こんにちは。「クロジカスケジュール管理」コンサルティングチームの林です。
カッツモデルは、人材評価や育成を含めた組織のマネジメントに役立つフレームワークです。そのため、導入を検討している組織も多いでしょう。
しかし、カッツモデルを導入する際には充実した研修体制が必要です。1955年に提唱されたため、もう古いモデルだという意見もあります。
本記事では、カッツモデルを組織マネジメントに活用するメリットや注意点について解説しています。導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
カッツモデルが提唱する3つのスキル
カッツモデルで提唱されているスキルは、以下の3つです。
これら3つのスキルは、マネジメントの階層別に求められる割合が異なります。
テクニカルスキル
現場の業務に直接関連するのがテクニカルスキルであり、ロワーマネジメント層(主任・リーダークラス)にとって最も重要です。
各業種によって異なりますが、具体的には以下のスキルがあります。
- 接遇スキル
- 問題解決スキル
- パソコンスキル
その他、業種に関連した資格や知識も含まれるでしょう。
テクニカルスキルは、主任やチームリーダーなど現場を直接取り仕切るマネジメント層には欠かせません。またマネジメント層だけではなく、現場で働く人材すべてに求められるスキルといえます。
ヒューマンスキル
ヒューマンスキルは対人関係を良好・円滑に保つスキルを示し、すべてのマネジメント層で一律に求められます。
具体的なスキルは以下の通りです。
- リーダーシップ力
- コミュニケーション力
- ヒアリング力
- プレゼンテーション力
現場に一番近いロワーマネジメント層はもちろん、企業全体の計画を練るトップマネジメント層も方針をわかりやすくプレゼンし、周囲を引っ張るスキルが必要です。
また、その間を取り持つミドルマネジメント層には、トップマネジメント層の考えをヒアリングし、ロワーマネジメント層にその意図を正確に伝えるスキルが求められます。すべてのマネジメント層がヒューマンスキルを獲得することで、組織の業績は確実に向上するでしょう。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは物事を俯瞰して判断するスキルであり、組織の発展を担うトップマネジメント層に求められます。
具体的なスキルは以下の通りです。
- 論理的思考
- 批判的思考
- 水平思考
コンセプチュアルスキルの高い人材は、組織内部だけではなく政治や経済などの社会情勢にも目を向ける多角的な思考が可能です。そのため、テクニカルスキルやヒューマンスキルと比較するとより高度なスキルといえるでしょう。
組織全体を取り仕切るトップマネジメント層は、物事の本質をとらえて柔軟に考えるスキルを身につけなければなりません。
カッツモデルはもう古い?
カッツモデルは古いという意見もありますが、決してそのようなことはありません。むしろ現代にこそ多くの人に当てはまるフレームワークです。
カッツモデルが提唱されたのは1955年であるため、時期だけを見ればたしかに古い理論といえます。提要された当時、カッツモデルは労働者(ブルーカラーワーカー)ではなく、管理者(ホワイトカラーワーカー)向けの理論であると認識されていました。
現代では労働者と管理者の境が曖昧になり、多くの人が管理者の要素を持っています。そのため、カッツモデルは現代社会で働く多くの人を対象とした理論なのです。
カッツモデルを組織マネジメントに活用するメリット
多様な人材を活用することは組織マネジメントの大きな課題です。カッツモデルを組織マネジメントに活用すると、以下のメリットが得られます。
- 人材育成のフレームワークになる
- 業務効率が上がる
人材育成のフレームワークになる
カッツモデルのメリットは必要な能力が共有でき、人材育成のフレームワークになる点です。
カッツモデルを活用することでマネジメント層別に求められる能力がわかり、人材評価や課題設定が行いやすくなるのでしょう。
厚生労働省の2014年度版の調査によると、「上長等の育成能力や指導意識が不足している」「人材育成が計画的・体系的に行われていない」という課題が人材育成の現場で多くを占めています。
また、この悩みを挙げている中堅層は40%以上を占め、最も多い割合です。マネジメント層である中堅層にとって人材育成が大きな課題となっていることが伺えます。
カッツモデルを用いれば、マネジメント層に求められる能力を評価者とともに確認し、能力の不一致を是正できるのです。
*参考 弟3節 人材育成の現状と課題
業務効率が上がる
カッツモデルを用いると人材育成が計画的に行えるため、業務効率が上がります。
人材育成には時間がかかるものです。忙しい業務時間を圧迫するでしょう。厚生労働省の2014年度版の調査では、人材育成の課題として「時間的余裕がない」ことが最も多くの割合を占めています。
しかし、人材育成を疎かにしていると、一人の業務負担はさらに増え悪循環を生み出すのです。優秀な人材が少しでも早く・多く育つことで、業務は効率的に回るでしょう。
そのため、カッツモデルを使用して計画・効率的に人材育成を行うことは業務効率向上につながるのです。
マネジメントスキルを上げる!カッツモデルを学ぶ方法
カッツモデルを組織マネジメントに活用するためには、効果的な研修体制を整える必要があります。
- コンセプチュアル・ヒューマンスキルは「集合型研修」
- テクニカル・ヒューマンスキルは「OJT研修」
- スケジュール調整が難しい場合は「eラーニング研修」
以上のように、各スキルによって適した研修方法があるのです。解説していきます。
集合型研修
講義形式を中心とした集合型研修は、コンセプチュアルスキルやヒューマンスキルの獲得に適しています。ヒューマンスキルは実践の前に基礎知識の獲得が必要です。そのため集合型研修で講義を受けて、知識を整理するとよいでしょう。
また、集合型研修は対面でグループワークやディスカッションが可能です。そのため、抽象的で曖昧な概念の多いコンセプチュアルスキルの獲得に適しているのでしょう。
講義で得た知識をグループワークで仲間とディスカッションすることで、確実にスキルが身に付きます。
OJT研修
実践を基にスキル獲得を目指せるOJT研修は、ヒューマンスキルやテクニカルスキルの獲得に適しています。コミュニケーション能力や業界特有の技術は、集合型研修のような座学だけでは身に付きません。経験豊富な指導者のもとでポイントを押さえて実践することで、現場で活かせるスキルが身に付くのです。
スターバックスコーヒージャパン株式会社では、マネジメント層への研修としてリテイルマネジメントプログラムを用いてOJT研修を実施しています。
プログラムを介して、売上・在庫管理などのテクニカルスキルやコーチングや対話力といった、コミュニケーションスキルの習得が促進されているのです。
現場で求められるスキルの獲得にはOJT研修を活用しましょう。
*参考 スターバックスコーヒージャパン株式会社|スターバックスで広がる可能性
eラーニング
集合型研修やOJT研修を行いたくても、時間や人員の面でスケジュール調整が難しい場合もあるでしょう。その場合には、eラーニングの活用がおすすめです。
eラーニングを活用した研修には以下のメリットがあります。
- 集合場所に移動する時間がない社員も受講できる
- スキルを教える人材がいない部署でも受講できる
- 場所や日程調整などの手間が省ける
インターネット環境さえあれば受講できるeラーニングはその効率の良さが利点です。
場所の制約がないため一度に多くの社員の研修が行える他、教える側の人材不足も補えます。対面での研修が難しい場合でもeラーニングを活用することで、研修は実施できるのです。
カッツモデルを導入する際の注意点
カッツモデルを活用することで、人材育成の目的が明確になり組織マネジメントの効率が上がります。導入する際は、以下の注意点を踏まえましょう。
- 必須スキルを限定的にとらえすぎない
- 研修体制を整える
必須スキルを限定的にとらえすぎない
カッツモデルで示される各々のスキルを、限定的にとらえすぎないように注意しましょう。カッツモデルでは、各マネジメント層にとって重要なスキルが共有できますが、業種によっては他のスキルも求められます。
組織の規模によっては、トップマネジメント層でもテクニカルスキルの重要性が高い場合もあるでしょう。あくまでフレームワークとして参考にし、自社組織に応用することが重要です。
研修体制を整える
カッツモデルを導入するうえで、各スキルに応じた研修体制を整えることは欠かせません。組織全体で求められているスキルを共有し、効率的にスキルを身につけることが業務効率の向上につながるのです。
研修体制が整わないままカッツモデルを導入してしまうと指導者側の業務負担が増え、かえって効率が落ちてしまいます。指導を受ける側の目的意識も低下しやすく、求める人材像に齟齬が生じる可能性もあるでしょう。
指導を行う人材やスケジュールの調整、eラーニングの活用などを事前に検討しておく必要があります。
カッツモデルを基準に作り出されたドラッカーモデルもある
カッツモデルを基準に、最新の傾向を反映して作り出されたモデルがドラッカーモデルです。
カッツモデルではトップマネジメントに重要とされていたコンセプチュアルスキルですが、ドラッカーモデルではすべてのマネジメント層に求められるものとしています。
また、ロワーマネジメント層の下に「ナレッジワーカー」という一般社員層を設定しているのも特徴です。ナレッジワーカー層にもマネジメント層と一律の割合でコンセプチュアルスキルが求められています。
労働人口が減少し、グルーバル化や多様性が進んでいる現代社会では、社員一人ひとりが俯瞰的な視点を持つ必要があるのです。
まとめ|カッツモデルを導入してマネジメントスキルを上げよう
各マネジメント層に重要なスキルを提唱したカッツモデルは、現代社会にも通用する理論です。グローバル化や多様化など現代社会の特徴を加味して提唱されたドラッカーモデルが、カッツモデルを基準にしていることからも明らかです。
カッツモデルは人材育成のフレームワークとなり、業務効率向上に役立ちます。組織マネジメントに活用するためには、研修制度を整えましょう。
集合型研修やOJT研修など、各スキルに適した研修制度を整える他、eラーニング研修も視野に入れることで、場所や時間に捉われずに研修を実施できます。
カッツモデルを導入して組織マネジメントに活かしましょう。
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