こんにちは。「クロジカスケジュール管理」コンサルティングチームの林です。
団塊の世代が後期高齢者となり、介護業界の需要はますます高まってきています。その一方で、介護業界は深刻な人手不足に陥っており、労働環境が良いとは一般的に言えません。
そこで労働環境を改善するために取り組みたいのが業務効率化です。介護の現場で業務効率化が実現できると、職員だけではなく利用者の利益にもつながります。
この記事では、介護業界で業務効率化をするメリットと方法を解説します。
目次
介護業界の課題
介護現場での業務効率化を考える前に、まずは業界の課題について紹介します。介護業界には以下のような課題があります。
- 深刻な人手不足
- 過酷な労働環境と低賃金
- 要介護・要支援認定者の増加
深刻な人手不足
介護業界の大きな課題のひとつとして、人手不足が挙げられます。超高齢化社会による需要の増加に供給が追いついていないためです。
厚生労働省の「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2023年は介護職員が約5.5万人不足しています。次第に不足人数は減少する見込みですが、それでも2040年で約3.3万人が不足する予測です。
また2022年に行った介護労働安定センターの介護労働実態調査によると、人手不足を感じる事業所は66.3%に上りました。
*参考 第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省
*参考 介護労働実態調査|公益財団社団法人 介護労働安定センター
過酷な労働環境と低賃金
なぜ介護業界は人手不足が解消されないのでしょうか。主な原因としては、過酷な労働環境や給与がよくないことが挙げられます。
介護の業務は食事や着替え、排泄などの肉体労働が多く、大部分がテクノロジーによって自動化できないものです。そのため、人手不足がそのまま長時間労働に直結しています。夜勤がある場合は、体調管理も難しくなるでしょう。
介護職員の給与が低いことは、介護報酬が介護保険制度によって決定していることが関係しています。
事業者は独自で報酬額を決められないため、職員の給与を上げるには業務効率化や経費削減、利用者の増員などの努力が必要です。ただし制度によって報酬が決められているため、企業努力には限界があります。
2022年に政府は介護業界の人手不足解消のために、月額9,000円の賃上げ政策を実行しました。介護職員の給与水準を上げるために、政府には継続した賃上げを実現する政策が求められています。
要介護・要支援認定者の増加
厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、要介護(要支援)認定者数は2000年4月に約218万人だったのが、2023年7月には約703万人まで増加しました。20数年間で約3.2倍に増えており、今後も増え続けると予想されています。
要介護者のいる世帯では、同居の配偶者や子どもが主に介護をしており、介護者も高齢化が進んでいます。
2022年に厚生労働省が行なった「国民生活基礎調査の概況」によると、「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢の組合せは60歳以上同士が77.1%を占めました。2001年の60歳以上同士の組合せが54.4%だったことを考えると、大きく上昇していることがわかります。
平均寿命が延びていることで介護期間も長くなることから、介護事業の需要はますます高まるでしょう。
*参考 介護保険事業状況報告|厚生労働省
介護の現場で業務効率化をするメリット
なぜ介護現場で業務効率化が必要だと言われているのでしょうか。それは以下のようなメリットがあるからです。
- 高品質なサービスの提供
- 職員のモチベーションの向上
- 離職率の低下
- 経営の安定
高品質なサービスの提供
業務が効率化されると、効率化された業務の時間が短縮され、他の業務に時間を割くことが可能になります。介護現場においては、利用者と接する時間を増やして、丁寧で安心したサービスが提供できるようになるでしょう。
時間にゆとりが生まれれば、業務の改善案や新しい取組について検討できるので、より高品質なサービスが期待できます。
職員のモチベーションの向上
業務効率化は職員にとっても大きなメリットです。業務連絡や事務作業の時間が削減されることで、介護本来の業務に集中できる労働環境が整います。
福祉用具を使用すれば、業務時間の削減だけではなく、職員の身体的負担も減ります。組織全体で時間や人員に余裕が生まれて、職員のライフワークバランスも改善されるでしょう。
さらに職員の残業時間を減らしたり、負担のかかる出勤シフトをなくしたりすれば、職員の心身的ストレスが軽減されます。快適な労働環境は職員のモチベーションの向上につながり、組織に好循環を生み出すでしょう。
離職率の低下
2022年度の「介護労働実態調査」によると、介護職の労働者の退職理由として最も多かったのが「職場の人間関係に問題があったため」(27.5%)でした。
ついで「運営のあり方に不満があったため」(22.8%)、「他によい仕事があったため」(19.0%)となっています。これらの問題は業務効率化によって改善できる可能性があります。
たとえば業務効率化により職員同士の連絡がスムーズになると、コミュニケーションが活発化し、職員同士の行き違いやトラブルが軽減するでしょう。運営側も職員の要望や不満を把握しやすくなるため、お互いに良好な関係を築きやすくなります。
*参考 令和4年度 介護労働実態調査結果について|公益財団法人 介護労働安定センター
経営の安定
業務の効率化はコスト削減につながります。残業時間の削減は、職員だけでなく経営側にとっても大きなメリットです。離職率の低下が実現すると、人材の採用・育成に無駄なコストをかけずに済むでしょう。
労働環境の改善により高品質なサービスが提供できるようになると、介護利用者の満足度が高まります。利用者から信頼を得られることで市場での競争力が向上し、安定して利用者を獲得できるようになるでしょう。
介護の現場で業務効率化をする方法
介護現場で業務を効率化する方法は、具体的に以下の通りです。
- 効率化に優先順位をつける
- 業務マニュアルを更新する
- 福祉用具や外部サービスを導入する
- 情報共有のためにITツールを導入する
- インカムを導入する
- 見守りシステムを導入する
効率化に優先順位をつける
業務効率化を実現するためには、まずは何から効率化するか優先順位をつけましょう。一度に複数の業務を効率化しようとすると、慣れない作業が重なり、反対に業務が非効率になってしまう恐れがあります。
業務効率化は組織全体で取り組むことが重要です。職員の意見を聞きながら、余裕を持ったプランで業務効率化を進めていきましょう。
業務マニュアルを更新する
介護で業務マニュアルを使用している現場は多くありますが、マニュアルが最新のものとは限りません。作成から時間が経過してしまうと、マニュアルが実際の業務と合わなくなることが出てきます。
マニュアルを定期的に更新すると、職員はマニュアルを意識するようになり、組織全体の意思がまとまりやすくなります。作業も統一されるため、職員同士が協力しやすい環境が生まれるでしょう。
福祉用具や外部サービスを導入する
移乗用リフトやパワースーツなどの福祉用具を導入すると、職員の身体的負担が軽減できます。
一般的に全介助の利用者や大柄の利用者の介護は、職員の腰や足に大きな負担がかかります。福祉用具の導入で職員の負担が減れば、職員は健康的に業務を遂行でき、業務効率化が図れるでしょう。
その他に外部サービスを利用するのもひとつの手段です。シーツ類の洗濯や衣類の洗濯を外部サービスに任せれば、職員の負担を減らせます。
利用者の人数が多いほど、委託の効果は高くなるでしょう。また清掃を外部サービスに委託しても、職員の負担を軽減できます。
情報共有のためにITツールを導入する
介護の現場では、紙や電話を使って情報共有をしている現場も少なくありません。ここにITツールを導入することで業務効率化を図れます。
たとえば業務日誌や連絡帳の記録、サービスの提供記録に専門のソフトウェアを導入することで、業務時間が短縮できます。同様のことが、報酬請求業務についても言えるでしょう。
スケジュールも効率的に管理したいのであれば、たとえばクロジカのスケジュール管理はチームのスケジュールを一目で把握し、簡単に日程調整ができます。
記録の時間が短縮できれば、職員が本来の介護ケア業務に集中できるようになり、職員の残業時間の削減も期待できるでしょう。また職員間で情報共有がスムーズにできるので、職員同士で協力し合える環境を作りやすくなります。
インカムを導入する
インカムを導入すると、職員は一度の連絡で複数人に状況を伝えられるようになります。何度も連絡する手間が省け、同時にコミュニケーションがとれるので、時間を削減して業務効率化が図れます。
手の空いている職員がすぐに対応できるようになるため、職員の精神的ストレスを和らげる効果も期待できるでしょう。
見守りシステムを導入する
見守りシステムを導入することでも業務効率化が図れます。見守りシステムとは、カメラやセンサーを使用して利用者の異常を検知するシステムです。システムを導入すると、職員は過度な巡回をせずに利用者の状況を把握できるようになるでしょう。
巡回数が減ると、業務効率化だけではなく業務の質の向上も期待できます。丁寧に業務に取り組めるため、予期せぬ事態の抑止にもつながるでしょう。
ツールでの業務効率化を行う際の注意点
業務効率化は職員の協力なしでは実現できません。ここでは業務を効率化するにあたっての注意点を解説します。
職員に合ったツールを選ぶ
業務効率化のためにITツールを選ぶ場合、職員がデジタル化に対応できるか十分に検討する必要があります。2022年度の「介護労働実態調査」によると、介護職の職員の平均年齢は48歳となっており、多くの職員はデジタル化の世代ではありません。
もし職員がITツールの使用に慣れていないならば、機能の豊富さよりも使いやすさを考慮してツールを選ぶといいでしょう。無料トライアルなどを利用し、複数のツールを比較してから導入するのがオススメです。
*参考 令和4年度 介護労働実態調査結果について|公益社団法人 介護労働安定センター
職員の収入が減る可能性がある
業務効率化をすることは、職員の残業時間の削減につながります。しかし、すべての職員が残業時間の削減を喜ぶとは限りません。ワークライフバランスが改善したことに満足する職員がいる一方で、収入が減ったことに不満をもつ職員もいるでしょう。
組織全体として、労働環境の改善に取り組むことは健全なことです。収入減に不満のある職員に対しては、業務効率化を進めつつ、別の対策を講じる必要があるでしょう。
新手法について納得してもらう
新しい方法やツールを取り入れると、最初のうちは慣れない作業に戸惑うこともあるでしょう。業務効率化が一般的に予想される手段でも、職員に大きな負担がかかる可能性もあります。
効率化ばかりに目を向けず、職員の満足度が高まる施策を展開することが大切です。業務効率化を実現するには、労働環境を改善し職員のモチベーションを高めることが欠かせません。
まとめ|介護現場で業務効率を上げて、サービスを改善しよう
介護現場で業務効率化が実現されると、職員と利用者の双方にとってメリットがあります。職員は労働環境の改善によって心身ともに健康を維持しやすくなり、業務へのモチベーションが高まるでしょう。
利用者はよりよいサービスを受けられるので、利用者と利用者の家族は安心して快適に過ごせるようになるでしょう。
介護業界の深刻な人手不足や過酷な労働環境を考えると、介護現場の業務効率化は必須と言えます。それぞれの現状や目的、予算に合わせて最適な業務効率化を進めていきましょう。
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