こんにちは。「クロジカサーバー管理」 IT/テックライターのkait78です。
皆さんはSLA(Service Level Agreement)という単語を聞いたことはあるでしょうか?SLAは商品やサービスの契約時の利用規約に記載されている場合が多くあります。実はSLAを理解することはサーバー運営において非常に重要です。今回はSLAとサーバーの関係についてご紹介します。
SLAとは
SLA(Service Level Agreement)はサービス品質保証とも呼ばれています。提供するサービスにおいて、ある一定の品質を保証するという内容です。SLAにはサービスのレベル(定義、範囲、内容、達成目標)等の項目があります。
例えば、自社でWebサイトやECサイトを運営しているとしましょう。Webサイト・ECサイトを動かしているサーバーがレンタルサーバーの場合、レンタルサーバー提供会社の都合により管理しているサーバーがダウンしてしまう場合があります。
この場合、自社側に非は全くないのですが、レンタルサーバー側の影響でWebサイト・ECサイトにアクセスできなくなってしまいます。上記のような事象は、サーバー寿命や設備構成の関係上避けることはできません。そこで、「1ヵ月間の間に〇分はサーバーが停止する可能性がある」と言ったSLAを両者で結ぶのです。
もし万が一SLAが守れなかった場合、時間によってサービス提供会社から利用料金の返金が行われます。SLAは提供会社によって項目や数値にも違いがあります。まずは項目・内容についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
稼働率
サーバー運用において、稼働率は最も重要な要因の一つです。
稼働率とは、サーバーが正常に動作し利用可能な時間の割合を示します。
例えば、99.9%の稼働率としている場合は一年間で8.76時間、1ヵ月で43.8分間はサーバーが利用できないということになります。ただし、必ず月に43分停止する訳ではありません。停止する可能性があるという認識が必要です。また、稼働率は年間平均であったり月単位、障害単位などSLAによって異なります。
システム復旧時間
サーバーがダウンした場合、システムを復旧させるまでの時間も非常に重要です。SLAでは、このシステム復旧時間も定義され、一般的に短いほど望ましいとされます。WebサイトやECサイトが長時間停止すると、その分機会損失や顧客の信頼性低下に繋がります。SLAを結ぶ際はシステム復旧時間についても確認しておきましょう。
サポート対応
サポート対応にもSLAに記載されている場合があります。
利用しているサービスにおいてエラーやシステムの使い方が分からないなどの状況になった場合、サービス提供会社に問い合わせを行います。問い合わせ受付からその内容に回答するまでの時間をSLAとして設定しています。
例えば、自社起因で起こした障害の復旧方法を提供会社に問い合わせをする際、1秒でも早い回答が必要なはずです。しかし、提供会社自身も多数のクライアント・問い合わせを受け付けているためこのようなSLAが設定されています。
サーバー環境によるSLAの違い
SLAは企業によって稼働率やシステム復旧時間などの項目・内容が異なるという事が分かりました。ここからはサーバーのSLAに着目して、サーバー環境や提供サービスによるSLAの違いについてご紹介します。
クラウド
クラウド環境ではクラウドプロバイダー及び利用するサービスごとにSLAが設定されています。例えば、AWS(Amazon Web Service)で仮想サーバーが構築可能なサービスであるEC2のSLAは99.5%となっています。ただし、AWSなどのクラウド環境は拡張性に優れており、簡単にサーバーを増強することが可能です。2つ以上のサーバーを立てて冗長構成とした場合は、料金はその分発生しますがSLA99.99%を実現できます。
さらに、オブジェクトストレージ(ファイル保管)であるS3というサービスは最高99.9999999% (イレブンナイン) を保証しています。これは1万個のデータが年に1個失う程度の可能性です。このようにクラウドでは自社サービスの停止許容範囲によって柔軟にネットワークを構築することが可能というメリットがあります。
レンタルサーバー
レンタルサーバーもクラウド環境と同様に提供事業者毎にSLAが設定されています。概ね月間のサーバー稼働率を99.99%としている事業者が多いですが、SLAを設定していない企業もあります。
レンタルサーバー会社はレンタルサーバー自体が唯一のサービスであるため、SLAの選択肢は限られてしまいます。稼働率をさらに高めたい場合や、実験環境で故障率を気にしない場合などは不便に思うかもしれませんが、逆に言うとSLA基準が明白であるというメリットもあります。
オンプレミス
オンプレミス環境にはSLAの概念はありません。自社購入のサーバーであるため、稼働率についても自社で責任を持つ必要があります。冗長構成の構築、障害発生時の交換対応の迅速化を社内で徹底することにより、品質を向上させることができます。
SLAのチェックポイント
総務省の「ICT環境構築のための調達ガイドブック」ではSLAを締結する上で留意する点について記載されています。今回はサーバー運営に関わる部分を要約してご紹介します。
サービス品質は妥当か
利用する目的に合わせてSLAを選びましょう。不必要に高いサービス品質を求めるとコストが高くなってしまいます。反対にSLA基準の低いサービスを契約してしまうと、障害発生から復旧まで時間が掛かってしまうなど、自社の信用や機会損失を招いてしまうことになります。また、自社サービスとしてもSLAをクライアントと結んでいる場合があります。サーバー運営に関するSLAと自社とクライアントのSLAを比較して、自社のSLAとして許容できる基準であるかを確認しましょう。
提供範囲
SLAの提供範囲についても確認しておきましょう。
例えば、サーバーに対するSLAを結んではいるが、ネットワーク部分に関しては対象外という場合があります。自社からサーバーに到達するまでのネットワークで回線速度の遅延があったり、ネットワーク障害でサーバーが使えなくなってもSLA対象とはなりません。ネットワーク・サーバー・ソフトウェアなどそれぞれのサービスに対する責任範囲を明確にしておくことが重要です。
安全性・信頼性
安全性・信頼も重要なポイントです。自社で安全対策基準に関する制約(プライバシーマークやISO認証取得などの規格)に対応している事業者を選定しましょう。クラウドサーバー、レンタルサーバーは共に社外の事業者サービスを利用することになります。セキュリティ対策をしっかりと施している事業者を選びましょう。
安定運用にはクラウドサービスの利用がおすすめ
サーバー運営におけるSLAの内容やチェックポイントについて紹介しました。ここまでお読みいただいた人にとって、サーバーをクラウドにするべきか、レンタルサーバーにするべきか迷っている方もいると思います。クラウドとレンタルサーバーの場合、サーバーの安定運用に関してはクラウドサービスの利用がおすすめです。
理由として下記が挙げられます。
- 冗長構成や用途による使い分けが簡単・柔軟でSLAを柔軟に設定できる
- ネットワーク回線からサーバーまで幅広いサービス提供範囲を実現できる
- セキュリティ対策が充実している
上記は他の記事でも解説しているため、気になる方はぜひご覧ください。
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本記事ではサーバー運営におけるSLAの内容や重要性について紹介しました。
クラウドサービスを利用することで稼働率やシステム復旧時間を柔軟にコントロールすることができ、自社のサービスに合ったクライアントへのサービス提供が可能となります。しかし、クラウドサービスへの移行や運用には専門的なスキルや経験が必要です。
「クロジカサーバー管理」ではクラウドの移行から運用に至るまでサーバー管理のトータルサポートサービスを提供しています。クラウド移行に関する初期費用は発生せず、月額利用料金のみでサーバー管理が可能となります。クラウドへのサーバー移行・委託管理にご興味のある方は、ぜひお気軽に「クロジカサーバー管理」までご相談ください。
ライター:kait78
元大手通信事業者のインフラエンジニア。ネットワーク・サーバー・AWS領域でIT/テック記事に特化した記事を執筆。Webサーバーにまつわる課題や悩みに対して実務経験を基にした、現場社員目線の課題解決となるアイデアを提供します。
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