あなたの会社の「真似されると困る技術」はしっかり守れていますか?
知的財産を守ることは企業の競争力を高めるために重要です。しかし中小企業の場合、知財部のないことも多く、どこから始めていいかわからないかたも少なくないと思います。
今回インタビューをしたのは、弁理士法人 きさ特許商標事務所様。クロジカ スケジュール管理のカスタマー様です。代表パートナーの横井様に弁理士の仕事内容や、特許取得の進め方についてお伺いしました。
目次
弁理士は「知的財産に関する専門家」
── 弁理士の仕事内容について教えてください。
弁理士は知的財産を活用して、特許・意匠・商標に関する手続きを代理する国家資格です。
特許権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい方のために、「知的財産に関する専門家」として特許庁への手続きを代理でおこなうのが弁理士の主な仕事です。
── 特許権・意匠権・商標権のそれぞれについて簡単に教えていただきたいです。
特許権は発明を保護し、技術を守るための権利です。
意匠権では物や画像全体のデザインのほか、部分的に特徴のあるデザインなどが保護されます。
商標権とは、使用する商品またはサービス名やマーク、ロゴなどに対して与えられる権利です。
当社で依頼される案件は特許が一番多いのですが、特許は手続きも取得も大変です。
── 特許や意匠権を取らなかった場合、どういったことが起こりますか?
真似されても、それを止める手段がないですね。
特許権を取得すると特許発明の実施を独占でき、第三者が無断で実施したら排除できます。
また、意匠権の効力は登録された意匠と同一のものだけでなく類似の範囲まで及びますので、第三者によるデザインの模倣品や類似品の販売を排除できます。
── なるほど。企業の競争力を高めるために、自社の技術やデザインを他社が真似できないようにするのはとても大事ですね。
特許取得までの流れ
── 特許を取るとき、承認されるまでにどのような流れを経るのですか?
まず相談や打ち合わせをして、こういった内容で特許を取りたいというのを弁理士が聞きます。それをもとに、弁理士が特許庁に提出する出願の書類を作成し、出願手続きをおこないます。外国出願であれば、外国の代理人との連携もおこないます。
その後に特許庁の審査があり、審査官が特許を許可するかどうかを審査します。しかしほぼ9割方の出願が拒否され、特許が認められないという通知が来ます。
── 認められないことがあるんですね!どういう理由で認められないと言われるのですか?
大抵1回目の審査では認められないことの方が多いです。「似たような技術がすでにあり、あまり違わないので特許に値しない」というのが主な理由です。
その場合は、「いやいや、この製品はこういうすごいところもあり、このような理由で特許になります」という反論をしたり書類の内容を少し補正したりして、もう一度審査をしてもらいます。再審査の結果で認められれば、特許が取得できます。
── 特許を取るためには本当にやり取りが大変で弁理士さんがいないと無理ですね‥!
ちなみにご相談してから実際に特許を取得するまでの期間は大体どのくらいですか?
依頼を受けてから1ヶ月ぐらいで弁理士が書類を作成して申請をしますが、審査待ちの期間がとても長くて、1年ぐらいかかります。
その後拒否の場合は審査官とのやり取りをして、また数ヶ月かかるので早くても1年から1年半くらいですね。
きさ特許商標事務所について
── きさ特許商標事務所様について教えてください。
当事務所は特許、意匠、商標の国内と外国での権利化のお手伝いをしています。権利化の手続きだけでなく、最初の打ち合わせのときに、特許なのか、デザイン(意匠)で取った方がいいのか、商標なのかといったところの違いについてもアドバイスしています。
── どのような業種のクライアントが多いのですか?
当事務所のクライアント企業は、年間に何百件も出願がある大手の電機メーカーが多いです。大体この分野の製品だったらうちにといった形で新製品で特許を取りたいときに依頼が来るので、特許を取得するための出願書類の作成をおこなっています。
── 事務所によってカラーや強みが違うとお聞きしましたが、きさ特許商標事務所様の強みはどんなところでしょうか。
外国出願が多いところです。過去10年間で約4,000件国際特許出願の実績があります。
国内と外国で特許の取り方は基本的には同じですが、国ごとの制度の違いを把握した手続きが必要です。また、外国の場合は外国の弁理士に手続きを依頼するので、その仲介もおこないます。出願に際して世界30ヵ国以上の国や地域とやり取りをしてきた経験から外国の法制度の知識があり、外国の特許事務所とも連携をしているため、我々は円滑な手続きが可能です。
技術者の苦労を「特許」によって守りたい
── プロフィールを拝見しましたが、横井様はもともと技術者として働かれていたそうですね。JAXAにお勤めになっていたとか。
はい。JAXAの協力会社からの出向という形でJAXAに勤務しました。JAXAでは、筑波の管理部門で情報セキュリティ関係の内部的な強化や、種子島宇宙センターでH2Aロケットの整備作業と管制室での発射管制業務をおこなっておりました。
その後特許事務所に転職しまして、弁理士になろうと働きながら勉強して資格を取り2010年に弁理士になりました。
── どうして弁理士になろうと思われたのですか?
技術者出身ということもあり、弁理士は技術者の苦労や努力を「特許」という強力な権利に換えるサポートができる、やりがいのある仕事だなと思ったからです。
弁理士の能力次第というか、書類の書き方で特許が取れるか、また取れても有効な範囲が変わってくるので、そこは弁理士の腕の見せ所です。自分の仕事の成果でお客様に喜んでもらえるため、とてもやりがいがある仕事です。
── なるほど。本当に重要なお仕事ですね。
それと弁理士という仕事に「今までにない新しい技術に関われる」という面白さも感じます。
もともと宇宙に惹かれてJAXAを目指したのも、未知のことを発見できるからです。学生時代はツーリングが趣味で全国を一人旅していたのですが、ツーリングに惹かれたのも新しい場所を知ることができるからでした。
そう考えると「新しいことを知ることができる」ということに自分は惹かれるのかもしれません。
弁理士として意識していること
── 弁理士としてどのようなことを意識して働かれていますか?
丁寧で誠実な対応を心がけています。
現在のクライアントは大企業が多いので知的財産部というのが大体あり、そこで知財管理を担当している方とやり取りをしています。
また、打ち合わせで特許を申請する技術内容を説明してもらう際に、実際の開発者の方が参加されます。特許のことをよく知らない技術者の方もいらっしゃるので、そういった方にも専門用語をかみ砕いてわかりやすく説明するようにしています。
単に権利を得るだけでなく、取得した権利をどのように活用するのかをヒアリングしてお客様の目的や事業内容に応じた権利の取得を意識しています。
最も印象深かったこと
── 今までで最も印象深い案件について教えていただきたいです。
お客様と特許取得の喜びを共有できたことです。
出願した特許の審査中に、他社が同じ技術を実施していることがわかりました。お客様としては、どうしても特許を取得して優位に立ちたかったのですが、特許庁の審査で、すでに類似する技術があるということで特許が認められませんでした。
そこで審査官の判断を不服として上級審である審判で争うことになりました。こういうところを主張しようとか、過去の裁判例なども調べてこういう論理展開にしたらどうかとか、特許が認められるための主張をお客様と一緒に議論した上で反論しました。
最終的には特許が認められ、お客様にとても喜んでいただけて、私もすごく苦労した甲斐があったなと、とても印象深かったですね。
──その技術が特許を取れるか取れないかでお客様の利益が大きく変わってくるので、本当に重要なお仕事ですね。
中小企業の「社外知財部」に
── 今後会社をどのようにしていきたいですか?
現在は権利化の手続きをおこなっていますが、それだけではなくて、今後はクライアント企業の知財活動の全体的なサポートをおこなっていきたいと思っています。
特に、中小企業の場合は、知財部がなかったり、あったとしても知財部員が少なくマンパワーが足りなかったりといった場合が多いです。そのため当事務所を「社外知財部」という形で使っていただけたらいいなと思っています。
── クロジカのユーザーには中小企業のかた、製造業のかたも多くいらっしゃるので、ぜひお勧めしたいと思いました。ちなみにご依頼する場合の料金は大体どのくらいですか?
料金は、出願書類の作成で大体40万円くらいで、審査後に特許庁とやり取りをする場合には追加で15万円から20万円くらいかかります。
── 製品の技術は会社の利益を大きく左右する命でもあるので、それを守れると考えると意外と安いですね!
真似されると困る技術は、弁理士に相談
── 最後に、横井様が何か伝えたいことはありますか?
そうですね、当事務所では2回目以降は1時間あたりいくらという形で料金が発生しますが、初回相談は無料ですので、気軽に相談してもらいたいです。
例えば、特許の依頼の前、新製品とか新サービスの企画段階から知財的な観点でアドバイスさせていただくなど、社内に知財専門家のマンパワーが足りていない企業に寄り添ったサポートをしたいと思っています。
真似されたら困るような技術は、ぜひ弁理士に相談して欲しいと思います。
── 弊社もソフトウェア開発をおこなっているため、知財保護も重要性を感じました。それに以前の取材をした製造業のカスタマー様で「今までは受託された製品を作ってきたが、企業の競争力を高めるため自社で製品を作り始めた」という方がいらっしゃいました。そういう方たちこそ権利を守って欲しいと思います。ありがとうございました。