
こんにちは。「クロジカサーバー管理」コンサルティングチームの西原です。
「Amazon S3」はAmazonのインフラ上で提供されているストレージサービスです。ホスティング機能も有し、どのようなデータでも保存・取得ができるオブジェクトストレージです。この記事では、Amazon S3にまつわる特徴や利用シーン、料金について触れていきます。※当記事の内容は2025年6月現在のAmazon S3の仕様・公開情報に準じます。
この記事でわかること
① Amazon S3の特徴
② Amazon S3の利用シーン
③ Amazon S3の料金
目次
Amazon S3の特徴
Amazon S3には以下のような特徴があります。
落ちない・重くならない
一般的なホスティングサービスは、サーバー性能や帯域の限度を越えた膨大なアクセスがあると負荷で表示が重くなり最悪サーバーダウンしますが、Amazon S3は一定したパフォーマンスでリクエストを返し、サーバーダウンもありません。 厳密にはAmazon側のネットワークがダウンしたり障害が起きれば影響を受けますが、特定サイトの負荷程度ではまず落ちません。過去あった障害はAmazon側の人的ミスや自然災害によるものだけです。
低コスト
Amazon S3は初期費用無料で始められ、「保存されたデータ容量+データへのリクエスト数+データ転送量」の従量課金です。料金計算は複雑ですが、必要最低限の費用で安価に利用できます。 料金について詳しく後述します。
ファイル保存と配信に特化
Amazon S3はファイルの保存・配信に特化しており、プログラムの実行は行いません。このため、ファイルの保存と配信に最適化された高いパフォーマンスと信頼性を提供します。プログラムの実行はAmazon EC2で行い、ファイルの保存はAmazon S3で行うことで、各サービスの強みを最大限に活用できます。

Amazon S3の利用シーン
Amazon S3の特徴を活かした利用シーンの例を紹介します。
バックアップサーバー
バックアップデータは大容量かつ非公開にしておきたいデータです。EC2で構築した公開アプリケーションサーバーから、Amazon S3で構築した非公開ファイルサーバーへバックアップデータを保存することで外部から参照されないセキュアなバックアップ環境を作れます。
コンテンツファイルサーバー
画像や動画、音声といったサイズの大きいファイルを、保存・公開するためのコンテンツファイルサーバーとして利用されることも多くあります。サイズの大きいコンテンツは参照されるだけでもアクセス負荷が高まりやすいですが、Amazon S3はそうした負荷の影響を受けず安定して配信できます。
落ちないウェブサイトの構築
Amazon S3はWordPressなどの動的システムは置けませんが、静的HTMLだけで構成されたウェブサイトなら問題なく公開できます。EC2と異なりどのようなアクセス負荷でも落ちることなく安定してサイトを公開できます。 検索広告からアクセスさせるランディングページなど、静的ファイルだけで構成されているサイトに向いています。

Amazon S3の料金
Amazon S3は「保存されたデータ容量 + データへのリクエスト数 + データ転送量」という料金体系です。
データ容量
Amazon S3に保存されているファイル容量に応じ月額で料金が発生します。詳細については以下になります。
課金対象と基本単価
・S3 バケットに保存中の全オブジェクトの実際のサイズ×保管日数に応じ、GB・月単位で課金される
・単価はストレージクラス(Standard / Intelligent-Tiering / Standard-IA / One Zone-IA / Glacier系など)ごとに異なり、Standard なら最初の 50 TB/月が約 $0.025/GB、次の450 TB が $0.024/GB・月など段階的に下がる
メタデータ・最小単位
・オブジェクト名や索引情報として、Glacier 系などではオブジェクトごとに追加で最大 40 KB のメタデータストレージが発生する(8 KB は Standard、32 KB は Glacier 単価で請求)
・Standard-IA / One Zone-IA は最小請求単位が 128 KB、かつ 30⽇間の最⼩保管期間があり、途中削除時は⽇割り追加請求が発⽣する
・Glacier Instant Retrieval / Flexible Retrieval / Deep Archive もそれぞれ 90⽇/90⽇/180⽇の最⼩保管期間ルールが存在する
リクエスト数
Amazon S3へのファイル保存やファイル参照など、Amazon S3へのリクエストごとに料金が発生します。こちらも詳細は以下になります。
リクエストタイプの分類
・Tier 1(高コスト):PUT / COPY / POST / LIST / ライフサイクル移行 など、1,000 回あたり約 $0.005 の課金(Standard Storage)
・Tier 2(低コスト):GET / SELECT / HEAD など、1,000 回あたり約 $0.0004 の課金
・ライフサイクル移行:1,000 件あたり $0.01 など、移行先クラス別に追加請求される
・DELETE / CANCEL:無料
LIST リクエストの注意
LIST API は最大 1,000 オブジェクト/1 リクエストで返します。全オブジェクトを列挙する場合は、
「総オブジェクト数 ÷1000」回のリクエストが発⽣する点に注意が必要です
データ転送量
リクエストに対しAmazon S3が送信したデータ転送量に対して料金が発生します。詳細は以下になります。
転送方向ごとの扱い
・インバウンド (→S3):インターネットから S3 への転送は無料
・アウトバウンド (S3→Internet):100 GB の無料枠以降は、東京リージョンで次の 10 TB が $0.114/GB、次 40 TB が $0.089/GB … と階層的に下がる構造
・同リージョン内:同じリージョン内の別サービス(EC2 など)やバケット間転送は無料
S3 Transfer Accelerationとマルチリージョン
S3 Transfer Acceleration やマルチリージョンアクセスポイントを使うと、別料金が発⽣します(例:$0.015/GB など)。
ここまでは料金の概要をお伝えしました。ただ、下記の公式料金を見ると分かりますが、サービスはシンプルにも関わらず料金体系は複雑なため、料金例も含めて紹介します。
料金例
静的ページをAmazon S3で公開するケースで以下の条件を例に計算してみます。(2025年6月時点の料金)
- サイト全体で1GBの容量
- 1PVあたり合計15回のリクエストが発生
- 1PVあたり合計2MBの転送量が発生
- 月30万PV
データ容量: 1GB = 0.025USD
リクエスト数: 15 x 300,000PV ÷ 1,000 x 0.0004USD = 1.800USD
データ転送量: 2MB x 300,000PV = 600GB
(600GB - 無料分100GB) * 0.114USD = 57.00USD
合計: 0.025 + 1.80 + 57.00 = 58.825USD
概算ではありますが、30万PV規模のサイトも月59USD(約8,500円)で公開できると分かりました。
料金はほとんど転送量で占めているため、PVの少ないサイトをAmazon S3でホスティングすると格安レンタルサーバーより安くなることがあります。
上記の同条件でPVだけ月1万に落ちると以下のようになります。
データ容量: 1GB = 0.025USD
リクエスト数: 15 x 10,000PV ÷ 1,000 x 0.0004USD = 0.06USD
データ転送量: 2MB x 10,000PV = 20GB
(20GB - 無料分100GB) * 0.114USD = 0.00USD
合計: 0.025 + 0.06 + 0.00 = 0.085USD
1万PV程度なら月0.08USD(約12円)になります。
今回は Amazon S3 の特徴から料金についてご紹介しました。 Amazon S3はAWSのストレージサービスとしてEC2に次いで多用されるサービスです。EC2と連携して動的なアプリケーションのファイルストレージとして使われることが多いですが、今回紹介したように静的ページだけのホスティングにも応用できます。利用の参考になれば幸いです。
監修者:クロジカサーバー管理編集部
コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティ対策を必要とするコーポレートサイトで250社以上の実績があります。当社の運用実績を踏まえたクラウドサーバー運用のノウハウをお届けします。
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