こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
DXとは、Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略です。製造業DXは経済産業省のものづくり白書でも「製造業においてはあらゆる工程でDXが大きな革新をもたらす」と指摘され注目されています。
この記事では特に製造業に注目しDXの課題や進め方を解説します。自社に落とし込めることをひとつでも見つけて、まずは始まりのスモールスタートを切ってみましょう。
目次
そもそもDXとは?
2018年に経済産業省から発表されたレポート、「DXレポート~ITシステム『2025年の壁』克服とDXの本格的な展開」をきっかけに広く知られるようになった「DX」。
2021年にはデジタル庁も発足し、政府として日本は国をあげてDXを推進してきました。
いろいろな課題もあり取り組む企業がまだ大半ではない中でも、確実にその動きは広まり顕著になってきています。
それは、ものづくりの現場である製造業においても同じことがいえます。「ものづくり大国」と言われてきた日本の製造業は、人手確保・技術継承などの問題を抱えて、いま大きな危機に直面しています。この大きな危機の解決策として注目されているのが、DXです。
DXとは、Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)の略です。Transformationは「変身・変化」を意味し、デジタルと合わせて「デジタル技術によりビジネスモデルを変化させること」を指します。
TransformationのTransは「交差する」という意味があるため、交差を1文字で表す「X」を用いてDXと略しています。DTとすると他の意味の用語とかぶってしまうため、DXという略語になりました。
経済産業省の「DX推進ガイドライン」によるとDXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
IT化やデジタル化をDX化と同じ意味で使っているケースがありますが、両者には大きな違いがあります。IT化やデジタル化は、単純にIT化やデジタル化することそのものを指します。対して、DX化はIT化やデジタル化を「手段」として、企業が自己変革を進めていくことを指しています。
製造業におけるDXとは?
特に製造業においてDXとは、ものづくりの各工程で作業者が培ってきたノウハウを、各個人の経験値として蓄積していくだけではなく「デジタル化によって共有しやすくすること」を大きなキーワードとしています。その結果を「リードタイム短縮・生産性向上・品質向上」に活かし、顧客や社会のニーズに合わせて、自社のビジネスモデルをよりよく変えていくことでDX化を図ることができるのです。
アナログ作業が多い製造業に、デジタル化を活用していくことで、業務の効率化が実現できます。工程をデータ化して管理すると、作業時間の短縮や属人化していたノウハウを企業に蓄積して、他の従業員と共有することができるようになります。
デジタル化によって、顧客や社会とのスピード感にとりのこされることもなくなるでしょう。またデジタル化することで既存の作業にかかる時間を削り、その余力で新たな開発やシステム導入に、リソースを費やすことができるメリットも大きいと言えます。
2025年を乗り越えろ!DX時代に求められる業務効率化とは?
DX化の推進が日本で実現されなかった場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある、と経済産業省は警鐘をならしています。これを「2025年の壁」といいます。
日本は、少子高齢化によって労働人口が減少傾向にあります。この状況の中、海外市場も視野にいれつつDX化による企業の自己変革なくしては日本の国力が低下してしまうと、国も危機感を募らせているのです。この危機感こそが、国をあげてDX化を推進する大きな理由です。
すでにIT化をした企業であっても、老朽化・複雑化した既存システム(レガシーシステム)により、古い体制を維持したままでは衰退していく可能性が高く、2025年の壁は乗り越えられないでしょう。
DXとは単にIT化をする、デジタル化をすることではなく、「IT化・デジタル化をすることにより業務効率化を図り、組織の在り方のアップデートをする」ことです。
業務効率化の方法の具体例
DXには「業務効率化」が大きなキーになります。業務効率化の方法は様々です。
少し具体例をあげてみましょう。
- 作業員ひとりひとりの作業時間や作業内容をデータベース化し、業務量の見直しや平準化を図る
- 社内文書を紙ではなくデータ化し、ワークフローのリードタイムの無駄を減らす
- 作業工程にAIやIoTを導入し、手入力ではなくスキャンするだけで自動入力されるようにするなどして入力作業にかかる時間を大幅短縮
もともとアナログ作業が多い製造業では、AIやIoTを導入することで大幅な業務効率化を実現することができます。業務効率化をすすめることにより、生産性や品質の向上はもちろん、人材不足の問題を解決することができます。そのことにより、本来注力するべき箇所に時間や人材やお金を費やすことができるのです。
業務効率化には様々なツールがあります。製造工程そのものや、営業支援・経理・勤怠管理・社内連絡ツールなど多岐にわたります。まずは自社の抱える問題を洗い出し、その問題や自社の特性に合ったツールを選定しましょう。
「アナログ作業に、アナログ人材ばかりです」という企業では、まずは身近な勤怠管理や経費精算などの「面倒を楽にする」ツールから始めてみるのがお勧めです。
今まで、何枚もの紙や上長の印鑑が必要だった手続きが、ボタンワンクリックや写真1枚撮って終了、といったように大幅に短縮化されるでしょう。このことでデジタル化に苦手意識がある社内風土も、少しずつ変わっていくことが期待できます。業務効率化は従業員の満足度も高まり、個人レベルでの業務改善意識を高めることもできます。
製造業DXの3つの課題とは?
日本が国をあげて後押ししているDXですが、実際のところ現場にはさまざまな課題があります。特に製造業DXにおいては、「ものづくり大国ニッポン」と言われてきたからこその「現場の強さ」が、足かせになっている現状があります。DXがなかなか進まない要因ともなっている、製造業の課題についてみていきましょう。
現場力が強い
「ものづくり大国ニッポン」とまで言われるようになったのには、ひとえにこの現場力の強さがあってのことです。いわゆる「職人集団」であり、その作業ノウハウや技術は、それぞれの現場工程で属人化されている現状があります。
作業ノウハウや技術は「各個人が自分で覚えて身につけるもの」という根強い価値観があり、個々のマンパワーに依存する傾向があります。
「長年かけて苦労して身につけた技術は個人の財産だ」「技術は体の感覚で覚えるもの、データ化できるわけがない」などの考えが根強くあるため、そのノウハウや技術を「データ化し、属人的ではなく企業に蓄積する」ことには、現場からの強い抵抗や不信感を招き、DX化に向けた働きをしづらいでしょう。
日本の労働人口が年々減少する中、属人化している今の体制ではものづくりを存続していくのは難しいこと、デジタル化の波の中でも「職人技」は必ず人の手に残る部分があることなどを伝えながら、できることからDX化を進めていきましょう。
IT人材の不足
これは製造業にとどまらず、日本企業全般にいえる課題です。
2015年は17万人不足していると言われていたIT人材は、2025年には43万人にまで拡大するであろうと、経済産業省は見通しを立てています。
ただでさえ足りないIT人材がなかなか製造業にまでいきわたらず、一般企業ではDX化を進めるための人材が揃わない課題を抱えています。
IT投資の目的が最適ではない
IT投資の主な目的は、「オーディナリー・ケイパビリティ重視」「ダイナミック・ケイパビリティ重視」のどちらかにわけることができます。
オーディナリー・ケイパビリティとは、旧来型システムの更新や維持、いわば保守を目的としたIT投資です。ダイナミック・ケイパビリティ重視とは、業務効率化やコスト削減、ビジネスモデル変革や人材育成を目的としたIT投資です。
どちらのIT投資も企業の維持・成長にとっては大切な要素ですが、経済産業省の調査によると、日本の企業は保守を目的としたオーディナリー・ケイパビリティ重視型の投資が多い結果となっています。
IT化が進んでいるようにみえても、DX化を目的としたIT投資ではなく、既存の基幹システムの更新やメンテナンス費用にとどまっている企業が多いと言えます。
また、導入している設備の老朽化が進んでいることも大きな特徴です。IT化を進めるコストの確保が難しいだけではなく「IT化によって実現できる効果が理解できていない」ことも理由として考えられます。
「IT化を進める目的」が見いだせずにいるのです。こうした背景には、前述した「現場力の強さ」に裏打ちされた「技術力への自負」があります。
さらなる製品開発にはIT投資によるものではなく、「職人気質を重視する」文化が今も受け継がれているのです。
製造業DXの進め方
それではDXはどのように進めていけばいいのでしょうか。DXを進める3つのステップや大切な視点を確認していきましょう。
製造業DXを進める3つのステップ
現場を知り、DX化のイメージを組織全体で共有する
現場には技術やノウハウ、経験や勘が蓄積されています。いわばその財産をリソースとして最大限に活用していくために、デジタル化が必要になります。
しかし、むやみにデジタル化を進めても現場で混乱を招くことになるだけです。
現状の課題、それを解決する具体的なイメージを全体で共有して、現場を納得させながら進めていくことが重要です。
2. デジタル化や、デジタル化によって収集したデータを活用することによる業務の効率化を図る
デジタル化しただけでも業務の効率化は得られることが多いですが、さらにデータを活用してそこから業務の効率化を見出しましょう。
業務効率化を通じてビジネスモデルを継続的に変革していく
業務効率化によって余力ができれば、企業の変革や新たな価値の創出に力を入れることができます。これこそがDX化の目的です。
製造業DXを成功に導くダイナミック・ケイパビリティ
IT投資の目的の解説でも説明したように、日本の企業は投資の目的においてもあまり「ダイナミック・ケイパビリティ」を重視していない傾向があります。
企業そのものを更新・維持していく視点も不可欠ですが、「環境や顧客ニーズの変化に合わせて、企業が自己を変革していく」ダイナミック・ケイパビリティの視点が、DXにおいて非常に重要となります。
ダイナミック・ケイパビリティには3つの要素があります。
- 感知・・・ニーズや業界の動向の変化をいちはやくキャッチし、意思決定につなげていく
- 捕捉・・・持っているリソースを積極的に活用すること。企業資源を適材適所で活用すること
- 変革・・・企業が持つ資産を変革して再構築すること。業務フローや活用システムの見直しや再構築をして、業務環境をより最適化していくこと
「MADE IN JAPAN」の日本品質として、広く世界市場で信頼を得てきた日本の製造業ですが、いまやその付加価値は下がる傾向にあります。
限られたリソースを効率的に使い、迅速に市場の動向をキャッチしながら自己変革していく、ダイナミック・ケイパビリティの強化がとても重要な鍵となるでしょう。
そのためには、企業風土の変容を促す必要があります。特に製造業においては、「職人技」という言葉に代表される、属人的技術に価値を見出してきた企業文化を変えていく必要があります。
製造業DXにおけるバックオフィスの事例
製造業におけるDXの成功事例をご紹介します。
〈事例. 1〉自動車関連部品製造 従業員2,000名
工業用ロボットや画像認識などをとりいれた、位置情報と生産工程可視化システムを導入しました。
この企業では、従来の作業工数の把握には膨大な手間と時間がかかるうえ、詳細な作業内容の把握まではできていませんでした。しかしこのシステムの導入により、時間短縮と現状の可視化が実現しました。結果、作業負担の軽減や、新技術・新工法を用いた技術革新への取り組みをすることにより、競争力を高めることに成功しています。
一般的にバックオフィスというと、総務や経理・人事などの事務部門をイメージしますが、製造業においては工程管理もバックオフィス業務の中に含まれます。
直接部門にDX化を進めて成功した、効果的な事例といえるでしょう。
<事例. 2> 株式会社コバヤシ精密工業 精密部品製造業
こちらの企業では、まずは売り切り型で新製品をリリースしました。しかし将来的にサブスクリプション型での製品展開を想定する中で、経理作業が非常に面倒になると考え、サブスクリプション請求管理ソフトを導入することに決めました。
これらの他にも製造業のバックオフィス業務として、一般企業よりも多いとされるのが機械などの保守契約管理です。こういった管理業務にもシステム導入をしていくことで、DX化の第一歩を踏み出してみることもおすすめです。
製造業DXを成功させるには現場を含めた組織全体でイメージをもつことが必須
- DXとは「デジタル技術によりビジネスモデルを変化させる」こと
- デジタル化は業務をデジタル化することそのもの、DX化は業務をデジタル化することで効率化を図り、企業が自己変革をすすめていくこと
- 2025年の壁とはDX化が実現されなかった日本で起こる、最大12兆円/年の経済損失が起きるシナリオのこと
- この2025年の壁こそが、日本が国をあげてDX化を推進する理由である
- 製造業のDX化が遅れているのには「現場力が強いこと」など3つの理由がある
- 製造業DXを成功させるには、現場を含めた組織全体でDX化のイメージをもつこと・ダイナミック・ケイパビリティの視点が必須である
今回は製造業DXについて解説しました。
「ITのことはよくわからない」「いいものさえ作っていれば売れるはず」日本の製造現場には、まだまだそんな空気が色濃く残っているようです。日本品質は世界市場で付加価値を失いつつありますが、それでもまだ日本製品への需要と信頼が高いのも明白な事実です。この日本の誇り高い「ものづくり」にDX化を重ねたら、とてつもない競争力になるはずです。できることからシステム導入をし、業務効率化のその先にDX化を実現していきましょう。
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