こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
サブスクリプションビジネスで生み出す収益は、企業が従来の先行投資方法で得ている収益より6倍の価値があるといわれています。これは予測可能な収益の流れから複合的な成長効果を生じるから(Salesforce「スタートアップガイド」より)です。
ここでは、Adobeの成長をサブスクリプションの主要KPIのうち年間経常収益(ARR)、成長効率性指標(GEI)、および経常利益(RPM)について、開示されている財務諸表と照らし合わせて各指標の近年の動向を分析します。
目次
財務諸表で見えるサブスクリプションビジネスの収益拡大
Adobeの財務諸表を見てみると、サブスクリプションによる収益拡大は目を見張るものがあります。サブスクリプション収益は2016年第3四半期の1,168百万ドルから2020年第3四半期には3,000百万ドルになり、わずか4年間でおよそ2.5倍に拡大しました。
Operating Incomeは2016年第3四半期の369百万ドルから2020年第3四半期には1,069百万ドルでおよそ2.9倍です。
Adobeはこの期間に大きな企業買収(M&A)実行し、その事業基盤を拡大しています。具体的には2018年5月に16.8億ドルでEコマースプラットフォームのMagento社(マジェント)を、2018年9月に47.5億ドルでマーケティングプラットフォームのMarketo社(マルケト)を買収しました。それぞれの強みをAdobe Experience Cloudに組み込むことで相乗効果を狙う目的です。その後のAdobeの収益は順調であり、これら事業拡大戦略は功を奏しています。
サブスクリプションの主要KPI
サブスクリプションビジネスは事業を長期的展望にたって運営することにあるため、会員顧客をいかにしてつなぎ止め、さらなる収益単価の引き上げをしていくかが具体的な戦略となります。
年間経常収益(ARR:Annualized Recurring Revenue)
サブスクリプションビジネスでは契約が継続すると仮定し年間の収益を高い精度で予測することができます。期中の新規獲得顧客からもたらされる収益は「新規の年間契約額」として区分されます。
一般的な開示資料では企業が積極的にこれら収益を区分表示しなければ、外部から判断することは容易ではありませんがAdobeではARRを開示しておりこれを集計すると次のとおりです。単位は10億ドルです。(単純比較用に年間のサブスクリプション収益を併記しました)
財務諸表の売上高には前受収益の調整などが考慮されており、必ずしもARRとRevenueは一致しませんが、それぞれの測定時点におけるARRを上回るRevenueを計上している傾向からも、新規の年間契約額が順調に積みあがっていることが間接的に読み取れます。
また、FY2016 Q3のARRにその時点のGrowth分 (Driving Growth in ARR 前四半期比)を加味すると概ねFY2017 Q3に近似しています。サブスクリプションビジネスは将来収益を予測しやすいということが分かります。
成長効率性指標(GEI:Growth Efficiency Index)
成長効率性指標は、販売・マーケティングコストと利益との関係で、企業が新規または既存顧客に新しい事業を展開するための投資とされています。営業とマーケティング費用をどれくらいかけるべきかの指標で1を上回ると獲得する金額以上の額を新規事業に費やしていることになります(Sales Force 「スタートアップガイド」より)。
開示財務諸表からは次の算式によりその指標を計算できます。
成長効率性指標 = 営業・マーケティング費 ÷ 営業利益
Adobeの開示資料からサブスクリプションに関わる項目にフォーカスした数値を見ると、成長効率性指標は2016年に1.29、2017年に1.00、2019年には0.95、2020年は0.83と年々減少傾向にあります。
これはARRの拡大により必要コストが相対的に下がってきたと考えられるとともに、株主還元の一環として市場より自社株式を購入するための原資を確保していると推察されます。
経常利益(RPM:Recurring Profit Margin)
この指標は事業成長のための利益(資金)がどれくらい確保できているかを表します。
算式では次のとおりです。営業及びマーケティング費用は「成長効率性指標」の対象になるためここでは計算から除外されます。経常利益と財務諸表の「営業利益」とは概ねその分だけ一致しないとみてもよいでしょう。
RPM=年間経常利益(ARR)−(売上原価(COGS)− 研究開発費(R&D)− 一般管理費)
Adobeは収益(Revenue)が増加トレンドにありますが、売上原価(COGS)のRevenueに対する比率はFY2016のQ3で9.9%でしたがFY2020のQ3では10.9%と微増しました。研究開発費(R&D)のRevenueに対する比率はFY2016のQ3で21.2%でしたがFY2020のQ3では18.9%へと微減しました。両方を足すと概ね30%前後で推移しており、Revenueの増加によりRPMも安定して増加するようコストコントロールが適切になされていることが分かります。
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