム会社がクライアントと契約を締結していますので、ステップ2へ進みます。
(2)契約における履行義務を識別する
履行義務とは、クライアントとの契約において①別個の財・サービス、または②一連の別個の財・サービスのいずれかをクライアントへお渡しする約束のことです。今回の取引ではハードウェア販売・2年間の保守サービス、それぞれ単独で契約もできるため、「ハードウェア販売」と「2年間の保守サービスの提供」を履行義務として認識します。
(3)取引価格を算定する
契約書に記載された対価の額は12,000円なので、「ハードウェア販売」と「2年間の保守サービスの提供」に対する取引価格を12,000円と算定します。
(4)契約における履行義務に取引価格を配分する
取引価格12,000円を契約における履行義務「ハードウェア販売」「2年間の保守サービスの提供」に配分します。「ハードウェア販売」10,000円・「2年間の保守サービスの提供」2,000円で単独で契約も可能なので、「ハードウェア販売」10,000円・「2年間の保守サービスの提供」2,000円に配分することにします。
(5)履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
履行義務の性質から、「ハードウェア販売」は製品を引き渡した一時点で履行義務を充足すると判断できます。そのため、「ハードウェア販売」はハードウェア引渡時(X1年4月)に売上を認識します。
一方、「2年間の保守サービスの提供」は2年間の一定期間にわたり履行義務を充足すると判断できます。そのため、X1年1,000円・X2年1,000円の売上と2年間にわたり売上を認識します。
まとめ
具体的にハードウェア販売と複数年の保守契約の一括契約の場合の収益認識の5ステップを見てきましたが、1つの契約であっても複数の財・サービスを認識し、それぞれの収益認識のタイミングを検討し管理する必要があります。そのため、契約するクライアント数が増える場合や複数の財・サービスを提供する取引を一括契約する場合、売上管理はさらに複雑になります。そのため、売上管理を効率的かつ正確に管理する方法を検討することをおすすめします。
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