「らしさ」伝える、理にかなったデザイン

「『理由があって、それをデザインに落とし込む』これが当社のミッションでありカルチャーです」

そう話すのは、株式会社LINICA(以下、LINICA) 代表取締役の江川さんです。

LINICAは「理にかなったデザイン」を得意とする東京・市ヶ谷のWeb制作会社。細やかなヒアリングとブランディング・UXデザインのノウハウを軸として、ユーザーの戦略とデザインをつなげるお手伝いをしています。

そんなLINICAの強みは「らしさ」を引き出すところ。クライアント企業への調査やヒアリングなどをしっかり行って、Webサイト制作からブランディングまでトータルで支援をしています。

今回のクロジカサーバー管理のパートナーインタビューでは、江川さんに企業のコンテンツ制作において重視していることや、会社のカルチャーについてお話を聞きました。

大学生の頃、グラフィックデザインの仕事の虜に

── はじめに、江川さんのご経歴を教えてください。

大学進学の際、武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に入学しました。当時、大学はまだコンピューターの環境があまり整っておらず、40人のクラスにMacが4台くらいしかありませんでした。

当時グラフィックデザインのアルバイトを始めたのですが、アルバイト先だとPCを1人で1台使うことができたということもあり、アルバイトの方が楽しくなってしまいまして…。そこで大学を中退し、仕事にどっぷりのめりこみました。

── もともとWebデザインを志されていたのでしょうか?

いや、当時はまだインターネットが世の中に出ていなくて、あったとしてもパソコン通信ぐらいだったんですよ。大学生の頃はタイポグラファーとか、グラフィックデザイン、広告の仕事もやりたかったんですよね。

── どのようなきっかけでLINICAを起業しようと思われたんですか?

実は、私が起業したわけではないんですよ。以前働いていた会社の先輩方が退職して新しく会社を作るとのことで、呼ばれたのがこの会社でした。なので、入社して約30年という感じですね。

入社当時はグラフィックの会社でした。社名もマックグラフィックアーツという名前だったんですよ。でも翌年ぐらいにはホームページの制作を始めたので、グラフィック専門の会社だったのは最初だけでしたね。

── 貴社の事業内容を教えていただきたいです。

事業内容としては2つの軸があります。1つはWeb制作・運用で、もう1つはブランディングです。

Webサイト制作とブランディングの側面から支援できることにはさまざまあるので、それらの観点からその周辺のこともトータルで提供しています。

例えば、ブランディングですとグラフィックももちろんやりますし、カタログやポスターの制作、VI(ビジュアル・アイデンティティ)やCI(コーポレート・アイデンティティ)、社内向けにブランドをどう伝えていくかというインナーブランディング、その映像コンテンツの企画やデザインなど、幅広く提供しています。

デザインで、クライアントの「らしさ」を引き出す

──  貴社の強みはどのような点でしょうか?

お客様にはデザインが強みとよく言っていただくので、客観的にはそうなのかなと思います。

現代のWebサイトは課題を解決することがエンドユーザーの目的になっているので、それさえできればそのサイトがどんなものであろうがエンドユーザーには関係ないんですよね。これはエンドユーザー視点では正しいのですが、クライアント側のブランディングの視点では少し不足しています。

単にエンドユーザーの目的を果たすだけでしたら、例えばWordPressの有償のテーマを買ってカスタマイズすれば、そこそこの見栄えの良いサイトを安く構築することができます。ですが、クライアントのミッションや存在価値、想いなどの「らしさ」を表現しようとすると、それだとやはり限界があるんです。


当社はそのクライアント「らしさ」というのを、調査やヒアリングなどをしっかり行った上で、優しさ・心地よさなどを加えて表現につなげていけるという強さがあるのかなと考えています。それが「デザインが強みですね」と言っていただけるところかなと思います。


Webサイトもそうですし、会社案内やパンフレットなど、こういったブランディングの部分も含めて広い範囲で支援ができるというのが当社の強みだと思っています。

── デザインに強みを持ちつつも、ブランディングやWeb制作まで一気通貫して依頼させてもらうことができるのですね。お客様はどのような方が多いのでしょうか?

広報部や経営企画部の方が多いですね。「ブランディング視点でリニューアルをしたいけど、どう進めたらいいかわからない」、「社内の急成長によりメッセージやミッションの浸透が不十分なため、Webサイトを通じて改善したい」など、さまざまなご相談をいただいています。

── 社内広報という意味でもWebサイトは有効なんですね。

社員本人は自社のサイトはあまり見ないんですよ。でも、商談などで外部の方とお会いする時って、相手の会社がどんな会社か知るためにホームページを見て、その印象を商談の時に伝えたりするじゃないですか。

そのようにお客様から「あなたの会社ってこうなんですね」と言われると、「うちの会社ってそうなんだ」となり、外部視点で内部を変えていくことができるんです。

── なるほど!外部の方の言葉をインナーブランディングに活かしていくのですね。私も広報担当として興味深いお話です。

良い仕事が生む、次の仕事

── これまでで最も印象深いプロジェクトを教えてください。

NEXCO東日本様のキッズサイトですね。もうそのサイト自体は残っていないのですが。インフラ系の内容はなかなか難しいので、ワクワクしてもらえるようにキャラクターを作ったりもしました。

規模的には普通のキッズサイト10個分ぐらいの規模でしたね。コーポレートサイトでもこんなに大規模なものは作ったことはなくて本当に印象に残っています。

── ちなみに、このプロジェクトはどのように始まったのですか?

当社は以前、キッズサイトの制作を長くやっていたんですよ。JAXA様の宇宙科学研究所や日本銀行様、ソニー生命保険様などのキッズサイトを制作しました。

それらを見たNEXCO東日本様から、「キッズサイトを作りたいがどうすればいいのかわからないので相談に乗ってほしい」というお話があり、コンペに参加をしてこのプロジェクトを行うことになりました。

── 良い作品が、次の良い作品を呼ぶという感じですね。

本当にそうなんですよ。「高速道路の全てがわかるサイトをインターネット上に作りたい」ということだったので、高速道路の全てとは一体何か?というところから始まって。歴史がわかる資料を取り寄せたりオークションで買ったりして熟読して大事なことをピックアップしました。

他にも高速道路の技術研究所に取材に行ったりもして、当時は私たちのチームが誰よりもNEXCO東日本様に詳しいのではないかと思うくらいでした(笑)。

「理にかなったデザイン」をこれからも着実・地道に

── 貴社の社名の由来である「理にかなったデザイン」という言葉に込められた想いを教えてください。

企業のコーポレートサイトを作っているので、サイトのエンドユーザー、クライアントの担当者、クライアントの決裁者といった全方位に理にかなっている状態で提案・デザインをするということが必要だという想いがあります。


デザインの中でも、最終的な表現やディテールの表現も含め、どういった理屈でその表現がされているのかというのは、お客様をしっかりと理解した上で、数字の部分などさまざまな裏付けに基づいてなければいけないと考えています。

── 貴社のカルチャーをお伺いしたいです。

「理由があって、それをデザインに落とし込む」ということをするのが当社のミッションでありカルチャーです。ですので、それが理由で入社してくれる社員も多いですね。

ディレクターに関しては、今まで決まった仕事ばかりしてたので提案からやってみたいという人が多く、デザイナーについては、今まではバナー制作やWordPressのテーマを使ったサイトなどテンプレートベースのサイトばかり作っていたので、イチから作りこむということをやりたいという人も多いです。

── 最後に、貴社の今後の展望を教えてください。

あまり「こんな風にしたい!」という展望はなくて、結構地道な感じなんですよ。求められていて、必要だと思っていることを着実にやっていきます。

なので、もちろんツールとしては使うと思いますが、「これからはAIで~」「VRが~」のように単に話題性のあるものに飛びつくことはせず、今後も着実に地道にやっていければと思っています。


── 事業方針のこだわりや、誰よりもクライアント企業に詳しくなるくらい調査をしていたお話しなどをお聞きして、私も広報担当者として「そこまでしてくれるんだ!」と感動しました。本日はありがとうございました。