こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
我が国では2018年3月に「収益に関する会計基準」(以下、新収益認識基準)が公表されました。経過期間を経て2021年4月からはいよいよ大企業を対象に強制適用となります。大企業と取引のある中小企業にとっても大きなインパクトをもつ問題です。
新収益認識基準は多くの企業に多大な影響を与えるものですが、とりわけSaaSモデルのビジネスを展開する企業はサブスクリプションによる継続課金をとることも多く、対応には特に慎重になるべきです。本稿ではまず新収益認識基準の基礎知識を端的に示し、その上で大手企業と取引のあるSaaS事業者が留意すべきポイントについて解説します。
「収益に関する会計基準」に関する基礎知識
これまで日本では実現主義に基づく収益の計上がなされており、画一的な基準が存在しないのが現実でした。このため、新収益認識基準を定めることで統一基準を設けて、取引の実態に即した収益認識を目指すことになりました。新収益認識基準はIFRS第15号がベースです。ここでは「支配の移転」に焦点を当てて5つのステップにより収益の計上を行います。
5つのステップとは、①適用の対象となる契約内容の把握(契約の識別)、②対象となる契約中に履行義務(収益認識の単位)がいくつ含まれているかの把握(履行義務の識別)、③対象となる契約の収益額の算定(価格の算定)、④履行義務が複数存在する場合は取引価格の配分(価格の配分)です。
大手企業と取引のあるSaaS事業者が留意すべきポイント
新収益認識基準に関してSaaS事業者が留意すべき点は2つあります。第一に履行義務の識別です。具体的にはSaaSで提供されるソフトウェアのライセンスとホスティング・サービスがそれぞれ区別して識別できる履行義務かどうかを収益認識会計基準第32項から第34項及び、収益認識適用指針5項から7項に従って判定しなければなりません。
もっとも、一般的なSaaSでは、ライセンス部分とホスティング・サービスがバラバラで使用されることを想定しておらず、一体としてサービス提供がなされていることが大半です。しかも、近年は利用者側もライセンス供与だけでなく、システム環境も一体として提供されることを期待しています。そうだとすれば、SaaSにおける履行義務についてソフトウェアのライセンスとホスティングを単一の履行義務として捉える場合が多く、これはSaaS事業者が留意すべき点といえます。
SaaS事業者の留意すべき点として、第二に価格の算定とその配分があります。SaaSでは、企業はホスティング・サービスを通じて契約期間中はソフトウェアを利用可能にする契約を顧客と結び、履行義務を負います。ここでは企業がサービスを提供するにつれて顧客も便益を享受することから一定の期間にわたって収益を認識します。この結果、契約期間にわたって収益に計上していく形になるのです。
SaaSビジネスには月単位で課金するサービスが多く、月額料金を受領した場合その月はその料金分を収益として計上する形で問題ありません。もっとも、サービスによっては年間契約を一括で結ぶことで、毎月支払いの契約よりも月ベースでの課金が安くなる料金プランが用意されているケースもあります。この場合、年払いの料金を月割りで按分した金額を毎月の収益として計上します。
まとめ
財務諸表において売上高は最も重要な指標の一つです。このため、新収益認識基準の導入によるインパクトは大きく、全ての会計担当者にとって慎重な対応が求められます。特にSaaS事業者にとっては本稿の留意点も含め、業務フローの変更やITの対応も必要となります。本稿の内容が2021年4月以降の会計実務の遂行に資すれば幸いです。
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