こんにちは。「クロジカサーバー管理」コンサルティングチームの西原です。
Webサイトの運用に向けたサーバー選びには、カスタマイズが不要でコストを抑えたい場合や、複雑なサービスや高セキュリティを保ちたい。といったパフォーマンスの要求があり、カスタマイズが必要な場合など選択肢が異なります。本記事では、AWSとVPSを比較しメリットやデメリットに触れていきます。
この記事でわかること
① AWSとVPSそれぞれが向いている活用シーン
② VPSのメリット・デメリット
③ AWSのメリット・デメリット
④ VPSとAWSそれぞれの活用事例
目次
VPSとAWSの簡易比較表
まず本記事の結論として、VPSとAWSを4軸で比較した表が下記になります。
コスト面 | 拡張性 | 管理のしやすさ | セキュリティ | |
VPS | ◎ ・定額制で予算管理容易 ・小規模向け | △ ・手動設定必要 ・物理的制限あり | ◎ ・シンプルで直感的 ・学習コスト低い | ○ ・基本機能は網羅されている ・DDoS対策、ファイアウォール設定など、 ユーザー側で別途設定が必要なケースが一般的 |
AWS | △ ・従量課金制 ・コスト管理複雑 | ◎ ・自動スケーリング ・グローバル展開可 | ○ 高機能だが、 習得に時間必要 | ◎ ・高度な機能標準装備 (IAM、AWS Shield Standardなど) ・マルチレイヤーでの包括的な セキュリティ対策 |
以下では、各項目の詳細についてVPSとAWSそれぞれのメリット・デメリットに触れつつ解説してまいります。
VPSとは
VPSは、仮想専用サーバと呼ばれ、1台の物理サーバーを複数ユーザーで共有することができます。また、ユーザーそれぞれに仮想サーバーが割り当てられているので、ユーザーはその仮想サーバーを自分1人で使用することも可能です。
さらに、仮想サーバーにはホストOSとは別のゲストOSがインストールされているので、ユーザーが管理者権限を持ち自由に操作が可能となります。よく使われている VPSには「さくらのVPS」「お名前.com VPS」などがあります。
VPSのメリット
ユーザー同士の影響が出にくい
VPSでは、物理サーバーの計算リソース(CPU、メモリ、ディスク)が仮想化技術により明確に分割され、各ユーザーに専用の仮想環境として割り当てられます。これにより、他のユーザーが高負荷な処理を実行していても、自身の環境のパフォーマンスには影響しにくい特徴があります。
例えば、レンタルサーバーでは他ユーザーのアクセス急増や大量データ処理によりWebサイトのレスポンスが低下するリスクがありますが、VPSではそのような影響を受けにくく、安定したサービス品質を維持できます。
コストが低い
VPSは、レンタルサーバーと比べればコストは上回るものの、オンプレミスに比べると料金が安くなります。オンプレミスであれば、月数万から利用するものが多い中、VPSであれば月数千円から使用することができるものもあり、月額制の料金体系が多くあります。
共用サーバより自由度が高い
VPSは共用サーバーと比較して、より高い自由度があります。例えば共用サーバーでは、複数のユーザーが同じ物理サーバーのリソースを共有し、設定やソフトウェアの選択に制限があります。一方、VPSでは、仮想化技術により各ユーザーに専用の環境が割り当てられます。
これにより、VPSユーザーはOSの選択、ソフトウェアのインストール、サーバー設定のカスタマイズなどが可能になります。また、root権限を持つことで、より高度な操作や設定変更が行えます。
VPSのデメリット
サーバーの高度な知識が必要
自由度が高い分、サーバーへの専門的な知識が求められます。この点に関しては、オンプレミスサーバーと同じです。メンテナンスなども自分たちで実施する必要があるため、専門家がいない場合は注意が必要です。
カスタマイズに限度がある
メリットの部分で触れた通り、レンタルサーバーと比べれば自由度は高くなります。しかし、オンプレミスやクラウド程の拡張性は期待できないため、自分がどんなサービスを使用したいかによっては制限を受けることになります。
AWSとは
AWSは、世界的にシェアNo.1を誇るクラウドコンピューティングサービスです。クラウドコンピューティングサービスとは、インターネットを通して、インターネットを通じてコンピュータリソース(サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーキング、ソフトウェアなど)を提供するサービスのことです。
利用者は自社でデータセンターを持つことなく、上記で記載したコンピュータリソースを必要なときに必要な分だけ利用でき、コスト効率やスケーラビリティ、可用性を向上させることができます。スタートアップから大企業まで幅広いユーザーに支持されており、クラウド市場でのリーダー的存在です。
AWSのメリット
コストを柔軟に調整できる
AWSなどのクラウドサービスは、前述したように“自社でデータセンターを保有する必要がない”ため、オンプレミスのような初期費用がかかりません。そのため、いきなり数百万円といった大きな金額をかけることなく、サービスを利用することができます。
また、サービスの閑散期などでアクセス数が限定的になる場合には、すぐにサーバーの停止やスペックダウンをすることができるので、無駄なコストを削減できます。ただし、アクセス数などの利用量に応じた「従量課金制」によるコスト面の弊害もあるため、こちらについてはデメリット部分で後述いたします。
カスタマイズがしやすい
AWSには、*320以上のサービスが存在します。このように多様なサービスとツールを提供しているため、ユーザーはニーズに応じた最適なサービスを選びカスタマイズすることが可能です。
また、システム要件の変更に応じて、データベース、キャッシュ、CDNなどのマネージドサービスを必要な時に追加・削除できる点もメリットと言えるでしょう。オンプレミスでは新しいサービスの追加に物理的な準備が必要ですが、AWSではAPIやマネジメントコンソールから即座に環境を拡張できます。
オンプレミスと比べれば、自由度は低くなりますがレンタルサーバーやVPSと比べると十分目的に合わせた構築が可能と言えます。
*2024年11月25日時点
セキュリティの面が安心
かつてクラウドは、オンプレミスに比べてセキュリティ面が不安というイメージが世間でもありましたが、現在はAWS側で厳格なコンプライアンス要件に従い、第三者機関による検証も行われています。
そのため、オンプレミスでは常に最新のセキュリティ対策をユーザー自身が担う必要がある点と比較した際に、AWSはセキュリティ面において優位性があると言えます。なぜなら、セキュリティ対策を行う範囲がAWS側とユーザー側で明確化されており、それによってユーザー負担も減るためです。
また、VPSやレンタルサーバーと比べると、IAMによる細かなユーザーごとのアクセス制御であったり、データの暗号化、バックアップ、保護サービスなど包括的なセキュリティサービスを提供しているため、セキュリティ管理の負担を軽減しつつ、高度な保護を実現できると言えるでしょう。
AWSのデメリット
レンタルサーバーやVPSに比べてコストが高い
自由度が高く、多岐にわたるカスタマイズが可能である一方、レンタルサーバーやVPSと比べればコストは高くなってしまいます。これは、AWSをはじめクラウドコンピューティングサービスは基本的に、アクセス数やデータの利用量に応じて価格が変動する「従量課金制」を採用しているためです。そのため、使用が少ない時には必要十分なサービスのみを利用して、コストを抑えることが重要となります。
高度な専門的知識が必要
VPSサービス同様、サーバーの専門的知識は必要となりますが、それに加えてAWSサービスの知見も必要になります。VPSサービスとAWSの違いを挙げるとクラウドネイティブ(クラウド環境に最適化された設計)な活用がAWSには求められるため、従来のサーバーの知識では最大限のメリットを享受できないためより高度な専門知識が求められると言えるでしょう。
VPSの導入例〜適しているケースの紹介〜
VPSは、以下のような導入ケースに適しています。
- Webサイトの運用など大きなパフォーマンスが必要ない場合
- 月額固定制でコストを抑えたい場合
具体的な導入事例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 配信サービスの基盤
- 商品管理システムの基盤
コストが低いため、大きなカスタマイズが不要な場合はVPSで問題ありません。逆にパフォーマンスを要求される処理や大幅なカスタマイズには不向きだと言えます。コスト重視の場合は、VPSサービスの導入が効果的です。
【事例】株式会社アイエスイー様
株式会社アイエスイーは、獣害対策のためのIoTソリューション「まる三重ホカクン」を開発・販売しています。当初はオンプレミスサーバーを使用していましたが、アクセス集中時の遅延や拡張性の問題に直面しました。
そこで、2014年から「さくらのクラウド」と「さくらのVPS」を導入し、安定稼働と柔軟なスケーリングを実現しました。これにより、ユーザー増加に対応しつつ、低コストでIoTソリューションを提供できるようになりました。同社は現在、獣害対策だけでなく、海洋、林業、地域課題解決など幅広い分野でIoTソリューションを展開しており、クラウドサービスの活用が事業拡大の鍵となっています。
参照:獣害など農山漁村の困りごとをIoTで解決するため、 「さくらのクラウド」「さくらのVPS」をフル活用
AWSの導入例〜適しているケースの紹介〜
AWSは以下のような導入ケースに適しています。
- 自社である程度カスタマイズを行ったWebサイトやシステム運用を行う場合
- 時代の流れに沿ったテレワークでも使いたい場合
具体的な導入例としては、
- データセンターとAWS間の接続サービス
- モバイルオーダーアプリの基幹システム
- 高セキュリティのWebサイト・業務システム
以上のように、複雑なサービスや高セキュリティを保ちたいなど多岐にわたるサービスの基盤として導入されています。もちろん、コスト面がかかるとはいえ、オンプレミスに比べると初期導入にかかる費用がないなどのメリットもあるため、次々と導入が進んでいます。
【事例】PayPayカード株式会社様
PayPayカード株式会社は、メインフレームで運用していたクレジットカード業務の基幹システムをAWSに移行しました。データベース約10TB、150億レコードを含む大規模システムの移行により、ビジネス要件に応じた柔軟性と高い可用性を実現しました。
この移行は、PayPayとの連携強化や決済件数の急増に対応するためであり、2020年9月から2023年4月にかけて行われました。AWSの採用により、リソースの柔軟な割り当てが可能となり、システムの安定稼働が確保されています。
参照:PayPay カード、約 10TB のデータベースと約 150 億レコードに達する大規模基幹システムをAWS へ移行し、柔軟性と可用性を強化
【事例】ビットバンク株式会社様
ビットバンク株式会社は、DDoS攻撃への対応を強化するためにAWS Shield Advancedを導入しました。従来の承認プロセスを簡素化し、事前に決められた対応手順を実装することで、攻撃への対応速度を大幅に向上させました。
AWS CloudFormationを活用して設定タスクを自動化し、AWS WAFと組み合わせることで、多層的な保護を実現しています。この新しいワークフローにより、サービスの可用性と安定性が向上し、顧客の機会損失を防止しています。また、金融庁の規制にも準拠しつつ、デジタルウォレットのセキュリティを強化しました。ビットバンクは今後、他のAWSサービスも活用して、さらなるセキュリティ強化と事業拡大を目指しています。
参照:ビットバンクが AWS Shield を利用して DDoS 攻撃への対応を強化
本記事で解説したように、VPSとAWSそれぞれにメリットデメリットがありますが、運用に向けてどんな基盤を選ぶことがベストなのか本記事が検討の参考になれば幸いです。
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監修者:クロジカサーバー管理編集部
コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティビスにはVPSを、複雑なサービスや汎用性を持たせたい場合は、AWSを選択することも選択肢と言えます。それぞれにメリットデメリットがありますが、運用に向けてどんな基盤を選ぶことがベストなのか本記事が検討の参考になれば幸いです。
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