こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
売上計上に関する問題は多くの経理担当者を悩ますところですが、特に前受金を売上高に計上するタイミングは新収益認識基準の導入に伴って一層注意深く行うべきところといえます。というのも、これまで我が国での会計処理において売上計上は実現主義によっていましたがこれが変革されるからです。
新収益認識基準によると、売上計上のためには取引内容を具体的に把握しなければならず、履行義務の内容まで踏み込んだ理解が求められます。もっとも2020年現在ではまだ導入されていないものの今から十分に準備すべき論点といえます。
本稿では売上計上に関して、マーケティング支援SaaS企業を取り上げ、改善ポイントを示した上で具体的な解決策を提示します。経理担当者の方々におかれては自社の問題解決の参考にしていただければ幸いです。
サービスの拡大と共に前受金管理が経理担当者にとって負担に
こちらの企業では複数のSaaSサービスを展開しています。SaaSサービスであるので、サブスクリプションによる継続課金が基本です。このため代金は前受金として受領しています。事業開始当初は顧客数が少なく、前受金の管理も円滑に行われていました。しかし、サービスの拡大に伴ってスプレッドシートで行っている前受金管理が経理担当者にとって大きな負担となりつつあり、改善ポイントとなっています。
次に、現状では全ての事業を区別することなく、一括して前受金管理を実施し、売上計上を行っています。特に新収益認識基準の導入を考えたとき、売上計上のために契約内容にまで踏み込んでの判断が必要となります。このため、提供する事業ごとに売上を把握することは今後へ向けて改善が急務なポイントです。
最後に、サブスクリプションの普及に伴って近年注目度が急上昇しているMRRについてです。MRRとはMonthly Recurring Revenueの略で、日本語では月次経常収益といいます。毎月繰り返し得られる収益を意味します。MRRを現状では適切に把握できておらず、もっと的確に把握したいというのは改善ポイントです。
以上が上述のマーケティング支援SaaS企業における改善ポイントです。次にどのような業務フローの中でこのような問題点が生じているのか次の項で検討します。
現在の売上計上業務の流れ
現在の業務フローの中心は複数の事業を展開しているSaaSサービスの管理です。収益の中心はサブスクリプションによる定額課金であり、請求書の発行だけで毎月数百件に達します。
このため、代金の請求に関しては請求書発行システムを利用するとともに、収納代行サービスも利用しています。収納代行サービスについては、売上から手数料を引いて管理しています。このように現状でもシステム化を図っているものの、クライアント数は増加し続けており、業務フローが追いついていない現実があります。
また、代金が未収となってしまうケースも増えていることもあり、会計処理を一層複雑なものにしています。このようにして収受された代金は会計処理上、前受金に分類され、スプレッドシートを用いて一括して管理されています。
前受金の管理で問題となるのが売上への計上です。この企業では、会計管理システムを利用していますが、どのタイミングで売上計上するべきか判断が難しい場面も少なくありません。サブスクリプションによるサービスを提供している場合、代金の収受とクライアントへの役務の提供の間にタイムラグが生じるため、正確な売上計上を行うためには取引内容を経理担当者も把握しなければならず、必然的に困難なものとなってしまいます。
MRRを自動で集計して毎月の売上推移を把握する
さて、このような業務フローに関わる悩みについてどのような解決策が考えられるでしょうか。
上記で示された悩みですが、まずスプレッドシートで前受金管理を行っているということで、今後は前受金管理を行えるシステムを利用するべきです。スプレッドシートによる管理では、人為的な作業に依存する部分が多くなってしまうので、前受金管理システムを導入して、自動化を図るべきです。
次に、売上を事業ごとに把握するために、例えばタグ付けするというのは手軽で効果の高い方法とえます。最後に、MRRについては、自動でMRRを集計して毎月の推移が確認できるシステムを利用するべきです。サブスクリプションを中心にサービス提供を行う以上MRRは最重要の指標の一つであり、これを集計するためのシステムを導入して自動化を図るのは妥当な判断といえます。
このような解決策が考えられるところですが、やはりポイントは人為的な作業は極力排除して、システム化・自動化していくという点になります。新収益認識基準の導入に向けて、売上計上の問題は大きな論点となることでしょう。今後の問題の解決のために本稿が参考になれば幸いです。
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