
こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
収益、つまり売上は現行の収益認識基準に従って計上します。収益認識基準に定められている収益の認識の時点は、約定した財やサービスを顧客に移転して、顧客がその財又はサービスの支配を獲得した時点です。
そのため、美容室通い放題サービスの場合は入金時点ではなく、契約した期間が経過した時点で売上に計上します。
美容室の売上の収益認識のタイミング
例えば美容室で売上の計上のタイミングを考えるとき、以下の三つの候補が考えられます。
- お客さんから予約を受ける
- 当日お客さんが来店してメニューに従ってカットなどのサービスを受けてクレジットカードで決済される
- クレジットカードで決済されていたお金が入金される
このとき、収益認識基準に定められている約定した財やサービスが顧客に移転して、顧客がその財又はサービスの支配を獲得した時点は実際にサービスを受けた②の時点となります。①のように入店を約束した段階でも、また③のように実際にお金を受け取った時点でもありません。クレジットカードで決済されて後でお金を受け取る場合には②の時点で売掛金/売上で仕訳を切り、③で現金/売掛金で売掛金を相殺します。現金決済された場合は現金/売上の仕訳を切ります。売掛金などの考え方についてはほかの記事をご参照ください。
美容室の通い放題サービスの収益認識タイミング
では、美容室通い放題サービスの場合はどの時点で収益を計上したらよいでしょうか。上の例のように美容室でサービスを受けた時点でしょうか。違います、何故なら通い放題サービスのため月に何度も美容室を訪れることが予想され、顧客がまだサービスを獲得したとはいえないからです。答えは美容室通い放題サービスの期間を経過したときです。つまり令和3年4月1日から30日まで通い放題とするならば、4月30日を終えた時点でサービスの支配が顧客に移転したとして売上を計上します。
例を挙げて説明します。

例:A美容室はBさんとの間で月額2万円の通い放題サービスの後払いサブスクリプション契約を結びました。通い放題サービスの期間はその月1日から月末までです。令和3年4月から契約が開始され、4月分の費用は翌月5月末に振り替えられます。そしてBさんは1年後の令和4年3月で解約しました。
それぞれ時点での美容室Aの仕訳は以下のようになります。
令和3年3月
美容室AとBさんの間で令和3年4月から月額2万円の通い放題コースの契約を交わした
→仕訳なし
令和3年4月中
Bさんが美容室来店してサービスを受けた
→仕訳なし
令和3年4月末=令和3年4月分のサービスが終了
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 売掛金 | 20,000 | 売上 | 20,000 |
令和3年5月中
Bさんが美容室来店してサービスを受けた
→仕訳なし
令和3年5月末日=令和3年5月分のサービスが終了、4月分のお金が入金される
令和3年4月分の売掛金の入金=相殺
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 現金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
令和3年5月分の売上計上
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 売掛金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
……以降令和4年3月末日まで同様の仕訳
令和4年3月末日
令和4年2月分の売掛金の入金=相殺
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 現金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
令和4年3月分の売上計上
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 売掛金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
令和3年4月末日
令和3年3月分の売掛金の入金
| 借方 | 貸方 | ||
| 科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
| 売掛金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
売上計上なし
このように月額利用料=その月1日から月末までの美容室通い放題の契約のため、月末の契約期間が終わったら売上計上します。
なお、多くの美容室でとられていると思われる商品券による前受収益つきましては別の記事を参考にしてください。基本的な収益認識の考え方は変わらず、お客さんにサービスの支配が移転して、その支配を獲得した時点、つまりサービスの提供をした時点となります。
まとめ
美容室の通い放題サービスの収益認識、売上計上についてはご理解いただけたでしょうか。収益の認識時点つまり結んだ契約が果たされる時点はどの時点かしっかりと確認した上で、売上認識しましょう。
また美容室のお客さんは企業ではなく、たくさんの一般の消費者です。そのお客さんが通い放題サービスの利用者なのか、またその都度払いのお客さんなのか、商品券を持っているのか、しっかりとお客さんごとに確認して毎月の管理を徹底するようにしたほうがいいでしょう。
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![サブスクリプションが注目を集めるようになった背景としては、ITの進展とともにソフトウェアのライセンス使用権を購入して、利用期間に応じた対価を支払うという形態が生まれたことにあります。特徴としては、定額の料金を支払うことで一定期間にわたってサービスを受けられる点があります。 会計処理としては、支払金額を実態に応じた経費科目で仕訳を行い、支払(契約)期間に応じて次年度に対応する分は前払費用として繰越されます。こちらの会計処理はユーザー側の視点からになりますが、今回はサービス提供者側の視点からの会計処理を説明していきます。 [toc] パターン毎に会計処理を解説 サービス提供者側の会計処理はユーザー側の会計処理を基本的にそのまま裏返すように考えればシンプルに理解できるでしょう。サービス提供者にとってユーザーから受領する利用料は売上科目で処理を行います。利用者側の支払(契約)期間に応じて次年度に対応する分は前受金として繰越されます。では具体的な会計処理について解説します。 (1)毎月払いの場合 ユーザーからの利用料を一定期間にわたって毎月受領する場合はその都度、売上計上します。例えば、年額12万円のライセンス利用料を毎月受領する契約であれば、毎月1万円を売上計上します。 タイミング借方貸方利用料受領月(現預金)10,000(売上)10,000決算時仕訳なし (2)一括払いで、契約期間が決算から1年以内に終了する場合 契約時に一括払いということで全額を売上計上したいところですが、会計上は当期に属する期間ぶんのみしか売上計上できないため、翌期に属する期間分は前受金として計上します。 例)3月決算で10月に年額12万円のライセンス利用契約を1年間分締結した場合 タイミング借方貸方利用料受領月(現預金)120,000(売上)60,000(前受金)60,000決算時仕訳なし (参考) 月次決算を行っている企業様であれば売上を月次で計上する必要があります。その場合は一括で全額を前受金で計上して、月額分を毎月売上に振替していく必要があります。 タイミング借方貸方利用料受領月(現預金)120,000(前受金)120,000各月月初(前受金)10,000(売上)10,000決算時仕訳なし (3)一括払いで、契約期間が決算から1年を超えて終了する場合 この事例で具体的に考えられるのは2年の長期契約です。その場合は契約期間が翌々期まで及ぶので翌々期に属する期間分は長期前受金という勘定科目として決算書上では表記する必要があります。 例)3月決算で10月に年額12万円のライセンス利用契約を2年間分締結した場合 タイミング借方貸方利用料受領月(現預金) 240,000(売 上) 60,000(前受金) 180,000決算時(前受金) 120,000(長期前受金)120,000 利用料受領時に翌々期分を最初から長期前受金の科目で計上することも可能ですが、通常は前受金の科目の内訳で管理することが一般的であり、かつ長期前受金は単純に決算書上の表記科目として設定しておく方が簡便であると思われます。 (4)前受金の管理について 上記を見てきたように前受金は将来の売上となる重要な科目です。 売上と同じレベルで内容や内訳を把握できるように会計システム上において設定しておく必要があります。 少なくとも顧客名、契約期間(開始日から終了日まで)、契約金額、契約内容がわかるように整理しておきましょう。 まとめ サブスクリプションとはもともと、雑誌の定期購読や予約購読による販売という意味を有していました。そして近年にソフトウェアのライセンス使用権の月額支払で注目を集めるようになりましたが、会計処理としては以前からあるような取引形態と同じように処理することで対応できます。 この会計処理で一番重要な勘定科目は前受金です。売上が正しく今期に属する分だけが計上されているか否かは、前受金がきちんと管理されているかに左右されます。 売上は経営上最も重要な数値であり影響が大きい科目です。サブスクリプション売上に関して、前受金の残高は売上に直結することを充分に理解しておいてください。](https://kurojica.com/invoice/wp-content/uploads/2020/11/subscription_advance_payment-main-300x158.png)


