オンプレミスは時代遅れ?クラウドとの比較と適しているケースを紹介

オンプレミスは時代遅れ?クラウドとの比較とそれぞれが適しているケースを紹介

オンプレミスのシステムは、クラウドの普及に伴い時代遅れと見なされがちです。しかし、オンプレミス特有のメリットを活かして最適な運用を行う方法も多く存在します。本記事では、オンプレミスが持つ強みやクラウドとの違いについて解説し、ビジネスに最適なITインフラの選び方のヒントをお届けします。

この記事でわかること

① 現代におけるオンプレミスの立ち位置
② オンプレミスとクラウドの比較
③ オンプレミスとクラウドがそれぞれ適しているケース
④ 多様なシステム要件を満たすハイブリッドクラウドについて

オンプレミスは時代遅れなのか?

クラウド活用の流れはあるもののオンプレミスは健在

近年、DXの流れにおいて、AWSを代表とするクラウドコンピューティングの急速な普及により、オンプレミス型のシステムは時代遅れになりつつあるという声も耳にするかもしれません。

しかし、実際にはオンプレミスは依然として多くの企業にとって重要な選択肢であり、「オンプレミスかクラウドか?」という単純な二者択一の問題ではありません。当然、オンプレミスはクラウドと比較して様々なメリットがあります。どのような用途なのか、保守体制をどのように構築するのか等、ケースバイケースで判断する必要があります。

さらに、テクノロジーの進化とともに、オンプレミスとクラウドは互いに補完し合い、それぞれの長所を活かすというアプローチも求められています。本記事では、両者の特徴を解説し、皆さまが最適なITインフラを選択するための包括的な視点を提供いたします。

オンプレミスとクラウドの比較

オンプレミスとクラウドの主な違いを比較表にまとめました。

スクロールできます
比較項目オンプレミスクラウド(主にAWS)
コスト・初期投資や機器故障に伴い、大きなコストが発生
・ランニングコストはクラウドよりも抑えられるケースが多い
・初期投資が不要 ※「構築費用」はオンプレミスでも掛かるため省略
・ランニングコストは従量課金制で使用量に応じたコストが発生
セキュリティ・完全な管理下で、基本的に自社のニーズを満たした対策を実施可能
・クラウドサービス提供者の依存を避けることができる
・クラウドサービス提供者による、高度なセキュリティ対策が標準で提供される
・共有責任モデルに基づいて、セキュリティ管理をクラウドサービス提供者と分担できる
→ オンプレミスと比較して管理負荷を軽減可能
・世界中の複数のデータセンターにデータを分散することができるため、
オンプレミスと比較してクラウドが優位なケースが多い
スケーラビリティ(拡張性)・拡張のための設備調達に時間と大きなコストがかかる
・設備縮小により無駄が発生する可能性がある
・リソースの迅速なスケーリングが可能
・自動スケーリング機能により効率的なリソース管理も可能
カスタマイズ性・「セキュリティ」と同様にクラウドサービス提供者に依存せず、
自社が望むカスタマイズが可能
・クラウドサービス提供者の提供する範囲内でのカスタマイズに制約があり、
完全に自由なカスタマイズとは言い難い
オンプレミスとクラウドの簡易的な比較表

コスト面での違い

初期費用

オンプレミスは、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、ソフトウェアの購入費用、設置費用、構築費用など、初期費用が比較的高い傾向にあります。一方、クラウドは、物理的なサーバーなどのハードウェアはクラウドプロバイダーが提供します。そのため、ユーザーは設備投資にかかる初期費用はほぼゼロ円で済みます。

ランニングコスト

オンプレミスは、電気代、保守費用、人件費など、ランニングコストがかかります。追加の設備投資や人材への投資をしない限り、既に備えている機器の範囲内で運用可能なため、想定外のランニングコストの発生を回避できます。

一方、クラウドは、クラウドプロバイダーがインフラの管理や保守を行うため、メンテナンスにかかるランニングコストを抑えることができます。ただし、データ利用料に関しては、使った分に応じて料金が発生するため、利用状況によってはオンプレミスよりも高くなる可能性もあります。

【コスト面】オンプレミスとクラウドの比較

カスタマイズ性での違い

オンプレミスは、企業独自の具体的な要件に合わせた高度なカスタマイズを実現できる可能性が高いです。一方、クラウドは、提供されるサービスの範囲内で利用する必要があるため、カスタマイズの自由度は相対的に低くなります。

ただ、シェアNo.1のクラウドサーバーであるAWSのサービスは年々増加し続けており2024年12月時点では、幅広い分野(コンピューティング、ストレージ、データベースetc...)で328ものサービスが提供されています。そのためカスタマイズの自由度も広がってきております。

セキュリティ面での違い

オンプレミスは完全な自社管理のため、厳格な統制が可能です。第三者から干渉されることなく、物理的なインフラを直接管理でき、データの所在地と管理方法を完全に把握できるため、特に機密性の高いデータを扱う組織にとって魅力的な選択肢となります。

一方クラウドは、プロバイダー(「AWS」のようなサービス提供者)による継続的なセキュリティアップデートと包括的な対策が提供されますが、データの物理的な管理がクラウドプロバイダーに依存するため、個人情報などの管理の観点ではオンプレミスと比較すると懸念が依然として存在します。

▼ オンプレミスからクラウドへ移行した際の変化について解説した記事はコチラ ↓
ホームページのサーバーを、オンプレミスからクラウドへ移行すると何が変わるのか

オンプレミスが適しているケース

オンプレミスとクラウドそれぞれのメリット・デメリットから各々の特徴をご理解いただいたところで、実際の活用シーンをイメージした時にどちらが適しているかを見ていきましょう。

オンプレミスが適しているケース

【ケース1.】データセキュリティの要件が極めて厳しい

金融機関や医療機関など、機密性の高いデータを扱う企業にとって、データセキュリティは非常に重要な要素です。オンプレミスは、自社が管理するデータセンターに重要なファイルやデータを保管することができ、さらに自社が求めるセキュリティ対策(ソフトウェアの追加など)をクラウドプロバイダーなど第三者に縛られることなく行えるため、データセキュリティの要件が極めて厳しい場合に適しています。

【ケース2.】既存システムとの統合が複雑

オンプレミスは、自由度の高さゆえに既存のシステムとの連携が比較的容易です。一方、クラウドは、クラウドプロバイダーのサービス提供内で既存システムとの連携を検討する必要があるため、課題が生じる場合があります。そのため、既存システムとの統合が複雑な場合は、オンプレミスの方が適していると言えるでしょう。

【ケース3.】継続的なデータの利用量は多いがコストは抑えたい

オンプレミスは、長期的に利用する場合、クラウドよりもコスト面でメリットがある場合があります。特に、継続的にデータの利用量が多い場合や、システムの稼働時間が長い場合は、オンプレミスの方がコストを抑えられる可能性があります。

【ケース4.】インターネット接続に制約がある

インターネット接続が不安定または制限されている環境でも、オンプレミスは現実的かつ信頼性の高い選択肢として機能します。遠隔地や通信インフラが未発達な地域においては、クラウドサービスへの継続的な接続が課題となるため、オンプレミスが優位性を発揮します。

クラウドが適しているケース

クラウドが適しているケース ①

【ケース1.】ビジネスの成長や変動に柔軟な対応が必要

クラウドは、必要なサービスを必要な時に利用できるため、ビジネスの成長や変動に柔軟に対応できます。一方、オンプレミスは、システムの変更や拡張に時間がかかる場合があります。ビジネスの成長や変動に柔軟な対応が必要な場合は、クラウドの方が適しています。

【ケース2.】初期投資を最小限でスモールスタートをしたい

クラウドは、サーバーやラックといった設備投資の必要がないため、初期費用を抑えることができます。一方、オンプレミスは、サーバーやネットワーク機器などのハードウェア、ソフトウェアの購入費用、設置費用、構築費用など、大きな初期費用がかかります。そのため初期投資を抑えたい場合は、クラウドの方が適しています。

【ケース3.】グローバル展開を視野に入れている

クラウドは、世界中のデータセンターからサービスを利用できるため、グローバル展開に適しています。一方、オンプレミスは、海外にデータセンターを構築する必要があるため、グローバル展開には莫大なコストがかかります。そのため、グローバル展開を視野に入れている場合は、クラウドの方が適しています。

クラウドが適しているケース ②

【ケース4.】最新技術の活用をしたい

AI、データ活用などの最新テクノロジーを手軽に活用できることも、クラウドの大きなメリットの一つです。最新のテクノロジーをいち早く取り入れ、イノベーションを推進したい企業にとって、クラウドは最適な選択肢となります。

【ケース5.】災害対策(DR)を強化したい

クラウドプロバイダーにより、世界各地に複数のデータセンターが提供されており、ユーザーは管理画面から設定するだけで手軽にデータの保管場所を分散できるため、災害対策(DR)に優れています。一方、オンプレミスは、自社でデータセンターを分散させたりなど災害対策を検討する必要があります。

オンプレミスとクラウドの良いとこどりのハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドは、オンプレミスとパブリッククラウドを用途に応じて組み合わせた、柔軟性の高いインフラストラクチャー運用方法です。それぞれの長所を活かし、企業の多様な要件に応える包括的なソリューションとして注目を集めています。

ハイブリッドクラウド導入のメリット・デメリット

メリット

・オンプレミスのセキュリティとクラウドの柔軟性を組み合わせることができる
・既存のオンプレミスシステムをクラウドに移行する際に、段階的に移行を進めることができる
・特定のワークロードをクラウドに移行することで、コスト削減やパフォーマンス向上を実現できる

デメリット

・ハイブリッドクラウドの導入には管理の複雑さやオンプレミスの知識に加えてクラウドの技術的知識の習得が必要となる

ハイブリッドクラウドが向いているケース

ハイブリッドクラウドは、以下のようなケースに適しています。

・セキュリティ要件の高いデータと一般データが混在する場合
・オンプレミスからクラウドへの段階的移行を考えている場合
・ピーク時のみクラウドリソースを利用したい場合

▼ ハイブリッドクラウドについて詳細に解説した記事はコチラ ↓
ハイブリッドクラウドのメリット・デメリットとは?AWSでの事例までご紹介!

ハイブリッドクラウドの事例

同志社大学様の事例(AWS)

引用:同志社大学、AWS を採用して情報インフラの安定性とセキュリティを強化

同志社大学は、2022年に情報インフラを刷新し、AWSを活用したハイブリッドクラウド環境を構築しました。この取り組みにより、以下の成果を実現しました。

1. システム調達とコストの最適化
2. ダウンタイムの大幅な削減
3. 災害対策の強化
4. 柔軟なリソース管理とシステムの安定稼働

同校が運用している複数のシステムのうち、ネットワークシステムとユーザー管理システムをAWS環境に移行し、段階的にクラウド利用を拡大しています。この事例は、教育機関における大規模なクラウド導入にあたり、システムの効率化とコスト削減、そして突発的なシステム負荷に耐えうる拡張性を実現した成功例として参考になる内容となっております。
参照:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/doshisha/

改めて結論として、「オンプレミスは時代遅れ」という単純な図式ではなく、各企業の戦略的なニーズ、業界特性、技術要件に応じて最適なインフラ戦略を選択することが極めて重要となります。

弊社クロジカサーバー管理は、サーバーについてのプロフェッショナル集団です。「このケースでは、オンプレミス(レンタルサーバー、VPS、etc...)が適しており、クラウドを活用するならこのような場合がおすすめですよ。」というようにお客様のご要望に応じて最適なインフラ選択をご提示することが可能です。まずはお気軽にご相談くださいませ!

監修者:クロジカサーバー管理編集部

コーポレートサイト向けクラウドサーバーの構築・運用保守を行うサービス「クロジカサーバー管理」を提供。上場企業や大学、地方自治体など、セキュリティ対策を必要とするコーポレートサイトで250社以上の実績があります。当社の運用実績を踏まえたクラウドサーバー運用のノウハウをお届けします。

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