こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
企業や個人が事業を行うには、専用の機械設備が必要な場合もありますが、それ以外でもPCやコピー機など様々な機器が必要になります。これらの機器を事業開始時に全て自前で揃えるとなると、高額の費用がかかります。そこで、自前で揃えられない機器をリース会社から賃借するリース取引が検討候補に挙がります。
当記事では、2008年度から適用されているリース会計基準の概要と、2019年の国際財務報告基準のIFRS16号におけるリース取引に関する取り決めの変更内容について解説します。
目次
リース会計基準の概要
現在のリース会計基準は、2007年3月30日に企業会計基準委員会から、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」が公表されたところから始まっている比較的新しい会計基準です。
はじめに、リース会計基準の概要と取引の種類について解説します。
適用開始時期
現在の考え方の元になるリース会計基準は、2008年4月1日以後開始する事業年度から適用されています。また、四半期決算については、実務面での影響を考慮し、2009年4月1日以後開始する事業年度から適用となっています。
なお、リース会計基準適用前に賃貸借処理を行っていたリース取引については、引続き賃貸借処理の継続が可能です。
適用範囲
リース会計基準の適用範囲は、①金融商品取引法の適用を受ける会社並びにその子会社及び関連会社、及び②会計監査人を設置する会社及びその子会社、とされています。
これらの企業を除く株式会社(いわゆる中小企業)は、「中小企業の会計に関する指針」に基づき例外が認められており、所有権移転外ファイナンスリース取引は、通常の賃貸借取引に準じた会計処理が可能です。
リース取引の種類
リース取引とは、物件の所有者となる貸手が、借手に対し、約束した期間にわたり当該物件を使用する権利を与える代わりに、借手は貸手に対し約束した使用料を支払う取引です。このリース取引は、取引の内容により以下のとおり分類されます。次の章で詳しく解説します。
ファイナンスリースとオペレーティングリースの概要
ファイナンスリース取引とは、リース期間中に契約を解除できず(解約不能)、かつ借手がリース物件の経済的利益を受けるかわりに、リース物件の使用に伴って発生するリース料を負担する(フルペイアウト)取引です。このファイナンスリース取引は、さらにリース物件の所有権が借手に移転する「所有権移転ファイナンスリース取引」と、それ以外の「所有権移転外ファイナンスリース取引」に分類されます。
なお、ファイナンスリース取引に該当しない取引を、オペレーティングリース取引といいます。
ファイナンスリース取引の判定基準
ファイナンスリース取引に該当するかどうかは、「解約不能」かつ「フルペイアウト」であると説明しましたが、具体的には以下のいずれかに該当する場合、ファイナンスリース取引と判定します。
現在価値基準 | 解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が、 見積現金購入価額の概ね90%以上となる場合 |
経済的耐用年数基準 | 解約不能のリース期間が、リース物件の経済的耐用年数の概ね75%以上となる場合 ただし、中古市場の相場等により、上記の現在価値基準の判定結果が90%を 大きく下回ることが明らかな場合、経済的耐用年数基準は対象外 |
「解約不能」かつ「フルペイアウト」を簡単に例えると、お金を借りて買ったものを分割払いで返済するイメージです。
所有権移転ファイナンスリースの判定基準
次に、ファイナンスリースと判定された取引について、以下3つのいずれかに該当する場合は、「所有権移転ファイナンスリース取引」になります。所有権移転ファイナンスリースは、リース期間が満了した時点でリース物件の所有権が貸手から借手に移ります。
譲渡条件付リース取引 | リース期間終了後またはリース期間中に、 リース物件の所有権が借手に移転するリース取引 |
割安購入選択権付リース取引 | リース期間終了後またはリース期間中に、リース物件の価値と比較して著しく割安な価格で買い取る権利が与えられていて、 その権利の行使が確実に予想されるリース取引 |
特別仕様物件のリース取引 | リース物件が、借手の用途にあわせて特別仕様で製作され、 当該リース物件を貸手が再度第三者にリース又は売却することが困難であり、 実質借手によってのみ使用されることが明らかなリース取引 |
所有権移転外ファイナンスリースの概要
ファイナンスリース取引のうち所有権移転ファイナンスリースに該当しない取引は、所有権移転外ファイナンスリースになります。所有権移転外ファイナンスリースは、リース料を全て支払ってもリース物件の所有権は貸手のままで借手には移りません。そのまま使用したい場合は、再リース料を支払うか、そのリース物件を買い取るなどの手続きが必要です。
オペレーティングリースの概要
「解約不能」かつ「フルペイアウト」のファイナンスリースに該当しないリース取引は、全てオペレーティングリースに該当します。オペレーティングリースの場合、所有権は当然貸手に残るため、リース期間満了に伴い資産の返却が必要となり、もし借手の責によらない故障が発生した場合の修理費用も貸手が負担します。借手はそのリース物件を借りているだけという状態です。
リース取引の会計処理
前項では、所有権移転ファイナンスリース、所有権移転外ファイナンスリース、オペレーティングリースについて解説してきました。次は、それぞれの会計処理について具体例を交えて解説します。
所有権移転ファイナンスリース
所有権移転ファイナンスリースは、リース期間が満了した時点でリース物件の所有権が貸手から借手に移るため、通常の売買取引に準じた会計処理を行います。以下の事例をもとにして会計処理をみていきましょう。
【事例】
現金で資産を購入した場合の金額:1,200千円
リース契約における支払額:1,500千円(25千円×5年間60回)
【仕訳】
所有権移転ファイナンスリースのリース資産計上額は、①リース物件の貸手の購入価額、②貸手の購入価額が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値または借手の見積現金購入価額のいずれか低い額とします。
また、決算時の減価償却費の計上は、通常の固定資産取得時と同様、耐用年数に応じて行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 備考 | |
リース資産取得時 | リース資産 | 1,200千円 | リース債務 | 1,200千円 | 売買取引に準じて 現金で購入した場合の金額で計上 |
リース料支払時 | リース債務 支払利息 | 20千円 5千円 | 現金 | 25千円 | 月次のリース料は元金と 支払利息に分けて計上 |
決算時 | 減価償却費 | ××千円 | 減価償却 累計額 | ××千円 | 通常の固定資産同様、 耐用年数に応じた減価償却費を計上 |
所有権移転外ファイナンスリース
所有権移転外ファイナンスリースは、リース期間が満了しても所有権が貸手から借手に移りませんが、実態は「解約不能」かつ「フルペイアウト」のファイナンスリースに該当するため、通常の売買取引に準じた会計処理を行います。先ほどと同じ事例で会計処理をみていきましょう。
【事例】
現金で資産を購入した場合の金額:1,200千円
リース契約における支払額:1,500千円(25千円×5年間60回)
【仕訳】
所有権移転外ファイナンスリースのリース資産計上額は、①リース物件の貸手の購入価額が明らかな場合は、リース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額のいずれか低い額、②リース物件の貸手の購入価額が明らかでない場合は、リース料総額の割引現在価値と借手の見積現金購入価額のいずれか低い額とします。
また、決算時の減価償却費の計上は、所有権が借手に移らないことより、リース期間5年を耐用年数とするリース期間定額法により行います。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 備考 | |
リース資産取得時 | リース資産 | 1,200千円 | リース債務 | 1,200千円 | 売買取引に準じて現金で購入した場合の金額で計上 |
リース料支払時 | リース債務 支払利息 | 20千円 5千円 | 現金 | 25千円 | 月次のリース料は元金と支払利息に分けて計上 |
決算時 | 減価償却費 | 24千円 | 減価償却 累計額 | 24千円 | リース期間を耐用年数とするリース期間定額法で計上 1,200千円÷5年 |
オペレーティングリース
オペレーティングリースは、ファイナンスリース以外の取引となり、所有権は当然貸手に残るため、会計処理も通常の賃貸借と同様の方法で行います。以下の事例をもとにして会計処理をみていきましょう。
【事例】
現金で資産を購入した場合の金額:1,200千円
リース契約における支払額:1,500千円(25千円×5年間60回)
【仕訳】
オペレーティングリースの場合は、ファイナンスリースの取引のようなリース資産や減価償却費の計上はありません。通常の賃貸借同様、リース料支払い時に支払リース料を計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 備考 | |
リース資産取得時 | - | - | - | - | 仕訳なし |
リース料支払時 | 支払リース料 | 25千円 | 現金 | 25千円 | 月次のリース料を支払リース料として計上 |
決算時 | - | - | - | - | 仕訳なし |
新リース会計基準の概要
ここまで2008年度から適用されているリース会計基準について解説してきました。
時を経て2019年には国際財務報告基準のIFRS16号によりリースに関する取扱い変更が行われ、新リース会計基準が適用されています。最後に新リース会計基準の改正内容について解説します。
新リース会計基準の改正内容
2019年には国際財務報告基準のIFRS16号によりリースに関する取扱い変更が行われ、新リース会計基準が適用されています。主な改正内容は次の2点です。
①ファイナンスリースとオペレーティングリースの区分廃止
1つめの改正内容は、ファイナンスリースとオペレーティングリースの区分廃止です。
従来、売買取引に準じて行われていたファイナンスリースはリース資産を計上(オンバランス)し、賃貸借取引と同等のオペレーティングリースはリース資産の計上は不要(オフバランス)とされていました。
しかしながら、今回の改正により、原則すべてのリース取引について資産計上(オンバランス)が求められています。
②少額リース取引のオフバランス化
2つめは、原則すべてのリース取引について資産計上(オンバランス)が必要とされましたが、少額または短期のリース取引についてはオフバランス処理が認められたことです。条件が完全に明記されているわけではありませんが、金額は5,000米ドル以下、期間が1年未満の取引は、少額または短期のリース取引の目安と考えられています。
新リース会計基準適用による財務諸表への影響
新リース会計基準の適用により、貸借対照表および損益計算書にどのような影響を及ぼすでしょうか。リース資産のオンバランスによるそれぞれの影響について解説します。
①貸借対照表への影響
従来、オペレーティングリースはリース資産の計上不要(オフバランス)とされてきましたが、今回の改正によりオンバランスが必要となりました。これにより、貸借対照表に計上されるリース債務の金額が増加します。これは総資産額の増加につながるため、自己資本比率(自己資本÷総資産)が低下します。
②損益計算書への影響
オペレーティングリースの取扱い変更は損益計算書にも影響します。従来、オペレーティングリースのリース料は、全額費用処理していましたが、新リース会計基準ではオンバランスが必要となり、費用化されるのは減価償却費と支払利息です。
これにより、仕訳がやや複雑になることもありますが、費用化できる金額が減少するため、短期的には営業利益の増加につながります。
まとめ
当記事では、2008年度から適用されているリース会計基準の概要と、2019年から適用のIFRS16号におけるリース取引に関する取り決めの改正内容について解説しました。現状はいわゆる大企業のみに適用されている基準になりますが、日本の会計基準も国際会計基準に沿った見直しが行われているため、中小企業に適用が拡大する可能性は十分にあります。
既存の会計基準では、オペレーティングリースの賃貸借処理(オフバランス)が認められていましたが、新リース会計基準ではファイナンスリースの場合と同様の資産計上(オンバランス)が必要です。従来はリース料として全額経費処理できていた費用が、資産計上の上減価償却費の計上が必要になっています。会計処理が煩雑になることは避けられないため、早めに対策を検討しておくことが重要です。
参考:企業会計基準委員会 「企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準」
参考:企業会計基準委員会 「企業会計基準適用指針第16号 リース取引に関する会計基準の適用指針」
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