
クラウドインフラサービスを選ぶ際、AWSやAzureなどの海外ベンダーと近年注目が集まる「さくらのクラウド」のような国内ベンダーのどちらを選ぶべきか迷うことはないでしょうか。
特に日本企業の場合、データの所在地やサポート体制など、国内クラウドサービスに魅力を感じる方も多いでしょう。そこで今回は、日本を代表するクラウドインフラサービス「さくらのクラウド」について、その特徴や料金体系、他社サービスとの比較など、導入を検討する際に役立つ情報を詳しく解説します。
この記事でわかること
① さくらのクラウドの料金体系
② さくらのクラウドの利用メリット・デメリット
③ クラウドベンダー各社の強み
目次
さくらのクラウドとは?
基本的な概要
「さくらのクラウド」は、日本の老舗ホスティング企業であるさくらインターネット株式会社が提供するIaaS型のクラウドサービスです。2011年のサービス開始以来、日本企業のニーズに応えるクラウドインフラとして多くの企業に利用されています。
記事中盤でも詳細に述べますが、さくらのクラウドの最大の特徴は、日本企業向けに最適化されたサービス設計にあります。データセンターが国内に位置し、日本語による充実したサポート体制を備えています。また、直感的な日本語のインターフェースで操作性が考慮されたコントロールパネルや、シンプルな料金体系など、使いやすさを重視した設計がなされています。

さくらのクラウドの特徴
ガバメントクラウド認定サービス
さくらのクラウドは、2021年にISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録されました。そして2023年には、デジタル庁が推進する「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」に条件付きで認定※1されました。
この認定は、情報セキュリティ対策の基準や運用体制、可用性などが厳格に評価された結果であり、さくらのクラウドの信頼性を裏付けるものとなっています。また、この認定プロセスを通じて、さくらのクラウドのセキュリティ機能や運用体制がさらに強化されることが期待されています。
※1 2025年度末までに厳格な技術要件をすべて満たすことが条件
参考:「さくらのクラウド」が 「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」(ISMAP)に登録されました
参考:さくらインターネット、ガバメントクラウドサービス提供事業者に選定
料金体系
さくらのクラウドの料金体系は、非常にシンプルでわかりやすく、以下のように利用状況に応じて料金プランが自動で最適化されます。また、データ転送量に対する課金がないため、予期せぬ高額請求のリスクも大幅に低減されています。
料金体系について(石狩第1リージョンで最小スペックの例)
時間単位の課金:
1日10時間までは1時間あたり7円の時間割計算が適用される
日額料金:
10時間以上の利用で自動的に日額料金(77円/日)に切り替わる
月額料金:
月20日以上の利用で月額料金が適用される
また、継続的に利用する場合はよりお得な料金で利用できます。具体的には、割引パスポートと呼ばれる利用権を購入することで、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月といったまとまった単位での利用の際に最大50%の割引を受けることが可能です。実際の利用を開始する前に料金シミュレーターを参考にしつつ利用料金を見積もることを推奨いたします。
サポート体制
さくらのクラウドの大きな強みの一つが、日本語による充実したサポート体制です。技術的な問い合わせに日本語で対応してもらえるため、言語の壁を気にせずに問題解決ができます。
サポート方法には、電話、メール、チャットがあり、幅広いサポート対応体制が整っています。さらに、初心者向けのチュートリアルや技術マニュアルも日本語で豊富に用意されているため、クラウド導入経験の少ない企業でも安心して利用開始できます。
サポート体制の例
24時間365日の技術サポート:
日本語による電話およびメールサポートを常時提供
※ 電話サポートは10:00~18:00、メールサポートは24時間365日受付
詳細な日本語ドキュメント:
初心者でも理解しやすい丁寧な説明と豊富な事例を含む
コミュニティフォーラム:
ユーザー同士が情報交換できるオンラインコミュニティを運営
トレーニングプログラム:
初心者向けから上級者向けまで、様々なレベルのトレーニングを提供
専門技術者(セールスパートナー)によるサポート:
複雑な構成や大規模システムの設計、クラウド料金の見積、ご請求、アカウント管理、一次サポートなどを提供 ※パートナーによって対応範囲は異なります。
主要な機能(サービス)
さくらのクラウドは、仮想サーバー、ストレージ、ネットワーク、データベースなど、クラウド環境に必要な主要な機能(サービス)を提供しています。下記ではその一部をご紹介します。
料金体系について
サーバー:
1GBから選択可能で、柔軟なスペック調整が可能。主要OSに対応し、コントロールパネルで直感的に操作可能。月額1,540円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/server/
ディスク(ブロックストレージ):
SSDと標準プランから選択可能。高性能で拡張性に優れ、複数ディスクを1台のサーバーで利用可能。月額440円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/disk/
アーカイブ:
仮想ディスクのバックアップを作成・保存する機能。同じ構成のサーバー複製や復旧に利用可能。定期的な自動バックアップにも対応。月額220円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/archive/
VPCルータ(仮想プライベートネットワーク):
VPC環境を構築する仮想ルーターアプライアンス。NAT、VPN、ファイアウォールなど多彩な機能を搭載。セキュアなネットワーク構築が可能。月額2,619円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/vpc-router/
ローカルルータ(VPCピアリング):
異なる会員ID・クラウドアカウント間のスイッチを相互にL3接続するアプライアンス。VPNなしで閉域網を簡単に構築可能。月額2,750円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/local-router/
ユーザ・アカウント(アクセス管理):
コントロールパネルへのログイン単位の「ユーザ」と、リソース管理の単位である「アカウント」で構成される。ユーザごとに権限を設定し、アカウントごとにリソース環境を管理することが可能。無料で利用可能
データベース・アプライアンス(RDB):
コントロールパネルから即座に利用可能なマネージドRDBMS。MariaDBとPostgreSQLに対応。自動バックアップや冗長化オプションを提供。プライベートネットワークで利用可能。月額2,750円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/database-appliance/
エンハンスドロードバランサー(ロードバランシング):
高機能なプロキシ型ロードバランサー。リージョン間負荷分散、SSLオフロード、DDoS対策機能を搭載。コントロールパネルから簡単に設定可能。月額385円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/enhanced-load-balancer/
DNS:
管理型DNSサービス。Webインターフェースでゾーンやレコードを設定可能。API制御にも対応し、高可用性を実現。月額44円から利用可能
参照:https://cloud.sakura.ad.jp/products/dns/
ウェブアクセラレータ(CDN):
低価格で高速なコンテンツ配信が可能。キャッシュのリアルタイム削除機能を搭載。東京・大阪の2拠点で運用。500GiB/月の無償利用枠あり。※ 500 GiB の無料枠を超えた分については、アウトバウンド転送量×5円/GiB(税込)の従量課金制
参照:https://cdn.sakura.ad.jp/price/
サービス一覧はこちらを参照ください
さくらクラウドとAWSのケース別料金比較
続いては下記の前提条件に基づいて、さくらのクラウドとAWSの料金比較をご紹介します。
前提条件 | |
---|---|
想定月間PV数 | 10万PV(中小企業の一般的なコーポレートサイト想定) |
同時接続数 | 100〜200ユーザー |
月間データ転送量 | 約50GB |
CPUスペック | 2 vCPU(軽量なWebアプリケーション対応) |
メモリ | 4GB(PHPやWordPressの安定動作) |
ストレージ | SSD 100GB(OS、アプリケーション、データベース含む) |
サーバー単体構成の場合
さくらのクラウド

品名 | 税込単価 | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|
サーバー(仮想2コア / 4GBメモリ) | 4,840円 | 1 | 4,840円 |
ディスク(SSDプラン 100GB) | 3,850円 | 1 | 3,850円 |
データ転送コスト | 0円 | 50GB | 0円 |
合計 | 8,690円 |
※ 東京第2ゾーンの料金を算出
※ 2025年7月28日時点の料金
AWS

項目 | 構成・条件 | USD | 円換算(147.99円/ドル) |
---|---|---|---|
EC2 インスタンス | t3.medium (2 vCPU/4 GiB) | 39.712 | 5,881円 |
EBS(gp3) | 100 GB | 9.600 | 1,421円 |
データ転送コスト | 50 GB相当 | 5.700 | 843円 |
合計 | 55.012 | 8,145円 |
ここまでの情報をもとに簡単にまとめると、月10万PV程度の中小企業サイト(2vCPU/4GB/SSD100GB)を1台で運用する場合、さくらのクラウドは約8,690円、AWSは約8,145円 と、料金差はほぼありません。
ただし、さくらクラウドは転送量が無料で、月額料金が固定。AWSはストレージ費用が安価ですが、転送量が従量課金のためアクセス増加でコストが変動します。
そのため、コストを固定し安心して運用するなら「さくらクラウド」拡張性や柔軟性を優先するなら「AWS」が適していると言えるでしょう。また、補足情報として上記構成で運用をする際のメリット・デメリットを記載します。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
管理のしやすさ | すべての処理が1台で完結。障害調査やメンテナンスがシンプル。 | 障害時の影響範囲が広く、迅速な復旧が求められる。 |
コスト | 仮想サーバー1台で済むため、月額コストを抑えやすい。 | 高可用性や負荷分散を求めると構成変更が必要。 |
拡張性 | CPUやメモリなどを簡単にスケールアップ可能(インスタンスタイプ変更)。 | 無停止での拡張は難しい場合もあり、ダウンタイムが発生しうる。 |
テスト環境の複製 | AMIやスナップショットから容易に複製環境を構築できる。 | リソースが逼迫すると、本番とテストの同時運用が難しくなる。 |
可用性 | – | 1台構成のため、ダウン=サービス停止のリスクがある。 |
負荷耐性 | 通常トラフィックでは十分対応可能。 | 突発的なアクセス増に弱く、スケールアウト不可。 |
セキュリティ | – | Web・DB・アプリが同居するため、侵入時のリスクが高い。 |
Webサーバー1台、DBサーバー1台構成の場合
さくらのクラウド

品名 | 税込単価 | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|
サーバー(仮想2コア / 4GBメモリ) | 4,840円 | 2 | 9,680円 |
ディスク(SSDプラン 100GB) | 3,850円 | 2 | 7,700円 |
スイッチ | 2,200円 | 1 | 2,200円 |
データ転送コスト | 0円 | 50GB | 0円 |
合計 | 19,580円 |
※ 東京第2ゾーンの料金を算出
※ 2025年7月28日時点の料金
AWS

項目 | 構成・条件 | USD | 円換算(147.99円/ドル) |
---|---|---|---|
EC2 インスタンス | t3.medium(2 vCPU/4 GiB)× 2台 | 79.424 | 11,773円 |
EBS(gp3) | 100 GB × 2台分 | 19.200 | 2,847円 |
データ転送 | 50 GB 相当 | 5.700 | 843円 |
合計 | 104.324 | 15,473円 |
今回のWebサーバーとDBサーバーを別々にする構成(各2vCPU/4GB/SSD100GB)では、さくらクラウドが約19,580円、AWSが約15,473円となり、AWSの方が約4,000円ほど安いです。
料金差のポイントとしては、さくらクラウドはサーバー間の通信に必要な「スイッチ料金(2,200円)」が発生しているという点です。一方でAWSは複数台構成時も追加費用が少なく、台数が増えるほどコストメリットが大きくなります。
そのため、2台以上で分散構成をとるならAWSがコスト面で有利です。一方、さくらクラウドは引き続き転送量無料で予算を固定しやすいメリットがあります。
今回の構成についても、運用をする際のメリット・デメリットを下記に記載します。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
セキュリティ | DBサーバーへのアクセス制限が容易で、安全性が高まる。 | サーバーが増えた分、管理対象が増え、メンテナンスの手間がかかる。 |
負荷分散 | Web・DBの負荷を別々に調整でき、個別に最適化可能。 | 設計を間違えると一方のサーバーでリソースを無駄にすることがある。 |
拡張性 | DBバックアップやWebの冗長化など、将来的な拡張が容易。 | 構成が複雑になると、運用管理コストが増える。 |
DBバージョン管理 | 利用するDBを自由に選定・バージョン固定が可能。 | バージョンアップやメンテナンスなどを全て自分で管理する必要がある。 |
可用性 | WebとDBを分離したことで、一方に障害が発生しても影響範囲を絞れる。 | どちらか一方が停止してもサイトが止まるリスクは依然残る。 |
負荷耐性 | 負荷に応じてWeb・DBそれぞれ個別にスペックアップが可能。 | 突発的なアクセス集中には弱く、スケールアウト構成を別途検討する必要あり。 |
さくらのクラウドのセキュリティ対策
標準(無料)のセキュリティ機能
さくらのクラウドでは、基本的なセキュリティ機能が標準(無料)で提供されています。下記では代表的な機能・サービスを一覧で示しています。
機能名 | 説明 | 保護対象 |
二段階認証 | パスワードに加えて追加の認証要素を要求することで、不正ログインを防ぐ | アカウント |
アクセスレベル制御 | ユーザーごとに操作権限を細かく設定し、不要な操作を制限する | アカウント、リソース |
ファイアウォール | ネットワークレベルおよびホストレベルで通信を制御し、不正アクセスを防ぐ | ネットワーク、サーバー |
脆弱性対策(パッチ適用) | 既知の脆弱性に対するセキュリティパッチを定期的に適用し、リスクを低減する | サーバー |
ディスク暗号化 | サーバーのストレージに書き込まれるデータを自動的に暗号化し、情報漏洩のリスクを低減する | 保存データ |
SiteGuard Server Edition (WAF) | Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃を検知・遮断する | ウェブアプリケーション |
追加で利用可能なセキュリティオプション
上記の標準(無料)セキュリティ機能に加えて、より高度なセキュリティ対策を求めるユーザー向けに、様々なオプション機能が提供されています。
機能/サービス名 | 説明 | 主な利点 | 対応可能なニーズ |
Cloud One Workload Security (IDS/IPS) | 仮想パッチを含むIDS/IPSを提供し、不正侵入を検知・防御する | サーバーへの不正侵入の検知、脆弱性に対する迅速な防御 | サーバーのセキュリティを強化したい場合 |
Juniper vSRX (統合型セキュリティ) | IPS機能を含む仮想ファイアウォールアプライアンス | 高度なネットワークセキュリティ機能(ファイアウォール、VPN、IPSなど) | より高度なネットワークセキュリティ対策が必要な場合 |
マネージドセキュリティサービス | セキュリティパッチ適用やWAF管理などを代行する | セキュリティ運用負荷の軽減、専門知識がない場合でも適切な対策が可能 | セキュリティ運用にリソースがない場合 |
バックアップサービス | 定期的なデータバックアップと復旧を支援する | データ損失時の迅速な復旧、事業継続性の確保 | データの重要性が高く、損失が許容できない場合 |
脆弱性診断サービス (SiteScan 2.0, WebSite Scouter) | ネットワーク、OS、ミドルウェア、Webアプリケーションの脆弱性を診断する | 潜在的なセキュリティリスクの把握、対策の優先順位付け | システムのセキュリティリスクを定期的に評価したい場合 |
その他のセキュリティ製品 (攻撃遮断くん, Cloud One, Fortinet, Sophos, SSL証明書, etc.) | 様々なセキュリティニーズに対応する個別の製品群 | 多岐にわたるセキュリティ脅威への対応、特定の要件への適合 | 特定のセキュリティ課題を解決したい場合 |
コンプライアンス対応状況
さくらのクラウドは、ガバメントクラウドの解説部分で触れたISMAPに加え、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)やPマーク(プライバシーマーク)などの各種認証を取得しており、高いセキュリティ基準を満たしています。
また、金融系のFISC安全対策基準や、医療情報システムのガイドラインにも対応しているため、規制の厳しい業界でも安心して利用できます。特に個人情報保護法や各種業界規制に準拠するための機能やドキュメントが整備されているため、コンプライアンス対応の負担を軽減できる点も大きなメリットです。
さくらのクラウドの利用メリット
データ転送量が無料
さくらのクラウドでは、AWSやGoogle Cloudなどのクラウドサービスと異なり、データ転送量に対する課金がありません。
これにより、動画配信や大容量ファイル転送などデータ転送量が多いサービスを運用する企業にとって、大幅なコスト削減が可能になります。予期せぬデータ転送による料金高騰のリスクもないため、予算管理がしやすいというメリットもあります。

料金体系がわかりやすい
こちらのメリットも記事前半で簡単に触れましたが、さくらのクラウドの料金体系は非常にシンプルで透明性が高く、日本円建てであるため為替変動リスクがありません。
特に中小企業やIT部門の予算が限られている組織にとって、この予測可能性は大きな安心材料となります。また、リソースごとの料金が明確に分かれているため、コスト分析や最適化も容易です。結果として、使用していないリソースの特定や、コスト効率の悪いサービスの見直しなどが行いやすくなっています。

日本語サポートが充実
日本企業にとって、母国語でのサポートが得られることは非常に重要です。海外のクラウドベンダーと同様にさくらのクラウドでも、日本人のエンジニアによる技術サポートを受けられるため、言語の壁によるコミュニケーションの問題がなく、スムーズな問題解決が期待できます。また、ドキュメントやナレッジベースもすべて日本語で提供されているため、英語原文を読み解いたり、直訳的な文章の理解に苦しむ心配もありません。
さくらのクラウドの利用デメリット
サービスラインアップが限定的
さくらのクラウドは、必要十分な機能を備えている一方で、AWSやGoogle Cloud、Azureなどのグローバルなクラウドプロバイダーと比較すると、提供サービスの種類や先進的な機能面では限定的な側面があります。
特に機械学習、AIサービス、高度なデータ分析ツールなどの最先端サービスや、特殊用途向けの専門サービスなどは、まだラインナップが充実していません。グローバルクラウドでは数百種類のサービスが提供されていることを考えると、選択肢の幅という点では若干劣ります。
ただ、さくらのクラウドのサービスラインアップは常に拡充されており、今後はより多くの機能が利用できるようになることが期待されます。例えば、2025年2月にも13のサービスが新たに追加されています。
データセンターが日本のみ
2025年3月24日現在、さくらのクラウドのデータセンターは日本国内にのみ存在しており、グローバル展開はされていません。これはグローバルにサービスを展開する企業にとっては、ユーザーへの応答速度や災害時のリスク分散という観点でデメリットとなる可能性があります。
海外ユーザーが多いサービスや、グローバル展開を前提としたシステムを構築する場合は、この地理的制約を考慮する必要があります。また、マルチリージョン構成による冗長化戦略にも限界があるため、BCPの観点からは追加の対策が必要になるケースもあります。
ただ、2024年10月1日にさくらインターネットから発表されたリリースによると、グローバルなデジタルインフラストラクチャ企業であるエクイニクス・ジャパンとパートナーシップを結ぶことでアジア展開を予定しているようです。また、さくらインターネット代表の田中氏は「デジタル赤字」※2に関して言及していることから、今後もグローバル展開を推進していくことが推測できます。
※2 デジタル赤字とは:日本が外資系デジタルサービスに依存することで発生している経済的な損失や国外への資金流出を指す概念
クラウドプロバイダーの強み早見表
クラウドプロバイダー | 主な強み |
さくらのクラウド | ・データ転送料無料 ・透明性の高い料金体系 ・充実した日本語サポート |
AWS | ・最大規模のサービスラインナップ ・グローバルな展開 ・高度な自動化機能 |
Azure | ・Windowsサービスとの統合 ・業界特化型ソリューションの充実性 ・ハイブリッドクラウド周辺サービスが充実 |
Google Cloud | ・AI/ML技術の高さ ・ビッグデータ処理能力 ・コンテナ技術が先進的 |

さくらのクラウドで発生した過去の障害
さくらのクラウドは高い可用性を誇りますが、インフラサービスとしては稀に想定外のトラブルも発生します。ここでは、実際に発生した代表的な障害事例と、その原因・影響、そして復旧対応の概要をまとめました。これらの障害はさくらのクラウドに限らず起こりうることですが、以下の障害事例を前提に、今後の運用設計やリスク対策の参考にしていただければ幸いです。
2025年02月 - ネットワーク障害
2025年2月26日18時05分から22時05分にかけて、さくらのクラウド東京第1ゾーンにおいて、一部ネットワークに問題が発生しました。この影響により、UDP通信を利用している場合はパケットの欠落が、TCP通信を利用している場合はパケット再送による通信遅延が発生した可能性があります。
また、通信品質が重視されるアプリケーションを使用している場合、通信遅延による品質の低下や、ディスクへのI/O遅延が引き起こされた可能性も考えられます。22時05分に、これらの問題に対する復旧作業が完了しました。
2025年01月 - 通信障害
2025年1月9日、さくらインターネットのサービスにおいて障害が発生しました。この障害は、外部からのDoS攻撃に起因すると考えられ、同日20時44分に始まり、翌1月10日13時10分まで影響が続きました。その後、17時25分に事象の解消が確認されています。
この障害の影響範囲は、さくらのクラウド東京第1ゾーンを利用している一部のユーザーに加え、シンプル監視、エンハンスドロードバランサ、GSLB/DNSといった特定のサービスにも及びました。外部からの大量の不正アクセスが原因と見られ、これらの影響範囲において、通信の遅延やパケットロスが断続的に発生しました。
導入事例
大量同時配信基盤を短期間で実現

<さくらのクラウドの導入背景>
株式会社カラーと株式会社グラウンドワークスは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のプロモーションのためにスマートフォンアプリ「EVA-EXTRA」を企画しましたが、公開予定日の制約により、わずか2カ月弱という非常に短い期間で大量アクセスが予測されるプロモーション環境を構築する必要がありました。
この厳しい状況の中、クラウドサービスの選定が重要な課題となり、検討の結果、「さくらのクラウド」が採用されました。「さくらのクラウド」が選ばれた主な理由は、その柔軟なスケーリング性能とシンプルでわかりやすい設定画面にありました。
<導入後の効果>
実際に、環境構築を担当した株式会社effectiveの担当者は、「さくらのクラウド」を初めて利用したにもかかわらず、わずか2日間で構築を完了させることができ、アプリ開発に十分な時間を確保できたと評価しています。
また、海外のファンからのアクセスに対応するために、AWS CloudFrontとの連携も容易に行うことができたことも大きな利点でした。公開されたスマートフォンアプリ「EVA-EXTRA」は、公開直後から多くのダウンロードを記録しましたが、「さくらのクラウド」を基盤としたシステムは問題なく配信を実行することができました。
株式会社effectiveの担当者は、「さくらのクラウド」がクラウド初心者にもわかりやすい一方で、中・上級者が求めるような機能もほぼ備わっている点を評価しており、他のクラウドサービスとの連携が容易であることもメリットとして挙げています。

本記事では、さくらのクラウドの特徴やメリット・デメリットなどについて解説いたしました。特にデータ転送量が多いサービスや、日本語サポートを重視する企業にとって、大きなメリットをもたらすサービスと言えるでしょう。
クラウドサービスの選定には、コスト面だけでなく、自社のニーズに合ったサポート体制やセキュリティ対策、将来的な拡張性なども含めて総合的に判断することが重要です。本記事が皆様のビジネスインフラ選定の一助となれば幸いです。
監修者:クロジカサーバー管理編集部
コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティ対策を必要とするコーポレートサイトで250社以上の実績があります。当社の運用実績を踏まえたクラウドサーバー運用のノウハウをお届けします。
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- 導入事例
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