こんにちは。「クロジカスケジュール管理」コンサルティングチームの林です。
介護事業所は、契約書を紙で作成・保管し、介護記録を手書きで行うなどまだまだアナログな部分が残っています。紙の書類が多いと、保管スペースが必要だったり、必要な書類をすぐに取り出せなかったりと、管理が煩雑になってしまいます。
令和3年度の介護報酬改定によって、契約書やケアプランなどの電子取引や、電子保存が認められるようになりました。これを受けて、介護事業所でも電子化が徐々に進められています。しかし、現状はまだ紙の書類で対応している事業所も少なくありません。
そこで本記事では、紙の書類を管理するデメリット、介護事業所で書類の電子化が進まない理由や電子化のメリット・デメリット、電子化の方法を解説します。紙の書類の管理に悩んでいる介護事業所の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
介護事業所は紙の書類が多い
まずは、なぜ介護事業所には紙の書類が多いのかを考えましょう。
介護業界は、自治体や病院へ提出する書類が非常に多いため、紙の書類が多くなっています。令和3年度の介護報酬改定で、厚生労働省は書類の電子化を推進しており、Web上で提出できる書類も多くなってきました。しかし、現場の対応は追いついておらず、紙の書類で対応している事業所も多いです。
また、介護士やケアマネージャーの高齢化も紙の書類が多い理由の一つです。介護事業所で働く人の中には、パソコンやスマートフォンの操作に慣れていないため、紙に手書きする方が早いと感じている人も少なくありません。
このような考えの人が多い介護事業所では電子化が進まず、紙の書類が多くなってしまいます。
紙の書類を管理するデメリット
紙で書類を管理するのは、多くのデメリットがあります。
まず、管理の手間がかかることが考えられます。紙で書類を管理する場合は、書類を片付けたり取り出したりする際に、倉庫やキャビネットまで行きファイルを探さなくてないけません。使用頻度が少ない書類が奥の方に埋もれてしまい、探すのに時間がかかったという経験がある方も多いのではないでしょうか。
紙で書類を管理することのデメリットには、保管スペースが必要なこともあります。介護保険書類の中には、2〜5年間の保存期間が定められている書類もあります。これらの書類をすべて紙で保管しようとすると膨大な量になってしまい、保管スペースが必要です。
また、書類の劣化や紛失リスクが高いことも、紙で書類を管理するデメリットの一つです。紙は時間が経つと、黄ばんだり文字がかすれて読みにくくなったりしてしまいます。誤って破れたり汚れたりしてしまうリスクもあります。
電子化のメリット
紙で書類を管理するのはデメリットが多いことがわかりました。ではどのように書類を管理したらいいのでしょうか。
書類は、電子化して管理するのがオススメです。書類を電子化するメリットを、順番に3つ解説します。
探すのが容易になる
介護事業所で電子化を行い、現場で一番感じられるメリットとしては、書類を探すのが容易になる点が挙げられます。
紙の書類は、書類を印刷して利用者や日付ごとにファイリングし、保管しておく必要があります。必要な書類を探すときには、ファイルを探し、その分厚いファイルの中から必要な書類を取り出さなくてはいけません。
しかし電子化すれば、利用者の名前や日付、キーワードを入力して検索するだけで、必要な書類をすぐに取り出すことができます。書類を探す手間や時間がかからなくなり、管理も簡単になるため、業務効率がアップします。
コスト削減できる
コスト削減ができることも、電子化のメリットです。紙で書類を保管する際は、印刷にかかるインクや紙、コピー機などの費用に加えて、保管するためのファイルやホチキス、保管スペースなどの費用もかかっていました。
書類を電子化すれば、これらの費用はかからなくなります。さらに、印刷や保管にかかる人的コストの削減も可能です。
パソコンやタブレットの購入、ITツールの導入など、初期費用がかかるかもしれませんが、長期的に考えるとコスト削減につながるでしょう。
介護の質が向上する
書類を電子化するメリットには、介護の質が向上することも含まれています。先ほど述べた書類を探すのが容易になる点や人的コストを削減できる点から、業務効率が上がり、介護業務にあてる時間を増やすことができます。利用者と接する時間が増え、介護記録を詳細に記録することができるため、利用者により適切な介護サービスを届けることが可能です。
さらに、介護記録を電子化することで、利用者の記録をグラフや表などで可視化し、より詳細に把握できるようになります。適切なタイミングでトイレに誘導したり、食事の量や内容を調節したりすることも可能になり、介護の質が向上します。
電子化のデメリット
電子化にはメリットもあれば、デメリットもあります。ここでは、2つのデメリットを解説します。
ITに慣れていないと難しく感じる
介護事業所で働く職員は、高齢化が進んでいます。普段からパソコンやITに慣れていない人も多く、苦手意識や拒否感を持っている人もいます。
そのような中で電子化を推し進めれば、職員からの不満が大きくなり、電子化はうまく進められません。
定期的なITに関する勉強会の開催や、日頃から質問しやすい環境づくりをすることが重要です。わからないことがあっても、他の職員と共有して解決できる環境があれば、次第に慣れて使いこなせるようになるでしょう。
セキュリティ対策が必要
電子化のデメリットの一つに、セキュリティ対策が必要なことがあります。紙で書類を保管する場合は、鍵のついた引き出しやロッカーに閉まっておくことでセキュリティ対策になります。管理者や責任者など限られた人だけが鍵を管理し、書類を閲覧した際は元に戻しておけばよかったのです。
しかし、書類を電子化するとデータがパソコンやスマートフォンの中に入っているため、パソコンやスマートフォン自体を紛失したり画面を覗き込まれたりして、情報漏洩してしまう可能性があります。
重要なデータは、パスワードをかけて誰でも見られないようにすることや、電車の中やカフェなど人が多い場所ではパソコンを開かないようにすることなどルールを決めるのも効果的です。
介護事業所で電子化が進まない理由
書類を電子化するメリットは多く、厚生労働省の方針としても電子化を推奨しています。しかし、介護事業所ではいまだに紙の書類が多く残っています。なぜ電子化は進まないのでしょうか。
理由は主に2つあります。
- 通常業務が忙しい
- ITに苦手意識のある人が多い
それぞれ具体的に解説していきます。
通常業務が忙しい
一つめの理由は、通常業務が忙しいことです。
介護業界は、少子高齢化社会の影響を受けて、人手不足に陥っています。さらに2025年には、第一次ベビーブーム(1947〜1949年)に生まれた「団塊の世代」と呼ばれる人たちが後期高齢者(75歳)になることで、さらに介護の需要が高まると予想されています。
利用者が増えて一人の介護士にかかる負担が大きくなり、新たな取り組みにまで手が回らなくなっています。紙の書類の管理や手書きの作業に不便さを感じていても、日々の業務が忙しく、ITツールを導入したり新たな作業を覚えたりする時間が取れません。
一気に電子化を進めると職員の負担になってしまうため、書類の一部分から初めてみるのがオススメです。
ITに苦手意識のある人が多い
ITに苦手意識のある人が多いことも、介護事業所で電子化が進まない理由の一つです。
利用者だけではなく、介護士やケアマネージャーなどの職員も高齢化が進んでいます。パソコンやITに慣れていない職員の中には、パソコンを使うことに対して強い拒否感を持つ人もいます。
そのような職員がいる事業所では、なかなか電子化は進まず、導入しても浸透しないまま終わってしまう可能性もあります。
ITに苦手意識のある人が多い場合は、定期的に勉強会を開いたり、職員が使いやすいツールを選んだりして対策しましょう。
電子化の方法
それでは、介護事業所で電子化を進めるにはどのような方法があるでしょうか。ここでは4つの方法をご紹介します。
なお、利用契約書やケアプランなどの介護保険の申請に関わる書類は、e-文書法および関連法令に従うことが求められます。書類の内容によって満たさなければならない要件も異なるので、確認するようにしましょう。
*参考 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版
写真撮影
一番簡単なのは、写真撮影する方法です。書類などを写真に撮って、パソコンやスマートフォンで保存し、共有します。自分のスマートフォンで書類を写真に撮るだけなので、ITが苦手な人でも、すぐに取り組むことができます。
写真を撮ったあとは、タイトルを設定してフォルダを分けて管理するなど、電子化されたデータをすばやく取り出せるように工夫しましょう。
スキャン
次に、複合機などを使用して書類をスキャンし、保存する方法です。すでに複合機を設置してある介護事業所なら、写真撮影と同様、ITが苦手な人でも手軽に書類を電子化することができます。
スキャンしたデータ内の文字は検索することができませんが、画像から文字を読み取ってテキスト化するOCR機能を搭載したソフトを利用すれば、テキストでの検索が可能になります。
書類によっては、白黒ではなくカラースキャンでなければならない場合もあるため、要件を確認してから電子化するといいでしょう。
*参考 スキャンしたPDFファイルからテキストをコピーする方法
ITツール
介護記録やケアプランなどは、ITツールを導入して電子化する方法もあります。ITツールの場合は、電子化の要件を満たしているツールを選べば、パソコンやスマートフォンなどから必要な情報を入力するだけで電子化の対応が完了します。
グラフや表を作成して、利用者の健康状態や食事量などを可視化することも可能です。さらに、職員同士や利用者の家族への情報共有もすばやく行うことができます。
ITに慣れていない職員が多い介護事業所では、操作方法がわかりやすいツールを選ぶといいでしょう。ITツール担当の職員を選定し、ITツール担当者を中心に使い方を教えたり、定期的に操作方法の勉強会を開催したりするなど、ITが苦手な方もツールを使いこなせるようにする工夫が必要です。
外注
3つの電子化の方法をご紹介してきましたが、時間やお金をかけずに電子化を行いたいという事業所も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、電子化を外注するという方法もあります。電子化の外注は、スキャンに特化したサービスと、データのスキャン後に帳票化やファイル管理まで対応しているサービスがあります。どこまで外注するのか、各事業所に合ったサービスを比較検討してください。
外注の場合は、難しいITツールを導入したり使い方を覚えたりする時間やコストをかけずに済みます。また、電子化の要件を満たすことやデータの見やすさは、プロが行っているため安心できます。
しかし、利用者の個人情報などを含む重要なデータを取り扱うため、セキュリティ対策が万全で安心できる会社に外注するのがオススメです。
外注の場合もコストは発生しますが、ITツールの導入より費用を抑えられる可能性もあります。問い合わせて確認してみましょう。
まとめ|介護事業所も書類の電子化で業務効率化!
介護業界では、人手不足による忙しさや介護士のITスキル不足などから電子化が進まず、いまだに紙の書類が用いられている場面が多くあります。
電子化は、書類を写真撮影やスキャンなどでデータ化する方法や、ITツールを導入する方法があります。ITツールを導入する場合は、操作方法がわかりやすいツールを選ぶといいでしょう。導入する前に、無料トライアル期間を活用して試してみるのもオススメです。
さらに、電子化は外注する方法もあります。書類の電子化だけを外注するのか、電子化に加えて帳票化やファイル管理まで外注するのかによっても費用は異なります。依頼する前に電子化する書類を選別しておくことで、コストを抑えられるでしょう。
人手不足の介護業界では、業務の効率化が急務になっています。その第一歩として、紙の書類を電子化してみてはいかがでしょうか。
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