AWSとVPSのメリット・デメリットを比較|EC2との違いなどを紹介

AWSとVPSのメリット・デメリットを比較|EC2との違いなどを紹介

こんにちは。「クロジカサーバー管理」コンサルティングチームの西原です。

Webサイトの運用に向けたサーバー選びには、カスタマイズが不要でコストを抑えたい場合や、複雑なサービスや高セキュリティを保ちたいといったパフォーマンスの要求があり、カスタマイズが必要な場合など選択肢が異なります。本記事では、AWSとVPSを比較しメリットやデメリットに触れていきます。

この記事でわかること

① AWSとVPSそれぞれが向いている活用シーン
② AWSのメリット・デメリット
③ VPSのメリット・デメリット
④ VPSとAWSそれぞれの活用事例

AWSとVPSの簡易比較表

まず本記事の結論として、一般的なVPS・Amazon EC2・Amazon Lightsail を4軸で比較した表が下記になります。

サービスコスト面拡張性管理のしやすさセキュリティ
Amazon Lightsail   ○
・月額固定+一定転送量込みで予算が読みやすい
・転送量超過時は追加課金
   ○
・プラン変更は数クリック
・最大64 GBメモリ程度までで大規模スケールは非対応
   ◎
・数分でWordPress 等を立ち上げ可能
・EC2よりシンプルな専用UI

   ○
・VPC隔離やIAMは利用可
・WAF/Shield Advanced など高度機能は別途設定
Amazon EC2   △
・秒課金で利用実態に応じ変動
・Savings Plansなどを理解しないと見積りが複雑
   ◎
・オートスケーリングで台数自動増減
・インスタンスタイプ数百種+グローバル展開
   ○
・機能が多いため学習コストが高い
・IaC(Terraform など)で自動化すると真価を発揮
   ◎
・IAM、VPC分離、AWS Shield Standardが標準
・ISO/SOCなど豊富なコンプライアンス
一般的なVPS   ◎
・月額定額で予算が立てやすい
・プラン変更もしやすいが上限は低め
   △
・CPU/メモリ増設は手動申請が多い
・ホストの物理スペックに縛られる
   ◎
・コントロールパネルが直感的


   ○
・基本的なファイアウォールは完備
・DDoS対策などは追加サービス依存
※ 「◎、○、△」の評価イメージ ◎:特に優れている ○:普通 △:やや劣る

以下では、各項目の詳細についてAWSとVPSそれぞれのメリット・デメリットに触れつつ解説してまいります。

AWSとは

AWS(Amazon Web Services)は、サーバーやデータベースを“買う”のではなく“借りる”形で使えるクラウドサービスです。ブラウザから数分で環境を用意でき、使った分だけ払い、アクセスが増えたらすぐにリソースを拡張できます。

また、世界のデータセンターはもちろん、国内(東京・大阪)データセンターも選べるため、BCP対策や国内向けサイトの表示速度改善も行いやすく、中小~中堅企業でも先行投資を抑えて安定したインフラを確保できます。

AWSが提供するVPS「Amazon Lightsail」

Lightsailは「まず1台を簡単・定額で使いたい」人向けのVPSプランです。メモリやSSD容量、転送量がセットになっており、月額固定料金で予算管理がラク。WordPressなどのテンプレートを選んでクリックするだけで立ち上がり、専用UIもシンプルなので共用レンタルサーバー感覚で運用を開始できます。

適している利用シーン

・会社サイトやLPをとりあえず公開したい
・社内ツールの検証環境をサクッと用意したい

AWSの代表的なサーバー「Amazon EC2」

EC2はCPU数・メモリ量・ネットワーク帯域などを細かく指定できるフルカスタマイズ型の仮想サーバーです。「1台だけ」の運用から「数百台」に一気にスケールさせることまで可能で、障害時の自動復旧や定期バックアップも容易に設定できます。料金は秒単位の従量制ですが、長期利用向け割引(Savings Plans など)もあり、規模や期間に合わせた最適コスト設計が可能です。

適している利用シーン

・ECサイトや会員サービスなど負荷変動が大きい本番システム
・動画配信やAI処理のように高性能サーバーが必要なワークロード

Amazon LightsailとAmazon EC2の違いは?

項目LightsailEC2
料金体系月額固定でわかりやすい従量課金+割引オプションで柔軟
選べるサーバーサイズ数パターンのみ数百タイプから自由に選択
ネットワーク設定基本設定は自動VPCやセキュリティを詳細に
設計可能
管理画面専用UIで直感的高機能だが学習がコスト高
向いている用途小規模サイト・検証環境中規模から本番向け大規模システムまで幅広い

こちらの表をもとにAmazon EC2とAmazon Lightsailそれぞれが適しているケースを、ざっくり言えば 「小さく早く始めたい」なら Lightsail「将来の拡張や細かな設計が必要」なら EC2 がおすすめです。実際には、まず Lightsail でスタートし、アクセス増加や機能追加に合わせて EC2 に移行する企業も多いため、段階的なスケールアップが視野に入る点もAWSの強みと言えます。

AWSのメリット

AWSのメリット

コストを柔軟に調整できる

AWSなどのクラウドサービスは、前述したように“自社でデータセンターを保有する必要がない”ため、オンプレミスのような初期費用がかかりません。そのため、いきなり数百万円といった大きな金額をかけることなく、サービスを利用することができます。

また、サービスの閑散期などでアクセス数が限定的になる場合には、すぐにサーバーの停止やスペックダウンをすることができるので、無駄なコストを削減できます。ただし、アクセス数などの利用量に応じた「従量課金制」によるコスト面の弊害もあるため、こちらについてはデメリット部分で後述いたします。

カスタマイズがしやすい

AWSには、*300以上のサービスが存在します。このように多様なサービスとツールを提供しているため、ユーザーはニーズに応じた最適なサービスを選びカスタマイズすることが可能です。

また、システム要件の変更に応じて、データベース、キャッシュ、CDNなどのマネージドサービスを必要な時に追加・削除できる点もメリットと言えるでしょう。オンプレミスでは新しいサービスの追加に物理的な準備が必要ですが、AWSではAPIやマネジメントコンソールから即座に環境を拡張できます。

オンプレミスと比べれば、自由度は低くなりますが共用レンタルサーバーやVPSと比べると十分目的に合わせた構築が可能と言えます。
*2025年6月30日時点

セキュリティ面が安心

かつてクラウドは、オンプレミスに比べてセキュリティ面が不安というイメージが世間でもありましたが、現在はAWS側で厳格なコンプライアンス要件に従い、第三者機関による検証も行われています。

そのため、オンプレミスでは常に最新のセキュリティ対策をユーザー自身が担う必要がある点と比較した際に、AWSはセキュリティ面において優位性があると言えます。なぜなら、セキュリティ対策を行う範囲がAWS側とユーザー側で明確化されており、それによってユーザー負担も減るためです。

また、VPSや共用レンタルサーバーと比べると、IAMによる細かなユーザーごとのアクセス制御であったり、データの暗号化、バックアップ、保護サービスなど包括的なセキュリティサービスを提供しているため、セキュリティ管理の負担を軽減しつつ、高度な保護を実現できると言えるでしょう。

AWSのデメリット

共用レンタルサーバーやVPSに比べてコストが高い

自由度が高く、多岐にわたるカスタマイズが可能である一方、共用レンタルサーバーやVPSと比べればコストは高くなってしまいます。これは、AWSをはじめクラウドコンピューティングサービスは基本的に、アクセス数やデータの利用量に応じて価格が変動する「従量課金制」を採用しているためです。そのため、使用が少ない時には必要十分なサービスのみを利用して、コストを抑えることが重要となります。

高度な専門的知識が必要

VPSサービス同様、サーバーの専門的知識は必要となりますが、それに加えてAWSサービスの知見も必要になります。VPSサービスとAWSの違いを挙げるとクラウドネイティブ(クラウド環境に最適化された設計)な活用がAWSには求められるため、従来のサーバーの知識では最大限のメリットを享受できないためより高度な専門知識が求められると言えるでしょう。

VPSとは

VPSは仮想専用サーバと呼ばれ、1台の物理サーバーを複数ユーザーで共有することができます。また、ユーザーそれぞれに仮想サーバーが割り当てられているので、ユーザーはその仮想サーバーを自分1人で使用することも可能です。

さらに、仮想サーバーにはホストOSとは別のゲストOSがインストールされているので、ユーザーが管理者権限を持ち自由に操作が可能となります。よく使われている VPSには「さくらのVPS」「お名前.com VPS」などがあります。

VPSのメリット

VPSのメリット

ユーザー同士の影響が出にくい

VPSでは、物理サーバーの計算リソース(CPU、メモリ、ディスク)が仮想化技術により明確に分割され、各ユーザーに専用の仮想環境として割り当てられます。これにより、他のユーザーが高負荷な処理を実行していても、自身の環境のパフォーマンスには影響しにくい特徴があります。

例えば、共用レンタルサーバーでは他ユーザーのアクセス急増や大量データ処理によりWebサイトのレスポンスが低下するリスクがありますが、VPSではそのような影響を受けにくく、安定したサービス品質を維持できます。

コストが低い

VPSは、共用レンタルサーバーと比べればコストは上回るものの、オンプレミスに比べると料金が安くなります。オンプレミスであれば、月数万から利用するものが多い中、VPSであれば月数千円から使用することができるものもあり、月額制の料金体系が多くあります。

共用サーバより自由度が高い

VPSは共用サーバーと比較して、より高い自由度があります。例えば共用サーバーでは、複数のユーザーが同じ物理サーバーのリソースを共有し、設定やソフトウェアの選択に制限があります。一方、VPSでは、仮想化技術により各ユーザーに専用の環境が割り当てられます。

これにより、VPSユーザーはOSの選択、ソフトウェアのインストール、サーバー設定のカスタマイズなどが可能になります。また、root権限を持つことで、より高度な操作や設定変更が行えます。

VPSのデメリット

サーバーの高度な知識が必要

自由度が高い分、サーバーへの専門的な知識が求められます。この点に関しては、オンプレミスサーバーと同じです。メンテナンスなども自分たちで実施する必要があるため、専門家がいない場合は注意が必要です。

カスタマイズに限度がある

メリットの部分で触れた通り、共用レンタルサーバーと比べれば自由度は高くなります。しかし、オンプレミスやクラウド程の拡張性は期待できないため、どんなサービスを使用したいかによっては制限を受けることになります。

VPSの導入例〜適しているケースの紹介〜

VPSは、以下のような導入ケースに適しています。

  • Webサイトの運用など大きなパフォーマンスが必要ない場合
  • 月額固定制でコストを抑えたい場合

具体的な導入事例としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 配信サービスの基盤
  • 商品管理システムの基盤

コストが低いため、大きなカスタマイズが不要な場合はVPSで問題ありません。逆にパフォーマンスを要求される処理や大幅なカスタマイズには不向きだと言えます。コスト重視の場合は、VPSサービスの導入が効果的です。

【事例】株式会社アイエスイー

引用:VPS事例_株式会社アイエスイー様

株式会社アイエスイーは、獣害対策のためのIoTソリューション「まる三重ホカクン」を開発・販売しています。当初はオンプレミスサーバーを使用していましたが、アクセス集中時の遅延や拡張性の問題に直面しました。

そこで、2014年から「さくらのクラウド」と「さくらのVPS」を導入し、安定稼働と柔軟なスケーリングを実現しました。これにより、ユーザー増加に対応しつつ、低コストでIoTソリューションを提供できるようになりました。同社は現在、獣害対策だけでなく、海洋、林業、地域課題解決など幅広い分野でIoTソリューションを展開しており、クラウドサービスの活用が事業拡大の鍵となっています。
参照:獣害など農山漁村の困りごとをIoTで解決するため、 「さくらのクラウド」「さくらのVPS」をフル活用

AWSの導入例〜適しているケースの紹介〜

AWSは以下のような導入ケースに適しています。

  • 頻繁な機能追加などのカスタマイズが発生するWebサイトやシステム運用を行う場合
  • アクセスの変動が大きいサービスを利用するケース

具体的な導入例としては、

  • データセンターとAWS間の接続サービス
  • モバイルオーダーアプリの基幹システム
  • 高セキュリティのWebサイト・業務システム

以上のように、複雑なサービスや高セキュリティを保ちたいなど多岐にわたるサービスの基盤として導入されています。もちろん、コスト面がかかるとはいえ、オンプレミスに比べると初期導入にかかる費用がないなどのメリットもあるため、次々と導入が進んでいます。

【事例】PayPayカード株式会社

引用:AWS事例_PayPayカード様

PayPayカード株式会社は、メインフレームで運用していたクレジットカード業務の基幹システムをAWSに移行しました。データベース約10TB、150億レコードを含む大規模システムの移行により、ビジネス要件に応じた柔軟性と高い可用性を実現しました。

この移行は、PayPayとの連携強化や決済件数の急増に対応するためであり、2020年9月から2023年4月にかけて行われました。AWSの採用により、リソースの柔軟な割り当てが可能となり、システムの安定稼働が確保されています。
参照:PayPay カード、約 10TB のデータベースと約 150 億レコードに達する大規模基幹システムをAWS へ移行し、柔軟性と可用性を強化

【事例】ビットバンク株式会社

引用:AWS事例_ビットバンク株式会社様

ビットバンク株式会社は、DDoS攻撃への対応を強化するためにAWS Shield Advancedを導入しました。従来の承認プロセスを簡素化し、事前に決められた対応手順を実装することで、攻撃への対応速度を大幅に向上させました。

AWS CloudFormationを活用して設定タスクを自動化し、AWS WAFと組み合わせることで、多層的な保護を実現しています。この新しいワークフローにより、サービスの可用性と安定性が向上し、顧客の機会損失を防止しています。また、金融庁の規制にも準拠しつつ、デジタルウォレットのセキュリティを強化しました。ビットバンクは今後、他のAWSサービスも活用して、さらなるセキュリティ強化と事業拡大を目指しています。
参照:ビットバンクが AWS Shield を利用して DDoS 攻撃への対応を強化


本記事で解説したように、AWSとVPSそれぞれにメリットデメリットがありますが、運用に向けてどんな基盤を選ぶことがベストなのか本記事が検討の参考になれば幸いです。

監修者:クロジカサーバー管理編集部

コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティビスにはVPSを、複雑なサービスや汎用性を持たせたい場合は、AWSを選択することも選択肢と言えます。それぞれにメリットデメリットがありますが、運用に向けてどんな基盤を選ぶことがベストなのか本記事が検討の参考になれば幸いです。

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