こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
請求書の控えを作成した場合、一定の保管義務を負うことをご存知でしょうか。知らなかったという人も少なくはないでしょう。
請求書は日常の生活で、ものやサービスを購入する時に作成される大切な書類なので、請求書の控えを一定期間保管しなければならないという法律が存在します。
ここでは、そもそも請求書の控えとは何か、保管期間をどの程度なのか、あるいは請求書の管理方法にはどのようなものがあるかを示していきます。
この記事を読めば、請求書の控えに関する概要を理解することができると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
請求書の控えとは
そもそも請求書には2種類あります。「取引先へ送付する請求書」と「取引先から受け取る請求書」です。受け取った請求書は法律上、原本を保存しなければなりませんが、請求書を発行した側には、その義務はありません。
ただし、請求書の控えを発行した場合は、保存義務が発生します。
ここでは、請求書の控えの扱いについて解説します。
請求書の控えは発行と保存の義務があるのか
請求書や領収書などの帳簿書類は保存義務があり、各々決められた期間保存しなければなりません。
取引先から受け取った請求書は、原本のためそのまま保管する必要があります。
請求書の発行元には書類は残らないため、基本的に保管義務は発生しません。
ただ、取引の記録や証拠を残すため、請求書の控えを作成した場合は、発行者側にもその請求書の控えの保管義務が発生します。
インボイス制度の導入のため、請求書の控えの発行と保存が義務化
2023年10月から導入される制度である「インボイス制度」では、請求書の控えの作成、保管義務が発生します。
インボイスとは、適格請求書保存方式のことを意味します。この保存方式を導入することで、消費税の仕入税額控除を受けることができます。
所定の要件を満たしたものが適格請求書(インボイス)で、消費税の仕入税額控除が適用されるためには、インボイスの発行と保管を行う必要があります。
インボイス制度は、売り手と買い手両方に適用され、売り手は買い手からの要求によって、インボイスを発行しなければなりません。
また、買い手はインボイスの発行があった場合、インボイスの保管が必須となります。
請求書の控えの保存期間
請求書の控えの保管期間は、法人か個人かでその期間が異なります。
ここでは、それらの保管期間について解説していきます。
法人は基本的に7年間
法人の場合は、請求書の控えの保管期間は原則7年です。ここで注意しなければならないのが、7年間の起算点です。
起算点はその事業年度の確定申告書の提出日の翌日からです。ものやサービスを売買した日付ではないことに注意しましょう。
法人の確定申告提出期限は、事業年度の完了日の翌日から2ヶ月以内です。例えば、3月決算の場合は、5月末が確定申告書の提出期限です。
その時点から起算して、7年間請求書の控えを保管しなければなりません。
欠損金額がある場合は10年間
法人の場合の請求書控えの保管期間は原則7年ですが、例外があります。
2018年4月以降に発生した欠損金の繰越控除があるケースでは、請求書控えの保管期間は10年間に延長されるというものです。
欠損金とは、法人税を計算する上で、所得計算を行う時に、所得が赤字になる金額のことを意味します。
法人が行う青色申告では、一定期間欠損金を繰り越して、将来の一定期間に発生した黒字と相殺することが可能です。
個人事業主は原則5年間
個人事業主の場合、請求書の控えの保管期間は原則5年です。
起算点は、法人の場合と同じく、確定申告の提出期限の翌日からです。
ただし、個人事業主でも、消費税課税事業者の場合は原則7年間の請求書の控えの保管義務を負います。
前々年度の課税売上高が1000万円以下の場合は、消費税が免除される「消費税免税事業者」となりますが、1000万円を超える場合は、「消費税課税事業者」に分類されます。
その場合、法人と同じく、請求書控えを7年間保管する義務が発生します。
請求書の控えの管理方法にはどのような方法があるか
請求書の控えの保管は、原則的には紙で保管するのが一般的です。
しかし、要件を満たせば、電子データによる保管が可能です。
ここでは、請求書の控えの保管方法について、紙の場合と電子データの場合に分けてご紹介します。
紙による保管
紙で保管する時は、問い合わせがあった場合にすぐに対応できるように整理するのがポイントです。
取引先が少ない場合は、月別にまとめるのがおすすめです。
この方法の場合、毎月の業務、経理の動きを把握しやすく、分類する手間が大幅に削減できます。
取引先が多い場合は、取引先ごとに請求書控えを分類するのが妥当でしょう。
分類に手間はかかりますが、取引先とのやり取りを把握しやすく、請求書に関する問い合わせがあった場合に、すぐに対応できるというメリットがあります。
電子データで管理する
電子帳簿保存法で求められている要件を満たしていれば、請求書控えを電子データとして保存することができます。
紙による保管は場所も取りますし、印刷や整理の手間がかかるため、管理リソースが比較的多く必要となります。
電子データであれば、管理スペースも節約でき、書類の検索機能が利用できるため、問い合わせがあった場合でも、すぐに対応できます。
では、電子データとして管理する時に求められる要件とはいったいどんなものがあるのでしょうか。
それは、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2点です。
真実性の確保とは、保存されたデータが改ざんされないということです。
これを担保するため、「電子署名」や「タイムスタンプ」を請求書控えに記載する必要があります。
そして、可視性を確保するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 誰でもすぐに請求書控えを確認できるように、保存場所に操作マニュアルを備え付ける
- システムの概要書を添付しておく
- データの検索ができるようにしておく
これらが、可視性の確保に繋がります。
コンピューターにより作成された請求書の保管について
国税庁が発行しているパンフレットの中で、「自己がコンピュータを利用して作成した帳簿」は電子データのまま保存可能とされています。
これはパソコンで作成され、電子メールへの添付あるいはウェブサイトからのダウンロードによって配布された帳票のことを指します。
なお、「自己がコンピュータを利用して作成した帳簿」とは、パソコン等の専用ソフトを利用して作った書類全般を指します。
この法律により、パソコンで作成した請求書控えも電子データとして保管することが認められております。
インボイス制度が導入されれば、請求書控えを発行することが義務付けられ、法人の場合は原則7年の保管を行う責任を負います。
ただし、請求書内容を改ざんができないシステムを利用することを前提としていることなど、クリアしなければならない条件がいくつかあります。
電子取引の請求書について
電子取引の場合、その取引情報を保存しておくことが、電子帳簿保存法によって定められています。
電子取引とは例えば以下のようなことが当てはまります。
これら取引情報の中には、請求書の控えの情報も含まれています。
請求書の控えの管理についての注意
請求書の控えを管理する場合には、気をつけなければならない事項がいくつかあります。
ここでは、請求書の控えを管理する上で注意する点について解説します。
入金の状態によって管理する
請求書の控えの管理を行う上で重要なことの一つに、入金が済んでいるのか、入金待ちであるかという点があげられます。
入金の期日が来るまでは、入金待ち状態として管理します。その場合、入金の確認を行いやすいように、支払い期限順でファイリングすると管理しやすいでしょう。
支払い期日になったら入金を確認し、確認でき次第入金済みに分類して保存します。
実際に入金された日付も記録しておくと、後々管理し易いと考えられます。
請求書番号を付ける
次に請求書の控えを管理する時に注意する点として、請求書番号を付けることが挙げられます。
日々の取引の中で、請求書の枚数は膨大な数になることが予想されます。
そこで、請求書の控え一つひとつに請求書番号を割り当てておくと、後で請求書を管理する際に、スムーズに保管を行えるようになることが期待できます。
請求書番号を付ける義務は事実上ありませんが、請求書番号を付けることで、格段に管理、保管がしやすくなることは間違いありません。
番号の付け方は、取引先ごとに規定している取引先コードと、請求日を組み合わせたものにすると、より管理しやすくなります。
レシートの管理に注意する
次にレシートについてです。
レシートと請求書はイメージが似ていますが、違いがあります。
請求書は取引で発生する金銭を請求するために発行される書類のことを意味します。
それに対して、レシートは取引に際し、お金を払ったことを証明する書面のことを指します。
レシートの管理も、請求書の控えの管理に繋がりがあるので、大切な書類の一つです。
レシートの管理についての注意点は、感熱紙で印刷されることが多いので、時間が経つと印刷された内容が消えてしまうことがあることです。
経費を証明するレシートの場合は、原本でなくてもよく、コピーして保管するという方法もあります。
また、レシートをスキャンして電子データとして管理したり、スマートフォンでレシート撮影し、電子化するという方法も有効です。
電子データを国税庁が認めている体裁に整えること
最後に注意するべきことは、電子データで管理する場合に、請求書を国税庁に認められている体裁に整える必要があることです。
現在では、スキャナーやスマートフォンによる撮影で、簡単に書面を電子化できるようになりました。
しかし、ただ書面を電子化しただけでは、請求書の控えとしては認められません。
理想を言えば、取引先と同じタイミングで、電子化を進め、既存の取引書類の電子化サービスを利用することです。
ただこれは難しいケースが多いので、現実的には紙の書類をPDF化するためのマニュアルを作成し、それを社員教育の一環で周知し、社員間に浸透させ、正確に請求書の控えの電子化を行える土壌を整えることが有効と言えるでしょう。
この他にも、紙の原本を破棄する時期を設定したり、外部に電子化した情報が漏洩しないようにセキュリティ面を強化したりすることも、請求書の控えの電子化には重要なことです。
また、電子化された請求書の控えを扱えるパソコンを限定し、電子データに接触できる人数を制限するという方法も、電子化した請求書控えを高セキュリティで管理する方法として挙げられます。
請求書の原本保管は外部倉庫保管の利用も便利
請求書の原本保管を行うには、それなりのスペースが必要です。
そこで、利用をおすすめしたいのは、外部倉庫を利用するという方法です。
受け取った請求書は欠損金額がある場合、最長で10年保管する必要があります。また、インボイス制度が導入されると、請求書を発行する側も、原則7年の保管義務が発生します。
請求書の電子化は、各企業が取引書類の電子化サービスを随時導入していくようになることが予想されるので、電子化が推進されることは間違いないでしょう。
しかし、紙で管理されるケースも直近では多くあると予想されます。
その管理スペースが、自社で賄えない場合は、外部の倉庫を借りて、そこに紙の原本を保管するのが、順当な方法でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまで、請求書の控えとは何か、請求書を保管しなければならない期間、請求書の管理の方法にはどのような方法があるか、請求書の控えを管理する時の注意点などについて解説してきました。
この記事のポイントを整理すると以下の通りとなります。
- そもそも請求書には2種類あり、「取引先へ送付する請求書」と「取引先から受け取る請求書」がある
- 取引の記録や証拠を残すため、請求書の控えを作成した場合は、発行者側にもその請求書の控えの保管義務が発生する
- 2023年10月から導入される制度である「インボイス制度」では、請求書の控えの作成、保管義務が生じる
- 請求書の保管期間は法人であれば基本的に7年間、個人事業主の場合は5年間になる。ただし、法人の場合、欠損金額がある時には、最長10年年間の保管義務を請け負う
- 請求書の管理方法には、従来からの紙による管理と、電子化データによる管理の2通りの方法がある
- 請求書の管理を行う上での注意点は、入金の状態をきちんと把握すること、請求書番号を付加することなどが挙げられる
- 請求書の電子化は今後進むことが予想されるが、当面は紙による管理も多く行われると思われるので、その場合は、外部倉庫を利用して、管理スペースを確保するという方法もある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
<参考サイト>
マネーフォワード クラウド請求書:請求書の控えの保存期間は原則7年!管理方法なども解説
NXワンビシアーカイブス:請求書の保管期間とは?保管方法や実務の注意点も解説
jinjer Blog:レシートは領収書の代わりにできる?違いや法的効力を解説
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