こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
近年増えているのがサブスクリプションビジネスです。このビジネスの特徴は、商品を買い取らずに、利用権を借りて継続課金することにあります。ソフトウェアや音楽、映画などのデジタルコンテンツを中心に導入されています。今後はIT以外の分野にも拡大が見込まれています。
サブスクリプションビジネスが盛んになった背景として「価値観の変化」があります。つまり、物の所有に価値を感じる人は減少傾向にあり、反面でサービスの利用や体験に価値を見出す人が増えているのです。
これに加えて、継続課金によるサービスの提供は経営の安定化をもたらします。毎月、定額の収入を見込めるのは企業にとって大きな魅力です。これらの要因が重なり、多くの企業がサブスクリプションビジネスに関心を持っています。
もっとも、流行のビジネスだからといって、簡単に成功するとは限りません。事業を成功させるためには適切な目標設定と業務プロセスの管理が必須です。
目標の達成度合いを定量的に測定することはマネジメントに欠かせません。このため事業担当者にとってKPIに関する知識は不可欠といえます。
ところが、目標管理に関する用語には、耳慣れないカタカナ語が多く、わかりにくいというのが正直なところです。本記事ではサブスクリプションビジネスにおけるKPIを基礎から解説します。本稿の内容が、少しでも事業改善の参考になれば幸いです。
目次
KPI・KGI・KFSとは何か?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略であり、重要業績評価指標を意味します。具体的には最終的なゴールに到達するまでのプロセスを計測し、監視するための指標です。営業を例に挙げて考えると訪問件数や受注件数があります。
業務管理にあたって主観で対応していては業績アップは望めません。業績が悪化した時の対応が遅れたり、業績が好調であってもさらなるアクセルを踏めない恐れがあります。客観的な数値が示されれば適切な業務遂行が可能となるのです。
KPIと混同されやすいものとしてKGIとKSFがあります。まず、KGIとは「Key Goal Indicator」の略であり、重要目標達成指標を意味します。一定の期間における最終目標を数値で示したものです。具体例をあげると「今期の営業部門全体での売上を昨対比で50%以上向上させる」といったものがあります。
ここではなるべく具体的に数値化して示すことが求められます。というのも「今期の売上高で業界No.1になる」といった漠然とした目標を設定してしまうと、到達するまでのプロセスが曖昧で目標を立てただけで終わってしまう恐れがあるからです。
次に、KFSとは「Key Factor for Success」の略語であり、重要成功要因を意味します。ビジネスを成功に導くための要因を示したものです。KFSを数値化して指標にしたものがKPIだと考えて下さい。具体的には売上を伸ばすためには潜在顧客へのアプローチを増やすことが必要だとすれば、営業先の数と回数の増加がKFSとなります。そして、営業先を何件にするか、回数は何回にするかという具体的な数値がKPIです。
ビジネスにおいてKPIは、目標達成のために不可欠の指標です。KGIを最終ゴールとすれば、KFIは中間目標といえるでしょう。最終的にKGIを達成するために、担当者は誰か、期限はいつか、手段はどうするのかなどのプロセスを定量化して設定しなければなりません。
KPIを設定すれば、日常業務が数値化されます。目標到達までに何をするべきかチーム構成員全員の目に明らかになるでしょう。その結果、チームの誰もが目標とプロセスを共有しつつ業務をこなしていき、最終目標に到達できるのです。
サブスクリプションビジネスにおけるKPIについて用語を解説
サブスクリプションビジネスの特徴として、顧客が自分に最適なサービスを選べる点があります。例えば、利用料金や利用期間、料金体系の組み合わせによって多種多様なプランの中から最適なものを選べるのです。また、初期費用が安いために新規顧客を獲得しやすいことも指摘できます。
従来のサブスクリプションビジネスは従来のビジネスモデルとは異なる特徴やメリットを持ちます。このため、KPIの設定でも独自の数値や用語が存在します。サブスクリプションビジネスを進めるためにはどんなKPIを立ててビジネスを進めていくべきでしょうか。
解約率(CR:チャーンレート)
一般にビジネスでは新規顧客獲得を大切にします。しかし、サブスクリプションビジネスでは既存顧客の維持が、より一層重視されます。
解約率は「Churn ÷ ARR」という計算式で算出されます。ARRは「Annual Recurring Revenue」の略で、年間定期収益を意味します。解約率が下がると既存顧客が維持されます。結果的に長期的な収益の向上につながるのです。
定量化のポイントとしては月ごとに継続と解約を記録して月ごとに比較します。一般的には、解約率を年間10%以下に維持し続けるのが目指すべき目標とされます。
定期利益率(RPM)
サブスクリプションビジネスではサービスの利用状況に応じて継続的に売上が発生します。従来型の商品販売では、商品の販売時に単発的な売上が発生するだけなのと対照的です。
RPMは、{ ARR – ( Churn + 売上原価 + 一般管理費 + 研究開発費 ) }÷ ARRという計算式で求めます。
ここで注意が必要なのは開発費の扱いです。サブスクリプションビジネスでは顧客維持のために、継続的にサービスの品質向上に取り組まなければならず、研究開発費は常に発生し続けます。この点でも、一般的な商品では研究開発費は、初期投資として位置づけられるのと対照的です。
成長効率性指標(GEI:Growth Efficiency Index)
ビジネスの成長戦略を示し、投資の可否を判断する際に重視される指標です。GEIは、営業・マーケティング費 ÷ 営業利益という計算式で求められます。ここで注目されるのは営業やマーケティングに関する費用です。これらのコストはどんな事業を行う場合も発生します。
しかし、できればなるべく少ないコストで営業やマーケティングを行い、効率よくビジネスを回していきたいものです。単純にコスト減できれば、その分早い段階から利益を確保できます。
このため、GEIは成長戦略を決定するために不可欠の指標となります。
まとめ
サブスクリプションビジネスは継続課金を基本とするため、経営が安定しやすいメリットがあります。しかし、その反面ですぐに大きな利益を見込むのは難しく、必然的に投下資本の回収にはある程度の時間がかかってしまいます。
サブスクリプションビジネス成功をさせる鍵は、既存顧客の維持にあります。理由は、一般に新規顧客の獲得には既存顧客の維持と比べて約5倍ものコストがかかるからです。このため、新規顧客が増えたとしても解約率が高ければ利益を出すことは困難でしょう。
KPIの設定の際もサブスクリプションビジネスの特徴を踏まえて、最適な数値を設定するべきです。そして、実際にKPIを設定する場合、どんな指標にするかで業務の成果は大きく変わります。自社が行っているビジネスを正確に分析した上で慎重に設定するべきです。
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