
AWSのサポートプランは、ビジネスの規模やニーズに応じて様々な選択肢があります。本記事では、プラン別の提供サービス、料金などを比較し、最適なプランの選び方を解説します。
この記事でわかること
① AWSサポートでできること
② プラン別の料金・対応範囲の比較
③ 自社に最適なAWSサポートプランの選び方
④ 実践的なAWSサポートの活用方法
目次
AWSサポートとは?
AWSサポートは、AWS利用者がクラウド活用で成功するために必要な支援を提供する仕組みです。AWS公式サイトでも「お客様に最適なツールと専門知識を提供し、パフォーマンス最適化やリスク管理、コスト制御を実現する」ことが謳われています。
つまり、単にトラブル時の対応にとどまらず、日常の運用支援やコスト面・セキュリティ面での提案まで含めて、AWS利用をバックアップするものです。実際の運用現場では以下のようなニーズに応じたサポートが重要になります。
AWSサポートの必要性
AWS環境を運用する上で、サポートが必要となる場面は多岐にわたります。具体的にどのようなシーンでAWSサポートの利用が役に立つのかを以下で見ていきましょう。
障害対応
AWSの各サービスは高い可用性を誇りますが、サービスの組み合わせやアプリケーション構成によっては想定以上のアクセス負荷などが影響して、障害が発生する可能性があります。そしてこのように障害が発生した際には、AWS上で提供されているステータス情報だけでは原因究明が難しい場合もあります。
そこで、サポートプランに加入することで、AWSのクラウドサポートエンジニアによる技術支援が受けられ、結果としてダウンタイムを抑制することができます。例えばビジネスプラン以上では「本番システムダウン時の応答は1時間以内」と定められており、エンタープライズプランではさらに「ミッションクリティカルな障害には15分以内の対応」が提供されます。これにより重大インシデントでも迅速に対処できます。
技術的質問
AWSは300以上のサービスがあり、新機能の追加やアップデートが頻繁に行われています。そのため運用中や導入準備段階で新機能や使い方について技術的な疑問が生じるのは避けられません。そんな時にAWSサポートでは、AWSのソリューションアーキテクトやサポートエンジニアによるアーキテクチャガイダンスが利用できます。
例えばデベロッパープランでは「AWS Well-Architected フレームワーク※1を活用した一般的なアーキテクチャ指針」が得られます。上位プランではさらに深いレビューや設計支援が可能です。
※1 AWS Well-Architected フレームワーク:AWS環境の設計を「運用性」「セキュリティ」「信頼性」「性能効率」「コスト最適化」「持続可能性」の6つの視点でチェックし、具体的な改善案を示すガイドライン
コスト最適化
クラウドでは従量課金が基本であるため、放っておくと想定以上の費用が発生することがあります。そんな時にサポートプランではAWS Trusted Advisorを利用でき、コスト最適化に関するチェックも受けられます。
Trusted Advisorとは「リソースをベストプラクティスに従って準備し、パフォーマンス向上やセキュリティ強化を支援」するツールであり、全プランで利用可能な無料の7つのコアチェックに加え、ビジネスプラン以上では40種類以上のチェック(計465項目以上)が提供されます。これにより未使用インスタンスの発見や、リザーブドインスタンスの提案など具体的なコスト削減施策が取れます。
AWSサポート全4種類のプランを一覧で徹底比較
AWSでは、全ての利用者向けにベーシックサポート(無料)を提供するとともに、上位プランとして有料のデベロッパー/ビジネス/エンタープライズ(オンランプ/フル)の4種類を用意しています。下表は各プランの料金体系、主な特徴、応答時間目安、想定ユーザーなどをまとめたものです。
プラン名 | 料金体系(一例) | 主な特徴 | 応答時間目安 (クリティカル時) | 想定ユーザー |
---|---|---|---|---|
ベーシック | 無料 | ・ドキュメント/コミュニティアクセス ・Trusted Advisor コアチェック | サポートケースなし(テクニカルサポートなし) | すべての AWS ユーザー |
デベロッパー | 月額 $29~ または 利用料の 3% | ・開発・テスト環境向けメールサポート(平日日中) ・Well-Architected ガイダンス利用 ・Trusted Advisor コアチェック | - 一般課題:< 24 時間- 重大障害:< 12 時間 | 非本番環境の開発検証ユーザー |
ビジネス | 月額 $100~ または 利用料の 10 → 7 → 5 → 3%(従量階層制) | ・24時間365日 電話/チャット/Web サポート(ケース数無制限) ・Trusted Advisor 全チェック ・AWS Support Automation Workflows ・60日無料トライアルあり | 本番システムダウン:< 1 時間 | 本番稼働環境を持つ中小規模ユーザー |
エンタープライズ On-Ramp | 月額 $5,500~ または 利用料の 10% | ・24時間365日 電話/チャット/Web(ケース無制限) ・TAM 年1回ガイダンス ・年次 AWS カウントダウン(基本版) ・Trusted Advisor 全チェック ・プロアクティブプログラムアクセス | ビジネスクリティカルダウン:< 30 分 | 本番・ビジネスクリティカルなワークロードを持つ企業向け |
エンタープライズ | 月額 $15,000~ または 利用料の 10 → 7 → 5 → 3%(従量階層制) | ・24時間365日 電話/チャット/Web(ケース無制限) ・専任 TAM 継続アーキテクチャレビュー ・コンシェルジュサービス ・年次プロアクティブセキュリティレビュー(プレミアム) ・Trusted Advisor 全チェック ・プロアクティブプログラムアクセス | ビジネス/ミッションクリティカルダウン:< 15 分 | 大規模・ミッションクリティカルシステム運用企業向け |
ベーシックサポート(無料)
AWSアカウント作成時から自動的に適用される基本プランです。24時間365日アクセス可能なドキュメントやホワイトペーパー、AWS公式フォーラム(AWS re:Post)などを利用できます。また、Trusted Advisorの主要なコアチェック(セキュリティ/コスト/パフォーマンス関連の基本チェック)が利用可能で、AWSサービスの状態通知であるAWS Healthも標準搭載されます。技術的なケース対応は含まれず、直接エンジニアに質問する手段はありません。料金は無料です。
デベロッパープラン
開発者や検証用途向けの経済的なプランで、最低月額29ドル(または利用料の3%)から利用可能です。AWSへの質問は平日営業時間中にメール(Webケース)で可能で、ケース数は無制限です。1件のプライマリ連絡先(代表連絡先)を設定でき、一般的な問い合わせには原則24営業時間以内、システム障害時は12営業時間以内に回答が得られます。
加えて、アーキテクチャサポートとしてAWSソリューションアーキテクトがWell-Architectedフレームワークに基づくガイダンスを提供します。さらに、Trusted Advisorのコアチェック(7項目)やAWS Healthも利用可能で、開発段階での問題切り分けや最適化に役立ちます。
ビジネスプラン
本番稼働環境の運用に最適化されたプランです。料金は最低月額100ドル(または利用料の10%〜3%の従量課金制)です。24時間365日、電話・チャット・Web経由でいつでもクラウドサポートエンジニアにアクセスでき(連絡先・ケース数ともに無制限)、重大度に応じて優先対応されます。
特に「本番システムダウン」時は1時間以内に対応されるSLAが設けられています。さらにTrusted Advisorをフル活用でき、56サービスに渡る465以上のベストプラクティスチェックを受けて、コスト最適化やセキュリティ強化につなげられます。
加えて、ビジネスプラン以上ではAWS Support Automation Workflowsによる自動診断ツールが利用でき、日常的な問題の自己解決支援も提供されます。なお、これまでビジネスプランを利用したことがない場合は、最大60日間の無料トライアルで同等のサポートを試用できる制度もあります。
Enterprise On-Ramp(エンタープライズ On-Ramp)
Enterprise On-Rampは、AWS利用料の10%の従量課金制または最低月額5,500ドルから開始できるプランであり、24時間365日、電話・チャット・Webを通じた無制限のサポートを提供します。プール制で複数のテクニカルアカウントマネージャー(TAM)が、お客様の環境に合わせたアーキテクチャ設計や運用改善を能動的に支援し、万が一の重大インシデント発生時には30分以内の応答を保証します。
エンタープライズプラン
エンタープライズプランは、最低月額15,000ドルまたは利用料の10%→7%→5%→3%の階層制で利用可能な最上位プランです。Enterprise On-Rampのサポート内容に加えて、請求やアカウント運用を代行するコンシェルジュサービスが付帯し、テクニカルアカウントマネージャーによる定期的なWell-Architectedレビューやセキュリティワークショップを通じて長期的なクラウド戦略をサポートします。さらに、重大インシデントには15分以内の応答と優先窓口が用意されており、大規模環境やグローバル規模のミッションクリティカルな環境にも対応できる体制を整えています。
【失敗しない】自社に最適なAWSサポートプランの選び方 4つのステップ
AWSサポートのプランを選ぶ際は、単に安さや人気だけで決めると後悔する可能性があります。次の4ステップを参考にして、自社のニーズとプラン内容を照合しながら最適な選択をしましょう。

ステップ1:現状のAWS利用状況と課題を明確にする
まず、自社がAWSで何をどれくらい使っているかを整理します。稼働中の本番システム、テスト環境、マルチアカウント構成、月額請求額などを洗い出し、現状の運用上の懸念点やトラブル傾向(障害頻度、対応工数、コスト超過など)を明確にします。このような現状把握にはAWS Cost ExplorerやCloudWatchアラーム、Trusted Advisor自動化チェックなども活用してデータを集めると具体性が高まります。
利用状況が明確になると、以下のような課題が見えてくるかと思います。
利用状況を明確にすると見えてくる課題例
・トラブル対応の課題:
頻繁にトラブルが発生しているなら迅速な対応が得られる上位プランが望ましい
・リソース効率やコスト面の課題:
リソース効率やコスト面で不安があるなら、Trusted Advisorで詳細な定期監査ができるプランが役立つ
ステップ2:求めるサポートレベルを定義する
次に、トラブル発生時にどの程度のレベルの支援が必要かを定義しましょう。例えば「24時間体制で即時対応が必須か」「どこまでAWS側に任せたいか」「TAMによる戦略的支援を求めるか」などです。技術的な質問に対し簡易な回答で良いのか、綿密な設計相談が必要か、誰が問い合わせを行うのか(開発者か運用担当か)も考慮しましょう。仮に優先度が高い課題が多い場合は上位プランが適します。
例えば、ECサイトのようにダウンが直ちに売上損失につながるケースでは、最上位プランである、「エンタープライズ」で提供される15分以内の応答が安心材料になるでしょう。
一方で実験・検証環境のみの利用であればデベロッパープランで十分かもしれません。このように自社のサービスやコーポレートサイトに求める要件に応じたサポートレベルに合わせてプラン選定を行いましょう。
ステップ3:各プランのサービス内容と料金を照らし合わせる
ステップ1・2で浮き彫りになった要件と、各プランの機能・SLAを比較します。料金面では記事の前半で触れたようにプランごとに最低月額費用と従量率が異なるため、現在および将来のAWS利用料を概算し、どのプランがコスト面でも適切か検討します。
例えばAWSの月額利用料が約¥140,000未満であればDeveloperプラン($29 or 3%)が安価で、本番環境で24×365対応や1時間以内応答が必要ならBusinessプラン($100 or 10%~3%)を検討しましょう。サービス内容に関しては、問い合わせ方法・応答時間や提供されるツール・リソース(TAMの有無、Trusted Advisorチェック数など)を照らし合わせます。
このような項目から自社に必要な支援が得られるプランで、コストとバランスを取るのがポイントです。なお、ビジネスプランでは初回限定の60日無料トライアルが使えますので、新規導入時には実際に体験してみて判断するのも有効です。
ステップ4:将来的な拡張性も考慮する
AWSの利用規模はビジネスの成長に伴って大きくなる可能性があります。現在は小規模でも、数年後には大規模本番環境になるといったケースも考えられます。サポートプランは変更可能なので、最初はビジネスプランで始め、将来に備えて“この段階になったときに”エンタープライズオンランプへの移行を検討するなど段階的な拡張計画を立てておくと安心です。
プラン変更はAWSコンソールからいつでも可能で(料金は従量制のため日割り計算されます)、必要に応じて柔軟にアップグレードできます。このように、現状だけでなく今後の事業フェーズやクラウド利用増加も踏まえて最適な選択を検討しましょう。
【実践編】AWSサポートの効果的な活用方法
サポートプランに加入したら、それを最大限に生かせるよう活用方法にも気を配りましょう。以下は実務で役立つポイントです。
問い合わせ時のポイント(問題の切り分け、情報提供の仕方など)
サポートケースを起票するときは、問題の状況を具体的かつ簡潔に伝えることが重要です。AWSの公式ガイドラインでも、各ケースには担当エンジニアが1人対応するため、内容が広範すぎると対応が遅れるため「独立性の高い質問は複数のケースに分けると迅速化できる」と示されています。逆に密接に関連する事象は同じケースでまとめることを推奨します。
また、何が起こっているのか・いつからか・再現手順・影響範囲といった要点を明確にし、使用中のAWSサービス(リージョン、リソースIDなど)やエラーメッセージ、ログなど可能な限り添付資料として提供します。
サポートケース起票時には、社内固有の略語や状況を書かず、AWS用語・一般的な表現で伝えると誤解が減ります。期限がある場合はケース登録時に緊急度を適切に設定し、その背景を補足することで対応速度が上がります。
以上のような工夫により、サポート担当者に正確な状況がすばやく伝わり、スムーズな解決につながります。
AWS Trusted Advisorの活用(ビジネスプラン以上)
ビジネスプラン以上では、Trusted Advisorの全チェック項目が利用可能になります。これにより、セキュリティ、コスト、パフォーマンス、フォールトトレランスといった各分野で数百件のベストプラクティス推奨を自動的に受けられます。
定期的にTrusted Advisorを確認することで、例えば未使用のEC2を停止したり、RDSのリザーブドインスタンスを購入したりといった最適化提案が得られ、運用コストの低減につながります。また、全プラン共通のドキュメント検索やAWSナレッジセンターも併用し、問題解決や設計改善に役立てましょう。
テクニカルアカウントマネージャー(TAM)との連携(Enterprise On-Ramp以上)
エンタープライズプランでは、専任のテクニカルアカウントマネージャー(TAM)が専属的にサポートします。TAMはお客様のユースケースに応じたアーキテクチャレビュー、運用ガイダンス、セキュリティ改善やコスト最適化のワークショップ、AWS Well-Architected レビューなどを提供しています。
大規模プロジェクトやセキュリティ強化が課題の場合はTAMと定期的に協議し、ロードマップを共有するとよいでしょう。また、TAMは障害対応におけるエスカレーション窓口にもなりますので、問題が深刻化しそうなときは積極的に相談し、専門家の知見を活用してください。
サポートセンターの便利な機能(ケース履歴、ドキュメント検索など)
AWSサポートセンター(AWSマネジメントコンソール内)では、過去のサポートケースの履歴やステータスを確認できます。似たような事象で過去に解決したケースがあれば、ケース番号や内容を参照・引用することで新規ケースの説明が簡潔になります。
また、AWSの公式ドキュメントやナレッジセンター、AWS re:Postも積極的に活用し、既知の解決策を探索できます。さらにビジネスプラン以上ではAWS Support App for Slackも利用可能です。これを導入するとSlack上からサポートチケットの管理や最新情報の通知が受け取れるため、社内コミュニケーションとの連携が容易になります。こうしたサポートセンター周りの機能を使いこなすことで、対応工数が削減されるとともに、サポート活用の効率が向上します。
AWSサポートに関するよくある質問(FAQ)

Q:「途中でプラン変更はできますか?料金はどうなりますか?」

A:はい。AWSサポートはいつでも変更可能です。AWS管理コンソールのサポートセンターからプラン変更を申請できます。料金は月単位の従量制で、変更後のプランについては残日数に応じて日割り計算されます。
例えば下位プランから上位プランに切り替えた場合は、残月分について高いプランの料金(最低月額または従量割合)で請求されます。逆に上位から下位への変更の場合は、次回以降の請求から適用されます。

Q:「最低契約期間はありますか?」

A:AWSサポートには特定の契約期間の縛りはありません。月ごとに自動更新される形で、必要に応じていつでも解約可能です。
ただし各プランには最低月額料金が設定されており、仮に当月のAWS利用料が少なくても最低額分は請求されます。したがって、最低でも1ヶ月単位で支払う想定になりますが、長期契約による割引などは特にありません。

Q:「どのプランでもセキュリティに関するサポートは受けられますか?」

A:セキュリティに関するガイダンスは全てのプランで提供されます。 ただし、ベーシックプランではAWSのドキュメントやコミュニティフォーラム経由の情報が主体ですが、デベロッパー(開発者)プラン以上ではTrusted Advisorのセキュリティチェックが利用でき、より詳しいベストプラクティスの提案が受けられます。
そして、ビジネスプラン以上ではさらなるセキュリティの推奨項目(脆弱性管理やアクセス設定確認など)も含む全チェックが解放されます。エンタープライズプランではTAMを通じて定期的なセキュリティレビューやインシデント対応計画の策定支援も提供されるため、総合的なセキュリティ体制の強化が可能です。
本記事では、AWS公式情報を基に各サポートプランの特徴と選定方法を要約・解説しました。 最後に当社(AWSパートナー)について簡単にご紹介させていただきます。当社はAWS認定パートナーとしてAWSの導入から運用保守まで豊富な支援実績がございます。お客様のAWSに関する技術相談や導入支援も承っておりますので、お困りごとがありました際はぜひお気軽にご相談ください。
監修者:クロジカサーバー管理編集部
コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティ対策を必要とするコーポレートサイトで250社以上の実績があります。当社の運用実績を踏まえたクラウドサーバー運用のノウハウをお届けします。
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