モーション技術でキャラに躍動感を

近年のゲームは、3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)でゲーム内のキャラクターがつくられることがほとんど。彼らは3Dモデラーや3DCGアニメーターといったクリエイターたちが一人ずつ手作業で制作しています。

株式会社モックス(以下、モックス)は、このような3DCG制作工程のうち、キャラクターアニメーションとモーションキャプチャー編集(動きをつける編集)を専門で行う3Dアニメーション制作会社です。

モックスの強みは、得意分野のみに技術や人材を集中させ、スタッフの技能を専門的に磨いて特化しているところ。このような業態をとっている背景には、代表取締役社長を務める住岡さんの「日本の3DCGアニメーターの地位を海外レベルにしたい」という考えがありました。

今回はクロジカスケジュール管理のカスタマーインタビューです。住岡さんに、モックスの事業内容や3Dアニメーションの制作の内容、人材の育て方についてお話を聞きました。

目指したのは、ディズニーに負けない3DCGの人材育成

── はじめに、これまでの住岡さんの経歴を教えてください。

北海道の専門学校を卒業して上京したあと、3社のゲーム会社にそれぞれ3年ほど在籍していました。そこで主に格闘ゲームのキャラクターモーションを制作していました。

モーションデザイナーを志したのは、僕が高校生の頃にアニメーション映画やゲームで3DCGが出始めたのがきっかけです。「これは面白そうだな」と思いました。

── モックスを起業しようと思ったきっかけは何ですか?

ピクサーやディズニーのように、海外では3DCGアニメーターは花形の職業なんですよ。でも日本ではアニメーターの職業としての認知は低く、生活が厳しいイメージを持つ方も多いと思います。まずそれを変えたいと思ったのがきっかけですね。

また、日本のゲーム業界だとキャラクターの造形を行うモデラーの方が人気なんです。なのでモーションデザイナーは常に人材不足でしたし、この状況がゲーム業界において足を引っ張ってしまっているのではないか、と感じていました。

上京して働き出してから徐々に「自分が人材を育てる立場にならなくては」という考えを抱くようになりました。そして、実務を通してモーションデザイナーを育て、モーションデザイナーという職業の地位を海外レベルまで高めたいと思い、起業に至りました。

── 業界全体のことを考えたうえで起業されたんですね。住岡さんは自身でモデリングをしようとは考えなかったのですか?

そうですね、専門学校に入ったときからキャラクターを動かしたいという思いが強かったです。ピクサーやディズニーが評価されている理由でもある生き生きとした動きに惹かれて、3Dをやるなら一番面白そうなモーションで活躍したいなと。

でもフタを開けてみたら、日本ではモデリングの方が人気だったという感じです(笑)。

モーションのスペシャリストが揃った会社

── 貴社の事業内容を教えてください。

弊社は、ゲーム制作会社からモーション制作の依頼を受けています。他社だとモデリングや背景、エフェクトなども請け負っていたりするんですが、弊社はモーション専門として事業をしています。

── モーション制作に特化しているんですね。動きひとつを作るのにも多くの知識が必要なんだろうなと思います。

そうですね、人間であれば筋肉の動き方の知識は大切だと思います。あとは格闘技やアクション映画を観ることや、カンフーやキックボクシングなどの動きの研究が好きな人には向いている職業ですね。

そのほか敵のモンスターや動物のモーションも作るので、「こういうふうに動くだろう」という想像力も必要です。イベントシーンのキャラクターの表情やカメラワークなど、バリエーションは案外豊富なんですよ。

── 受注や制作はどのような流れで行われるんですか?

受注に関しては、大手のゲーム会社などの一次請けが多いですね。うちはアクションが得意な会社なので、格闘ゲームが多いです。

制作までのやり取りは会社によってさまざまで、細かいところまで指定してもらうこともあれば、丸ごと任せてもらうこともあります。僕自身としては弊社から提案した方が最終的にいいものができると思っているので、全部任せてもらいたいと思っています。

制作期間はプロジェクトによりますが、短いもので3カ月程度、長いものだと2年ほどかかりますね。

── そんなにかかるんですね。ちなみに、ひとつの動きを作るのにはどのくらいの時間がかかりますか?

これもピンキリなんですが、早い人だと1日1モーションくらいですかね。クオリティの高いものを作ろうとすると1週間くらいかかってしまいます。

僕が昔働いていた会社では、なかなかチェックが通らなくて1カ月か2カ月くらい同じモーションを作り続けたことがありました。なかには半年もの間制作している人もいましたね(笑)。

── それは大変ですね…。続いて、貴社の強みや魅力を聞かせて下さい。

やはりモーション特化というところですね。他社ではモデリングやプログラムといった包括的でジェネラルなスキルを求められることが多いのですが、うちはスペシャリストしかいません。

常にモーションの仕事をしているわけなので、スタッフの経験値は他社に比べ相当高まっていると思います。観察力が高く、それこそ半年間同じモーションを作り続けても飽きないくらい仕事が好き、というスタッフがそろっています。

自分の仕事がゲームの面白さに繋がる

── 会社のカルチャーを教えてください。オフィスに入った時には自由というか、楽しそうな雰囲気を感じました。

ゲーム会社は大体そんな感じなんですけど、自由な雰囲気はありますね。他の会社との大きな違いとして、無理な仕事やイヤな仕事はできるだけ受注しないようにしている点が挙げられます。

少し無理をしてでも利益優先で仕事を引き受ける会社もあるかと思いますが、弊社ではどこかしら余裕や遊びの部分を設けることで、それをプロダクトのチカラにしています。

おかげでスタッフものびのびと育ってくれていて、こちらから指示を出すことなく、各自が自立してクライアントの仕事を請けてくれているため、とても助かっています。

現在は完全に在宅業務になっているので、さまざまなコミュニケーションツールを駆使して運営しています。なかでもクロジカはスケジュール管理が簡単にできるため、重宝しています。また、残業も1日2時間程度までと決めています。

── ゲーム会社は徹夜で作業しているようなイメージでしたが、いまは違うのですね。続いて、住岡様にとっての「良いモーション」とは何ですか?

ゲームのモーションって、映像のアニメーションとは求められるものが違うんですよね。ただリアルなだけじゃダメで、ボタンを押したときのキャラクターの反応速度や気持ちよさが操作性としてゲームの面白さに直結します。

かといって、雑にデフォルメしてもアニメーターの血が許さないので、リアルなデフォルメで気持ちよく、ゲームを面白くさせるモーションというのが最高だと思います。「自分の仕事がゲームの面白さに結びついているんだぞ!」という気持ちを忘れずにやっていきたいですね。

── 確かに、動きにメリハリがあると操作する気持ちよさも増しそうですね。最後に、今後会社をどのようにしていきたいですか?

在宅勤務を解除する会社が多くなってきましたが、弊社はまだまだ在宅勤務の可能性に期待していて、今後も続けていこうと思っています。

人数を増やしていきたいというのもありますが、まずは自分たちの背丈にあった仕事を受けて、さまざまなゲーム会社の信頼を得ていきたいと思っています。

オフィスのある拠点に限らず、全国の優秀な人材を積極的に採用し、これからもモーションデザイナーを育てていきたいです。

── 住岡さんのモーション業界にかける熱い想いをたくさんお聞かせいただきました。本日はありがとうございました。