こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
ROI(Return On Investment)は、投資額と利益の比率を表し、投資効率を表す指標の一つです。ROIは、SaaSやサブスクリプション型ビジネスの収益性を測るのに有効な指標です。
この記事では、ROIの定義と、計算方法を詳しく解説します。また具体的な活用方法や、ROIを向上させる方法をご紹介します。
目次
ROIとは?
ROIとは「Return On Investment」を省略した言葉です。日本語では「投資利益率」や、「投下資本利益率」などと呼ばれことがあります。企業や事業の収益性を測る指標であり、投資に対してどれぐらいの利益が出たのかを数値化するものです。
ROIは、高ければ高いほど、効果的な投資が行われていることを表します。そのため、ROIは企業の収益力を測る場合や、事業における投下資本の運用効率を測定する指標として、さまざまな場面で活用されています。
ROIを活用するメリット
ROIという指標には次のような特徴があります。
客観的な数値情報である
「いくら投資すると、どのくらい儲かるのか」という情報は、さまざまな利害関係者が興味を持っています。ROIを用いるとこの情報を客観的に、明確に提示することができます。
ROIを用いることにより、投資に対してどのくらいの利益を上げられるかを数値で示すことができるからです。定量的また具体的な数値情報を提示することができるため、経営の意思決定だけでなく、取引先への提案や投資家へのアピールにも有効活用することができるのです。
売上ではなく利益に関する指標である
ROIは、売上ではなく利益について、その効率を測ることができます。売上が大幅に伸びていたとしても、原価が高かったり、開発費用が多額だったりすると、投資の効率が良いとはいえません。ROIはそういった要素を加味したうえで、獲得した利益について測定を行うものです。
そのためROIを用いると、純粋な投資効果だけを確認できます。投資額に見合ったリターンを得られているかどうかを確認するために、ROIは必要不可欠な指標なのです。
さまざまな規模の事業を比較できる
各事業への投資額や、収益は事業規模によって異なるため、金額を見ただけでは成功しているのかすぐには判断がつきません。しかし、ROIなら投資に対する利益をパーセンテージで表すことができるので、異なる事業の投資効率を明確に比較検討できます。
社内で複数の事業が行われており、どの事業がより効率よく利益を上げているか評価する場合、ROIは役に立つ指標となります。また今後どの事業に対して投資を強化すべきか、という経営判断が必要になった場合、各事業のROIは有効な判断材料となります。
ROIの計算方法
ROIは基本的に次の計算式によって算出されます。
利益額÷投資額× 100(%)
ROIはパーセンテージで表され、高いほうが投資の効率が良いということを表します。
ROIの算出式で分子となる「利益額」は、何を測りたいか?によって異なります。例えばある事業のROIを求める場合、その事業の売上から、原価と人件費などの販売管理費などを差し引いた営業利益が用いられることが多いようです。
例)営業利益÷投資額×100(%)
一方、企業全体のROIを計算する場合は、経常利益や当期純利益を利益額として算出される場合があります。
分母となる投資額も同様で、さまざまなパターンがあります。測定したい事業への投資額が分母とするため、企業のROIを測る場合は、運転資本などの流動資産、固定資産などを選別し、投下資本として計算します。
例)当期純利益÷運転資本×100(%)
SaaSビジネスにおけるROIの活用例
SaaSビジネスでは、販売促進キャンペーンなど、特定の施策の効果を測定する場合にROIがよく活用されています。ここでは、あるプロモーションキャンペーンの効果を測定する場合を例に、実際のROIの算出方法をご紹介します。
下記の例を用いてROIを計算してみましょう。
- 原価500円のサービスを月額利用料1,000円として発売
- プロモーション費用として総額200,000円を費やし、さまざまな広告を展開
- 結果的に、このサービスを1,000件、販売することができた
- 前述のマーケティング費用以外の販売管理費は同月に50,000円計上された
この場合の一か月の収益は下記の通りとなります。
- 売上:1,000件×1,000円=1,000,000円
- 売上原価:1,000件×500円=500,000円
- 広告宣伝費:200,000円
- その他販売費:50,000円
収益:
売上1,000,000円△(売上原価500,000円+広告宣伝費200,000円+その他販売費50,000円)=250,000円
これらの数値を用いて当該キャンペーンのROIを算出すると次のようになります。
ROI(%)=収益250,000円÷ マーケティング投資額 200,000円× 100=125%
これにより、プロモーションキャンペーンは125%の効果を発揮したということが分かります。この方法を応用し、SNS広告やテレビCMなどの媒体別の成約数と収益データを用いることで、より効果的な広告の出し方を調査することができるようになります。
ROIの基準値・平均値の目安とは?
ROIの基準値や平均値の目安は、何を対象としているのか、業界や業種によっても異なり、一律の明確な基準があるわけではありません。ただ、ROIが100%を下回ることは、得られた利益が投資金額を下回ることを意味するため、何らかの対策が必要であることは明らかです。
少なくともROIが100%を上回る状態を継続できなければ、事業を続けていくことは難しくなるでしょう。新規投資の際には、過去の類似投資案件のROIを集計・分析するなどして、ROIが100%より小さくならないよう対策を立てていく必要があります。
また、ROIが100%を割り込む場合は、基本的には該当事業や施策の撤退を検討するべきとされています。ただ、今後を見据えた戦略的投資の場合は、初期に低いROIであっても長期的な利益獲得やシェア拡大などを目指して継続する場合もあります。
なお、各企業の事業や、施策の効果を測る目的でROIを用いる場合には、基準値や平均値と比較するよりも、各施策の比較をする際に用いるのがおすすめです。市場や商品の単価、担当部門などが異なったとしても、相対的に比べる指標となるからです。
ROIを有効活用するには?
SaaSビジネスにおいては、広告施策における投資効率を測るためにマーケティングROIがよく活用されます。さまざまなキャンペーンや媒体別の広告費用と、それにより得られた収益を個別に分析し、比較することによって、最適な施策へ効果的に投資していくことにROIは役立ちます。
また、ROIを用いることで、これまでは部署別もしくはプロダクト・サービス別にバラバラに行われてきた施策の効果を明確にできます。投資規模が異なるプロジェクトでも、投資の効果を比較することが可能なため、より効果の高い投資につながります。
客観的な数値を提示することで、属人的または恣意的な投資の効果・結果を明確にし、少ない費用で最大の利益を得るよう、ロジカルな判断につなげることも重要です。これにより、どの施策にリソースを注入するべきかが明確になり、投資の金額だけでなく人的リソースなど企業として注力するべき分野が見えてくる場合があります。
ROIの網羅的な活用には、費用と得られた効果を一元管理することが必要不可欠です。また、効果として測定するべき「利益」をどのように算出するか、部門やプロジェクト共通の費用をどのように負担するかなどの取り決めが重要になります。
ROIを向上させるには?
ここからはROIを向上させるための方法について解説します。
売上アップを図る
ROIのベースとなる利益を生み出す最大の要素が売上です。まずはトップラインの売上を伸ばすことで、ROIを改善することができます。
顧客の数を増やすことだけではなく、既存顧客の単価を上げたりリピーターを増やすことでも売上は増加させることができます。また、料金プランを見直したり、ラインナップを増やすことによって、売上を増やすことができるかもしれません。
また、売上の減少を防ぐという意味では、解約率の低下を図ることも重要です。顧客アンケートなどを通じて、継続したくなるサービスを提供できると、既存顧客の維持が可能となるでしょう。
コストの見直しを行う
ROIを最大化するには、余分なコストを削減していくことも重要です。最大限の利益を得るためには、費用の削減が必要不可欠だからです。
まずは無駄な出費がないかを確認してみましょう。販売に直結しない販売活動費の管理や、サービスの開発費用を見直すことでコストの削減ができる場合があります。
ターゲットの最適化
事業全体のROIの最大化には、売上の増加とコストの削減が重要ですが、個別のマーケティングROIの最大化には、ターゲットを、最適化することが重要です。
顧客が商品を認知し、購入に至るまでのどのフローをターゲットにするかという点が重要となります。例えば比較検討から購入に至るまでのフローに課題がある場合は、他社商品と自社商品を比較している顧客へのアピールに的を絞った施策を行います。
一方、そもそもサービスを認知してもらえていないという場合は、知名度を上げる、周知を図るための施策が必要になります。
ROIの数値を分析し、マーケティングやプロモーションの方法を見直すことで、結果的に顧客の獲得を促進することにつながり、売上の増加に貢献することができます。
ROIの留意点
ここからはROIを活用する際に留意しておくべきポイントを解説します。
「見えない」効果について数値化できない
ROIはサービス・製品の認知度やブランド力などという、金銭的価値で表せない効果については数値化できません。そのため、事業活動や施策のすべての側面を判断できる指標ではないことに留意が必要です。
長期の利益を評価には注意が必要
ROIを用いて長期の投資効果を測定したい場合には、慎重な分析が必要になります。利益を回収するまでに時間がかかるようなプロジェクトは、初期のROI数値は低くなりがちです。ROIを算出する対象となる期間をいかに定めるのか、事業計画の中での位置づけも含めてよく確認する必要があります。
算出することが目的ではない
また、ROIは算出することが目的ではなく、算出された数字から、どのような施策を打てるのかを考えるための指標であること留意が必要です。出された数値の意味と、それに応じた対策を提示できなければ、意味をなさないのです。
より深く投資に対する効果を評価する場合には、ROIだけではなく、定性的な情報も含めて検討する必要があります。
実務で活用するためには?
ここからはROIを実際のビジネスにおいて算出し、活用するコツをご紹介します。
前述のように、ROIの原則的な計算式は利益÷投資です。最初に何のためにROIを何のために算出するのかという目的を明確にしましょう。目的によって使う数値も異なってくるからです。
また、どんな数値を用いてROIを算出するか、迅速に判断できるよう、ROIに対する認識を社内ですり合わせておくことが必要になります。「利益」とはなにか、「投資」はどの金額を対象にするのか、確認することが重要です。
さらに、ROIの前提となる数値の集計を効率よく行うために、案件別の収益と投下資本、コストを継続的に管理・集計しておくことが必要です。案件ごとの売上の管理には、サブスクリプションサービスの売上計上を自動化するツールが役に立ちます。売上を自動的に、一元管理できるクラウドサービスなどを上手に使うことで、ROIの迅速な集計が可能になります。
また、このようなツールを活用すると、入金消込や請求業務などの定型業務に取られていた時間を、ROIなどの分析業務に振り分けることができます。
ROIを計測した後は、次の案件の予測材料としてストックし、分析をすることが重要です。案件やプロジェクト、事業ごとに分けて算出し、投資の最終判断をおこなう経営陣に提示し続けることも大切なプロセスとなります。
SaaSビジネスのROIは、事業の成功を数値化するだけでなく、キャンペーンの効果の向上やコスト削減の指標となるため、しっかり押さえておきたい指標です。効率よく集計し、経営判断に役立つよう提示することで、収益性の高い企業運営に貢献することができます。
まとめ
ROIは、投資の効果を表す指標です。企業が投資や経営の判断をするために有効な情報として活用されています。数値が高いほど投入した資金に対して利益が得られたことを表し、原則として100%を上回ることが最低条件とされています。
ROIの算出によって、個々の事業案件や施策の効果を横並びに比較し、今後、リソースを投入する案件、優先度の高いコア事業を選定できます。
マーケティングやプロモーションにおいては、施策ごとのROIを算出し、より効率の良いアクションへと改善していくことができます。より高い収益を得るための施策を判断することができ、効率の良い販促・営業活動につなげることができます。
また、ROIは個別に算出するだけではなく、事業や複数の施策と比較し、分析を行い、投資の継続を判断したり、コストをかける対象を検討する必要があります。ROIを活用することで、どの事業や活動に注力すべきかを分析する判断することに役立てることができます。
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