請求書をPDFで発行して送ることは税法上有効?原本の取り扱いについても解説

こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。

PDFで発行、メールで添付しただけの請求書は、果たして本当に有効なものと言えるのだろうか?そんな心配をされている経理担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今までは、印刷・押印・発送などの手間をかけ、郵送代を払って先方に受け渡していた請求書なのに、こんなにあっけなく発行できた請求書は果たして有効なのか、心配になって当然です。その上、今までは紙媒体を原本として保存していたのに、パソコンの中にあるPDFデータをどう原本として取り扱えばいいのか悩んでいる方も多いでしょう。

そこで今回は、PDFで発行した請求書は本当に有効なのか、押印はしなくてよいのか、そして原本であるデータはどのように保存すればいいのかなどを解説していきます。

請求書をPDFで発行してメール添付するのは税法上有効?

結論、税法上有効です。

電子帳簿保存法において、「電子取引」とは取引情報の授受を電磁的方式により行う取引としており(法2六)、国税庁のホームページでは、電子取引の具体例として以下の4項目を挙げています。

  1. いわゆるEDI取引
  2. インターネット等による取引
  3. 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)
  4. インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

このように、請求書をPDFで発行しメールで送ることは「電子取引」として位置付けられており、税法上有効な取引の手段です。よって、法律上、紙で発行された請求書、PDFなどの電子データで発行された請求書のいずれの有効性に違いはありません。

しかし、以前は紙を原本とし、急ぎの場合などはPDFでメール添付をするケースがほとんどでした。PDFの電子データはあくまで複本であり、原本である紙の請求書は、後から先方に郵送などで受け渡していたのです。

電子保存の体制を整備できていない企業も少なくないことから、せっかく請求書をPDFで電子発行しても、当面は紙でも出力して郵送もするとしているケースも見受けられます。

令和3年度の電子帳簿保存法の改正により、データでやりとりされた取引=電子取引については紙で出力しての保存が認められなくなりました。(令和4年1月1日施行、宥恕措置で令和51231日までは紙保存が可能

この改正により、PDFでの請求書発行は今後ますます増えていくでしょう。しかし紙発行から電子発行に移行する際は、取引先の受け入れ体制に問題がないかどうかの確認を取ることがビジネスマナーです。

PDFで請求書を発行することは法律違反ではありませんが、紙を原本としてきた日本の企業文化の流れがあります。そして今までは、PDFで電子発行された請求書を受け取った場合でも、電子保存ではなく、出力して紙の請求書と同じ方法で保存すれば問題ありませんでした。しかしこの改正により、そうはできなくなってしまったのです。

電子保存の体制が整っていない取引先にとっては、電子発行されたPDFの請求書は受け取りづらいものです。発行するときは、必ず取引先の経理担当者に確認を取るようにしましょう。

またPDFの請求書に限らず、押印についても法的な義務はありません。押印がない請求書も法律上は有効となります。

しかし、日本の商習慣の中で押印は原本であることの証明とされてきました。押印がない場合、取引先から再発行を依頼されるケースもあります。

電子印鑑などのサービスも数多くありますし、ExcelやWordで請求書を作成する場合は、簡単なアドインを使って電子印を作成することができます。

義務ではなくても、日本の商習慣の常識になっているきらいがありますので、押印はしておくのがおすすめです。

それでは次に、電子発行された請求書の保存要件についてみていきましょう。

PDFで発行された請求書の保存要件とは?

PDFで請求書がメール添付などによって発行された場合、この電子データをどのように保存すればいいのでしょうか。

この場合、電子取引に該当しますので、以下の要件を満たして「真実性の確保」と「可視性の確保」をする必要があります。

電子取引の保存要件

真実性の確保以下の措置のいずれかを行うこと
① タイムスタンプが付された後に取引情報の授受を行う
② 取引情報の授受後、遅滞なくタイムスタンプを付す
③ 記録情報の訂正削除を行った場合に、その記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
④ 記録情報の訂正削除の防止に関する事務処理規程の備え付け
可視性の確保・保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
・電子計算機処理システムの概要書を備え付けること(※1)
・検索機能を確保すること

(※1:自社開発のプログラムを使用する場合のみ)

参考:電子帳簿保存法が改正されました(国税庁)

電子メールにより請求書等のデータ(PDFファイル等)を受領し、あるいはインターネットのホームページからダウンロードした請求書データ等を利用する場合、一般的に、受領者側において当該電子データの訂正や削除が可能と考えられます。そのため、改ざん防止のためのシステムを導入するか、事務処理規定を備え付けて記録の訂正削除の防止をしていく必要があります。

通常、電子データ請求書の発行側において、当該請求書に規則第8条第1項第1号のタイムスタンプの付与が行われていれば、受領者側で追加の対応をする必要はありません。もしタイムスタンプがない場合は、受領者側でタイムスタンプを付与するか、同項4号に定める事務処理規程に基づき、適切にデータを管理しなければ、電子帳簿保存法上の電子データとしては認められません。

なお、多くのクラウドサービスでは、このタイムスタンプ機能を実装しており、請求書を安心して発行することが可能です。

要件を満たしたシステム導入か、事務処理規定を整備し自力で保存体制をつくっていくのか、まだまだ頭を悩ます企業も多いことでしょう。

そもそも請求書をPDFで発行すると、どういうメリットがあるのでしょうか。企業がどれくらい請求書の発行に関する工数をかけているのか、請求書の発行数が多いか等にもよりますが、メリットとして考えられていることとして、主に業務の効率性向上と間接コストの削減が挙げられています。

次で詳しくみていきましょう。

請求書をPDFで発行するメリットとは?

請求書をPDFで発行することによって、大きく2つのメリットがあります。

メリット1:経理業務の効率性の向上が期待できる

  • 請求データが確定でき次第、速やかに電子データによる請求書を発行することができる。
  • 請求書発行システムの電子データと会計システムとを連携させることで、請求書の発行に伴う売上計上及び債権の発生を間違いなく会計帳簿へ登録することができる。
  • 請求書の修正や再発行が速やかに対応できるようになる。
  • 請求書の発行までに発生していた複数の押印や承認手続きを省略できる。

経理業務の中でも「作業」にあたる部分が大幅に短縮されます。作業工数の削減により、帳票分析や管理会計などといった重要業務に、人員や工数をかけることができるようになるでしょう。

請求書発行から、取引先に受け渡すまでにかかる時間も大幅に削減でき、取引先との円滑なやりとりにも繋がります。

メリット2:間接コストの削減

  • 請求書の原本を印刷し、封筒に封入し、投函するまでの人件費がかからなくなる。
  • 請求書の発行にかかる用紙、印刷代、郵送代が発生しなくなる。
  • 請求書の控えを倉庫で保管する必要がなくなる。

請求書を紙で発行する際にかかる備品代・人件費・郵送代を計算してみたことがありますか?

作成~印刷するまでの手間はPDFで発行する場合と変わりませんが、その後の作業は大きく違いがあります。

PDFの場合はメール添付して終了ですが、紙で発行する場合は、印刷・押印・封筒作成・封入、と取引先に受け渡すまでかなりの手間=コストがかかっています。

また、請求書は税法上の証憑書類ですので、7~10年の保存義務があります。この保存にかかるコストを、請求書をPDFで発行し、受領、電子保存することで大幅に削減することができるようになります。

請求書をPDFで発行するときの注意点とは?

「大きなメリットがあるPDFでの請求書発行ですが、自社の保存体制が整い、来月から紙発行から電子発行に切り替えるぞ!」、そんな時に注意すべきポイントをお伝えします。

ポイント1:個別対応できる体制を整えておく

PDFで発行する請求書は税法上有効であり、取引先に断りなく紙からPDFに切り替えても法律違反にはなりません。しかし、マナー違反になってしまうのは前述したとおりです。

必ず、取引先に確認を取りましょう。

取引先に確認を取る中で、電子保存の体制が整備できていない先も少なくないかもしれません。

そういった取引先には、請求書を従来通りに紙で発行するなどの対応が必要でしょう。

PDFの請求書をメール添付して発行する取引先と、従来通りの紙発行の取引先を分けて管理する必要があります。

ポイント2:送り間違いには今まで以上に気を付ける

紙発行の場合でも、他の取引先の請求書を間違えて送ってしまうリスクはゼロではありません。しかし、メール発行と紙発行の場合では、そのリスクのレベルには大きな違いがあるといっていいでしょう。

紙で発行、郵送する場合、その作業工程の中で、送り間違いを防ぐチェックポイントが多く存在します。

入力しながら、印刷しながら、押印しながら、折りながら、封入しながら、多くある工程のひとつひとつで確認をしながら進めていきます。しかし、PDFで発行しメールで添付する場合、大幅に作業工程が削減されます。

そのため、単純な操作ミスによる送り間違いのリスクが高まってしまうのです。

ファイルに命名規則を作るなどして、データを取り違えにくい仕組みを作りましょう。また、万が一送り間違えても先方で誤って開くことを防ぐために、ファイルに取引先毎のパスワードを設定しておくこともおすすめです。

ポイント3:情報漏洩のリスクがある

紙媒体の請求書は受領時点で紛失のリスクが考えられるものの、通常は一定期間経過後に倉庫等で保管することになります。そのため取引情報が漏れるリスクは低いと考えられます。

しかし電子化された請求書では、社内ネットワークのウィルス感染等で第三者によって容易に情報が抜き取られる可能性があります。

そのため、経理部門の担当者は請求書の電子データを自分のPCではなく、セキュリティの高い社内サーバー等で保存すること、各担当者のPCのウィルス対策がしっかりなされていることが大切です。

見積書も電子化しよう

電子帳簿保存法での「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引としています(法2六)。

そしてこの取引情報とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項が含まれていますので、「見積書」も対象となっています。

業種・業態にもよりますが、一般的な商取引では、取引に関する事前打ち合わせ、見積書の提示、取引成立時の契約書の締結、請求書の発行、そして領収書の発行等があり、見積書の他にも取引書類を積極的に電子化することは、業務効率化の観点から有用でしょう。

今こそ電子化への切り替え時

来る少子高齢化による労働人口の縮小に向けて、政府におけるペーパーレスの推進や、デジタルソリューションの促進等もあって、請求書の電子化は今後も普及・拡大が見込まれています。

また、2023年には消費税法に基づく「インボイス制度」が予定されているため、経理業務はますます複雑化していくことが予想されます。積極的に電子化へ切り替えていくことがますます望まれていくでしょう。

まとめ

請求書の発行は、経理業務の中でも手間がかかる業務のひとつです。

請求書から電子化を進めていくことで、経理部門全体の業務の質の向上につなげていくことが出来るでしょう。

多数の請求書を発行する企業では、請求書発行の電子化によるデメリットよりもメリットがはるかに上回っており、多くの企業が対応を急いでいます。

例えば原本の保存が不要になることで、倉庫の保管料を削減できるようになりますし、郵送で請求書を送る必要がなくなるため、切手代や封筒代などの間接コストを削減できます。

なによりも貴重な人的資源をより付加価値の高い業務に集中できることが大きなメリットといえるでしょう。

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