こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
電子帳簿保存法により、国は帳票の電子化を「義務化」という強制力で推し進めようとしてきました。
しかし、2022年1月施行の改正・電子帳簿保存法で義務化された「電子データの電子保存」についても、2年間の宥恕措置が容認されることとなりました。
日本の企業には、昔からの商文化の習慣がいまだに色濃く残っており、印鑑・紙というのがその最たる例です。
このため、なかなか義務化という強制力をもってしても、現場には戸惑いばかりが広がり「どうすれば対応できるかわからない」という企業や経理担当者が多く、完全義務化には至っていないというのが実情です。
慣れ親しんだ紙文化から卒業することに抵抗がある人もまだまだ多いですが、実際に電子化をすることは、企業だけでなく、現場で働く人たちにも大きなメリットがあるのです。
特にものづくりをする製造業では、受注から納品まで、製品や情報が工程を順繰りに回っていきます。経理帳票だけではなく、製造業に特有の帳票も多く存在しているのです。
このため、他業種よりも、電子化によって受けられるメリットは大きいといえるでしょう。
今回は、製造業の帳票を電子化するメリットと、そのポイントについて解説します。
目次
製造業の帳票を電子化するメリットは?
製造業の帳票を電子化するメリットとして、代表的なものを見ていきましょう。
時間・資源・場所の効率化
製造工程の情報を、紙ではなく電子データで管理できるようになると、時間・資源・場所の効率化が大幅に図られます。
営業部門が取引先から注文を請け、その情報を生産管理部門へ、生産管理部門から製造部門へ、紙の帳票によって情報が流れていくケースを考えてみましょう。
製品情報が書き込まれた帳票がクリアファイルなどに入れられ、各部門を製品と一緒に回り、さらに情報が書き込まれていきます。
各部門では次の部門に受け渡す前に、自部署の控えとしてコピーをとって保存するかもしれません。
それぞれの部署に、帳票書類の置き場所を確保したり、控えを取るためのコピー機を置いたりする必要があります。入り口部門の営業には、大量のクリアファイルを常にストックする場所も必要です。出口の出荷部門には、最終の帳票の保管場所と、クリアファイルを営業に戻すルートも必要になるでしょう。
帳票が途中の工程で無くなってしまった場合、それぞれの部門の控えを確認するなどして、どの段階で帳票が無くなってしまったのか、製品は今どのような段階なのかを足で確認する手間も発生します。
これを電子データで一元管理して、それぞれの部署のデバイスで確認できるようにすると、時間・資源・場所が大幅に効率化されていくのです。
人手不足を解決できる
少子高齢化により、日本は深刻な人手不足が大きな問題になっています。なかでも製造業は、ものを作るという性質上、多くの人手を必要とします。
現在の日本の製造現場の多くは、紙文化とシステム化が混在しているケースが多く見受けられます。根強い紙文化から、紙の帳票も作成して現場で運用しつつも、その情報は同時にシステムに入力されて、データとしても運用されていきます。
完全に電子化に切り替えることで、
- 紙の帳票に書き込まれた情報をシステムに入力する作業
- 紙の情報とシステムに入力された情報をチェックする作業
- 紙からデータへの転記ミスによって生じるロス工数
をなくすことができます。紙の帳票を管理する手間もなくなるでしょう。
業務の削減と効率化が図られ、人手不足のカバーにつながる大きなメリットがあります。
情報の共有化が容易になり意思決定が速くなる
帳票を電子化することで、外出先でも取引先でも確認したい情報をすぐに取り出すことができるようになります。
例えば、出張中に取引先から製品の設計変更依頼があった場合、営業担当者は製品の進捗状況を確認し、そもそも設計変更が可能かどうかを確認しなければなりません。
紙帳票で情報管理されている場合、出先では確認することができないので、生産管理部門に連絡し進捗状況を確認する必要があります。生産管理部門は実際に現場内を見て回ったり、別の担当者に確認依頼をしたりという方法で進捗状況を確認するでしょう。そんなことをしている間に、製品は設計変更がきかない工程に進んでしまう可能性もあります。
それでも設計変更が必要な場合は、再見積もりが必要になったり、社内で検討会議を行ったりするなど、さらに工数が必要になっていってしまいます。
帳票を電子データで一元管理し、どこからでも製品の進捗状況を確認することができるようになると、このロス工数を最小限に減らすことができます。営業担当者は、出先から情報を確認し、その場で判断して取引先に可否を回答することができるでしょう。社内で打ち合わせが必要な場合でも、出先から同じデータを確認しながら生産管理部門と方向性を検討することが可能になり、迅速に対応することができるのです。
意思決定のスピードが速くなることは、企業の付加価値を高めることにもつながります。
帳票の電子化を阻む壁は?
帳票を電子化するメリットは明らかなのに、なかなか進まない理由はどこにあるのでしょうか。製造業の帳票の電子化を阻む壁になっているものはなんなのか、みていきましょう。
IT人材の不足
電子化を阻む一番の壁といってもいいのが、このIT人材の不足です。
電子化を進めるためには、電子化を管理するIT人材が必須です。ITの基本的な知識はもちろんのこと、セキュリティや不具合時の対応、他の従業員へのIT教育まで行える人材はなかなかいないのが実情です。
外部に委託することも可能ですが、その重要性を理解し、最低限の社内マニュアルを自社で再現できる人材がいないと、電子化を社内に浸透させることは難しくなってしまいます。
外部委託も組み合わせながら、社内に電子化の胆となるIT人材を育てていきましょう。
電子化の導入投資が軽視されがち
製造業では、製造のための設備投資が必要不可欠です。
そのため、電子化への導入投資が軽視されたり、後回しになってしまったりするケースが多く見受けられます。
そのため、よく吟味されないままにコスト重視でシステムが導入されてしまい、結果的に現場では使いこなせずに終わってしまうことも多いのです。
電子化の目的をしっかりと見据え、それに見合った投資を行っていきましょう。
製造業の帳票を電子化するポイントは?
メリットがあるとわかっていても、阻む壁が多くてなかなか電子化が進まない!
特に、製造業には昔ながらの古き良き日本企業体質の従業員も多く、トップダウンで進めてもなお、うまくいかないケースすら見受けられます。
自社の電子化を進める際に、何が壁になっているのか(もしくはなりそうか)具体的にイメージして対策を講じていきましょう。
従業員にITの教育をする
電子機器の扱いに不慣れな従業員が多い場合、安易に電子化を進めることは、むしろ逆効果になってしまいます。
知識がないことにより重大なデータを漏洩してしまったり、なかなか作業に慣れずにいつまでたっても効率化どころか、かえって非効率になってしまったりもします。
パソコンやスマホなど、すでに私たちにとってIT機器は身近な存在です。このため、電子化のシステムやデバイスを現場に投入し、操作方法だけ勉強してもらうといった進め方が多く見受けられますが、これはおすすめできません。
操作方法はもちろん大切ですが、それよりももっと重要なのは「電子化の目的・ITへの理解」なのです。
電子化の目的をしっかり理解できていないと、電子化したデータをそれぞれの従業員が紙媒体で出力してしまい、かえって手間やコストがかかってしまう状態も発生します。
ITへの理解、特にその仕組みやセキュリティ部分への知識が欠けていると、会社の機密情報が簡単に外部に漏れてしまったり、失われてしまったりしかねないのです。
電子化の目的、メリット、ITの最低限の知識を従業員に教育する体制が、電子化を成功させる大きなポイントです。
障害や不具合への対応体制を整える
電子化は非常に大きなメリットがありますが、システムの不具合やネットワーク障害が起こる可能性と常に隣り合わせです。
電子化と合わせて、不具合が起きた時の対策や対応策を整えておきましょう。特にバックアップを取ることをワークフローに組み込んでおくことが大切です。
帳票ごとに、バックアップをとる頻度や保管場所を決めておくとよいでしょう。
そしてさらに大切なのは、決めたルールの内容やその大切さを従業員に周知、理解してもらうことです。
日頃から対策を行わずにいざ不具合が起きてしまうと、「電子化は便利だがいつ消えるかわからない」という不安感につながります。その不安から、結局現場では紙の運用を水面下で続けてしまうケースも多いのです。
大前提として「不具合やシステム障害は起こるもの」という認識を持ってもらい、そのための対策を事前に周知しておくことで、電子化に完全に切り替える支えになっていくことでしょう。
頻度の高い工程から着手する
「電子化して良かった!」と感じることができても、作業頻度が低い工程だと紙に戻ってしまうケースもあります。その一例をご紹介します。
経理や総務の担当者の多くが、年に一度の大仕事として受け持っている、年末調整や給報(給与支払報告書提出)。特に給報の業務を紙で提出する作業はとても大変ですし、平成24年から一部電子媒体での提出が義務化されているのにも関わらず、それでもいまだに紙で提出をしているケースが多いのが実態です。
以前、従業員が200名ほどの製造業の経理担当者に、電子での提出方法を伝えてそのメリットを体感してもらったことがあります。
20ほどの市町村から送られてくる「総括表」という届出書に一枚ずつ手書きで記入し、それぞれの市町村に特定記録郵便で送る、準備から郵送までひとりで3日間ほどかけてやっていたそうです。提出にかかる郵送代は数万円にも上っていました。「総括表」が手元に郵送されてこなければ、市町村に電話をして送ってもらう、というなんとも「原紙」にこだわる徹底ぶりです。
使用している給与ソフトや社内システムを確認すると、電子データで簡単に提出できる「eLTAX」に対応した仕様になっていたため、その場で一緒に画面を確認しながら進め、実に1時間もかからずに報告書の提出を終えることが出来たのです。
8時間×3日=24時間の工数を1時間に、数万円の郵送代はゼロ円になりました。
担当者はその時こそ感動して喜んでいましたが、なんと翌年はまた3日間の労働力と数万円の郵送代をかけて、紙で提出していたのです。不思議に思い、その理由を聞いてみると次のような答えが返ってきました。
- 電子データでの提出の方法を忘れてしまったから
- 紙なら提出の記録が残るが、電子データでの提出だと記録が残らないから
- 電子は苦手意識があり、紙の方がわかりやすいから
電子データでの提出だと記録が残らない、というのは担当者自身がシステムを使いこなせていないために生じている理由です。
実際にはシステムに提出記録も残っていますし、PDFなどで保存してシステム外で保管すればさらにわかりやすく記録に残すこともできるでしょう。
しかし担当者自身が電子化に慣れていないため、「紙で残すこと」でしか記録を確認できないのです。
給報業務が、もし週に一度の頻度の業務だとしたらどうでしょうか。きっと担当者はにべもなく、喜んで電子化するはずです。
どんなにメリットを感じられても、頻度が高くなければ、そのメリットは薄れてしまい、担当者のITスキルによって電子化は浸透しないケースも多いのです。
まとめ
- 製造業は他業種に比べて帳票を電子化するメリットが大きい
- 帳票を電子化することで、時間・資源・場所の大幅な効率化が可能になる
- 帳票を電子化することで、紙の関連業務がなくなり人手不足のカバーにつながる
- 帳票を電子化することで情報共有が容易になり、意思決定のスピードが速くなる
- 製造業の帳票の電子化を阻むのはIT人材の不足と導入投資の軽視である
- 帳票の電子化を進めるポイントは従業員へのIT教育と、不具合時に対応できる体制をつくることにある
- 実際に作業者にとって頻度の高い工程から着手することも電子化の定着を進めるポイントである
帳票の電子化によるメリットは大きく明らかであるのに、これだけなかなか進まないのには、従業員はもちろんのこと経営陣の意識改革が必要かもしれません。
電子化によるメリットと目的を、まずは経営陣が理解し「絶対に進める」という強い意志を持つことも大切です。
その上で、社内にIT人材を育て、作業者も安心して情報を電子化していけるような体制を段階的に整えていきましょう。
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