MRRとは?4種類のMRRとそれぞれの計算式・改善の方法を解説!

MRRとは?4種類のMRRとそれぞれの計算式・改善の方法を解説!

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

MRRとは、Monthly Recurring Revenueの略です。英語でMonthlyは「毎月の」、Recurringは「繰り返し」、Revenueは「収益」という意味で、日本語では「月間経常収益」や「月次経常収益」と表されます。

この記事では、MRRの意味や計算方法、使い方や改善方法を詳しく説明していきます。

MRRとは?

MRRとは、Monthly Recurring Revenue(マンスリー・リカーリング・レベニュー)の略です。

Monthly は「毎月の」、Recurringは「繰り返し」、Revenueは「収益」という意味で、日本語では「月間経常収益」や「月次経常収益」と表されます。

簡単に言うと、「毎月決まって発生する売上」を意味します。その対象は「毎月決まって発生する」ものなので、初期費用・追加費用などの一時的な売上は除いて計算します。

例えば、定額制のプラン販売を展開しているビジネスモデルでは、毎月の定額利用料はMRRに含めますが、初期費用や解約手数料、買い切りのオプション料金などは含めずに計算します。

MRRを計測する理由

SaaSやサブスクリプション型ビジネスにおいて重要なKPI(重要業績評価指標)に位置付けられているMRR。

「事業の成長性を評価するのに使いたいけれど、どんな指標なのかを知りたい」
「MRRを改善するためには何をどうすればいいのかわからない」

そんなお悩みを解決するための指標となるのがMRRです。

MRRは、ビジネスの安定性・成長性・課題を知るための判断材料となります。成長性・安定性を示すMRRの割合が高ければ、投資家へのアピールポイントになりますし、課題を知ることで、今後の改善策を打ち出しやすくなります。

4種類のMRR

MRRは、主に次の4つにわけることが出来ます。それぞれの意味と簡単な算出例もみていきましょう。

4種のMRR

New MRR(新規MRR)

New(新しい)という言葉からも想像がつくように、その月に獲得した新規顧客から生み出されるMRRです。

スタートアップ企業や、サービスを開始してから間もない事業に特に注視される指標です。投資家はこの新規MRRを、企業や事業の成長性を判断する重要な指標にしています。

〈例〉当月は新規顧客50人が10,000円/月のプランに加入した。初期費用は5,000円/人である
   New MRR=10,000円×50人=500,000円

※初期費用の5,000円×50人=250,000円は一時的な売上なので、MRRの計算には含めません。

Expansion MRR(アップグレードMRR)

Expansionは日本語で「拡大・拡張」を意味し、前月よりもアップグレードなどで取引額が増加した既存顧客から生み出されるMRRです。

このMRRが大きいほど顧客ロイヤリティが高く、ビジネスが健全に成長していると判断することができます。

〈例〉当月は既存顧客10人が10,000円/月のプランから50,000円/月にプラン変更した。
   Expansion MRR=40,000円×10人=400,000円

※プラン変更によって生み出された差額分が、Expansion MRRとなります。

Downgrade MRR(ダウングレードMRR)

Downgradeはそのまま「ダウングレード」としてカタカナ表記され、日本語でも同じ意味で使われており、「格下げ」を意味します。

Expansion MRRとは反対に、前月よりも取引額が減少した、既存顧客から失ったMRRを意味します。このMRRが小さいほど、ビジネスは健全に成長していると判断することができます。

〈例〉当月は既存顧客10人が50,000円/月のプランから30,000円/月にプラン変更した。
   Downgrade MRR=20,000円×10人=200,000円

Contraction(収縮・縮小)MRRと呼ばれることもあります。

Churn MRR(解約MRR)

Churnは日本語で「離反・解約」を意味します。当月にサービスを解約した、既存顧客から失ったMRRを指します。当然ですが、このMRRが小さいほどビジネスは健全と判断されます。

〈例〉当月は既存顧客20人が50,000円/月のプランを解約した。
   Churn MRR=50,000円×20人=1,000,000円

MRRが重要な理由は成長性を表す指標であるため

投資家はSaaS事業の「成長性」「効率性」「継続性」を重要視しています。そしてこの3点の中でも、特に彼らの目を引くのが「成長性」を表す指標であるMRRなのです。

自社事業がどのフェーズにいるのかによっても、投資家が注目するMRRは異なります。スタートしたばかりの企業においてはNew MRRで新規顧客獲得率を、事業が安定して継続している企業においては、ほかの3つのMRRで顧客の企業に対する愛着や信頼度(顧客ロイヤリティ)をみることができるのです。

つまり、MRRは事業の成長性と安定性を示す指標だといえます。MRRの数字が高ければ成長性と安定性が高いことを示し、MRRを分析することで中長期的な収益予測をたてることも可能になるのです。

実際にSaaS企業は、事業ごとの決算資料でMRRの推移を発表する傾向にあります。このことからも、企業や投資家にとっていかにMRRが重要な指標であるかがわかるでしょう。

また、MRRはSaaS Quick Ratioの算出にも使われます。SaaS Quick Ratioもビジネスの成長率を測るための指標で、MRRの増加と減少のバランス(割合)を表します。

事業のスタート段階では、減少の割合が少ない為にそれほど重要視はされませんが、ある程度の一定期間が経過した事業においては、4つのMRRの指標を総評できる重要な指標となります。

MRRの具体的な計算方法

MRRは「月額利用料×顧客数」でシンプルに求めることができます。しかし、実際には4つのMRRを使って算出する以下の方法が一般的です。単純に「月額利用料×顧客数」で求めただけでは、具体的な事業の改善策などが見えてこないからです。

当月MRR = 前月MRR+(New MRR+ Expansion MRR- Downgrade MRR- Churn MRR)

英文字の羅列だと難しく感じてしまいがちですが、次のように平たく日本語に直すと、だいぶイメージしやすくなるのではないでしょうか。

当月MRR=前月MRR+(新規顧客で増えた分+プラン格上げで増えた分-プラン格下げで下がった分-解約で失った分)

下の表を使って、具体的なMRRの計算方法を確認してきましよう。


1月2月3月4月5月
A社30,00030,00045,00030,00030,000
B社
40,00030,00030,00030,000
C社30,00060,00060,00030,000解約
当月売上60,000130,000135,00090,00060,000
当月MRR60,000120,000120,00090,00060,000
※当社は30,000円/月と60,000円/月の2つのサービスプランを展開している。
※初回費用は10,000円、解約手数料は発生しない。
※別途買い切りオプション品15,000円のサービスがある。

〈2月〉売上130,000円・MRR 120,000円

前月MRR 60,000+(New MRR 30,000+ Expansion MRR 30,000- Downgrade MRR 0- Churn MRR 0)
=当月MRR 120,000

New MRR=30,000・・・新規顧客B社 30,000円/月加入分
Expansion MRR=30,000・・・既存顧客C社 30,000円/月→60,000円/月プラン変更分
Downgrade MRR=なし
Churn MRR=なし

※B社の初回費用10,000円は、一時的な費用であるためMRRの計算には含めません。

〈3月〉売上135,000円・MRR 120,000円

前月MRR 120,000+(New MRR 0+ Expansion MRR 0- Downgrade MRR 0- Churn MRR 0)=当月MRR120,000

New MRR=なし
Expansion MRR=なし
Downgrade MRR=なし
Churn MRR=なし

※A社の買い切りオプション品費用15,000円は一時的な費用であるため、MRRの計算に含めません。

〈4月〉売上90,000・MRR 90,000

前月MRR 120,000+(New MRR 0+ Expansion MRR 0- Downgrade MRR 30,000- Churn MRR 0)=当月MRR 90,000

New MRR=なし
Expansion MRR=なし
Downgrade MRR=30,000・・・既存顧客C社 60,000円/月→30,000円/月プラン変更分
Churn MRR=なし

〈5月〉売上60,000円・MRR 60,000円

前月MRR 90,000+(New MRR 0+ Expansion MRR 0- Downgrade MRR 0- Churn MRR 30,000)=当月MRR 60,000

New MRR=なし
Expansion MRR=なし
Downgrade MRR=なし
Churn MRR=30,000・・・C社の解約により失ったMRR

MRRを使うときの4つの注意点

MRRを使うときにはいくつか注意点があります。

具体的に見ていきましょう。

月額利用料以外の単発の収益は含めない

MRRは「毎月決まった収益」を計算するためのものなので、追加費用や初期費用などの毎月発生しない一時的な費用は含めずに算出します。

月次の売上の計算とは別になりますので注意しましょう。

割引やトライアル期間に注意する

割引をしているプランのMRRを計算するときには、割引後の金額を使って算出するようにします。

例えば、60,000円/月のプランで契約月のみ半額で提供した場合、契約月のMRRは30,000円で計算します。

また、トライアル期間を設けている場合はその期間中の月額利用料はMRRに含めません。トライアル期間中の月額利用料を含めてしまうと、MRRの値が増えてしまいます。すると、トライアル終了後に契約されなかった場合の、解約率が高く計算されてしまうからです。トライアル期間中の月額利用料は、一時期的な収益とみなしましょう。

契約期間が複数ある場合に注意する

年間契約や半年契約など、契約期間が複数ある場合は、それぞれのプランのそれぞれの契約期間毎にMRRを算出します。最終的にそれらをすべて合計して、当月のMRRを算出します。

例えば年間600,000円の料金プランであれば、「600,000÷12=50,000」で月額利用料に直します。その料金プランを契約している顧客数が20人いるなら「50,000円×20人=100,000円」がそのプランの当月のMRRとなります。

支払い遅延分も含めて計算する

月額利用料の支払い遅延が発生している場合でも、MRRに含めて計算します。

実際の入金ベースではなく、発生ベースで計算することで正しい分析をすることができます。

MRRを向上させる方法は?

MRRを向上させる方法は、以下の4つです。

当然ですが、New MRRとExpansion MRRを増やし、Downgrade MRRとChurn MRRを減らしていくことでMRRは向上します。

  • 新規顧客を獲得してNew MRRを改善
  • プランのアップグレードを促してExpansion MRRを改善
  • プランのダウングレードを防いでDowngrade MRRを改善
  • 解約を食い止めてChurn MRRを改善

それでは、具体的に改善策をいくつか見ていきましょう。

MRRを改善するために打つべき手を種類別に解説

新規顧客を増やして、既存顧客にプランのアップグレードをしてもらう、ダウングレードする既存顧客と解約者を減らしたい、でもどうすればいいの?

「これをやれば絶対に成功します!」という正解はないのですが、4つのMRRを分析して何が問題になっているか知ることで、改善策を具体的に考えていくことが出来ます。

New MRRの改善策

マーケティングや、セールス戦略を練り直すなどの対処法が考えらます。

新規契約キャンペーンやクロージング率の改善などのセールス戦略、見込み客への働きかけなどの対策を行っていきましょう。

Expansion MRRの改善策

顧客ロイヤリティを向上させるための施策が必要になります。

顧客単価を上げる努力が重要です。契約単価の高い既存顧客から、優先的にアップセル・クロスセル対策を行っていきましょう。

Downgrade MRRの改善策

サービスの利用頻度が落ちている可能性があります。サービスの品質を向上させることが大切です。

また、サポート体制を構築するなどの、顧客の利用を支える施策も必要です。顧客からヒアリングを行い、サービスの利用頻度や定着を促すなどの改善策を行いましょう。

Downgrade MRRを生み出している既存顧客をないがしろにしてしまうと、ゆくゆくはサービス自体の解約を検討してしまいかねません。

「なぜダウングレードをしたのか?」を丁寧に掘り下げ、顧客の満足度に努めていきましょう。

Churn MRRの改善策

Churn MRRが高いということは、顧客が自社サービスに対し「価値を感じていない」問題が発生していることを意味します。

Downgrade MRRよりも、損失が大きいと思いましょう。

なぜ、解約にいたったのかを徹底的に解明し、解約防止策を練る必要があります。例えば、解約時に丁寧なヒアリングを行って、その解約理由からサービスの改善に活用するなどの対処法が考えられます。

また、既存顧客が離脱しないために、顧客の意見をよく聞き取るなどしてサービス改善に努めましょう。販売価格や販売方式など、ビジネス全体を見直す必要があるかもしれません。

ARRとの違いは何?似ているビジネス指標との違い

MRRと合わせてよく使われるのがARRです。

そして、もうひとつサブスクリプション型ビジネスモデルには重要な、NRRという指標がありますので、そちらも合わせて見ていきましょう。

ARRとの違いは?

ARRとは、Annual Recurring Revenueの略です。

Annual は「毎年の」、Recurringは「繰り返し」、Revenueは「収益」という意味で、日本語では「年間経常収益」や「年次経常収益」と表されます。

簡単に言うと、「毎年決まって発生する売上」を指し、MRRとの違いは、対象期間が月間か年間かの違いになります。

NRRとの違いは?

NRRとは、Net Revenue Retentionの略です。

Netは「正味」、Revenueは「収益」、Retentionは「保持」という意味で、日本語では「売上維持率」と表されます。

NRRはMRRを使って、以下の計算式で算出することができます。

NRR=(月初の合計MRR+ Expansion MRR- Downgrade MRR-Churn MRR÷月初の合計MRR

MRRは対象月の「経常収益」を指すのに対し、NRRは対象月の「収益の維持率」を示します。

New MRRを含めずに計算することが、NRRの大きな特徴だと言えるでしょう。

新規顧客は考慮せずに、既存の顧客だけでどれだけ事業が成長しているのかを測ることができます。

既存顧客の収益が増えていくことは、既存顧客のロイヤリティを獲得していることを意味します。MRRよりNRRに注視する投資家も増えているほど、サブスクリプション型ビジネスにおいては重要な指標になってきています。

まとめ

  • MRRとはMonthly Recurring Revenueの略で月間経常収益のこと
  • MRRとは簡単にいうと「毎月決まって発生する売上」のこと
  • MRRを分析することでビジネスの成長性や安定性を確認できる
  • MRRにはNew MRR / Expansion MRR / Downgrade MRR / Churn MRRの4種類がある
  • MRRは当月MRR = 前月 MRR+(New MRR+ Expansion MRR- Downgrade MRR- Churn MRR)で求めることが出来る
  • MRRを使うときには契約期間の違いやトライアル期間などの取り扱いに注意する
  • MRRを改善するには4つのうちのどのMRRが問題になっているかを知って、対応する改善策を行うことが大切

MRRがいかに重要な指標か、おわかりいただけたと思います。

正しくMRRを算出するためには、契約期間が複数ある場合の管理や、売掛金の管理など、日々の売上計上やその管理をしっかりと行っていく必要があります。

契約管理や請求管理などのシステムをうまく頼ることも必要でしょう。

自社のMRRを正しく計算し、未来の経営に役立てていってくださいね。

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