サーバーには、クラウド、オンプレミス、レンタルサーバーなど様々な種類があります。目的や規模、使い方によってサーバーを選ぶことが求められます。しかし、最適なサーバー環境の判断を行うことが難しい場合もあります。ここでは、クラウドとして主に利用されるAWSとレンタルサーバーの基本的な違いについて触れていきます。
この記事でわかること
① AWSとレンタルサーバーの違い
② 抑えておきたいAWSとレンタルサーバーの基本知識
③ AWSが向いているサイトとは?
④ 最適なサーバーの選び方
そもそもAWSとは何か?
AWSの基本概要
AWS(Amazon Web Services)は、Amazonが提供する世界最大規模のクラウドコンピューティングサービスです。200以上の豊富で高度な機能を有し、スタートアップからグローバル企業まで、世界中に何百万ものアクティブユーザーと数万のパートナーを有しています。
クラウドコンピューティングの中でも最高レベルのセキュリティを持っており、軍隊やグローバル銀行など機密性の高い組織も導入しています。企業や個人は、AWSを利用することで、自社のデータセンターを構築・運用する必要がなくなり、必要なリソースを必要な時に必要なだけ利用できます。
クラウドサービスの種類
ここではAWSをより深く構造的に理解するために、簡単にクラウドサービスの種類をご紹介します。クラウドサービスは提供されるサービスの範囲によって、大きく3つの種類に分類されます。
SaaS(Software as a Service)
ソフトウェアそのものをサービスとして提供するモデルです。ユーザーはインターネットブラウザなどを通じてソフトウェアを利用します。代表的な例としては、Google WorkspaceやSalesforceなどがあります。
PaaS(Platform as a Service)
ソフトウェア開発に必要なプラットフォームをサービスとして提供するモデルです。開発環境やデータベース、ミドルウェアなどを利用して、アプリケーションを開発・運用できます。代表的な例としては、HerokuやAWS Elastic Beanstalkなどがあります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
サーバーやストレージ、ネットワークなどのハードウェアインフラストラクチャをサービスとして提供するモデルです。仮想マシンやストレージ容量などを利用して、自社のアプリケーションやサービスを構築・運用できます。AWSはこのIaaSに分類されます。
- | SaaS | PaaS | IaaS |
提供物 | ソフトウェアをサービスとして提供 | 開発プラットフォームを提供 | ハードウェアインフラを提供 |
利用環境 | インターネットブラウザで利用 | 開発環境やデータベースを利用 | 仮想マシンやストレージを利用 |
代表例 | Google Workspace, Salesforce | Heroku, AWS Elastic Beanstalk | AWS |
AWS活用のメリット
AWSには以下のようなメリットがあります。
・スケーラビリティ(拡張性)に長けている:需要に応じてリソースを柔軟に増減できます。急なアクセス増加にも対応できビジネスの成長に合わせてシステムを拡張することも可能です。
・コスト効率が高い:必要なリソースだけを利用するため、従来のオンプレミス環境と比べてコスト削減が期待できます。
・グローバルなリージョンによる災害対策:世界中にデータセンターを展開しており、地理的に分散したサービスを提供できます。サーバーを分散することで災害時などでも持続的な情報提供が可能となります。
・セキュリティの高さ:業界最高水準のセキュリティ対策が施されており、データの安全性を確保できます。
・豊富なサービス:サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク、分析、AIなど200以上の幅広いサービスを提供しています。
・開発の効率化:AWSではマイクロサービスアーキテクチャを導入しており、各サービスを独立して開発、デプロイ、スケールすることが可能です。結果として、開発における全体の柔軟性と効率が向上します。
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AWSはなぜ人気?サービスの特徴から普及した理由とは?
レンタルサーバーの基礎知識
レンタルサーバーとは?
レンタルサーバーはサーバーのハードウェアやソフトウェアを、インターネットサービスプロバイダー(ISP)から借りて利用するサービスです。ユーザーはレンタルサーバーにウェブサイトやアプリケーションを構築・運用できます。
主なレンタルサーバーの種類
レンタルサーバーは、提供されるサービスやリソースによって、以下のような種類に分類されます。
共用サーバー
複数のユーザーでサーバーを共有するタイプのレンタルサーバーです。料金が安く、初心者向けのサービスです。
専用サーバー
1つのユーザーがサーバーを独占的に利用するタイプのレンタルサーバーです。高性能でセキュリティ面でも優れています。
VPS(Virtual Private Server)
仮想化技術を用いて、1つの物理サーバーを複数の仮想サーバーに分割したタイプのレンタルサーバーです。共用サーバーよりも性能が高く専用サーバーよりも料金が安価です。
レンタルサーバーのメリット
レンタルサーバーは、以下のようなメリットがあります。
・初期費用と運用コストが安価:サーバーのハードウェアやインフラの設置が不要なため、多額の初期費用はかかりにくいです。特に共有サーバーの場合、複数のユーザーが1つのサーバーを共有するためコストが分散され、初期費用を抑えることができます。さらに、運用コストに関してはAWSと異なり月額料金制のため、使用量に関わらず一定の料金を支払う仕組みが多く、予算管理がしやすいです。
・管理が簡単:サーバーの管理はレンタルサーバー会社が行うため、ユーザーは基本的にファイルのアップロードや簡単な設定のみで済みます。これにより、専門的な知識がなくても利用できる点が大きなメリットです。
・サポートが充実:多くのレンタルサーバー会社では、日本語対応の「チャットボット」や「電話対応」を提供しておりユーザー向けのサポート体制が充実しています。
AWSとレンタルサーバーの違いを比較
一般的にレンタルサーバーにおいて管理はベンダーが代行しています。そのため、専門的な知識は必要としません。一方、AWSは利用者がサーバーを構築、管理、運営していくため、ある程度の専門知識が必要になります。さらにいくつかの観点からレンタルサーバーとAWSの違いをみていきます。
コスト面(導入費用・初期費用)での比較
まず「導入費用」についてですが、レンタルサーバーは導入費用がかかります。AWSは仮想サーバーのため導入費用は発生しません。AWSでは利用した分だけ料金が発生する従量課金制を採用しています。そのため初期費用は安く、必要なリソースだけを利用できます。導入コストがかからず、すぐに始められるという点がAWSのメリットと言えるでしょう。
一方、レンタルサーバーは契約したプランに応じて固定料金が発生します。初期費用はAWSよりも高くなります。初期費用の一般的な内訳としては、サーバーのセットアップやアカウントの作成、必要なソフトウェアのインストールなどとなっております。
運用コスト
「運用コスト」でみていくと、レンタルサーバーは月額・年間契約などがあり、基本的に毎月決まった料金を支払います。AWSは、様々な機能を組み合わせて構築しますが、その機能やサービスの容量、使用時間などでそれぞれに発生した料金の合計を支払います。
運用コストは、レンタルサーバーと比較すると高めになります。運用コストは、その月ごとで変動するため、プログラムを理解していないとかかる料金が読みづらいという特性があります。導入前に試算し、どちらが運用しやすいか、コストが抑えられるかを考えながら選ぶ必要があります。
性能と柔軟性の比較
AWSは世界最大規模のクラウドインフラストラクチャを備えており、高性能で柔軟なサービスを提供しています。スケーラビリティ(拡張性)が高く、需要に応じてリソースを簡単に増減できます。一方、レンタルサーバーは、AWSと比べて性能や柔軟性に劣ります。スケーラビリティも限られており、スムーズに需要増加に対応できない場合があります。
サポートの違い
AWSは豊富なドキュメントやコミュニティフォーラム、サポートサービスを提供しています。ユーザーは自分で問題を解決したり、サポートに問い合わせたりすることができます。
一方、レンタルサーバーは、サーバーの管理はレンタルサーバー会社が行うため、ユーザーは運用に専念できます。ただし、サポートの範囲はレンタルサーバー会社によって異なります。こちらの点については以下「サーバーの運用負荷の違い」で深掘りしていきます。
サーバーの運用負荷の違い
「サーバーの運用」について、レンタルサーバーはベンダーが管理を行うため運用業務が発生しません。一方、AWSはサーバーを構築、管理するのがユーザーであるため、サーバーの運用業務が発生します。トラブルが発生した場合は、ユーザー側で解決する必要があります。サポートを受けることは可能ですが、代行ができないため、スキルを持った人材がいることが望ましいと言えます。
回線速度
「回線速度」でも大きな違いがあります。レンタルサーバーは複数のユーザーで1つのサーバーを共有するため、負荷がかかるとユーザーすべてに影響する可能性があります。AWSはサーバーの共有していないため他社のサーバー影響を受けることがなく、基本的に回線速度が落ちることはありません。
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AWSと専用サーバーを比較!8つのポイントとは?
用途別の最適な選択
ECサイトの場合
ECサイトは、アクセス集中やデータ量の増加などが予想されるため、スケーラビリティとセキュリティが重要な要素となります。前述した通りAWSはスケーラビリティが高く、セキュリティ対策も充実しているためECサイトに適したサービスと言えます。
ただし、初期費用や運用コストが高くなる可能性があります。レンタルサーバーはAWSと比べて初期費用が安く、管理も簡単です。ただし、スケーラビリティやセキュリティ面では、AWSに劣ります。ECサイトの規模や予算に合わせて、最適なサービスを選択する必要があります。
個人ブログの場合
個人ブログは、アクセス数がそれほど多くないため、低価格で管理しやすいレンタルサーバーがおすすめです。共用サーバーやVPSなど、様々なプランが用意されているため、予算に合わせて選択できます。AWSは個人ブログにはオーバースペックで、コストパフォーマンスが低くなる傾向があります。
コーポレート(企業)サイトの場合
コーポレートサイトは、アクセス数やデータ量、セキュリティ面など様々な要素を考慮する必要があります。規模や用途、予算に合わせてAWSとレンタルサーバーのどちらかを選択する必要があります。
大規模なコーポレートサイトや金融機関や教育機関などセキュリティ対策が重要性が高い場合や上場企業など持続的な情報提供が求められる場合は、AWSがおすすめです。一方で中小企業のサイトや、低価格で管理しやすいサービスを求める場合は、レンタルサーバーがおすすめです。
【弊社事例から学ぶ】コーポレートサイトの運用ケース
AWS環境でのサーバー運用を実際に行なっている弊社のクライアント様の事例をご覧いただくことで、どのようなケースでAWSサーバーを活用しているのかという解像度を上げていただけるかと思います。
AWSが向いているWebサイトとは?
前述した情報を踏まえて、改めてAWSの利用に向いているWebサイトを整理させていただきます。
まずは、「セキュリティ対策が必要かつ、持続的な情報提供が必要なコーポレートサイト」です。このようなWebサイトでは、常にアクセスできる状態が望ましく、アクセス状態によっては売上などに影響します。他のユーザーと共有するレンタルサーバーでは、アクセスに影響を受けてしまう可能性があるため、クラウドサーバーが適していると言えます。
「ECサイト」もクラウドがおすすめです。ショッピングサイトなどのECサイトは、ページの検索や情報入力などデータベースが必要で、データ容量が多いとレンタルサーバーでは読み込みに時間がかかってしまいます。
また、回線速度によるユーザーの使いやすさや快適性はECサイトにとって売上の重要なポイントとなります。クラウドサービスであれば、高速に動作するSSDを利用することができるため最適と言えます。
最適なサーバーの選び方
レンタルサーバーと比較してAWSなどのクラウドサーバー利用は難しいと思われがちですが、セキュリティの強化、200以上あるAWSサービスのカスタマイズなど、企業独自の特性を活かすことも可能で、個人からグローバル企業まで幅広く活用されています。その中でも特に規模が大きく、セキュリティ性が重要視され、アクセスの増加が見込まれるサイトは、クラウドでの利用が望ましいと言えます。
ただし、従量課金制のため運用費が読みにくく、専門知識を必要とします。ITスキルを持つ専門家がいない場合は、クラウドサーバーの構築と運用保守を代行する会社にお願いする方法もあります。いずれの場合もサーバーの導入を検討する際は、しっかりと目的を持ち用途に応じて最適なサービスを選ぶことをお勧めします。本記事が見直しや検討の参考になれば幸いです。
クロジカサーバー管理では「無料サーバー診断」を行い、現行サーバーの課題抽出はもちろん、移行費用を無料でお見積もりさせていただくことができます。今後クラウドサーバーへの移行を検討されていらっしゃる方はぜひ一度ご相談を検討されてみてはいかがでしょうか。
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監修者:クロジカサーバー管理編集部
コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティ対策を必要とするコーポレートサイトで250社以上の実績があります。当社の運用実績を踏まえたクラウドサーバー運用のノウハウをお届けします。
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