こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
令和3年度、電子帳簿保存法の改正が行われ、会計帳簿や証憑書類を電子データとして保存するための要件が大幅に緩和されました。
これによりデータ保存の自由度が高くなった一方で、データ改ざんによる不正を抑止するため、重加算税の罰則規定が設けられました。従来、税務調査などで不正が見つかった場合、追徴税額の35%の重加算税が課されますが、それが電子データに関連して見つかった場合には、さらに10%追加されることになります。
令和4年の税制改正で電子データ保存義務には2年の猶予が与えられましたが、電子帳簿保存法の改正をきっかけに、社内におけるペーパーレス化を進め、経理を中心とした業務フローの見直しを行う企業が増えています。
電子化を進めるにあたって、どんな場合にペナルティが課されるのか、事前に理解しておくことが重要です。この記事では、改正電子帳簿保存法において重加算税が課されるのはどのような場面か、またその具体的な影響について詳しく解説します。
目次
電子帳簿保存法の改正
令和3年度の税制改正では、事前承認制度が廃止され、システム要件も緩和されるなど、電子化へのハードルが大幅に下がりました。
一方、データで授受した書類は、データのままで保存することが義務づけられました。この「電子保存義務」については令和4年の税制改正で2年間の猶予期間が設けられました。
改正電子帳簿保存法の罰則規定
改正電子帳簿保存法では、不正を防ぐためにペナルティ規定が設けられています。仮装や隠蔽による過少申告が電子データについて見つかった場合に、通常の重加算税に10%を加重するという内容です。
通常、税務調査で発見された法人税等の過少申告に対して重加算税が課される場合には、35%の税率ですが、それが電子データにかかわる場合には、さらに10%加重され45%の重加算税が課されることになるのです。
では、ペナルティが課されるのは、具体的にはどのような場合でしょうか。通常の35%の重加算税と、電子データに係る重加算税の違いを押さえておきましょう。
重加算税が課される場合とは(通常の重加算税)
そもそも通常の重加算税(35%)が課されるのは、どのような場合なのでしょうか。
重加算税が課される場合とは、税額等の計算の基礎となる事実を「仮装」や「隠蔽」することで税額を過少に申告している場合などです。
「仮装」とは、所得や財産などについて故意に事実を歪曲することで、「隠蔽」とは、税金計算の基礎となる事実について、故意に隠すことです。
「仮装」の代表的なものに架空仕入れの計上があります。例えば、実際には取引がないにもかかわらず、仕入代金や外注費などの名目で請求書を偽造し、支払われた代金を仕入先業者と共に着服するような事例があります。その結果、法人税の申告の際、経費の水増しにより課税所得を少なく申告することになります。
このような不正に対して課されるのが従来の重加算税です。
改正電子帳簿保存法の罰則規定(重加算税の10%加算)とは?
改正電子帳簿保存法に関連して課される10%加算はどんなときに発生するのでしょうか。
ペナルティの規定は、新電帳法第8条第5項に定められています。この項の内容を要約すると、「スキャナ保存による電子データ又は電子取引の取引情報に係る電子データに記録された事項に関し、重加算税が課される場合、重加算税の額は、これらの重加算税の基礎となるべき税額に10%の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。」という内容です。
まず押さえておきたいのは、10%の罰則が発生する前提として通常の重加算税(35%)が課されるということに留意しましょう。通常の重加算税が課され、さらにそれが電子データに関連する改ざん等であるときに、初めて10%のペナルティが上乗せされるのです。
参照:「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」第八条 第5項
10%の加算が課される場合の影響額
スキャナ保存や電子取引につき保存した電子データに改ざんなどが見つかり、重加算税が課される場合の影響額はどれくらいになるのでしょうか。
電子データに関連して改ざんがあった場合の重加算税(過少申告の場合)は、重加算税の基礎となるべき税額×(通常の重加算税35% + 改正電子帳簿保存法のペナルティ10%)で計算されます。
例として税務調査により1000万円の架空仕入れが発見された場合の影響を見てみましょう。ここでは、架空仕入れについての偽造請求書を電子データとして保管していたケースを想定します。法人税の税率は30%とし、地方税等は省略します。
①架空仕入額:1000万円
②修正申告により納付する追加法人税:1000万円×30%=300万円
③追徴法人税に対する重加算税②×35%:300万円×35%=105万円
④電子帳簿保存法のペナルティによる重加算税の ②×10%:300万円×10%=30万円
⑤追加納付額:合計(②+③+④) 計 435万円
この例では、税務調査において経費の過大計上1000万円が発覚し、所得の過少申告となり、法人税の納付が不足となります。ここで追加納付がまず300万円発生します。さらに通常の重加算税と、電子データに記録されていたことで追加のペナルティが課されるため、重加算税は300万円の45%相当となり、追加納付とは別に135万円を支払うことになるのです。
対象となるデータの種類
この罰則規定は、スキャナ保存データと電子取引データが対象となります。つまり、請求書や領収書等を紙ベース」で受け取ってスキャナ保存した場合や、「電子ベース」で受け取ってそのまま保存し、その電子データに改ざん等が見つかった場合に、通常の重加算税に10%が追加されることになります。
ここで留意しておきたいのは、罰則規定に「電磁的記録に記録された事項に係るもののうち、隠蔽し、又は仮装された事実に係るものに限る。」とあり、電子データに記録された事項に、改ざんがされた事実が含まれるものが対象になる点です。
つまり、「受領した原本を電子データ化する場合に改ざんする場合」だけではなく、「原本となる書類がそもそも改ざんされていて、それが電子データ化されたもの」も罰則対象に含まれると考えられています。
取引等の実態を適切に反映した書類データを、電子データとして保存することがポイントになります。電子データそのものの改ざんのみならず、電子データ内に仮装隠蔽の事実に関するデータが含まれていた場合にも、ペナルティの対象となる可能性が高いことを認識しておきましょう。
改正電子帳簿保存法に対応して業務フローを見直す場合は、証憑類の示す内容が、「原本=電子データ」となっていることだけでなく、「取引実態=原本=電子データ」となっていることをチェックできる仕組みを構築する必要があります。
まとめ
通常の重加算税(35%)が課されなければ、10%の追加ペナルティも発動しません。電子データであるか否かにかかわらず、不正を防止すれば、35%の重加算税を避けられるだけでなく、さらに10%の追加重加算税を課されないことにも繋がります。
具体的な法施行、罰則·リスクについては今後の法改正などで変動する可能性がありますので、顧問先の税理士と相談しながら、状況を注視しつつ柔軟に対応する必要があります。
ただ、現状では国を挙げてDXを推進していることもあり、経理業務のデジタル化の流れは変えられないトレンドとなっています。こうした時代の流れに乗り遅れないためにも、デジタル化の検討を始めましょう。
改正電子帳簿保存法により可能になった電子化をフル活用することで、内部統制の強化やリモートワークにも対応することができます。法的要件を満たしつつ、業務効率を向上させるシステムやサービスの導入を検討してみましょう。
参照:~ スキャナ保存(区分②)に関する改正事項 ~「4 スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。」
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