こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
「請求書をPDFで送ったけれど、さらに紙でも送らなくてはならないの?」
そんな疑問を感じたことはないでしょうか。
2021年10月以降、郵便の配達にかかる日数は長くなっています。
発行日にきっちり郵便局に持ち込んだのに、「まだ請求書が届いていないのですが」という客先からのクレーム…そんな時の一昔前の強い味方はFAXでした。
しかし、今では業務のIT化・電子化の流れもあり、「取り急ぎPDFでメール添付します、原本は郵送します」というケースが多く見受けられます。
その流れから、最初から業務フローを「紙の請求書を郵送すると同時に、PDFも電子送信する」としている企業も少なくないでしょう。
でも、それって手間が増えただけなのでは?
この記事では、そもそも請求書の原本とは何か、紙で郵送しないといけないのか、PDFで送る場合でも郵送は必要なのかを解説していきます。
目次
そもそも原本とは?
そもそも請求書の原本とは、何を指すのでしょうか。紙に印刷した場合はともかく、作成してから一度も紙には出力せずに発行した場合は、何をもって原本とするのでしょうか。
『原本』とは「その文書がいちばん最初に作成されたもの、コピーされたものではないオリジナルの文書」を指します。
紙に印刷して、会社の角印を押して、担当者の認印を押して郵送した、といった場合は、この紙の請求書が『原本』になります。
パソコン内で作成し、PDFで出力してメール添付で発行した場合は、このPDFデータが原本となります。
ですから、電子データで請求書を発行したのならば、紙で出力して郵送で送る必要は原則ないということができます。社会全体の流れとして、いろいろな帳票や証憑書類が紙から電子に移行しています。今後はますます、紙での発行業務は減っていくでしょう。
とはいえ、この後の章で詳しく説明しますが、今はまだ紙から電子に移行する過渡期の真っ只中にあります。
PDFではなく紙の請求書を必要とする企業もいまだ多く、取引先の状況に応じて柔軟に対応することが求められます。
PDFデータを送れば紙の請求書を郵送しなくていいの?
『原本』としてPDFの請求書を発行するのであれば、先方から特に要望がない限り紙での郵送は必要ありません。
「弊社では請求書をPDFで発行し、こちらを原本としておりますので、紙での請求書の発行はいたしません」
電子帳簿保存法の改正も進む中で、そういった企業も多くなってきました。
しかし「原本=原紙」、すなわち書類の正本は「紙」であるという常識は、いまだ企業の商習慣に深く根付いています。
ですから、いったんは「紙での発行はしない」としながらも、顧客からの要望があれば、紙での発行もしているという企業が多いのです。
企業間取引に限らず、わたしたち個人の生活の中で欠かせない光熱費などでも「明細はオンラインからとなり、今後は紙での請求書は発行しません。希望するお客様には月額110円で従来通りの紙の請求書をお送りします」という、「紙での請求書発行は別料金が必要なオプションサービスである」としている企業も多く見受けられます。
繰り返しますがPDFの請求書を原本として発行しているのであれば、基本的に紙で発行して郵送する必要はありません。
しかし、今はまだ紙から電子に移行する過渡期にあります。これまでの商習慣を理解し、取引先のペーパーレス化や電子化の進み具合に合わせて対応するとよいでしょう。
なぜ紙の請求書が欲しいのか?PDFの請求書をもらった相手が困る理由とは?
発行する側にとっては、請求書の発行が紙からPDFに代わることは、大幅な業務効率化につながります。
例え請求書を請求書作成ソフトなどで作っていても、紙の請求書発行にはかなりのコストがかかっているからです。
請求書を印刷し、郵送するための封筒を印刷し、角印と担当者の認印を押印し、送り先を間違えないように封入し、郵送準備などなど、作業時間に郵送代、そしてヒューマンエラーのリスクが多く含まれているのです。
PDFでの発行にすることで郵送代はゼロになり、作業時間とヒューマンエラーのリスクは極限にまで抑えることができるでしょう。取引先が増えれば増えるほど、その業務効率効果は計り知れません。
発行側にとってはこんなにいいことばかりなのに、なぜ紙の請求書はなかなかなくならないのでしょうか。
それはPDFの請求書をもらうと、受け取った側が困る点がいくつか存在するからです。
ここでは、PDFの請求書を受け取った側が困る理由を解説していきます。
①電子化された請求書は電子データで保存しなくてはならなくなったから
請求書などの経理帳票は、原本を最低でも7年間保存する必要があります。
従来は、電子化された請求書も他の紙で発行された請求書と同様に、紙で印刷しそれを原本として保存することが可能でした。
しかし、2022年1月の電子帳簿保存法の改正により「電子取引で受け取った電子データはその電子データのまま保存しなければならない」となりました。
この義務化は2022年1月から始まっていますが、なかなか対応できない事業者が多く、2年間の宥恕措置(移行準備期間)が設けられていました。2023年12月でこの宥恕措置が廃止され、2024年1月1日からは、原則としてPDFデータで受けとった請求書は、PDFデータのまま一定の要件を満たしつつ保存をしなくてはならないのです。
これにより「電子保存」が業務フローとして根付いていない企業では、「電子化された請求書をもらうと、どう保存していいかわからない」「保存が厄介」となってしまうのです。
2023年度の税制改正大綱により、宥恕措置の廃止に代わり一定の要件を満たした場合に限って、従来通りの紙保存を認める“猶予措置”が盛り込まれました。この改正は、段階的に丁寧に電子保存を推し進めるためのものです。しかし業務フローが追い付いていない企業にとっては「もうなんだかよくわからないから、とにかく紙の請求書を発行してもらおう、そうすればこれまで通りで保存義務が満たせる」という心理になるのです。
②社内的に紙文化がぬぐいきれないから
経理担当者にとっても、経理業務に関連するペーパーレス化は、大幅な業務改善に繋がります。月末に担当者総出で一日がかりで行っていた請求書の発行から送付業務が、たったひとりの担当者で一時間もかからずに終わってしまうほどの変化をもたらすのです。
これは、そもそもの部署の人員配置(何人必要か)・人材配置(どんな人材が必要か)を、根本から見直すことにつながるほどの大きな変化です。企業にとっては良いことですが、実際に働く担当者からみると「大幅な業務環境の変化についていけるか」「そもそも自分の仕事がなくなるかもしれない」などといった様々な不安が生まれます。
経理以外の部署でも、紙から電子化へ業務フローと認識を大きく変えていく必要が出てきます。長らく根付いてきた紙文化を実際の業務フローと合わせて、認識の部分を変えていくにはかなりの努力と時間を要します。
一朝一夕にはいかず、「なんだかんだいっても紙が一番わかりやすくていいよね」という人も多いでしょう。
また、度重なる電子帳簿保存法による改正も「結局紙がわかりやすい」という心理を後押ししていることも否めません。
政府は企業の実情や対応の状況を鑑みながら、税務署への届け出の廃止や要件の緩和、宥恕措置など何度も改正を進めてきました。
経理担当者の多くは、社内で何度も勉強会や説明会を開き、法令対応のための準備を推し進め、各部署に理解と協力を何度も求めてきたことでしょう。
度重なる改正が続いたことにより、「でもこれって結局やらなくてもいいことになるのでは?」「結局またルールが変わったり、要件が緩和されたりするのでは?」という見方が他部署にも広がり、経理部門が電子保存を推し進めにくくなっているのは否めないと思います。
大きな変化を受け入れがたく、また、「結局またいろいろ変わるのでは?」という見方も強く、経理部門としても会社としても対応を鈍らせてしまっている背景があります。
③紙とPDF、それぞれの請求書を別々に保存するのがわかりにくいから
今後、PDFなどの電子請求書が主流になり、企業の業務フローが追い付いていく中で目指すべきところは、極力までペーパーレス化することです。
PDFなどの電子化された請求書を受け取った場合は電子データで保存し、紙の請求書を受け取った場合はスキャンして電子データとして保存することで、すべてを電子保存に切り替えていくことが今後の道筋です。スキャンした後の紙は廃棄します。
そうすることで、紙で受け取った場合でも電子データで受け取った場合でも、一元管理することができるでしょう。
しかし、今は過渡期です。
電子データで受け取った請求書は電子データで保存するけれど、紙で受け取った請求書は紙で保存する、としている企業も多くあります。
すると、「A社の請求書はPDFだからサーバーに保存して、B社の請求書は紙だからファイリングして書庫にある。C社は5月までは紙だからファイルで書庫に、6月以降は電子発行に切り替わったからサーバーに保存してある」などといったケースがまちまちに発生していくのです。
こうなると、担当者の管理の負荷が増え大きな手間になってしまいます。
企業や担当者によっては、原則は紙での請求書発行を取引先に依頼するとしているケースも少なくありません。
PDFの請求書を原本とする場合に注意することとは?
PDFで発行した請求書は法的にも有効な書類となりますが、発行にあたってはいくつか注意するべき点があります。顧客とのトラブルを避けるため、ポイントを正しく理解しておきましょう。
①PDFの請求書が正本である認識を両社で持つ
自社がPDFの請求書を正本として発行する場合は、取引先にそのことをはっきり認識してもらう必要があります。取引先への理解がないままに発行してしまうと、「原本の郵送が来てから支払う」といった取引先と相互の認識のずれが生じ、「入金がない」「いやいや、そもそも原本(紙の請求書)の発行がない」といったトラブルに繋がりかねません。
電子化の波の中で、対応や認識の状況は取引先それぞれです。
まずは先方に「弊社はPDFでの請求書発行をしたい(紙での郵送は基本的にしない)が、それで構わないか」ということをしっかりと確認しましょう。
紙面などでの通知や確認を取ることもおすすめです。
②印鑑が必要かどうか確認する
請求書を作成するとき、法人の角印・担当者の認印が押されているケースが一般的です。これは古くからの商習慣の名残ですが、法律的に決められたものではありません。
ですから、印鑑の押印は実質必要ではありません。しかし、取引先や担当者によっては「押印のあるものが正本であり、押印のないものは未完成なので受理できない」というルールを持っているケースもあります。
その場合は、取引先やその担当者のルールに従うといいでしょう。
まだまだ印鑑を必須としている企業は多いので、最初から押しておくのがおすすめです。
③紙での郵送が必要かどうかを確認する
取引先が「紙での発行をお願いしたい」と申し出た場合は、柔軟に対応する必要があります。
自社で電子発行したとしても、取引先にまだその受け入れフローができていない場合は、個別に対応していきましょう。
④セキュリティ対策を行う
請求書には、口座情報や取引内容などといった重要な情報が含まれています。また、メールなどでPDFの請求書を送る場合、手順が単純だからこそミスが起こりやすいものです。
PDFの請求書を、そのままメール添付することは絶対にやめましょう。
ZIPファイルに圧縮する、開封パスワードを設定するなどの最低限のセキュリティ対策は必須です。
パスワードを送る際は、請求書の添付メールとは別に送信しましょう。
まとめ
今回は、請求書をPDFで発行する場合の、注意点や紙での発行との関連について詳しく解説してきました。
電子帳簿保存法の改正が続き、要件の廃止や緩和措置、宥恕措置が本則に盛り込まれるなど、長期的にみると電子化・ペーパーレス化への道筋は少しずつ明確になってきています。
紙から電子化への過渡期の中で、実務をどう対応させていくかが大変なところではありますが、電子化を助けるシステムツールをうまく使い合わせてこの過渡期を乗り越えていきましょう。
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