こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
クラウドによる請求書発行システムを利用すれば、会社のPCからだけではなく、外出先でスマホやタブレット等から遠隔で操作が可能になるため、業務の効率化に対する注目が高まっています。
このような便利なシステムの利用の前に、そのシステムを利用するための自社の環境、いわゆる「内部統制」をしっかりと整備することも大切です。
目次
内部統制の観点からの請求書発行プロセスとは?
多くの事業者では、経理担当者が営業部門から入手した資料に基づいて、売上データを会計システムに登録して、請求データを作成した後に、請求書を紙媒体で発行しています。
これらは、複数の手作業、目視等によっているため、ミスが発生する可能性が高く、また、担当者の属人化になりやすい傾向にあります。
内部統制の観点からは、請求書発行プロセスについて、職務が分離して牽制状況にあること、対象取引が正しいものであること等が求められており、属人化のままでは内部統制が有効に機能していないことになります。
そこで、この内部統制を意識したシステムを活用するためのポイントを説明いたします。
請求書の発行業務は、取引先に商品やサービスを提供した事業者が、売上を計上し、その債権を確定させるための手続きです。
内部統制を維持しながら、請求書そのものの要件を関連法令に準拠させる必要があります。
ワークフロー機能のある請求書発行システムを利用する
ワークフローとは社内申請手続きのことで、請求書の申請から承認・発行までの手続きが対象となります。この機能を実装したシステムであれば、関係者間で承認のための紙ベースでの回覧が不要になる、承認作業を社外からも行える機動性を得られるメリットがあります。
これらの作業履歴がシステムで自動的に記録されることで、承認がない請求書の不正発行を防ぎ、架空請求が発生しないようにする統制活動につながります。
また、この承認を得た後に、請求書の作成・発行スケジュールを設定することで、請求書の発行漏れを防ぐことができます。
請求書の作成を一時停止することや、発行の停止、あるいは請求書の内容に変更が生じた場合にも、速やかに対応できることもメリットです。
内部統制上は、これらの履歴がログとして記録されます。
タイムスタンプの残るシステムを利用する
ペーパーレス化の推進と原本保管の負担軽減を目的に、2020年10月に電子帳簿保存法が改正されたことで、「タイムスタンプ」の手続が緩和される等、普及されやすい環境が整いました。
ここでタイムスタンプとは、「ある時刻に、その電子データが存在していたこと。それ以降改ざんされていないことを証明できること」の技術です。
改正により、請求書等の電子データ(PDF等)が、データを受領する側で、そのデータを改変できないシステムを利用している場合、受領者側でタイムスタンプの付与が不要になりました。
受領者側でタイムスタンプを付す必要がないようにするためには、発行者側でタイムスタンプを付さなければならない点に留意が必要です。
ここでは、データを改変できないクラウドシステムを利用することが、実務的な対応の1つとして考えられています。
システムを利用する際の注意点
クラウドシステムによる請求書発行機能を利用する場合、自社の内部統制に沿った手続きに応じているかどうかが重要です。
職務の分掌
売上内容を最も知るのは営業担当者ですので、営業担当者により請求内容を確認します。請求書の発行およびその後の債権管理・与信管理は、経理あるいは財務部門が担当すべきです。
また、誰がシステムにアクセスできるかのアクセス権限の管理、システムデータの履歴管理(ログ管理)も大切です。
売上の認識基準
基本的には商品を出荷した時点、すなわち「出荷基準」によることが大切です。大企業及び上場企業以外では、引き続き、企業会計原則あるいは税務基準による売上の認識になる事業者が多いと思われます。
売上の過大計上、あるいは架空計上を防ぐために、出荷の事実を持って売上を認識すべきです。
実在性
請求書を発行すると売掛金が計上されます。
この売掛金が、法的な請求権に基づいているのかどうか(商品を出荷しているのか、返品を受けていないか等)の確認が必要です。
また、長期間滞留している売掛金がないかを確認する必要ことも大切です。
まとめ
請求書の発行手続きが適正になされ、かつ、その請求書が電子帳簿保存法に対応していること等の要件を満たすには、クラウドシステムを活用することが望ましいでしょう。
最近のクラウドによる請求書発行システムには、内部統制の観点から、権限設定、観察機能等がありますし、電子帳簿保存法にも対応しています。
あとは、システムを利用する側である事業者が、誰がシステムを操作するのか等の社内体制を整備することで、システムを活用した内部統制の維持構築も可能になります。
それにより、経理部門における業務品質の維持向上、社内関係者の業務効率の改善も期待できるでしょう。
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