「訪問看護」の選択肢をもっと気軽に

「人生の主役はそれぞれ自分自身。『どう生きていくか、どう楽しく人生を過ごすか』を選択していくということが大事」

そう語るのは、訪問看護ステーション事業を手掛けるライフ・ケア・コンシェルジュ株式会社(以下、LCC)で代表取締役を務める水田さん。クロジカスケジュール管理のカスタマー様です。

少子高齢化が社会問題化し、医療の形も急速に変わりつつある昨今、LCCは「『生きる』を楽しむ」を理念に訪問看護を広める事業を続けています。

今回は水田さんと、事業本部長を務める三枝さんに、事業を通して目指す未来についてインタビューを行いました。

病院看護師と訪問看護師の違いは、「待つ」か「行く」か

── まずは、貴社の事業内容について教えてください。

水田さん(以下、敬称略):訪問看護ステーションを運営しており、自宅で在宅療養されている方々に看護やリハビリテーションのサービスを提供しています。利用者様は港区と渋谷区を中心に大体200名超ぐらいです。

具体的には看護師がご自宅に訪問して、健康観察や医療処置、薬の管理、医療機器の管理のほか、支援者とご家族の方々からの相談対応、医療機関と連携した緊急対応を行っています。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ専門職によるリハビリサービスも提供しています。

── 何歳くらいの方が利用されているのでしょうか?

水田:高齢の方が多いですが、在宅で支援を必要とする小児の利用者様もいますし、難病で苦しんでいらっしゃる30代や40代の方もいますね。下は3歳や5歳から上は100歳を超える幅広い方にご利用いただいております。

── 働く側から見て、病院内での看護師さんと訪問看護の看護師さんにはどのような違いがありますか?

三枝さん(以下、敬称略):「待つ」と「行く」の違いがあります。病院は受診しに来る患者さんに対して看護師がケアをおこないます。逆に我々は利用者様に訪問看護師として迎え入れてもらうという状況が整ってから、初めてサービスを提供することができます。

あと違うのは関わる期間ですね。病院ですと次に出勤したときはもう退院していることがざらですが、当社ですと長い方は「4年間ご自宅に行っています」というケースもあります。

ずっと同じ利用者様に関わり、生活や日常に入っていくところが訪問看護の仕事の魅力です。

──また、貴社ならではの魅力はどのようなところでしょうか?

三枝:多様なスタッフがいるところですね。スタッフは30名ぐらいですが、いろんなキャリアを経験してきた人もいますし、当社のほかに仕事を持っているスタッフもいます。本当にさまざまな働き方や経歴を持ったスタッフがいるのが当社の大きな魅力で、その多様な部分が自分たちの色を出し、提供するサービスの対応内容に魅力としてすごく表れています。


また、私はマネジメント業務を担当しています。1対1で直接ケアをするのではなくスタッフ全体に応対することによって、その先にいる利用者様全体に作用ができ、よりさまざまなものを届けられるため、すごくやりがいを感じています。

入社のきっかけは「人手不足に一石を投じたかった」

──お2人のご経歴と、貴社に入社することとなったきっかけについて教えてください。

水田:新卒で就職後、すぐに人材系のベンチャー企業に転職しました。そこで20年ほど勤め、採用や営業、バックオフィスまで経験し、会社の成長に伴い様々な事業課題や組織課題に取り組む機会を得ました。LCCに入社したのは、4年ほど前に前職からお世話になっていた今の会長である創業者に声をかけてもらったのがきっかけです。

正直、医療のバックグラウンドがなかったので迷いました。しかし、業界の課題である看護師の人手不足の中で、前職の経験を活かし医療従事者のキャリアや働き方についての新しい提案ができるのではと感じて入社を決め、今日に至ります。

三枝:僕は中学卒業後から友人の父親が経営している造園業の会社で働かせてもらっていたあと、鉄筋工、基礎工事、防水屋、飲食業などさまざまな職につきながらぷらぷらしていました(笑)。

そこから長く働くことができる職に就きたいと考え、大学入学資格検定を取得して看護大学に入学しました。卒業後はそのまま大学病院で看護師として十数年働いていましたが、その間休職して大学院でマネジメントを学んだり、看護師長の職につきました。

ですが今後のキャリアをうまく見出せなかったこともあり、一度現場から離れてみようと考え、看護師の職能団体に入って労働政策に3年ほど携わりました。

コロナ禍の時期には、仙台市に出向してホテル療養所の立ち上げに責任者として携わりまして、やはりもう一度現場から、今度はマネジメントを通して利用者の方たちやスタッフに何かできることがあるのではないかと思いました。そのような頃に、ちょうどこの会社に出会ったのが入社のきっかけです。

強みは、前職の経験を生かした事業運営

── これまでのご経験は、現在どのように活かされていると思いますか?

水田:中小企業の経営は本当に大変です。財務面以外にも、規模がまだ小さく1人のスタッフが辞めただけでも大変になるので、状況に応じて自分の役割や対応方法を柔軟に変え、しかも走りながらこなしていくことが重要です。

前職を20年やってきて、会社のステージが変わっていくなかでさまざまな役割をやらせてもらった経験は柔軟性や臨機応変さとして活きているかもしれないですね。

三枝:大きく2つあって、1つ目は医療と全く関係ない仕事をしてから看護師になったので、少し引いた視点でものを見られるところです。

2つ目は国の政策に関わってきたところです。訪問看護の診療報酬は国の制度である程度定められているのですが、医療は2年、介護保険は3年というスパンで変わっていきます。

経営やお金に関することが政策的に誘導される場面が多いので、少し先を読んで乗り遅れないように常にアップデートしていかないといけません。その点で前職の仕事がすごく今に活きていますし、今後も会社に貢献できるようにしていきたいです。

── また、お2人はスタッフの方にどういう働き方をしてほしいと思われていますか?

水田:会社の中で成果を出すことも大事ですが、「どうしたらハッピーに生きていけるか、仕事ができるか」という観点でその人のやりたいことや置かれている状況、環境にフォーカスしながら対話をすることが多いです。自分の人生を楽しくすることが長く勤めてもらえることにもつながると思っています。

三枝:得意とする領域や経験もさまざまですし、きちんと掘り下げて聞いてみると、スタッフは今後やりたい領域とか周りが思ってもみなかったものをいっぱい持っています。

マネージャーとしてスタッフの強みやどういう指向性があるのかを掘り下げて表に出しながら、その人にとって仕事を楽しんだり強みややりがいが生かせるような場所を訪問先にできるようにすることを現場の管理者とともに大切にしています。

「生きる」を楽しむ、をとことん追求

── 貴社の理念である「『生きる』を楽しむ」に込められた想いを教えてください。

水田:1つは、訪問看護は病院でのケアではなく利用者様の暮らしの中でケアを提供していくことになるので、我々のサービスやスタッフの存在そのものが利用者様の「『生きる』ことを楽しむ支え」でありたいという思いです。

もう1つは楽しむという言葉の「能動性」です。楽しみは誰かから一方的に与えられるものではないと思いますので、人生の主役はそれぞれ自分自身で「どう生きていくか、どう楽しく人生を過ごすか」を選択していくということです。これは利用者様もそうですが、私たち一人ひとりも同じです。

当社に新しく入ってくるスタッフには、その2つの思いを込めて「生きるを楽しむ」という言葉を説明しています。専門職ですのでプロフェッショナルとしてサービスを提供しながらですが、仕事を楽しんで、自分たちの生活や人生も楽しむことを一緒にできると嬉しいですね。

── ご利用者様、またはスタッフの方に言われて嬉しかった言葉はありますか?

三枝:本社経由で利用者様たちから「スタッフの○○さんに本当によくしてもらっています」と言われるのがすごく嬉しいです。

やはり自分が支援しているその先でスタッフが届けているケア、さらにその先にいるご家族や利用者様本人からそういう言葉がこちらまで返ってくる瞬間はすごく嬉しいなと思っています。

水田:お亡くなりになる方のお看取りの対応をさせていただくこともありますが、亡くなった後にご家族から「最後にLCCさんに関わっていただいて、本当によかった」とお電話をいただけるのは嬉しいですね。

三枝:スタッフからは、楽しそうに仕事してたりケアの場面や利用者様との関係について楽しそうに話してくれてたりする瞬間はすごく嬉しいです。

「訪問看護」という選択肢をもっと広めたい

── 貴社の事業を通して、どのような社会を実現していきたいですか?

水田:今の日本の大きな課題はやはり高齢化、介護の問題です。地域や家庭の中で高齢者の方をどう連携して支えていくかということが極めて重要で、連携があってこそ安心でかつ楽しく暮らしていけると思っています。

その地域の連携の中で、我々のような訪問看護事業者が担う役割は決して小さくありません。今後業界の規模が大きくなる中でしっかり存在感を出しながら、連携の中心で貢献できたらいいなと考えております。

三枝:家で暮らすこと、病院で暮らすこと、施設で暮らすこと、どの選択肢でもいいですが「家で過ごしたい」といったときにそれを諦めることがないように、身近に訪問看護っていう選択肢を皆さんが持てる社会になってほしいなと思っています。

高齢者だけではなく、子供やさまざまな世代の方たちにも訪問看護のサービスを届けられる社会になってほしいと思います。

── そのためには、今後どのような会社にしていきたいですか?

水田:まだまだサービスの質も上げていかないといけないと思っていますし、もっともっとたくさんの利用者の方に使っていただきたい、もっと規模を大きくしていきたいと考えています。

そのためにも当社のスタッフに対して柔軟に働きやすい環境を整えながら、同時に働きがいを提供できるような組織でありたいです。私自身は現場に行って利用者様に直接サービスは提供できませんが、当社で働いてくれる人たちがやりがいを感じてくれる事が嬉しいですし、そのためにも働く環境をもっと多様化していかないといけないと思います。

集まった多様な人たちがお互いに成長、刺激し合うようなチームを作っていきたいとすごく思っています。

── 最後に、お2人の今後の展望をお聞かせください。

三枝:今年の3月に、北里研究所病院という病院の中に当社の支店がオープンしました。病院の敷地内に誘致を受けて訪問看護ステーションが入るというこれまでにない取り組みもしています。

水田:地域の医療連携の成果というにはまだまだかもしれませんが、「連携して新しい価値を作り出す」という当社としてのとっかかりというか、一つのきっかけにしたいと考えています。

これ以外にもさまざまなコラボレーションが今後もできればいいなと思っておりますので、「面白そうな会社だからコラボしましょう」とぜひお声がけいただければと思います。

── LCC様のスタッフの皆様が生き生きと楽しみながら働いているエネルギーが、訪問看護で家庭や人生に入り込む中で利用者様にも伝わるのではないかと思います。

「働き方の多様性」と「どういった形でケアを受けるかという多様性」の2つが叶う経営方針を今後も応援しております