こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
商品・サービス等の提供はまだしていないけれど、先に代金を受け取る取引があります。今回は1年を超えて商品・サービス等の提供をする場合に発生する「長期前受金」の会計処理を具体的に見ていきます。
前受金と長期前受金
前受金は、取引において提供する商品・サービス等の代金の一部または全部を提供前に受け取った場合に、受け取った代金を計上する科目です。一方、長期前受金は取引時より1年を超えて提供する商品・サービス等の代金の一部または全部を受け取った場合に計上します。
長期前受金が発生する取引
長期前受金が発生する取引は、具体的に以下のような例が挙げられます。
- サブスクリプション
- システムの運用保守
- 雑誌の定期購読
- 新発売のゲームを予約する時に支払う代金
長期前受金が発生する場合は、前受金が発生する場合とほぼ同じですが、その商品・サービス等を1年を超えて提供する場合になります。
また、上記の他にも、地方公営企業会計で、資産取得時の財源として補助金等を受けた場合、補助金等の金額を長期前受金とする会計処理もありますが、複雑になるので今回は扱いません。(参考:「地方公営企業会計制度の見直しについて」総務省自治財政局公営企業課、平成25年12月発表)
長期前受金が発生する場合の会計処理
では、長期前受金が発生した場合の会計処理を具体的に見ていきましょう。
今回は、システムの保守サービスを例に挙げます。システム会社がクライアントとシステムの保守サービスを契約した場合、システム会社の会計処理は、以下のようになります。
取引内容
- システム会社がクライアントと保守サービスを3年間36,000円で契約(代金は前払い)
- 保守サービスは毎月1回(1回1,000円)提供
- X1年4月から保守サービス開始
- システム会社の決算月は3月
契約締結時の会計処理(X1年4月)
契約締結時に代金を受け取りますが、まだ保守サービスを提供していないので、「売上」ではなく「前受金」で処理します。また、1年を超えて提供する保守サービスの代金は「長期前受金」として処理します。
借方 | 貸方 | |
現金預金 36,000 | 前受金 12,000 | ※1年目に提供する保守サービスの代金 |
長期前受金 24,000 | ※2~3年目に提供する保守サービスの代金 |
保守サービス提供時の会計処理(X1年4月~X2年3月)
毎月、保守サービスを提供した時点で、売上を計上します。すでに代金は受け取っているので、相手勘定は「前受金」になります。実務上は、保守サービスを提供した後、クライアントから検収書を受け取り、売上を計上することになります。
借方 | 貸方 | |
前受金 1,000 | 売上 1,000 | ※1ヶ月分の保守サービスの代金 |
決算時(X2年3月)
契約締結から1年経過し、 X1年目決算時には2年目に提供する保守サービス代がこの先1年間に提供する保守サービス代になるので、「長期前受金」から「前受金」に振り替えます。この時点で、「長期前受金」の残高は、3年目に提供する保守サービス代12,000円になります。
借方 | 貸方 | |
長期前受金 12,000 | 前受金 12,000 | ※2年目に提供する保守サービスの代金 |
最初に契約した保守サービスすべてを提供するまで、上記のように会計処理をすることになります。今回は、毎月定期的に保守サービスを提供し、売上計上する場合を例に挙げましたが、実際には毎月定期的に発生せず、商品・サービス等の提供の時期が事前に決まっていない場合(例えば、システムの保守サービスで不具合が起こった時にメンテナンスする場合など)もあります。
まとめ
長期前受金が発生する場合の会計処理を具体的に見てきました。今回は取引先が1社でしたが、実際には取引先は多数となり、売上を正確に計上するためにも、契約毎に長期前受金・前受金の残高を正確に管理する必要があります。また、商品・サービス等の提供が都度行われる場合はより複雑になり、管理に時間・労力がかかります。そのため、長期前受金・前受金管理が発生する取引をメインでされている場合ほど、効率よく正確に管理できる方法を検討することをおすすめします。
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