こんにちは。「クロジカ大容量ファイル管理」介護業ライターの千葉です。
少子高齢化が進行している現在の日本では、介護の担い手や医療人材の不足、社会保障費の増大が無視できない問題となっています。
介護業界の問題に対応すべく、厚生労働省は「介護現場におけるICTの利用促進」を政策の1つに掲げて、介護現場におけるICT化を進めています。
ICT導入に関する知識を身につけることは、これからの介護施設運営において重要なポイントとなるでしょう。今回は、介護施設のICT導入について、導入するメリットや具体例、ICT導入補助金事業について解説します。ぜひ参考にしてください。
Contents
介護施設のICTとは?
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、「情報通信技術」と訳されます。
介護施設にICTを導入する主な目的は、介護施設における事務作業の効率化や迅速な情報共有を実現すること、そして蓄積されたデータを生かしてサービスの質を向上させることです。
例えば、タブレット端末を活用して利用者情報を共有したり訪問介護員が派遣先から記録を残したりすることも、ICTによって可能となります。ICT導入の背景には、日本の少子高齢化を原因とする「介護者不足」や医療の高度化などを背景とした「社会保障費の増大」などが挙げられます。
厚生労働省が公表している「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」より、必要とされる介護職員数の推移を確認しましょう。
<介護サービス見込み量などに基づき、都道府県が推計した介護職員の必要合計数>
年度 | 必要とされる介護職員の人数 |
2023年度 | 約233万人 |
2025年度 | 約243万人 |
2040年度 | 約280万人 |
介護の担い手を増やすための施策は現在も実施されていますが、それでも確実に必要数を確保できるとは限りません。そこで、適切な介護サービスを必要な人に届けるための施策として、介護施設のICT化が注目されているわけです。
ちなみに「IT」の方が聞き覚えのある方も多いと思います。こちらはデジタル化されたデータや技術を意味することの多い言葉です。
使い方に決まりはありませんが、今後「ICT」を耳にする機会も増えていくと思います。この機会にICTとITの違いもチェックしておきましょう。
IT(インフォメーション テクノロジー) | デジタル化されたデータや技術、デジタル機器そのもの |
ICT(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー) | 通信技術を活用して「デジタル化された情報をやり取りする」技術 |
介護施設におけるICTの導入状況
介護施設におけるICT導入は、厚生労働省主導のもと、現在も進められています。
介護労働安定センターが公表している「令和3年度 介護労働実態調査」における「ICT機器の活用状況について」の調査結果をみてみましょう。
<ICT機器の活用状況について※複数回答>
質問項目 | 回答の割合 |
パソコンで利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している | 52.8% |
記録から介護保険請求システムまで一括している | 42.8% |
タブレット端末等で利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している | 28.6% |
グループウェア等のシステムで事業所内の報告・連絡・相談を行っている | 19.8% |
給与計算、シフト管理、勤怠管理を一元化したシステムを利用している | 18.4% |
また、地域医療介護総合確保基金を利用したICT導入支援事業では「ICT導入支援事業の実施自治体数」について、以下のように推移していることがわかりました。
<ICT導入支援事業の実施自治体数>
年度 | ICT導入支援事業の実施自治体数 |
令和元年 | 15県 |
令和2年度 | 40都道府県 |
令和3年度 | 全ての都道府県 |
助成を受けた事業所数は、令和元年度の195事業所から令和3年度の5,371事業所と大幅に増加しています。ICT導入支援事業を利用するためにはICTツールの利用が必須になるため、ICTを導入する介護施設は増加傾向にあると考えられます。なお、ICT導入支援事業については「ICT導入支援事業とは?」にて詳しく解説します。
参考:厚生労働省|介護現場におけるICTの利用促進 (1)ICT導入支援事業の概要
介護施設において、現在活用されている主なICT機器がこちらです。
- 介護ソフト
- モバイルPC
- タブレット端末
- スマートフォン
- Wi-Fiルーター
- 事務処理や管理業務に利用するソフト(バックオフィスソフト)
介護施設でICTを導入するメリット・デメリット
ICTを導入・運用するメリットについて、介護現場で働く職員と経営側の立場から、それぞれみていきましょう。
介護現場で働く職員のメリット・デメリット
介護現場で働く職員の大きなメリットとして、記録業務時間の短縮が挙げられます。
介護施設では、「サービスを提供した証」「事故が発生した際の証拠として」あるいは「情報共有のため」に、サービス提供に関する記録を残さなくてはいけません。介護職員にとって、介助業務だけでなく記録業務も大切な仕事です。
そこでICTによって必要な情報がデジタル化されていると、利用者情報を共有したり情報の転記などが容易になるでしょう。ペーパーレス化されていれば、完成したファイルをそのまま上司に送信することも可能です。
記録や書類作成にかかる業務時間が短縮されると、介護職員は空いた時間をプライベートの充実や心身の疲労回復にあてられるでしょう。
一方で、ICTツールの使い方を新たに学ぶ必要がある点はデメリットといえます。
人手不足が課題となっている現場では「普段の業務をこなすだけで手一杯」というケースも少なくありません。業務多忙な中新たに導入されたICTの操作方法を学ぶことに、否定的な職員が出てくる可能性もあります。
経営側のメリット・デメリット
ICTの導入に関係する経営側のメリットとして、離職率の低下による業務負担軽減が挙げられます。
先ほど、ICTが介護現場で働く職員の業務時間短縮につながると述べましたが、現場で働く職員の負担軽減は会社への満足度向上につながると考えられるからです。会社への満足度が向上すると、離職率の低下に直結するでしょう。その結果、採用業務や人員配置に関する業務が減少したりして、会社側の負担軽減を期待できるわけです。
さらに介護職員が働きやすい環境を作るとともに、ICTによって蓄積されたデータを普段のサービスに生かせれば、介護サービスの品質向上も可能になります。介護サービスの品質向上は、利用者やその家族の満足度向上につながるため、将来的な稼働率アップも期待できるでしょう。
一方、ICT導入によるデメリットは、ICT機器の導入や運用初期の段階で、導入費用や教育コストが発生することです。
また情報漏洩を防ぐ仕組み作りも忘れてはいけません。持ち出し禁止のデータが社外に出ないように、ICTの活用方法に関するマニュアルを整備したりする必要もあるでしょう。ICT導入に伴って、企業が行うべき業務も増えると予想されます。
介護施設におけるICTの具体例
介護施設にICT(情報通信技術)を取り入れた具体例を紹介します。
クラウドストレージ管理を利用した情報共有システム
クラウドストレージとは、デジタル化された情報をインターネット上でやり取りできる仕組みのことです。クラウドストレージを利用すると、オンライン上のストレージ(倉庫)にファイルを格納できるようになります。インターネットにつながる端末から、場所を問わずにファイルを閲覧できるのです。
介護施設では、介護職員、看護職員、リハビリ職員などの複数の職員が連携して業務にあたっています。そこで、情報共有システムを活用して、他職種間での情報共有がスムーズに進めば、それぞれの専門性を生かしたケアを提供できるようになるでしょう。職員の入退職があっても、クラウドストレージの情報共有システムによって重要事項の引継ぎが可能になるため、事故防止にも貢献します。
なお、クラウドストレージ管理を利用した書類の取り扱いについては、こちらの記事もご覧ください。
【介護業向け】 記録用紙などの書類データバックアップ〜クラウドストレージを活用するメリット・方法〜
シフト管理や請求業務を効率化させる介護ソフトの導入
介護ソフトとは、介護業務に関する事務作業を効率化する専用ソフトウェアのことです。
介護ソフトが対応できる主な業務内容がこちらです。
- 介護保険請求
- 勤怠管理
- 給与管理
- 売上や入金の管理
- 利用者への請求書作成など
日常的な業務にも対応しています。
- 利用者情報の管理
- ケアプランの作成
- アセスメント記録の管理
- サービス提供記録の作成など
介護ソフトは、備わっている機能によって種類もさまざまです。自社の課題や状況に合わせて適切なソフトを選ぶと、事務作業を効率的に進められるでしょう。
介護ロボット・見守りセンサーを導入した見守りシステム
介護ロボットや見守りセンサーの導入も、介護施設における代表的な具体例です。
介護施設では、夜間帯に介護職員が見回りをして利用者の体調の変化や訴えに対応していますが、人員に限りがある介護現場では、夜勤に配属できる人数にも限界があります。そのため、人力で全ての事故を防止することは困難といえるでしょう。
介護施設に介護ロボットや見守りセンサーを導入することで、要介護者の生活パターンを把握して、転倒防止や徘徊への対応に効果的な対応ができるかもしれません。また、介護ロボットや見守りセンサーによる見守り体制を構築することで、部屋を訪れなくても睡眠状態を把握できるようになるでしょう。
厚生労働省は、介護ロボットへの導入・実用化の支援を積極的に推進しているため、今後移乗や排泄の支援、入浴や食事の支援などさまざまなシチュエーションに対応した介護ロボットが増えていくことが予想できます。
参考元:厚生労働省|介護ロボットの導入・活用支援策のご紹介~介護関係者の皆様向けリーフレット
ICT導入支援事業とは?
ICT導入・運用を進めたい法人にとって、ICTの導入・運用にかかるコストは無視できない問題ではないでしょうか。ここでは、ICT導入にかかるコストを削減する方法として、ICT導入支援事業を解説します。
ICT導入支援事業とは、業務効率化を通じて職員の負担軽減を図る法人に対して、一定の補助を行う制度です。ICT導入補助事業の実施主体は各都道府県となり、詳しい補助要件も都道府県によって異なります。ここでは厚生労働省が発表した資料をもとに解説します。
ICT導入支援事業の補助対象となるのは、以下の項目です。
- 介護ソフト
- 情報端末(タブレット端末、スマートフォン、インカムなど)
- 通信機器(Wi-Fiルーターなど)
- 運用経費(クラウドサービスの利用料、研修費用、バックオフィスソフトなど)
補助上限額は、事業所規模(職員数)に応じて設定されています。また補助割合は一定の下限が設定されたうえで、都道府県の裁量によって設定されます。
ICT導入補助事業を利用する際は、必ず事業所在地のある都道府県窓口にお問い合わせください。
参考:厚生労働省|介護現場におけるICTの利用促進 (1)ICT導入支援事業の概要
まとめ
介護の担い手不足や社会保障費の増大などを背景として、厚生労働省主導のもと、介護施設へのICT導入が進められています。介護施設にICTを導入すると、介護現場で働く職員の負担軽減や介護現場の生産性向上などが期待できるでしょう。
一方で、「ICTの活用方法を学ぶ必要がある」「ICTを効果的に活用できる体制作りが必要」といった注意点もあるため、両者を検討した上で今後の介護施設運営に役立てていただければ幸いです。
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ライター:千葉 拓未
高齢者デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護・福祉施設に約13年間従事。
相談員として5年間の勤務実績もあり。介護業界における労務環境・情報管理・
はたらきやすい職場づくりなど、様々な分野で専門性の高い記事を作成している。
国家資格「介護福祉士」「社会福祉士」所持。