こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
経理担当者を悩ませる勘定科目に「前払金」と「前払費用」があります。どちらも「前払」となっており似たような科目に見えますが、明確に使い分けをしなければ正しい決算書を作ることはできません。
この記事では、前払金と前払費用の違いを仕訳例を交えて説明します。
前払金とは
サービスの提供や商品の受け取り前に代金の一部または全部を支払った場合、「前払金」の勘定科目で処理します。前払金は貸借対照表の流動資産に計上されます。
前払金で処理する取引には以下のようなものがあります。
- 商品代金の前払い(内金、手付金など)
- 宿泊施設などの予約金
- 外注費などの前払い
以下では前払金の仕訳を例示します。
例1-1. 商品150,000円の仕入前に、代金の一部である100,000円を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
前払金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
上記は仕入する商品代金の一部を前払いした仕訳です。実際に仕入は行っていないため、費用は発生しません。
例1-2. 例1-1の商品を受け取り、代金の残額50,000円は現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
仕入 | 150,000 | 前払金 | 100,000 |
現金 | 50,000 |
仕入した商品を受け取ったため費用(仕入勘定)を計上します。100,000円はすでに前払いしているため、例1-1で計上していた前払金と相殺します。
前払費用とは
前払費用とは、「一定の契約に基づき、すでに提供を受けているサービスのうち会計期間をまたがるものは、その費用を当期と翌期に分けて計上する」際に使用する勘定科目です。貸借対照表上の流動資産に計上され、基本的には期末に「経過勘定(決算整理仕訳)」として処理します。
前払費用で処理する取引には以下のようなものがあります。
- 家賃の支払い
- 保険料の支払い
- サブスクリプション利用料の支払い
以下では前払費用の仕訳を例示します。
例2-1. X1年6月1日、12か月分(X1年6月1日~X2年5月31日)の家賃として120,000円を現金で支払った。なお、当期の会計期間はX1年4月1日~X2年3月31日である。
借方 | 貸方 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
支払家賃 | 120,000 | 現金 | 120,000 |
例2-2. X2年3月31日、決算を迎え、期中に支払いしていた家賃について、サービス未提供分(2か月分)を前払費用に計上する。
借方 | 貸方 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
前払費用 | 20,000 | 支払家賃 | 20,000 |
※120,000円×2か月÷12か月=20,000円
例2-1で支払った家賃のうち、2か月分(X2年4月1日~5月31日)はサービスの提供を受けていないため、前払費用として処理します。結果、X1年度の費用には10か月分の家賃が計上されます。
例2-3. X2年4月1日、前期末決算において計上した前払費用を振り戻し処理する。
借方 | 貸方 | ||
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
支払家賃 | 20,000 | 前払費用 | 20,000 |
例2-3で前払費用とした2か月分の家賃をX2年度の費用とするために振り戻し処理をします。
前払金と前払費用の違い
前払金と前払費用の最も大きな違いは、「サービスや商品の提供をすでに受けているかどうか」です。提供を受ける前に支払っているのであれば「前払金」で処理し、継続的にサービスなどを受けており、いまだに提供を受けていない部分は「前払費用」で処理します。
また、前払金は主に期中で処理することが多いですが、前払費用は基本的に期末(決算整理仕訳)でのみ計上します。
前払金と前払費用の違いを表にまとめました。
前払金 | 前払費用 | |
定義 | 単発サービスの提供を「受ける前」に支払ったもの。 | 契約による継続的なサービスを「受けている」がいまだ提供がない部分。 |
計上タイミング | 主に期中(支払ったとき) | 期末(決算整理仕訳) |
計上する金額 | 支払った額 | サービスが未提供の期間分 |
具体例 | 手付金(前金)、予約金 など | 家賃、保険料、サブスクリプション利用料 など |
前払金と前払費用を表計算ソフトなどで管理している場合は、ミスを減らすためにもこれらの勘定科目を一元管理できるシステムの導入も検討してみるとよいでしょう。
まとめ
前払金と前払費用は経理業務の中でも混同しやすい勘定科目です。似ている科目ですが、誤って処理してしまうと、貸借対照表や損益計算書が会社の財政状態・経営成績を正しく表示しなくなります。双方の違いをしっかりとおさえて、正しく仕訳をしていきましょう。
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