こんにちは。「クロジカ請求管理」コンサルティングチームの花田です。
昨今、様々なサービスがSaaS等により提供されており、これらのサービスを利用することで帳簿の作成業務についても大きく効率化を図ることが可能となっています。
しかしその一方で、日本商工会議所の調査によると、売上高1千万円以下の事業者の半数以上が、会計ソフトなどのシステムを利用せずに、手書きやエクセルによって帳簿作成を行っているという結果がでています。
そこで今回は、手書き・エクセルを利用した帳簿作成のメリットとデメリットを改めて確認した上で、システム利用への変更ポイントについて解説していきます。
手書きで作成するメリットとデメリット
IT技術がますます身近なものとなり、電子帳簿保存などの法令化も進んでいる経理業界ですが、手書きで帳簿を作成し続けている事業者も決して少なくありません。
特に、小規模であればあるほど、手書きで帳簿作成を行っている事業者は多く見受けられます。
では、そのメリットとデメリットを見ていきましょう。
手書きのメリット
帳簿作成を手書きで行うメリットは、主に以下の3点です。
パソコンの操作が不慣れであっても作成が可能
パソコンの入力に不慣れな場合は、手書きの方が帳簿作成の作業がしやすいメリットがあります。
確認がしやすい
手書きの帳簿を実際に手に取って見返すことで、確認や突合作業がやりやすいと感じる人は少なくありません。パソコンを立ち上げ、データを検索する作業よりも、紙をめくって1枚ずつ確認する方が効率的に作業を進められる場合もあります。
取引内容の理解がしやすい
デメリットでも触れますが、手書きで帳簿作成をするのは大変な労力がいる作業です。実際に数字と向き合い、自ら電卓を叩いて数字を確認して記帳していかなければなりません。
反面、自らの手を動かすことで記帳作業の中で事業活動の細かな流れをより深く理解しやすいメリットがあります。
手書きのデメリット
帳簿作成を手書きで行うデメリットは、主に以下の4点です。
とにかく手間がかかる
会計帳簿は、大きく分けて主要簿と補助簿の2種類に区分されます。
会計システムなどを導入している場合、ひとつ仕訳入力すれば、関連する会計帳簿に仕訳が自動連携されていきます。しかし、手書きの場合はそれぞれの帳簿にひとつずつ、転記をしていかなければなりません。
例えば、売上が現金で上がった際に、仕訳帳・現金元帳・売上元帳にそれぞれ記帳(手書きで記入)する必要があります。他にも関連する補助簿を作成している場合は、それらへも転記する必要があります。
手書きの労力に加え、作業量が経理担当者の大きな負担になります。
簿記や税務の知識が必要
会計帳簿を手書きで作成するには、最低限の簿記や税務の知識が必要です。借方・貸方、複式簿記の知識、記帳する際に最低限必要な記入項目など、決まったルールや記帳方法を知らなければ、正しく作成することはできません。
会計帳簿は、会社法で作成を義務付けられている書類です。覚書き程度の感覚で記帳してしまうとミスが起きやすくなり、場合によっては修正申告や追徴課税を課される可能性もゼロではありません。
ミスが起こりやすい
手書きは手間がかかる上に、計算・記入も全て人の手で行うためにどうしてもミスが起こりやすくなります。
転記間違い、転記漏れ、計算ミスなど、そのミスの種類も起きやすいタイミングも多くなりがちです。
システムを導入している場合、必要事項が入力されていなければ仕訳を登録できなかったり、集計を間違うことはなかったりと、ミスを防ぐ仕組みがあります。
しかし手書きの場合は、自動でミスを洗い出してくれる仕組みがありません。それだけに充分に注意をして作成する必要があります。
保存場所を確保しなければならない
手書きで作成した場合、紙で作成した主要簿や補助簿はシステムのデータに比べて大幅にかさばります。
ファイリングの手間や、保存場所の確保などにコストや手間がかかってしまいます。
エクセルで作成するメリットとデメリット
手書きでも作成可能な会計帳簿は、もちろんエクセルでも作成することができます。そのメリットとデメリットを確認しましょう。
エクセルのメリット
帳簿作成をエクセルで行うメリットは、主に以下の3点です。
手書きに比べて手間を削減できる
手書きに比べて、エクセルを使うことで作業時間を大幅に減らすことが出来ます。
他の帳簿への転記も、計算式を入れることで自動転記する仕組みをつくることが出来ますし、計算式をいれなくてもコピー&ペーストで効率的に入力することができます。
カスタマイズがしやすい
フォーマットを作る際、計算式を入力したり行や列を追加したりするなど、カスタマイズを容易に行うことができます。
導入のハードルが低い
エクセルは、日本の多くの企業で既に日々の業務の中で使われています。新たにインストールする手間やコストがかからないため、導入へのハードルは低いでしょう。
エクセルのデメリット
帳簿作成をエクセルで行うデメリットは、主に以下の3点です。
手書き同様に簿記や税務の知識が必要
手書きで作成するのと同様に、簿記や税務の知識が必要です。
属人的になる
エクセルは、とても便利な表計算ソフトです。しかし、その習熟度はその担当者によってさまざまでしょう。
前任者が作成したフォーマットを年次更新しようとしたら、計算式がおかしくなって直すこともできない、というケースも少なくないのです。
結果、担当者が変わるたびにフォーマットがかわり、継続的な推移が見づらくなってしまうこともあります。
明確なルールの策定・運用が必要
上述した2つのデメリットを補うために、明確なルールの策定・運用が必要です。計算式の入ったセルを色分けしてわかるようにして手入力しない等、複数の担当者で運用できる体制作りが必要です。
会計システムで作成するメリットとデメリット
それでは次に、会計システムを使って帳簿作成をするメリットとデメリットをみていきましょう。
会計システムを利用することによるデメリットはもちろんあります。しかし、会計システムを導入することは、長い目でみると大きな費用対効果が期待できます。
会計システムのメリット
簿記や税務の知識がなくても操作できる
基本的な簿記の知識がなくても、家計簿をつけるような感覚で操作をすることができます。また、税制改正もリアルタイムで対応してくれるので、税務知識がなくても記帳作業を不足なく行うことができます。
ミスを大幅に減らすことができる
手書きやエクセルでの帳簿作成には、関連する他の元帳や補助簿への転記が必要でした。会計システムでは、計算や転記作業をシステムが自動連携で行ってくれるため、手書き帳簿で起こりがちなミスのほとんどを防ぐことができます。
さまざまな角度から効率的に会計分析ができ、瞬時に情報共有ができる
ひとつひとつの仕訳をシステムに蓄積していくことで、単なる帳簿作成だけではなく様々な集計データを作成することができます。試算表や損益の前期比較表、資金繰り表まで作成することもできます。クラウドサービスを利用している場合、経営者をはじめ、経理以外の部門でもリアルタイムに財務情報にアクセス可能になるでしょう。顧問税理士がそのまま同じシステムを使って、中間申告から決算申告、財務諸表作成を行うこともできます。
必要な情報を適時、共有することができるようになるため、迅速な経営判断が可能となります。
大幅な業務の効率化につながる
手書きで帳簿を作成する場合、膨大な手間がかかります。ある程度の事業規模で手書き帳簿を作成している場合、経理担当者のメインの仕事は記帳作業になってしまいます。システムでの帳簿作成に変更することで、経理担当者のメイン業務は記帳作業ではなくなります。
会計分析や今後の予算表の作成など、もっと他の業務に時間を割くことが出来るようになります。
保存場所のコストを抑え、災害対策もできる
手書き帳簿は保存場所の確保や、保存作業にコストや手間が生じます。
また自社が火災や地震等の大きな災害により被害を受けた時に、保存している帳簿等が消失してしまうリスクもあります。
会計システムのクラウドサービスを利用している場合には、このような災害による被害を受けても外部のサーバーにデータが保存されているため、データが完全に消失してしまうリスクを回避することが可能です。
クラウドサービスを利用しない場合でも、手書きの帳簿に比べてバックアップが容易であるため簡単に対策をしておくことができるでしょう。
会計システムのデメリット
コストがかかる
会計システムを導入するにあたり、初期費用と運用費用がかかる場合がほとんどです。
サービスや機能によって、初期費用と運用費用は大きく変わってきます。必要な機能を満たしたサービスはもちろん、将来的にどんな機能がほしいのか、あとから追加することもできるのかなど長い目で検討することが必要です。
初期費用と運用費用の総額と、導入した場合の社内の費用効果の比較も大切です。
業務フロー変化への対応が必要
手書きからシステムに変更した場合、経理担当者の業務フロー自体が大きく変わる可能性が高くなります。5人がかりで行っていた経理作業が、システムを導入したら1人でも充分に対応が可能になるほどの変化が起きていきます。
そろばんを使って手書きの帳簿を作っていた経理担当者が、システム変更に伴って経理業務に対応できなくなる場合もあります。
しかし、手書き帳簿を行っていた担当者は会社のお金の流れを熟知し、簿記や税務の知識を持っている貴重な人材です。業務フローが変わっていく中で、どう人材を配置し、空いた時間にどんな仕事をしてもらうかを検討しながら、慎重に進めていく必要があります。
会計システムへの利用変更へのポイント
以上、システム導入によるメリットについて説明してきました。
ここからは、実際に手書きやエクセルからシステム利用へと切り替えする際の、具体的な方法とポイントについて解説していきます。
ここで、システムについては一般的なものを想定していますが、実際に導入する際には作成される帳簿等が自社のイメージする要件を満たしているかどうかを確認しておく必要があります。
勘定科目の設定
手書きからシステムへの切り替えにあたって、最も重要なものの1つが勘定科目の設定になります。
特に重要となるのが、勘定科目と補助科目の設定です。システムによっては、補助科目の設定ができないものもあるため、どのシステムに切り替えするかを決める際の重要な検討事項となります。
基本的には現状の勘定科目と補助科目をそのまま使用できるようなシステムに切り替えすることが多いですが、これを機に、より実態にあった勘定科目体系に見直すという選択もあります。
例えば、水道光熱費という勘定科目に、電気代、水道代、ガス代という補助科目を設けて管理している場合、実際にはそこまでの詳細な情報を必要としていないのであれば、切り替えのタイミングで補助科目を廃止してしまうという考え方もあります。
逆に、今まで勘定科目に補助科目を設けずに、内訳をエクセル等で管理していた場合に、切り替えを機会として補助科目を導入し、システム内で管理するということもあるでしょう。
また勘定科目の設定に伴い、消費税区分の設定も必要となります。例えば、軽減税率が適用されることが多い科目であれば、初期設定を軽減税率にしておくことによって、誤入力を減らすことができます。
消費税区分を適切に設定しておくことが、申告書の作成を誤りなく行うことにもつながりますので、大切な設定項目となります。
業務フローの整理
また、経理部門としての業務フローもシステム化に伴って影響を受ける場合があります。
例えば導入するシステムによっては、担当が仕訳をデータ入力した段階では勘定残高に反映させず、上司が確定処理をすることによって初めて勘定残高に反映させるような権限設定をすることができるものがあります。
このような機能を利用するのであれば、仕訳の都度、上司が仕訳の内容を確認するような業務フローになりますが、このような業務フローが不要であれば、担当が仕訳をデータ入力した段階で勘定残高に反映させる設定とすることもできます。
取引先の設定
売掛金や買掛金等の管理のために、取引先の登録も必要となります。現在管理しているものがあれば、それらを全て登録しておくというのも1つの方法ですが、長期間取引を行っていない取引先であれば、代表者変更等により口座名義が変更となっている可能性もあります。
そこで、必要最低限の取引先だけを登録しておき、必要に応じて内容を確認しながら追加していくという方法もあります。
特に、システム上の取引先情報によって振込データを作成する場合には、取引先の登録を慎重に行う必要があるでしょう。
自社口座などの設定
自社口座を登録しておくことにより、通帳の記帳を行わなくても入出金の履歴を取込みして仕訳することができるシステムもあります。
従来、通帳を確認しながら売掛金の消込みを行っていた場合には、システム化により通帳記帳の作業が不要となるほか、リアルタイムで入金を確認できることにより、未入金の取引先への対応を早期に行うことができるようになります。
まとめ
以上、手書き・エクセル・システムのそれぞれのメリットとデメリットとともに、システムを利用した帳簿作成へ切替する際の方法とポイントについて解説してきました。
システム化することにより、業務効率化につながるほか、災害対策にもなる等のメリットがあります。
また、実際にシステム化する際には、勘定科目や業務フロー、取引先名簿を実態に合ったものに見直す機会ともなります。システムには様々な種類があり、一定期間、無料で体験できるものもありますので試しに使用してみるもの良いかもしれません。システム化を検討する際には、是非、参考としていただければと思います。
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