
建設業界は激しい変化の中にあり、多くの企業がIT導入による業務効率化の必要性を感じています。
しかし、「何から始めればいいのか分からない」「投資対効果は本当にあるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、建設業界でのIT導入を成功させるためのポイントや具体的なメリット、さらにはおすすめのツールまでわかりやすく解説します。
目次
なぜ今、建設業にIT導入が求められているのか
建設業界が抱える構造的な課題(人手不足・非効率な業務)
建設業界は現在、大きな転換期を迎えています。慢性的な人手不足が続き、2025年も倒産件数が増加傾向にある中、特に中小企業は従来のやり方では競争力の維持が難しくなっています。
経営課題として特に深刻なのは以下の点です。
- 情報管理の非効率性による機会損失の拡大
- 属人的な業務運営による事業継続リスクの増大
- 労働集約的な業務プロセスによる収益性の低下
- デジタル化の遅れによる競合他社との格差拡大
これらは単なる業務効率の問題ではなく、企業の持続的成長と競争優位を左右する重大な課題です。
参照:「建設業」倒産動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
IT化が遅れている主な理由とそのリスク
建設業でIT化が遅れている背景には、現場中心の仕事でデジタル機器に慣れていない人が多いことや、中小企業が多く初期投資をためらうことが挙げられます。また、慣れ親しんだ業務手法からの脱却に対する危機感の薄さも要因です。
しかしIT化を怠ると、ITを活用する競合に生産性で差をつけられ、収益悪化は避けられません。加えて、若い人材の確保も難しくなり、組織の活力が低下してしまいます。さらに法規制への対応遅れは、企業の持続可能性にまで影響を及ぼします。
国のDX推進・補助金の背景と今後の流れ
政府は建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を重要な取り組みとして位置づけており、2024年度には約2,000億円のIT導入補助金を用意しています。これは業界全体の競争力強化や生産性向上を支援するための大きな後押しとなっています。
主要な補助金制度:
- IT導入補助金:ITツール導入費用の最大450万円を補助
- ものづくり補助金:設備投資を含む幅広い支援
- 小規模事業者持続化補助金:経営力向上への支援
- 各自治体独自の補助金制度
参照:建設業におけるIT導入補助金とは?申請方法やおすすめツール3選も徹底解説
建設業のIT化によって得られる5つのメリット
現場と事務所の情報共有がスムーズに
ITツールを使うことで、現場と事務所の情報をリアルタイムで共有できます。進捗や資材の状況がすぐに分かり、伝達ミスや遅れを減らして効率よく対応できます。
紙・FAX文化からの脱却で作業時間を削減
書類の電子化で、紙やFAXのやり取りが不要になります。検索や編集が楽になり、書類管理の負担も減ります。ペーパーレスはコスト削減や環境にもやさしいです。
プロジェクト管理がリアルタイムで可視化
複数の現場の進み具合を一目で確認できるので、遅れや問題を早く見つけられます。ガントチャートなどを使って資材や人員の調整もスムーズに行えます。
業務の属人化を解消し、引き継ぎが楽になる
業務の流れをシステム化して標準化することで、特定の人に頼らずに作業できるようになります。引き継ぎや新人教育もスムーズになり、組織の安定につながります。
労務・安全管理もデジタルで効率化
勤怠や安全管理をデジタル化すると、ミスや不正が減り管理が楽になります。現場のリスク共有もリアルタイムでできて、働きやすい環境づくりと法令遵守に役立ちます。
参照:2024年4月から始まる建設業の残業時間に対する罰則とは?概要や注意点、業務効率化のおすすめツールを紹介
IT導入を成功させるための3つのポイント
小規模から始める(スモールスタート)
多くの企業が陥る失敗パターンの一つが、いきなり大規模なシステムを導入してしまうことです。現場が対応しきれず、かえって混乱を招くことがあります。成功する企業は、「段階的に少しずつ進める」スモールスタート戦略を採用しています。
スモールスタート導入の具体例:
- 第1段階:チャットやビデオ会議など、簡単なコミュニケーションツールを導入
- 第2段階:ファイル共有・書類管理システムで“脱・紙文化”
- 第3段階:現場の進捗管理・報告業務をIT化
- 第4段階:統合型業務システムで全体最適を目指す
スモールスタート戦略は、初期投資リスクを抑えつつ、現場の混乱を防ぎ、段階的にシステムに慣れてもらえるのが特長です。小さな成功体験を積み重ねることで、現場のIT化への抵抗感が和らぎ、導入効果を高められます。また、各段階で課題を早期に発見・改善できるため、導入全体の精度と安定性も向上します。
現場の声を取り入れて運用設計する
どんなに高機能なシステムでも、実際に使う人が「使いにくい」と感じれば意味がありません。IT導入を成功させるには、現場の声を徹底的に聞き、運用設計に反映させることが重要です。
現場の声を取り入れるステップ:
- 導入前ヒアリング:業務の中で何に困っているか、どう改善したいかを丁寧に聞く
- パイロット運用:一部チームで試験導入し、実際に使ってもらう
- フィードバック収集:使い勝手や改善点を聞き取り、反映する
- 継続的改善:導入後も定期的に見直しを実施する
運用設計では、現場が無理なく使える仕組みづくりが重要です。操作はシンプルに3ステップ以内とし、スマートフォンでも使いやすい設計が求められます。帳票は従来の形式に近づけることで混乱を防ぎ、通信環境が不安定な現場でも使えるよう、オフライン対応機能を備えることも大切です。現場目線の工夫が、定着率と活用度を大きく左右します。
定着支援・教育体制を整備する
IT導入はスタートにすぎません。重要なのは、導入後にいかに定着させるかです。そのためには、手厚い教育体制と継続的な支援が欠かせません。
教育体制の整え方:
- マニュアルの整備:画面キャプチャや動画付きの視覚的マニュアルを作成
- 研修の実施:段階的な研修で、基本から応用まで学べるように
- ITリーダーの育成:社内に質問できる人材を配置し、サポート体制を社内に内製化
- ベンダーの外部サポートも確保:技術的な問題に素早く対応できる体制を整備
導入初期は従業員の不安や戸惑いが最も大きいため、特に手厚いサポートが求められます。相談窓口を設け、些細な疑問にも丁寧に対応する体制が重要です。利用状況を定期的に確認し、使用頻度が低い部署や個人にはフォローを行うことで、早期の定着とスムーズな運用が可能になります。
チームの日程調整や予定共有を簡単に。

スケジュール管理
クロジカガイドブック
- スケジュール管理の主な機能
- 導入メリット
- 料金プラン詳細
- 導入事例
建設業におすすめのITツール8選【業務別】
コミュニケーション|LINE WORKS
LINE WORKSは、LINEに近い使い勝手でチャット・通話・掲示板・ファイル共有などを一元管理できる、業務用コミュニケーションツールです。
操作がシンプルで、現場スタッフや協力会社ともスムーズに連携できるため、ITに不慣れな環境でも導入しやすいのが特長です。スマートフォン対応に優れており、現場からの利用にも適しています。
スケジュール・進捗管理|Asana
Asanaは、プロジェクトの工程やタスクをチームで可視化し、進捗管理や責任の明確化を実現できるプロジェクト管理ツールです。
ガントチャートや自動アラート機能により、遅延リスクの早期把握が可能で、報告業務の効率化にもつながります。視覚的な操作がしやすく、現場でも直感的に使える点が魅力です。
勤怠・申請業務|freee人事労務
freee人事労務は、勤怠管理・給与計算・申請処理などを一元化できるクラウド型の労務管理システムです。
建設業特有のシフトや現場ごとの勤務時間に対応し、GPS打刻や移動時間の自動集計機能も備えています。法令対応や労務リスク対策にも有効です。
日程調整・会議予約|クロジカスケジュール管理
クロジカスケジュール管理は、建設業の現場特有の複雑なスケジュールを簡単に調整・管理できるツールです。
複数現場やスタッフの予定を一元管理でき、打ち合わせや会議の日程調整をスムーズに行えます。スマホ対応で現場からもリアルタイムに確認・更新が可能です
書類管理・図面共有|Google Drive
Google Driveは、図面や写真、各種書類をクラウド上で一元管理・共有できるストレージサービスです。
容量の大きなファイルや複数バージョンの管理にも対応しており、協力会社との共有も簡単です。スマホやタブレットからの閲覧もスムーズで、現場対応力にも優れています。
FAX代替|eFAX
eFaxは、インターネットを通じてFAXのやり取りができるサービスです。
FAX機や電話回線が不要になり維持費を削減できるほか、受信FAXはPDF形式でメールに届き、ペーパーレス化を促進します。スマホやPCから外出先でも確認・送信が可能で、業務効率を大幅に向上させます。送受信履歴は自動で記録され、紙FAXの紛失リスクも解消されます。
図面確認・現場チェック|ANDPAD
ANDPADは、図面の確認や施工記録、報告書作成までをスマホひとつで完結できる建設業特化型の現場管理アプリです。
写真は自動整理され、帳票の自動生成機能により報告業務を効率化。導入実績が豊富で、現場業務への適応力が高いのが特長です。
グループウェア|サイボウズ Office
サイボウズ Officeは、スケジュール・設備予約・掲示板・ワークフローなど、社内業務を統合管理できるグループウェアです。
複数の現場やスタッフを一括で管理でき、車両や資材の予約管理にも対応。中小規模の建設会社にも導入しやすい設計です。
ITツールの比較と選び方のポイント
業務効率化を目指してITツールを導入する企業が増えていますが、数多くの選択肢がある中で、自社に最適なものを選ぶにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは、ITツールを選ぶ際に重視すべき3つの視点をご紹介します。
目的別に選ぶ(現場、管理、営業)
ITツールは、利用シーンによって求められる機能が異なります。まずはどの部署・目的で使うかを明確にしましょう。
- 現場向け:進捗管理、作業指示、モバイル対応があると便利
- 管理部門向け:勤怠・経費管理、レポート作成などのバックオフィス業務に対応
- 営業向け:顧客情報や案件の管理ができるCRM(顧客管理システム)が有効
目的に合った機能を持つツールを選ぶことで、無駄なコストや使いにくさを避けられます。
使いやすさとサポート体制を確認する
どれだけ高機能なツールでも、使いにくければ意味がありません。使いやすさ(UI/UX)は特に重要です。
- 直感的に操作できるデザインか
- スマホやタブレットでも使えるか
- 現場スタッフのITスキルに合っているか
さらに、サポート体制も導入後の安心材料です。
- チャットや電話での対応があるか
- 導入時の初期設定や研修の有無
- トラブル発生時の対応スピード
ツール選びの際は、無料トライアルやデモを活用して、実際に使い勝手を確認しましょう。
費用感・導入までの期間の目安
ツールによって費用体系は大きく異なります。選定時には、導入コストと継続的なランニングコストをしっかり比較しましょう。
- 月額制(サブスクリプション型)
- 買い切り型(ライセンス制)
- 従量課金制(使用量に応じた請求)
導入期間の目安も要チェックです。
- クラウド型ツール:最短で即日導入も可能
- オンプレミス型:カスタマイズが多く、導入までに数週間〜数ヶ月かかる場合も
また、無料プランのあるツールでも機能制限やサポートが乏しいことがあるため、安易な選定は避けるべきです。
IT導入で業務効率化を実現した建設会社の事例
クロジカスケジュール管理|株式会社エス・トラスト
北海道札幌市に拠点を置く株式会社エス・トラスト様は、管工事業の設計施工や管理保守などを手掛けています。多忙な現場スタッフのスケジュール把握が難しく、誰がどこで何をしているのかが見えにくいという課題を抱えていました。
同社は「クロジカスケジュール管理」を導入し、社内外でのスケジュール共有と可視化を実現。スマートフォンからもアクセス可能なことで、外出先からでも社員の動向をリアルタイムに把握でき、コミュニケーションの円滑化と業務効率の大幅な向上に繋がりました。
【事例を詳しく読む】株式会社エス・トラスト様 | クロジカスケジュール管理
まとめ|建設業の未来は"IT活用"が決め手
建設業界は人手不足や業務の属人化など、多くの課題を抱えています。これらを解決し、効率化を進めるためにIT導入が不可欠です。
IT化により情報共有のスムーズ化や作業時間の削減、労務管理の効率化が実現し、競争力向上に直結します。成功には段階的な導入と現場の声を反映した運用設計、充実した教育・サポート体制が重要です。
政府の補助金制度も活用しながら、自社に合ったツールを選び、今こそITを活用した業務改革を進めましょう。
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