「見える化」で企業の電力最適化へ

クロジカはたくさんのステークホルダーに支えられています。ステークホルダーとはクロジカと共に歩んできたカスタマー、パートナー、メンバー、そしてインベスターの皆さまのことです。
私たちはこれからも、皆さまが作る新たなストーリーに力を添えて、共に歩んでいきたいと願っています。インタビューを通して、皆さまのこれまでの、そしてこれからのストーリーを聞かせていただきました。

「電気代をできるだけ抑えたい」

こう望むのは生活者だけでなく、経営者にも多いはず。

特に機械をたくさん使う製造業では、なおさら電気代の削減が大きなコストカットに繋がります。そして電気代削減の第一歩は、どの機械がどのくらい電気を使っているかを把握することから始まります。

今回インタビューしたのは、電気使用量を可視化するサービス「ENIMAS」を昨年秋にリリースした株式会社コバヤシ精密工業様。クロジカ請求管理のカスタマー様です。工事不要で簡単に取り付けられるENIMASを使えば、どの機械がどれくらい電気を使用しているか、ひと目でわかります。

そんな今の時代に即したENIMASを発売するコバヤシ精密工業様ですが、実はここに辿り着くまでにバブル崩壊やリーマンショック、そしてコロナなどの多くの苦難をご経験されています。

インタビューでは、代表取締役の小林様にお話を伺いました。逆境があっても新しいアイデアで乗り越えてく小林様のお話は、新しい気づきと学びが得られます。

バブル崩壊、リーマンショック・・・逆境から立ち上がり続ける。

── コバヤシ精密工業の歴史についてお伺いしたいです。

当社は1980年に先代である小林一正が社内外注として創業しました。当時は『頼れる企業のパートナー』をスローガンとして、製品になる前の下加工や単品加工を中心に単品、単納期の製品を積極的に受注し順調に業績を伸ばしていました。

しかしバブル崩壊を経て、割安な労働力を求めて製造業の拠点は海外に移り、日本の製造業界は落ち込みました。ちょうど環境が大きく変わっていく時期でした。

私が弊社に入社したのが2003年ですが、バブル崩壊後の事業拡大期の最中にリーマンショックがありました。2年間は開発も生産もストップするほどの状況で、『倒産』の文字が頭から離れませんでした。 当時は本当に仕事がなく、開店休業状態でしたね。17時の終業前に社員が掃除を始めたり(笑)。どうやって社員たちの給料を払っていこうかと毎日頭を悩ませていました。

── そこからどのように業績を回復されたのですか?

試行錯誤を経て、2015年にようやく航空産業に活路を見出しました。そのあたりから今までやってきたことが伸び始め、ようやく右肩上がりの未来予想図が思い描けるようになりました。

しかしそんな矢先の2020年、新型コロナウイルスの流行で再び大打撃を受けました。もう「こんなことある?」と言いたくなるような大変な状況でした。

── 確かに航空産業はコロナ禍で大きな打撃を受けた業界の一つですもんね・・・。

コロナ禍から立ち上がる、新たな一手「ENIMAS」

── コバヤシ精密工業様はコロナ禍の逆境も乗り越えてENIMASを発売されています。ENIMASはコロナ禍で開発されたのですか?

いえ、発売開始は昨年2022年の10月ですが、実は開発はずいぶん前の2016年頃にはしていました。

きっかけは、当時市役所に省エネ補助金を申し込んだことです。見込みで申請した電気使用料が思ったよりも多額となってしまって、市役所から補助金を返還するよう求められたんですね。当時新たに航空産業に手を出したので仕方がないのだと説明しても理解してもらえませんでした。

私は納得がいかず「この機械を導入したことで、どのくらい電気代が上がったか証明する方法、何かない?」と相模原の製造業の仲間に愚痴をこぼしました。すると「機械作れるよ」と。これが始まりでした。

実はENIMASは、デザイン・ソフトウェア・ケース・基盤、それら全部を相模原の商工会議所の仲間全員、『オール相模原』で作っているんです。

── 『オール相模原』!それはすごい。もともと自社の課題から作られた製品なのですね。

はい。それで最初は商品化を考えておらず、しばらくは自社の電気測定のためだけに使っていました。

しかしある日、ニュースで脱酸素への取り組みを見たのがきっかけで、「これはいけるんじゃないか」と製品化に乗り出しました。

「ENIMAS」に、ヒットの兆し

── ENIMASの発売から8ヶ月近く経ちましたが、いかがですか?

ヒットの兆しが見え始めてきました。

今、大手の企業や団体は ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した経営をしないと市場からキックアウトされてしまうと考え始めています。 その根拠作りとして、電気の使用状況を可視化したいというニーズが増えてきています。

経済産業省の脱炭素社会に向けての予算をご存じですか?今後10年間で150兆円、1年あたりでも約15兆円です。

── すごい金額ですね!

そのマーケット規模を考えると、今まさに前のめりに行くべき状況です。ただし、我々は大手のような広告費も宣伝費も掛けられない。

今はまだ、1社に1台ENIMAを試験的に導入していただくことを積み重ねている状況です。しかし今後は「自社工場の機械全部に付けたい」という話になってほしいと思っています。

その時に必要なのは、いかにユーザーフレンドリーであるかということ。クロジカと同じ考え方ですね。例えば無駄な電気を遠隔で消せるような、そういった商品開発を今進めているところです。今後はさらに「経営者だったらこういうデータが見たいだろうな」というところを確実にピンポイントで開発していこうと思っています。

── 素晴らしいですね!展示会などプロモーション活動も盛んに行われていますよね。

展示会はだいたい月1回のペースで行っています。

コバヤシ精密工業としても今まで開いていたのですが、ほとんどお客さんは来なかった。けれども ENIMASは違います。お客さんが列を作って並んでくれるんです。このような経験は初めてで、やはり商材の力だなと感じました。時勢に乗った商品、世の中のニーズに当たる商品っていうのは、このくらいみんなの関心が高いんだと感じています。

林業とコラボして、新たな取り組みも

── お問い合わせも多いと聞きます。とても楽しみですね。

はい。さらに新たな取り組みもあります。相模原市役所のエネルギーの測定事業にENIMASを使ってくださることになりました。

今はどの行政もゼロカーボン都市を目指さなければならないという状況です。相模原市が今回の取り組みで「電気代がこう下がった」という実績が出せたら、行政としても我々としてもとても有益です。

そして、本当はさらに次の展開として、木を植えたいという思いがあります。

── 木、ですか?

そう。植樹するんです。木はCO2を吸収するし、インパクトがあるでしょう?

先週金沢に行ったら、飲み屋で泥酔してるおじさんと出会いました。僕がENIMASのサービス内容を話したら、「おい、山はCO2を吸収するのか?山ならいっぱい持ってるぞ」と。

今、林業も材木の輸送費が上がってしまっていて大変な状況なんです。木を切って売っても販売で元が取れないから山の手入れができない環境があります。山が荒れると、水を蓄えられなくなり、土砂崩れが起きたりするので、林業も儲かる仕事にして行かなくては環境が荒れてしまいます。 

だから、例えばそのおじさんの山ような、何ヘクタールかの土地のCO2削減クレジット※を弊社が買い取り、弊社はENIMASを買ってくださったお客さんにそのクレジットをプレゼントする、というような仕組み作りをする。そうすれば、困っている業界にも貢献できます。商品の販売、節電、その先のカーボンセットも含めて循環型のビジネスができたらいいと考えています。

※主に二酸化炭素の排出削減に貢献した企業や組織に与えられるポイントや単位

── なるほど!画期的なアイデアですね!

逆境をチャンスへ導く、アイデアの源泉

── 小林様は逆境があってもすぐにそれに対応して、新たな価値やチャンスを生み出していらっしゃいます。例えば、コロナ禍で開始されたTwitterもフォロワーが2万人近くと、とても人気のアカウントです。

ありがとうございます。コロナが流行して「直接はお会いできない。でも新しいお客さんを探さなきゃいけない」という状況の中、どうしたものか。そう考えていたところ、以前オーストラリアで出会っていたコンサルの方に勧められて始めたんです。

── オーストラリアですか!?

はい。北海道にいる知り合いの社長に「オーストラリアで経営者の会合があるけど行かない?」と誘われて。

正直、遠いし、お金かかるし嫌だなと思っていたのですが、「もしかしたらそこにチャンスがあるかもしれない」と、思い切って行きました。

── すごい行動力ですね!小林様はどのような時にアイデアが浮かぶのでしょうか?

遊びの中から見つけていることが多いですね。

相模原で歩いていても、山持ってる人になかなか出会うことはないし、オーストラリアに行かなかったら、SNSを勧めてくれたコンサルの方とも出会っていない。誰かと遊んでいないとつながりが生まれないですよね。

 ── 遊びやつながりの中からアイデア生まれるのですね。

異業種の人と話をしていると刺激になるんです。業界が違えば、施策が違えば、統括する監督や所轄が違えば、やっぱり視点が全然違う。人との出会いはとても大事に思っています。

「世の中をあっ!と言わせる」モノづくり企業

── コバヤシ精密工業様の「『世の中をあっ!と言わせる』モノづくり企業」という理念もそこから来ているんでしょうか?

私は2代目で、自分で会社を興した訳じゃない。自分が代表に就任して、理念について改めて考えました。「世のため、人のため」という言葉は綺麗だけど、会社の存続には利益を出し続けることが必要なので、そればかり言っていられない。

じゃあ何のためにこの仕事をするのかと考えた時に、私はやっぱりいい恰好をしたいのだと思いました。「小さな会社でも注目を浴びたい、世の中を驚かせたい」という思い。言ってしまえば自己顕示欲かもしれませんが、それが原動力ですね。

── 今後、コバヤシ精密工業をどういう会社にしていきたいですか?

ENIMASもそうですが、最終的には新しい商品を作りたいです。小さな会社でも『やっぱりメーカーになりたい』という思いが元々あります。 

メーカーになることの利点は、自分たちで金額を決められること。私たちが提供する商材に、誰かが価値を感じてくれるということに魅力を感じます。それを目指すのが、今後のコバヤシ精密工業の姿です。

── なるほど。コバヤシ精密工業様はENIMASの他にも、動物用インプラントなど、新しい商材も出されていますね。

そうですね。ENIMASを含め、弊社では少しずつ商材が増えてきています。ENIMASで立つのか、他の商材で立つのかはまだわかりませんが、これらの商材を商流に乗せることをしないといけません。

ものづくりにはこだわっていますが、儲からないことをずっとやっていても仕方ないので、しがみつくのではなく、手放して乗り換えていくことも大事だと思っています。

「風雲たけし城」の竜神池ってあるじゃないですか。私はいつもあれを渡っている気持ちです(笑)。池の中のステップを軽快にポンポンと渡って行きたいと思っています。たまにドボンがあるけど、それでもまた起き上がって軽快に進み始めたい。

事業をやっていればドボンあります。それにいつドボンになるか分からない。それは仕方ないので、常に新しいチャンスの芽は育てつつ、今やるべき事業を全力でやっていく、そうやって進んでいきたいです。

── 逆境があってもアイデアでそれを乗り越えて、新しいチャンスを掴んでいく貴社のお話は、とても勉強になりましたし、勇気づけられました。ありがとうございました。