「共感」が生み出す、Web制作の成功

「自社のことを深く理解した人に、サイトを制作してほしい」

Web制作を任されたとき、こう思う担当者は多いはず。

今回インタビューしたのはデザイン・システム・戦略設計など、Web制作をトータルで提供しているオフィスアンツ様。クロジカサーバー管理のパートナー様です。

「クライアントへの共感」を大切にしている代表の加藤様に、Web制作についての想いをお伺いしました。

20代半ばで独立。黎明期のWeb業界へ。

── 現在、加藤様はどのようなお仕事をされていますか?

企業様を中心とした、ホームページの企画制作とWebシステムの構築です。オフィスアンツとして立ち上げ、2000年くらいから23年間ほど行っています。

── これまでの経歴を教えてください。

広島の大学を卒業後すぐ、東京にある外壁タイルメーカーに広告担当として就職しました。20代半ばに独立して、現在に至ります。

独立当時の2000年代はまだテレビがマスメディアとして強い時代でしたが、Webにテレビ広告以外の新しい息吹のようなものを感じられました。当時は「Web業界」という業界がないような状態だったので、商売になるかどうかあやふやでしたが、ゆくゆくは色々な技術がすぐ革新していくだろうという思いがありました。

「いいデザイン」とは、Webサイトの目的を達成すること

──どうしてオフィスアンツ様を立ち上げようと思いましたか?Webディレクターをするようになったきっかけも知りたいです。

私は大学生のとき、雑誌社のアルバイトで記事広告などを作っていました。使っていたPhotoshopやIllustratorもかなり古いバージョンのときでしたが、自分が作ったものが印刷物になるというのは当時はすごく感動して、面白かったですね。

その頃から「どうやったらカッコいいホームページになるだろう」とデザインにも興味を持ち、話題になるようなカッコいいWebサイトを作りたいという動機からオフィスアンツを立ち上げました。

しかし独立当初は尖った自分の主張の方が強くて、クライアントのことを考えられていなかったと今では反省しています。クライアントとの打ち合わせを重ねるにつれ、クライアントがサイトに求める目的が達成されないと「いいデザイン」とは言えないことに気が付きました。

「いいデザイン」とはつまり「Webサイトの目的を達成すること」であり、そのためには強み、弱み、競合、経営目標といったクライアントのことを知るのが重要であると考え、Webディレクションに携わるようになりました。

オフィスアンツの3つの強み

── 貴社の強みは何だと思いますか?

まずはインターネット黎明期からWEB制作を行っている経験値からのアドバイスができる点です。

もう一つは、システム開発を自ら行っているため、単なるWebの作り込みだけではなく打ち合わせ上で付けられる機能や予算感も話せる点です。私は自分で開発もするので、打ち合わせでも「ここはシステム会社さんを呼ばないと」ということがなく即対応できるのが強みです。

最後が「提案の質」です。訴求ポイントを研ぎ澄ましていくことをすごく意識しています。
クライアントのお客さま、例えば化粧品会社だったら「化粧品を使うユーザー視点に立って」といっても、ホームページのデザインの細かい部分ではそこまで考えきれていない場合もあったりします。
「ユーザーの視点に立つ」というのが、当社にご依頼いただいた際の強みかなと思っております。

── 加藤様は設計もされているため、ヒアリングをしながら何が必要なのか、何ができるのかなどが全部分かるので、その場で相手に合わせたご提案ができるのは確かに大きな強みですね。最初からサイトを作られていたのですか?

最初はWebデザインをやろうと思っていたのですが、クライアントからショッピングサイトを作りたいというご要望があったので、作れるように勉強し始めました。クライアントに必要なものを揃えていったら自然とそうなった形です。

クライアントとエンドユーザーの視点

── Webディレクションをする時、どのようなことを意識していますか?こだわりを教えてください。

まずは「クライアントの視点に立つこと」です。クライアントがどのような状況でホームページを依頼しているかが分からないと、的外れの提案を出してしまいます。

もう一つはそのクライアントのお客様、つまり作ったサイトを利用する「エンドユーザーがどういう感覚、感情を持つのかという視点を持つこと」です。その2つの視点はすごく大事にしています。

口で言うのは簡単ですがこの視点を持つのはサイトの売上に直結するにもかかわらず本当に難しく、その視点に立ったつもりで立てていないという場合が多いです。

── その視点を持つために心がけていることはありますか?

エンドユーザーの視点に立つために、普段自分がWebで何か買い物や発注をする際に、購入の前段階から「どういう気持ちになるんだろう」というのを見るように心がけています。

意外と購入するときの感情や思っていることを、後から思い出すのは難しいです。そのため、なるべく何かを頼もうと思ったときにやった行為をできるだけ早い段階で振り返り「気持ちメモ」を取るようにしています。

── 確かにそうですね。例えばお腹が空いている状態でスーパーに行くときと、お腹が空いていない状態で行くときとでは、店内の見え方が全然違いますもんね。

その通りです。「どんな手順でサイトに辿り着いたのか」「どんな文言が決め手で問い合わせたのか」「どんなコピー、デザインを怪しまずに受け入れられたか」といったメモは、別ジャンルのサイトであってもサイトを設計するときにものすごく役立っています。

デザイン変更だけで、40万PV増加も

── これまでで最も印象深い仕事を教えてください。

ニュースサイトのデザインをリニューアルしたところ、70万PVぐらいだったところが110万PVになりました。

少し長すぎるかなと思ったのですが、7ヶ月間くらいクライアントとヒアリングを重ねて丁寧に提案でき、クライアントと両輪でおこなったことが成果につながったと思います。

── 40万PVプラスってかなり多いですね!流入経路も設計されたのですか?

流入経路は同じで、サイトに来た人がさらにサイトに入り込むようなデザインへ変更しただけです。大体のメディアでは1ページ見てすぐ直帰してしまうパターンがほとんどですが、直帰させないように工夫して、一回来たユーザーを離脱させずに回遊させるようなデザインです。

例えば読み終わりに次の記事を読ませるようにするような設計などですね。

── WebサイトのデザインだけでそれだけPV数が変わるというのは、本当にすごいです・・・!

大切なのは、クライアントとの「共感」

── 加藤様にとって「いい仕事」とはどのような仕事ですか?

クライアントと「共感」することです。

実は、過去に失敗談がありまして…。

あるクライアントに、「社内調査でニーズを把握しましょう」と持ち掛けた結果、社内の軋轢を懸念され失注してしまった経験があります。ヒアリングで理解できたと思っても、担当者や各ステークホルダーの方々の本音にまで気付けていないことがあると再認識させられ、よい教訓になりました。

まずはクライアントへの共感が必要で、共感があった上で、自身のノウハウや経験が発揮されるものだと思います。勝手に自分よがりで進めても何もよい結果は得られないという点に気をつけるようにしています。

── クライアントへ共感するために、気をつけていることはありますか?

できるだけクライアントの本音を掴むように心がけています。

初めて仕事を依頼したいというときに、ずけずけと本音を言わないじゃないですか(笑)。なかなか本音は聞けないですが、まずそこを掴まないと仕事でうまくいかないと思っています。

本音を聞けない時もありますし、聞けなくてもスムーズにいく時ももちろんあります。でもやはり本音を聞けて、できないこととできそうなことの見極めがついた方が方向性がパッと決まるので、提案も刺さりやすいです。

そのクライアントにとっての参謀というか、クライアントを納得させられるようなアドバイスをして、納得した上で次のステップに進むというのが「いい仕事」だと思っています。

一緒に課題を見つけて、解決していきたい

── 加藤さまが今まででクライアントから言われて嬉しかった言葉はありますか?

ホームページについて打ち合わせしながら、「自社の方針をこういう風にしていけばよい」「こういう課題があって、こういうことを煮詰めていかなければいけない」ということが分かったと言われると、「やっててよかったな」と思います。

ただ何か物を作るというだけではなくて、クライアントの課題も一緒に見つけながらやっていって、僕が課題と思っていることがクライアントと通じ合えたなと分かったときが嬉しい瞬間ですね。

クライアントから仕事を受けて作業をやるというよりも、クライアントの中に入り込んで担当者気分にならないと、なかなかこの仕事はできないかなという感じがします。

── これからどのようなことをしていきたいですか?

規模の大小を問わず、たくさんのクライアントと関わりたいです。

そのクライアントに新たな視点というか、「こういうことが課題だ」「サイト制作を通じて、自社の向かうべき姿のヒントが得られた」ということを見出せさせられるような仕事をしていきたいなと思っています。

── 広報をしている私は、サイト制作を依頼するクライアント側の気持ちでお話を聞いていました。オフィスアンツ様は、単にモノとしてサイトを制作するのではなく、「目的は何か」「課題は何か」まで一緒に考えてくれるので、とても心強いと思います。本日はありがとうございました。