こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
製造業に限らず全ての業種、企業において必要なのが「経理」という仕事です。
会社にとって血液ともいえる資金の管理や、機密情報を扱う性質上、他の社員からの目に晒されにくくブラックボックス化されてしまう傾向にあります。
経営者の中には「経理のことは担当者に任せきり」と、内部業務にまで目を向けない方も多くいます。しかし、これこそがIT化が遅れてきた製造業において、さらにその中の経理が、他の業種の経理に取り残されてきた現状を生んだ理由ではないでしょうか。
今回は、製造業における経理業務の無駄や効率化のポイントを解説します。
最後に、経営者と経理担当者が考えるべき、今後の経理業務の在り方についてお伝えします。
未来の経理について、一緒に考えていきましょう。
目次
経理業務の無駄とは?
経理は専門職です。税法などと関係し、会社の機密部分を担う仕事であるため、経営者は「担当者に任せきり」に、他の従業員からは内容がわかりづらくなる傾向にあります。だからこそ、経理部門における作業の効率化は担当者任せになりがちで、効率化のメスがなかなか入りづらい環境にあるのです。
さらに製造業は他業種に比べ、受注から資金化までのレンジが長いのが特徴です。その長い期間の中で、仕入れや売上、各部門とのやりとりなど経理部門は複雑に連携していきます。
「業務の効率化には常に取り組んでいる」という会社でも、経理部門に目を向けたことはなかったというケースも多いかもしれません。だからこそ、経理部門の業務の見直しは、定期的に行っていくべきなのです。
それでは、経理部門にありがちな無駄とは何があるのでしょうか?一つずつ確認していきましょう。
二重作業による無駄
みなさんの会社には、勘定科目のゴム印や紙の伝票がまだ残っていませんか?これは昔ながらの経理仕事の名残です。会計ソフトなどによる自計化がされる前は、経理といえばひたすら伝票を起票し、集計し記録をするのが仕事でした。
総勘定元帳も手書きをしていたのです。このような場合、材料を買掛金で購入するだけでも、大変な伝票の起票作業などの業務がありました。
- 仕訳伝票の起票(借方:材料費 / 貸方:買掛金)
- 仕訳伝票を元に、買掛金元帳に記帳
- 仕訳伝票を元に、材料費元帳に記帳
- 取引先から請求書がきたら、買掛金元帳と突合
- 支払いしたら仕訳伝票の起票(借方:買掛金 / 貸方:普通預金など)
- 仕訳伝票を元に、買掛金元帳に記帳
- 仕訳伝票を元に、預金元帳に記帳
ざっと挙げただけでも、以前はこれだけの作業が発生していたのです。
もちろん普通預金から支払いをするには、銀行の払戻伝票も起票しなければならないでしょうし、社内手続きも他に発生するかもしれません。会計ソフトなどを導入し自計化されている場合でも、一部この作業が残っているケースが多いのです。
元々この「仕訳伝票を起票する」という作業は、神聖ともいえる経理の大切な仕事でした。字の修正は、二重線をひいて訂正印を押す、修正ペンを使うなんてあり得ません。自計化が導入されても会計ソフトはあくまでも「副本」であって、手書きで書いた伝票や元帳を「正本」ととらえている経理担当者がまだまだ多いのです。
自計化し、伝票の持つ意味合いが薄くなり、または不必要になっても、なかなか経理担当者は無くせずに、業務として生き残っているケースが多く見受けられます。
会計ソフトに入力するだけで、伝票の記帳、各種元帳への記帳も同時に済んでいます。銀行と会計ソフトが連動していれば、振込の仕訳も自動で会計ソフトに入力されていきます。会計ソフトがやってくれている作業を、わざわざ手作業で二重に繰り返す、そんな無駄が経理業務にはありがちです。
不要作業による無駄
上述した二重作業による無駄に少し似ていますが、ビジネスモデルや時代の変化に伴って不要となった業務でも、そのまま残しておくケースも多く見受けられます。
実際にあった例をご紹介しましょう。
以前、とある製造業に新しく入った若手経理マンから相談がありました。
「月の初めの1週間は毎日8時間、朝から晩まで取引先からの請求書を、紙の元帳に転記するのが仕事になっている。これが必要な業務だとは思えないし、腱鞘炎になって辛い」
聞けば、仕入先200社以上から送られてくる請求書を、その明細に至るまで全て紙の元帳に転記するのが、固定の業務になっているそうです。1社の請求書には1か月分の取引明細が記載されており、多い仕入先だと200行以上もあります。品名まで事細かに転記しなければならないそうです。
誤記入はもちろん二重線を引いて朱記訂正、訂正印が必須、書き間違いが続くとお叱りを受けるとのことで、困り切っている様子でした。当該の会社はすでに自計化もされていたのですが、5人の経理担当者のうち、会計ソフトを扱えるのはその若手経理マンのみでした。
5人で1週間かけてきれいに転記した買掛金元帳の行き先は、どうなっていたと思いますか?丁重にファイリングされ、書類棚に並べられているそうです。
「買掛金元帳は会計ソフトにあり、明細としては請求書と納品書の原本がある。この膨大な作業は必要ないから無くそう」と根気よく何度も説明、説得をしましたが、最初はだれも聞く耳を持ってくれなかったそうです。その後、経営陣、会計事務所も交えて話をすることで、やっとこの業務をなくすことができたとのことでした。
内容の大小こそあれ、経理はよくも悪くも他の部署から目につきにくく、経営陣からも特別視される傾向があります。そのため、業務がブラッシュアップされずに起きる弊害がたくさんあるのです。
業務の属人化による無駄
製造部門から出荷部門へ、営業部門から生産管理部門へ、社内での人員配置は業態の変化や生産計画に応じて、常に行われるものです。しかし、経理部門に関しては人の異動を頻繁に行わないのが一般的です。
経理部門には、会社の機密情報が集まってくるからです。時には厳しい資金繰りの状態や、従業員一人一人の給与情報も、経理が取り扱う数字に含まれます。
情報共有は製造業にとって大切な要素ですが、経理で扱う情報は特殊な数字が多いのです。そのため、他の職種に比べて経理部門で働く人は、企業の中で固定されている傾向にあります。結果、業務の属人化というデメリットを生んでしまいます。
業務の属人化は、ただでさえブラックボックス化しやすい経理業務を、さらに可視化しにくい状況にしてしまいます。
あなたの会社の経理担当者は、全部で何名いますか?その人数が本当に必要ですか?自計化が進む中、経理で担っていた作業的な部分は大幅に短縮されたのに、人数はそのままではないでしょうか?
さらに経理部門には、業務の属人化を加速させる風土がみられます。
特殊な情報を扱う特性上、経理で働く担当者には「聞いていないふり、知らないふり」をする癖がついてしまっているのです。これは、「職務でしか知りえない情報は、聞こえても聞こえていないことにする」ということです。
極端な例を挙げると「来期以降、わが社はA社に吸収合併される」という情報が入ってきたとします。いち従業員である経理担当者にとってもショッキングなニュースですが、これは当然、他の従業員にぺらぺらと話してはいけません。顔に出してもいけません。もちろん家族や友人にも言えません。
「聞こえないふり」をして淡々と業務を進める、こういった癖がついているのです。そういった経理特有の風土が、業務の属人化をさらに強固なものにしていると言えるでしょう。
また、業務の属人化・ブラックボックス化は無駄や不正の発覚を難しくさせます。自社でそういったことが起きないよう、可視化させる仕組みづくりが必要になります。
経理業務を効率化させるために必要なことは?
経理の業務から無駄を無くし、効率化を進めていくためにはどうすればいいのでしょうか。ポイントをみていきましょう。
業務工数を可視化して見直しをかける
まずはすべての業務を洗い出し、それを全て工数に可視化してみましょう。
費用が発生しているものは、費用も書いてみるとあとから見直しがしやすくなります。
下記の表を参考にしてみてください。
業務名 | 担当者 | 業務内容 | 発生頻度 | 工数 | 備考 |
小口管理 | 木村 | 毎日の出納業務・残高確認・ 月末に金種表作成 | 毎日 | 30分×20回+1時間 (金種表)=11時間 | |
請求書発行 | 佐藤 | 15日と月末に請求書を発送する (合計500通ほど) | 月に2回 | 4時間×2回=8時間 | 郵送料94円×500通=47,000円 |
洗い出しが終わったら、ECRS(イクルス)の原則で業務を見直してみましょう。
ECRSの原則は、業務改善を実現する4つの視点です。次の順番で業務の改善を図っていくことが、改善の効果も大きく、障壁となるトラブルも少なくなるとされています。
- Eliminate (排除) この作業は必要なのか?
- Combine (結合) 他の作業とまとめられないか?
- Rearrange(再配置)作業の組立を変えて効率化できないか?
- Simplify (単純化)作業をもっと簡単にできないか?
例えば、小口管理をこの原則で見直した場合はどうでしょうか。
排除、結合、再配置の視点で見直した時に、具体的な改善は浮かびませんが、単純化することはできそうです。
月末に金種表を作成するのに、1時間かかっているので、どうやらここに改善の余地がありそうです。手書きで金種表を作っているのかもしれませんし、そもそも小口現金の残高を多く持ちすぎなのかもしれません。
そういった改善策も、業務内容と工数を洗い出すことで見えてくるのです。
第三者と経営陣の目
効率化のステップになくてはならないのは、第三者の目と経営者の目です。
経理担当者だけで、業務改善を進めることは至難の業といえるでしょう。上述したように、業務への指摘や踏み込みがしづらい相互体質があるからです。
1人経理の会社においても、経理担当者は自らの業務を正しいと思ってやっているでしょうから、なかなか効率化のスピードは加速しません。
第三者の目で効率的なのが、会計事務所の担当者です。会計事務所の担当者はいろいろな会社の経理業務を知っていますし、経理担当者からしても、業務の内容をいろいろと気を回さずに話すことができます。業務改善のいいアドバイザーになってくれるでしょう。
また、とても大切なのが「経営陣の目」です。経営者の中には、担当者に任せきりで確認もしなければ、数字に疑問を持たない人も少なからずいます。
これは経理担当者にとってとても残念なことですし、不正や無駄が発生しやすい原因にもなります。経理担当者に任せきりにせず、「一緒に会社の数字を見ていく」経営陣の目線を感じることがとても重要なのです。
未来の経理とは?効率化をしながら経理担当者がやるべきこと
ここまで経理業務における無駄と効率化のポイントをみてきましたが、今後の経理業務の在り方がどうなっていくのか、考えたことがあるでしょうか?
確実にIT化は進み、いわゆる「作業」とされる部分は、人の手をそれほど必要としなくなるでしょう。5人の経理担当者がやっていた作業量が、1人で事足りるようになっていくことは明白です。1人どころか0.5人で賄えるかもしれません。
効率化をすることは、自分たちの仕事が無くなること、このように感じている経理担当者も少なからずいるのです。
しかし、本当にそうでしょうか。未来の製造業の経理について、一緒に考えてみましょう。
過去の集計から未来につなげる数字の提供へ
いわゆる「経理事務」という仕事は、過去の数字をいかに正確に集計・記録・保管するかということが重要な業務でした。しかし、今後さらにIT化や電子保存が進んでいくと、この重要業務のほとんどは人の手に依らなくなります。
手が空いた経理担当者はどうなるのでしょうか?5名でやっていた経理業務を、1名で賄えるようになってしまったら、他の4名は他部署に異動するしかないのでしょうか?
それはもったいないです。数字の取り扱いに慣れ、その意味をわかっているからこそできることがたくさんあるはずです。経営陣と近い距離感だからこそ、できることもあります。会社の生産活動の中で、有益に活かせる数字がないかも考えてみましょう。
経理には過去の数字は流れてきても、未来の情報は流れてこないケースも多く見受けられます。例えば、空いた時間で営業からの情報や今後の経営計画の情報を仕入れ、経理だからこそ作れる会社の未来予測を作ってみてはどうでしょうか。システム導入なども積極的に取り入れ、効率化をしていく中で、これからの経理業務の在り方を考えてみましょう。
財務会計から管理会計へ
会計には大きくわけて「財務会計」と「管理会計」があります。
中小の製造業の場合、財務会計のみで管理会計ができていない企業が少なくありません。
財務会計は企業として営業活動する以上、必ず実施しなければならないのに対し、管理会計は企業ごとに任意で実施することができるのがその理由です。
財務会計 | 管理会計 | |
目的 | 外部(銀行や株主などへの利害関係者)への報告 | 会社内部で企業実績の把握・管理・改善に役立てる |
報告先 | 外部利害関係者 | 経営陣・管理職 |
報告資料 | 財務諸表(貸借対照表・損益計算書他) | 会社により任意 |
備考 | 社外の利害関係者に提出する目的で、各企業が独自の方法で行うのではなく、決められたルールに従って実施しなければならない | 自社の経営に活かすための会計。社内のみで使用するため、決まったルールはない。各企業が自社の目的に応じた任意の方法で実施できる |
会計といった場合、多くはこの財務会計を指していますが、この財務会計にはもうすでにIT化が進み、かなりの業務の効率化が図られています。
財務会計も企業にとっては大切な会計ですが、今後の製造業の経理のキーワードとなるのが「管理会計」ではないでしょうか。自社にあった数字、資料を使って今後の経営に役立てるのが目的の会計ですので、どんな数字や資料が自社に合っているか、それを考えるのはシステムにはできません。
まとめ
システムの力と、経理担当者の力を合わせて、常に経営陣に有益な情報を提供していくのが未来の経理業務の在り方ではないでしょうか。
自社の利用目的や利用範囲、利用シーンなどを具体的にイメージし明確にし、その上でいろいろな販売管理システムを検討・導入をしてみてください。
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