サブスクビジネスのプライシングの重要性を解説!複数プラン導入時は請求環境を整備しよう

サブスクビジネスのプライシングの重要性を解説!複数プラン導入時は請求環境を整備しよう

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

サブスクリプションビジネスやSaaSビジネスでは複数のプライシングを設定することが重要です。顧客のニーズに合わせてプランを増やすことはもちろん、ターゲットセグメントを広げていく上でも複数のプラン設定は必須となります。しかし、実際にサブスクリプションビジネスで新たなサービスを立ち上げた際には、製品やサービスの価格をどのように決定すればよいか悩む場合が多いのではないでしょうか。

今回は適切な価格を設定するためのプライシング戦略と代表的なプライシングモデルについて解説します。

プライシングとは

プライシングとはマーケティングにかかわる用語で「価格をつけること」を意味します。

マーケティングミックスの「4P」である「Product(製品)」、「price(価格)」、「Place(場所、流通)」、「Promotion(広告・宣伝)」のうちの1つです。

この4つはそれぞれ単独で行うものではなく、他の3つと組み合わせて行う必要があります。

プライシングの目的

プライシングの5つの目的

市場で販売されている製品やサービスの価格には、その価格とした目的と理由があります。

ここでプライシングの目的について説明します。

売上/利益を伸ばす

売上を伸ばすことは事業の成長には不可欠です。価格が高すぎると買ってもらえず、安すぎると売れても利益が出ないため、適正な価格を設定することが重要です。

シェア拡大

売上/利益を伸ばすことにも関連しますが、プライシングは市場シェアの確保・拡大にも効果的です。

シェア拡大により生産量が増え規模の経済が働くことで、単位あたりのコストが下がり、売上/利益を増やすことができます。

価格の安定

プライシングにより価格を安定させることは、利益の安定と顧客の信頼獲得につながります。

安易に価格を下げることで、品質が落ちたのではないかという不安を招くこともあるため注意が必要です。

競合への対応

競合への対応を目的にプライシングを活用する場合もあります。

自社から値下げ競争を仕掛けることで、他社の追随を排除しシェア拡大を進める場合や、他社の値下げに対し更なる値下げで対抗することによりシェアを確保するといった場合です。

投資回収

新しい製品やサービスの提供には投資が必要ですが、投資費用の回収にもプライシングは活用されています。

例えば新製品の発売時は、高めの価格設定を行い、投資費用を早めに回収しようとする場合です。

これは、多少高くても新製品が欲しいという顧客心理に焦点を当てた方法です。

プライシング戦略

プライシング戦略には、「Company(自社)」、「Competitor(競合)」、「Customer(顧客)」の3Cと呼ばれる一般的な考え方があります。

プライシング戦略により売上や利益を確保するためには、1つの基準だけを追い求めるのではなく、3Cを総合的に判断してプライシングを行うことが重要です。

Company(自社)自社の販売数量の増減でコスト構造(変動費と固定費)はどう変化するか。
Competitor(競合)競合は誰か、競合はいくらで販売しているか、競合との価値の違いはなにか。
Customer(顧客)顧客は誰か、顧客は製品のどこに価値を感じているか。

次に、これら3つの区分を考慮したプライシング方法とそれぞれの特徴について説明します。

自社視点:コストベースプライシング

コストベースプライシングとは、製品やサービスのコストに20%など一定の利益を上乗せする方法で、製造業や流通業で比較的よく使われる方法です。

コストを基準に価格設定を行うことができ一定の利益を見込むことはできるが、顧客の求める価値や、競合との関係が考慮されていないため、市場で受け入れられるかは未知数です。

競合視点:競合ベースプライシング

競合ベースプライシングとは、他社と競合する製品がある場合に、自社が提供する価値やブランドと他社製品の価格を比較して設定する方法です。

比較的簡単に設定することができるため、SaaSビジネスでも多く採用されています。

ただし、この方法は価格競争にさらされるため、自社の資金力は考慮しておくことが必要です。

顧客視点:バリューベースプライシング

バリューベースプライシングとは、顧客が持っている製品やサービスに対する価値に基づいて価格を設定する方法です。

この方法では、自社の顧客のニーズに基づいた価格設定を行うため、顧客にとって高すぎたり、安すぎたりすることがなくなり、適切な価格を設定することができます。

また、顧客のニーズを把握することで、顧客の価値を満たす製品やサービスを開発することができるとともに、顧客の購入意思の把握により、価格を変更することによる顧客数や販売数の変化を予測することができるようになります。

プライシングモデル

ここからは代表的なプライシングモデル4つの内容と、プライシングモデルを増やすことの重要性について説明します。

代表的なプライシングモデル

①定額課金

定額課金は、すべてのユーザーに対して同じ製品、機能を提供し、価格も1つとなるプライシングモデルです。

定額課金のメリットは、その製品の価値を顧客に伝えやすく売りやすいことです。

顧客にとっても製品を理解しやすく、新規顧客の増加、売上アップにもつながりやすいことがあげられます。

また、1つの価格であるがゆえ、売上や利益の増減を簡単に予測することができます。

デメリットは、1つの価格しかないため、幅広いユーザーのニーズをつかめず、収益機会を失ってしまう可能性があることです。

幅広いニーズに合わせた価値提供や料金単価の設定ができないことで、売上アップが困難となります。

顧客のニーズに合わせて価値、価格を柔軟に変化させていくことが重要です。

②アカウント別課金

アカウント別課金は、ユーザー数に応じて価格が高くなるプライシングモデルです。

会社の同僚が共有して使用する場合は価格が高くなるため、SaaSビジネスにおいてもよく採用されています。

アカウント別課金のメリットは、価格体系を理解しやすく、ユーザー数に比例して売上が増えることです。

定額課金と同様に、すべてのユーザーに対して同じ製品、機能を提供し、ユーザー数に応じて支払う金額が決まるため、売上金額を簡単に管理できます。

会社の成長に合わせてユーザー数が増加すると、収益もそれに伴って増加します。

デメリットは、ユーザー数を増やすことで価格が高くなるため、採用を制限する可能性があることです。

契約内容が製品、機能を使用できるだけの場合、会社内ではある程度のユーザー数で契約して共有して使用することも検討するでしょう。

アカウント別課金は、各ユーザーがユーザー毎に別の環境で使用できる製品に採用する必要があります。

③利用量別課金

利用量別課金は、ユーザーがその製品を使用した量が多いほど高くなるプライシングモデルです。

例えばその製品の機能を利用した回数やデータ量、決済した金額に対して課金するものがあります。

ユーザーはすべての機能を利用することができ単価が上がる要因も明確なため、ユーザーにとってわかりやすいモデルです。

利用量別課金のメリットは、ユーザーが利用した分だけを支払うため、納得感が得られやすいことです。

まずはお試しで使用したいユーザーは利用量を控えめにすることで単価が抑えられます。

その後製品に価値があると感じたユーザーは納得した上で利用量を増やすため、導入時の負担感を下げつつ収益を増やすことができます。

デメリットは、ユーザーが利用すればするほど高額になるためユーザーが利用を控える可能性があることです。

また、定額課金やアカウント別課金では前払いで入金され収益予測も比較的簡単ですが、利用量別課金の場合は、利用量が確定してからの入金となり代金回収までに時間がかかります。

月によって利用量にばらつきが出るため、収益が不安定になったり収益予測が困難になったりします。

④機能別課金

機能別課金は、ユーザーが利用する機能に応じて、複数の料金プランを設定するプライシングモデルです。

このモデルを採用するには、ユーザーが必要とする基本機能と拡張機能の切り分けが必要となります。

機能別課金のメリットは、ユーザーが必要としている機能のみを提供しその機能に見合ったプランを利用できるため、ユーザーの幅広いニーズに対応できることです。

全ての機能を必要としないユーザーにはまずは基本機能を低単価で提供します。

多くの機能を必要とするユーザーには拡張機能を機能に応じた単価で提供し、収益を上げることができます。

デメリットは、ユーザーが必要としている機能やその範囲を正確に把握することが困難なことです。

プランごとの機能や利用量が設定単価に見合っていない場合は契約につながりません。

また、機能や利用量の設定が複雑になりすぎると、ユーザーは金額の妥当性や、どのプランを選ぶべきなのかを判断できず満足感が下がります。

ユーザーが理解しやすい契約プランを設定することが重要です。

プライシングモデルを増やすことの重要性

これまで4つの代表的なプライシングモデルの内容とメリット/デメリットについて確認しましたが、次はプライシングモデルを増やすことの重要性をカスタマーサクセスの観点から説明します。

①カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスは直訳すると「顧客の成功」となり、ここでは顧客の業績アップを意味します。

顧客に成功体験を感じてもらうことで、自社製品を継続して使用してもらうカスタマーサクセスでは、顧客の状況を適切に把握し、積極的に働きかけることが必要です。

②カスタマーサクセスの重要なポイント

次にカスタマーサクセスを成功させるための重要なポイントを説明します。

<購入意欲の促進>

カスタマーサクセスは、製品を購入した顧客に対してのみ行うものではなく、製品購入を検討している顧客に対し有益な情報提供を行うことも重要です。

<継続利用の促進>

一度製品を販売しても、何もしなければ解約されてしまう可能性があります。

継続的に製品を利用してもらうためには、解約率を常に低水準に保つ必要があります。

継続して収益を上げるためには、他社との差別化を図り、常にユーザー目線を意識することが重要です。

<アップセル、クロスセルの獲得>

販売した製品に対し、ユーザーは継続的な価値提供を期待しています。

自社の業績をアップさせるには、販売した製品を継続して使用してもらいつつ、単価を上げるためのアップセル、売上を増やすためのクロスセルの提案が重要です。

アップセルとは、既存ユーザーに対して、追加機能の採用を促し、単価アップを図ることをいい、クロスセルは、既存の製品に関連する別の製品を購入してもらうことで売上アップにつなげることをいうので覚えておきましょう。

このように売上や収益をアップさせるには、常に顧客のニーズを把握しそれに見合った製品、サービス、価値を提供し続ける必要があります。

プライシングは製品、サービスに対する顧客の満足度と密接に関連するため、顧客のニーズに柔軟に対応することが重要です。

請求管理システム導入による効率化

顧客のニーズに合わせたプライシングモデルを採用するようになると、請求管理システムを導入し、効率的に管理、運用することが求められます。

最後にプライシングモデル決定における課題とシステム導入で実現できることについて説明します。

課題実現できること
・全てのデータを手作業で集計、管理
・契約内容やデータ使用量をそれぞれ別々に管理
・エクセルを使用して集計
・請求管理システム導入による一元管理
・顧客/契約管理、請求/代金回収、経理処理、業績管理等の一連の業務を統合
・プライシングモデルを複数管理することが困難
・手作業では複数モデルの管理に限界がある
・顧客のニーズに応じたモデル構築ができない
・複数のプライシングモデルにも柔軟に対応
・顧客の契約や利用データと連動し課金計算
・複数モデルに連動した請求、決済、回収管理
・会計処理、収益認識基準にも対応
・プライシングモデル構築に向けた指標管理が困難
・KPI設定ノウハウが乏しい
・KPIを設定するにもその諸元取得に時間がかかる
・KPI管理を効率化
・業績管理や向上に必要なKPIをシステムで可視化
・将来の収益予想を正確に把握し、今後の向かうべき方向を明確化

まとめ

◆プライシングは、マーケティングミックスの「4P」である「Product(製品)」、「price(価格)」、「Place(場所、流通)」、「Promotion(広告・宣伝)」、のうちの1つで非常に重要な基準です。

◆プライシング戦略は、「3C」である「Company(自社)」、「Competitor(競合)」、「Customer(顧客)」を意識して検討します。1つの基準だけを追い求めるのではなく、3Cを総合的に判断しプライシングを行うことが重要です。

◆代表的なプライシングモデルとして、①定額課金、②アカウント別課金、③利用量別課金、④機能別課金の4つがあります。プライシングは製品、サービスに対する顧客の満足度と密接に関連するため、顧客のニーズに応じて柔軟に設定することが重要です。

◆複数のプライシングモデルを導入した場合には、請求管理システム導入による管理の効率化をおすすめします。

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